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新・クラシック音楽と本さえあれば

maru33340.exblog.jp

昨日午前中、銀座で、浅野忠信が写真家深瀬昌久を、瀧内公美がその妻洋子を演じた映画『レイブンズ』を観る。

かつてのATG映画を彷彿とさせるダークでアングラな物語に魅了された。

「レイヴンズ」とは英語でワタリガラスを意味する。
神秘的で知的な鳥として古来より様々な文化で象徴的に扱われており、文学や神話にも多く登場し、 その黒く大きな姿は、しばしば不吉な予兆や深遠な知恵と結び付けられてきたとのこと。

この映画の公式サイトのイントロダクションの説明が内容を簡潔に表現している。

「森山大道らとニューヨークMoMA“New Japanese Photography”展(1974)で絶賛を浴びた伝説の写真家深瀬昌久の78年にわたる波瀾万丈の人生を、実話とフィクションを織り交ぜて大胆に描いた。写真に憑りつかれた天才の狂気と、撮ることでしか愛しかたを知らなかった純粋さを、繊細かつワイルドに演じ浅野忠信の魅力が炸裂する」

浅野忠信は闇を抱えた写真家の狂気と純粋を(観るものが彼の痛みを自分事のように感じる位に)生々しく演じていて圧巻だ。

洋子役の瀧内公美は、まるで彼女のために造形されたかのような、強く激しく美しい写真家のモデルと妻を演じ圧倒的な存在感を見せてくれる。

映像も美しく、脇を固める古舘寛治、池松壮亮、高岡早紀らも良い。

監督、脚本はイギリス・マンチェスター出身、元ミュージシャンのマーク・ギル。
何より映画の中で使われる監督の選曲による1960年代~70年代の昭和感満載の音楽が(この映画のもう一つの主人公だと言っても良い位に)映像に疾走感を与えてとても効果的だ。



桜の季節なれど
今朝は妙に生ぬるい小雨
が降る
空は昏く重たく微かに不穏
な気配が漂う

そんな風に思うのは偶然聴いているクララ・シューマン作曲による《ローベルト・シューマンの主題による変奏曲》(作品20、1953年6月作曲)のもたらす気分に影響されているからかも知れない。

この曲について前田昭雄氏はこんな風に書いている。

「クララという人の音楽的環境を思わせ偲ばせる作品はこれだろう。まず主題はローベルトのピアノ曲、OP.99(Bunte Blatter「彩葉集」)からとられている。しかしそのもとを巡れば、クララの若い頃のメロディにロベルトは汲んだのだったから(第三ピアノソナタ第二楽章等)、それを又クララが変奏するというのは、夫婦共通の想い出を、じっくりと温めているということなのだ。1853年、ローベルトの誕生日に捧げられた。その翌年以後、夫は心身の破局を迎えエンデニッヒの精神病院で過ごすこととなる。ふたりの生活の最後を飾る妻からの花束といえようか。
シューマンの同じ主題によって変奏曲を書いた作曲家がもう一人あった。ヨハネス・ブラームス、21歳。そのOP.9「シューマンの主題による変奏曲」と聴き比べてみると、クララの作の味わいがわかるようだ。作曲の力ー掘り下げの深さと構想の大きさならブラームスだが、それとは別に「妻の作」なのだ。主題をいっそう愛している。最終変奏など別れ難く切々と。そこに一瞬リストの第一ピアノソナタ、のひとふしが引用されてもいる。リストはこの曲をシューマンに捧げたのだった」

クララとシューマンとブラームスという3人の音楽家の想いが交錯するこの曲を聴いていると、この季節特有の「春愁」という言葉が浮かんでくようだ…

桜咲く朝、クララ・シューマン作曲による《ローベルト・シューマンの主題による変奏曲》を聴くこと_f0061531_08242013.jpg



# bymaru33340 |2025-03-28 08:21 |Trackback |Comments(3)

2025年 03月 27日

夢十夜−桜の誘い−

こんな夢を見た。

夜半、ホトホトと玄関を叩く静かな音がする。

「こんな時間に誰だろう」と恐る恐る戸を開けると人影はなく、桜の花弁が二三片玄関の前に落ちている。

そう言えばつい先日東京でも桜の開花宣言が発表されたらしい。

もしかするとあの音は「ようやく桜の花が咲き始めましたよ。見にいらっしゃいな」という桜の精からの誘いだったのかも知れない…

そんな事を思いながら近所の公園まで桜を眺めにでかけた。

まだほんの二分咲き程度だったけれど、桜の下をそぞろ歩いているとふいに「あやしうほどものぐるおしけれ」という気持ちになり心ざわざわと騒ぎはじめ、余はやはり夜半のあの花弁は桜の精からの便りだったのかも知れないと思った。

夢十夜−桜の誘い−_f0061531_14421387.jpg



# bymaru33340 |2025-03-27 14:38 |Trackback |Comments(4)

2025年 03月 25日

【内丸妄語】二人の魂ある女優の演技に就いて

毎週日曜日の夜、固唾を飲んで見守り続けていたドラマ『御上先生』が最終回を迎えた。

筆者は毎週大河ドラマ『べらぼう』と『御上先生』はリアルタイムで見ることを習慣にしていたけれど、この日曜日は体調が優れず録画して昨夜見終わった。

凄いドラマだった。

答えの出ない問いに対して、そこから逃げずに「考えること」「考え続けること」の苦しさと大切さを静かに訴えかけるこの社会派ドラマは、長澤まさみが主演した『エルピス』と並び、近年のドラマ史に残る傑作だと思う。

脚本、演出、映像、音楽…どれをとっても一流で非の打ちどころがない。

役者も主演の松阪桃李、枠を固める岡田将生、吉岡里穂、常盤貴子、堀田真由、北村一輝…それぞれが素晴らしい演技でドラマを支える。

生徒役のメンバーもとても良かったけれど、特に僕が注目したのは蒔田彩珠と髙石あかりの二人の女優。

蒔田彩珠は既に朝ドラなどでも活躍しておりその翳りのある表情が最大の魅力だけれど、今回の役はハキハキとして物おじせずクラスを引っ張っていくような力を持つリーダー的な役どころ。

髙石あかりは少し前に、ラフカディオ・ハーンの人生を描く次の次の朝ドラで主役をとつとめることが発表されたけれど筆者は彼女の芝居を見たことがなかった。初回からほとんど台詞はなかったけれど、今回の物語の鍵を握る予感がしていて、最終回でその圧倒的な演技力を見せてくれた。

このドラマの学生役は全員オーディションで選ばれたそうで、皆とても上手かったけれど、やはり蒔田彩珠と髙石あかりの二人は群を抜いていた。

普通に考えれば、蒔田彩珠に少し訳アリで陰のある生徒役を配役し、髙石あかりにクラスのリーダー役をと考えるのだろうけれど、それぞれのイメージを逆手に取る配役をすることで最後までドラマに陰影を与えることに成功したと思う。

蒔田彩珠と髙石あかり。
魂のある演技ができるこの二人は、これからのこの国の映画・ドラマには欠かすことのできない逸材だと思う。

©御上先生

【内丸妄語】二人の魂ある女優の演技に就いて_f0061531_08255949.jpg



# bymaru33340 |2025-03-25 08:19 |Trackback |Comments(2)

2025年 03月 20日

【内丸妄語】「三島由紀夫、村上春樹そしてE.M.シオラン」

1995年の地下鉄サリン事件から30年目にあたる今日、2025年の3月20日、筆者は長く宿題としていた村上氏の『アンダーグラウンド』をようやく読み始めた。

地下鉄サリン事件が発生する前、村上春樹は1986年から3年間(37歳から40歳の間)日本を離れイタリアとギリシアを旅しながら執筆活動を続けている。

その間、1987年に刊行された『ノルウェーの森』がベストセラーとなって社会現象となり、少し異常とも思える毀誉褒貶の嵐の中に巻き込まれてしまうことになるから、そこから距離を置きたい(置かなければつぶされてしまう…)という気持ちもあったのかも知れない。

村上は1990年に刊行されたエッセイ『遠い太鼓』に、当時の日本のばいわゆるバブル期の消費スピードの急速な加速状態についてこんな風に書いている。

「それは僕には巨大な収奪機械を想起させた。生命あるもの・ないもの、名前を持つもの・持たぬもの、かたちのあるもの・ないもの-そういうすべての物事や事象をかたはしから飲みこみ、無差別に咀嚼し、排泄物として吐き出していく巨大な呼吸装置だ。それを支えているのはビッグブラザーとしてのマス・メディアだ。まわりを見回して目につくものは、咀嚼され終えたものの悲惨な残骸であり、今まさに咀嚼されようとするものの嬌声であった。」

この子の言葉を読みながら筆者はなんどか引用したことのある三島由紀夫が1970年に書いたこんな言葉を思い出す。

「私はこれからの日本に大して希望をつなぐことができない。このまま行ったら「日本」はなくなってしまうのではないかという感をひましに深くする。日本はなくなって、その代わりに、無機的な、からっぽな、ニュートラルな、中間色の、富裕な、抜け目がない、或る経済大国が極東の一角に残るのであろう。」

村上春樹の見た1990年の日本の姿は、まさに三島由紀夫がその20年前に予言した通りの(あるいは更に劣化した)資本主義の終焉を前にした巨大で醜悪な姿をさらすことになっていたのだ…

それから更に35年が経ち現在のこの国は…
いやはや、それはもう直視し考えるとことさえ恐ろしく、筆者は一人、ペシミストE.M.シオランを専門とする大学非常勤講師の哲学者が主人公のドラマを見て少しほっとすることしかできないのだが…
# bymaru33340 |2025-03-20 09:23 |Trackback |Comments(4)
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