2021年に放送され話題になったテレビアニメ「オッドタクシー」を手がけた木下麦監督とマンガ家で脚本家の此元和津也さんが再びタッグを組む新作オリジナル劇場版アニメ「ホウセンカ」。独房で孤独な死を迎えようとしていた無期懲役囚の老人・阿久津実が、人の言葉を操る謎のホウセンカに「ろくでもない一生だったな」と話しかけられ、会話の中で自身の過去を振り返り始める。過去の人生と向き合い、失ったものを取り戻そうとする。原作、脚本を担当した此元さんに、同作に込めた思いを聞いた。
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オファーをいただいて、もう一度ご一緒したいと思いました。「オッドタクシー」の時はヒアリングも最小限で、かなり自由に書かせてもらった分、評判の良し悪しに関わらず最終的に背負うのは監督で、責任の重さを痛感しました。だから今回は、監督の視点と呼吸に脚本の側を寄せるつもりで、土台の設計から方向を合わせて書きました。
監督から最初にもらった企画メモは、ほぼヤクザものでした。ならばその器に、外側の「正しさ」では測れない感情の持続を入れようと思いました。ここで言う「美しさ・純真さ」は、善悪の判定ではなく、誰かを思い続ける時間の持ち方のことだと思います。社会の端に立つ人の不器用な持続に、かすかな救いが生まれる。その瞬間だけを丁寧に拾いたいと考えました。
監督の企画案から、独房で最期を迎える老人がホウセンカと語り、過去を振り返る枠を選びました。小説や海外映画では中年主人公はごく普通です。一方、日本の興行文法では若い主人公の「夢」が強く、そのフォームを磨く書き手はすでに大勢いる。ただ、その「夢の型」を更新しようとする作り手はまだ多くないと感じています。だから今回は中年主人公を据え、正しさでは測れない感情を時間で証明する物語にしました。その持続にこそ、かすかな希望が灯ると感じています。「誰向け?」と聞かれたら、生きている人向けです。
物語には意外性と予想通りの区間がどちらも必要だと思っています。意外性ばかりだと嘘っぽく、予想通りばかりだと退屈になる。これは完全にコントロールしきれるものではありませんが、書きながらでしかバランスは見えてこない。だから、ラストは完全には固定しません。
監督がアニメの人で僕は物語の人。だから「アニメである必然性」はあまり意識していません。媒体は目的ではなく手段だと思っています。マンガがアニメや実写になったり、その逆もあります。今回は座組としてアニメが一番すっきり収まったのだと思います。
見終わった後、ふと一人でも思い出す顔があれば、それで十分うれしいです。どうかご自分のペースで見てください。

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2025年12月16日 15:00時点
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