特集
福島第1原発事故で発生した除染土。行き場のない現状を報告します。
原発・出口なき迷走
東京電力福島第1原発事故を巡っては出口のない問題が山積する。除染土もその一つで、国が想定する公共事業などでの再利用も先行きは見通せない。問題の根本には何があるのか、放射性廃棄物行政に詳しい信州大の茅野恒秀准教授(環境社会学)に聞いた。 ◇汗をかかない「責任者」 ――除染土を巡る国の政策をどう見てい
原発・出口なき迷走
東京電力福島第1原発事故後、除染で発生した土(除去土壌)の最終処分は、放射性物質の濃度が比較的低い土を再利用することが前提にある。再利用は進むのか。吉田浩子・東北大先端量子ビーム科学研究センター研究教授(放射線防護)は「理屈」だけでは解決できない問題があると指摘する。 ◇さらなる被ばく線量低減は可
原発・出口なき迷走
東京電力福島第1原発事故前、福島県双葉、大熊両町にまたがる中間貯蔵施設の約1600ヘクタールには、約2700人の暮らしがあった。 「山に行けばキノコやイチジクがなっていて、田んぼに行けばセリが生えていて、川や海には魚がいた。自然と一体となって暮らしていた。それが原発事故で自然を壊され、地域を壊され
原発・出口なき迷走
東京電力福島第1原発事故によって福島県内の除染で発生した大量の土を再利用するにはいくらかかるのか。ある環境省幹部は「土を運ぶだけで兆円単位になるだろう」とささやく。さらに県外で最終処分する費用まで含めると、どこまで膨らむのか未知数だ。 東京電力福島第1原発事故によって発生した除染土。行き場のない現
原発・出口なき迷走
政府が2月に閣議決定した「エネルギー基本計画」では、2011年3月11日の東京電力福島第1原発事故以降、掲げられてきた「原発への依存度を下げる」との文言が削除された。 その陰で置き去りにされてきた福島県内の除染で発生した土や廃棄物をどこへ持って行くのかという難題。この問いに環境省の事務次官として向
原発・出口なき迷走
東京電力福島第1原発事故による福島県内の除染で出た土を、自分たちで引き受けようという県外の自治体は現れるのだろうか。 「原発の恩恵を受けてきた自治体が本来引き受けるべきだ。ただ、あんなところでやるからいけない。周りに人が住んでいたらもめるし、やはり人のいないところで使わないと」。ある政府関係者は、
原発・出口なき迷走
「環境省だけではダメだと分かってしまった。政府全体でやる姿勢を見せないとまずい」 2024年の年明け早々、福島県内の除染で発生した土の再利用を巡り、当時の環境省幹部は官邸に「SOS」を出した。環境省が計画していた首都圏での再利用の実証事業は、公表から1年が過ぎても住民の反対意見などがあって進まず、
原発・出口なき迷走
2022年7月、東京都新宿区役所に環境省職員から一本の電話がかかってきた。「新宿御苑(新宿区)で『実証事業』を検討しています」 実証事業とは、東京電力福島第1原発事故後に福島県内の除染で出た土約6立方メートル(2トントラック5~6台分)を、新宿御苑内の一般利用者が立ち入らない区域に埋め、土で覆って
原発・出口なき迷走
東京電力福島第1原発事故によって発生した除染土が行き場のない状態となっています。連載「除染土のゆくえ」(全10回)で現状と課題を報告します。 除染土とは、どのようなものか。 除染とは、人間が生活空間で受ける放射線量を減らすために、放射性物質を取り除いたり、放射性物質を含むものを土などで覆ったりする
原発・出口なき迷走
福島県双葉町の伊沢史朗町長が除染土の町内再利用検討を表明する前、同じように町内再利用について発言した首長がいた。 福島県の中通りにある塙(はなわ)町。双葉、同県大熊両町にまたがる中間貯蔵施設を他の県内首長と共に視察した2023年10月、宮田秀利町長が報道陣の取材に「町で新しい道路を造っており、町で
原発・出口なき迷走
東京電力福島第1原発(福島県双葉町、大熊町)の事故後に福島県内の除染で出た土について、双葉町の伊沢史朗町長は2月中旬、毎日新聞の取材に「町のインフラ整備で必要になったタイミングで、住民や議会の理解を得ながら考えていきたい」と町内での再利用を検討していることを明かした。 東京電力福島第1原発事故によ
原発・出口なき迷走
「福島県外で最終処分することは、法律に定められた国の責務、お約束ですから」。2024年12月、福島県双葉、大熊両町にまたがる中間貯蔵施設を歴代首相として初めて視察した石破茂首相に、内堀雅雄知事はこうくぎを刺した。 東京電力福島第1原発事故によって発生した除染土。行き場のない現状と課題を報告します。
原発・出口なき迷走
2011年の東京電力福島第1原発事故の後、福島県内の除染で出た膨大な量の土は、原発を取り囲むようにして造られた「中間貯蔵施設」(福島県大熊、双葉両町)で保管されている。搬入開始から今月で10年。施設はいまどうなっているのか。現地を訪れた。 ◇サッカーコート10面分の「広場」 「今、高さ15メートル