中国外交トップの王毅外相兼共産党政治局員がドイツで開かれたミュンヘン安全保障会議で高市早苗首相の台湾有事に関する国会答弁を批判した発言を巡り、日中両政府が応酬を続けている。発言を「不適切だ」として申し入れを行った日本側に対し、中国側も直ちに反論した。
ただ、現在の安全保障問題を協議する場での発言だけに、核兵器を含む強大な軍事力を持つ中国が、日本を「軍国主義を復活させようとしている」と批判する構図には、欧米などの識者から「現実離れしている」「プロパガンダに過ぎない」などの冷ややかな評価も出ている。
Advertisement「日本は台湾を侵略、植民地支配する野心が消えておらず、軍国主義を復活させようとする亡霊が今も残っていることが露呈した」
中国外務省によると、王氏は14日のスピーチ後の司会者とのやりとりで台湾有事を「存立危機事態になり得る」とした高市氏の答弁に言及し、日本批判を展開。「中国の国家主権や戦後の国際秩序に対する直接的な挑戦で、中国は当然承諾できない」と強調した。
さらに王氏は、ドイツが戦後、ナチズムを全面的に清算したと指摘する一方、「日本では今でも(極東国際軍事裁判で有罪になった)A級戦犯を神社にまつっており、政治家が参拝している」などと批判した。王氏の中国語でのスピーチ動画は中国内のインターネットで繰り返し再生されており、国内世論も意識した発言だった可能性が高い。
日本政府はすぐに反応した。茂木敏充外相が会議後のセッションで即座に反論。さらに外務省のX(ツイッター)では、中国を念頭に「不透明な軍事力の拡張を長年にわたって続け、力、威圧による一方的な現状変更の試みを継続的に強化する国もある」と指摘。一方、日本の防衛力強化について「厳しさを増す安全保障環境に対するもので、特定の第三国を対象にしたものではない」と訴えた。
これに対し、在日本中国大使館報道官は16日、「日本側は事実をねじ曲げている。中国側は既に反論し、拒絶した」とする声明を発表。「日本の現職首相が戦後初めて、台湾有事は日本が集団的自衛権を行使できる『存立危機事態』になると言ったのは事実ではないのか」などと高市首相の発言を改めて批判した。
ただ、ミュンヘンでの会議では豪州のマールズ国防相兼副首相が「地域情勢を複雑にしているのは説明もないまま中国が猛烈な軍備増強を進めていることだ」と指摘。「豪州の立場としては、米国や日本と共に地域の平和と安定を守るために努力している」と強調するなど、むしろ中国に対して厳しい意見が出た。
王氏の日本に関する発言に対しても、台湾の林佳竜外交部長(外相に相当)が「中国こそが安全保障に対する真の脅威だ」との声明を出したほか、ニコラス・バーンズ前駐中国米大使はXで「日本を脅し、米国や欧州と分断させようというプロパガンダだ。同盟国の指導者たちは拒絶すべきだ」とコメントしている。【畠山哲郎、河津啓介(北京)、田所柳子】


















