
連載
50年以上続く毎日新聞夕刊社会面掲載のコラム。編集局の副部長クラスが交代で執筆。記者個人の身近なテーマを取り上げます。

ありがとうと言いたい。でも言えない。タイの首都バンコクでハンドルを握ると、道を譲ってもらった瞬間、そんなもどかしさを覚える。 日本ではハザードランプを点滅させて感謝を示す「サンキューハザード」が定着している。だが、それは万国共通の作法ではない。 「互いを尊重する姿勢が素晴らしい」。交通安全政策に携
子供が通う保育園の「ママ友」と最近話題に上がるのは、住宅問題だ。家族が増えて住み替えを検討している人、持ち家がある人。事情はさまざまだが、皆、ため息をつく。 不動産サービス会社アットホームによると、2025年12月の東京23区の中古マンションの平均販売価格は17年の調査開始以降、初めて8000万円

「演歌男子なんです」。宇都宮大生が地域情報を発信する「とちぎキャンパる」の活動に同席したとき、メンバーの高瀬晃暉さん(19)が名刺をくれた。書かれていたのは「梵天(ぼんてん)ゆず太郎」という活動名。週末などに高齢者施設やイベントで演歌や昭和歌謡を披露しているという。 3歳で祖母とカラオケに行き始め
その衣装には、政治的な意味が込められていた。中国王朝・明の皇帝から豊臣秀吉に贈られた中国式の衣装。金糸で霊獣・麒麟(きりん)の文様が織られ、退色しながらも以前は鮮やかな紅色だったことがうかがえる。 全国統一した秀吉は、明の征服を企図して朝鮮に侵攻した。明は援軍を出し、やがて秀吉の戦線は行き詰まる。
学生だった約20年前、休学して自転車で日本を一周した。テントや食料など20キロ以上の荷物を積み、汗まみれになりながら一日中ペダルをこいだ。効率性を度外視した旅だったが、「無駄な時間」こそ必要だと思っていた。 ただ、働き始めてからは意識しないうちにタイパ(時間対効果)を追い求めている自分に気づくこと

栄光のメダルは、ところどころ金がはがれていた。持ち主である阿部雅司さん(60)の「手に取って喜んでもらいたい」という思いから、多くの人が触れてきたからだ。大事なメダルだが、阿部さんはこうも言う。「あの経験の方が金メダル以上の価値があるんじゃないかな」 1992年のアルベールビル冬季オリンピック。ノ

神田外語大(千葉市)の学生が福島県浜通りの震災・原発事故被災地を取材してまとめた新聞が完成した。農業の再生に奮闘したり、進出した企業で頑張っていたりする若者を大きく取り上げて全体的に前向きなトーンを出しながらも、復興にはまだまだ多くの課題があることにも触れている。裏面に英語版もある。 リーダーを務
九州が舞台のサイクルロードレース「ツール・ド・九州」で、今年から新たに佐賀県が開催地に加わる。コロナ禍からの回復をアピールするため2023年に始まった大会で、鹿児島を除く九州6県を各国の選手が駆け抜ける。 佐賀県の売りの一つが、県北西端の唐津市にあって玄界灘沿いを走る「グランブルー」と呼ばれるルー
高校サッカー部の先輩の大八木潤さん(54)は、商社での仕事をこなしながらNPO法人を運営している。サラリーマンに夢を見つけてもらい、仲間とともに夢の実現を目指す場を提供する活動を10年以上続けている。 明るい性格で、OBとして私たちを引っ張ってくれた先輩らしい取り組みだと思った。きっかけを聞いて驚

初めて心をさらけ出せる外国の友人ができたのは大学4年の夏だった。日中韓の学生170人で、韓国南西部・木浦から釜山まで約300キロを歩く「ピースウオーク」に参加した。名前とは裏腹に、真夏に1日30キロ歩き、寝袋で雑魚寝し、トイレの水道で体を流す過酷な行事だった。最初は国ごとに固まっていたが、休憩中に
昨春以降、三重県内のサービス付き高齢者住宅で暮らす母(78)の体調が悪い。少しずつ食事の量が減り、体重は20キロ台にまで減少。寝たきり状態となり、「要介護5」と認定された。 「特別障害者手当の対象になると思います」。ある時、入所先の施設長がそう教えてくれた。重度の障害で常に介護が必要な20歳以上の
東京・上野動物園から双子のジャイアントパンダが返還され、日本はパンダ不在に。グレーのまま残された疑問が双子のレンタル料だ。 パンダ保護支援の名目で東京都が中国側に支払うレンタル料は、2010年に当時の石原慎太郎知事が、双子の両親について「大体100万ドルになるが、5万ドル値切って年間95万ドル」と

「STOP! 闇バイト」の太文字と、赤字の大きな「×」印。ひときわ目を引く看板を掲げた約4坪の事務所が、福岡・天神北地区の繁華街・親不孝通りの一角にある。交流サイト(SNS)で犯罪の実行役を募る「闇バイト」から若者を守ろうと、1年前、地元有志らが「親不孝通り闇バイト撲滅委員会」を設立した。民間の闇
鳥取県岩美町の旧荒金鉱山(岩美鉱山)には、朝鮮人労働者と家族計26人の遺体が埋まったままになっている。1943年の鳥取地震で鉱泥池の堤防が決壊し、鉱山労働者や地元住人ら65人が亡くなった。遺体の収容作業が行われたが、朝鮮人犠牲者は28人中26人が取り残された。 平井伸治知事は2007年から毎年、上
正月休みに手塚治虫の名作漫画「火の鳥」を読んだ。未来編で描かれるのは、為政者が巨大な「電子頭脳」の計算結果を神託のように受け入れる世界。二つの国家によってそれぞれ中央に据えられた電子頭脳が異なる考えを示し、争いに発展する。 ふと、若干のデジャブを感じて記憶をたどった。人工知能(AI)に関する本紙の
正月に広島に帰省すると、「今年は手に入らないかと思った」といいながら、母がカキを出してくれた。大学進学で地元を離れて以来、帰省の度に地元の魚介で刺し身や焼き魚を振る舞ってくれる。だがこの何年か、小イワシやアナゴ、そして今回はカキが入手しにくいと母は嘆く。 瀬戸内海の養殖ガキが育たず、死んでいるとい


「天使の翼」という英語名を持つ、白くて美しいキノコがある。和名はスギヒラタケ。食べた腎障害患者らが急性脳症を発症する事例が2004年に国内で確認され、死者も出た。厚生労働省の研究班が原因究明を目指したが、特定できないまま調査を終え、今も謎が残る。 「まさか20年以上も続けることになるとは思いません
玄界灘の「神宿る島」には、神にささげた約8万点もの宝が眠っていた。世界遺産・沖ノ島(福岡県宗像市)はそのため「海の正倉院」とも呼ばれる。 沖ノ島では4世紀後半から約500年間、大規模な祭祀(さいし)が続いたという。近年、島から1954年に出土した国宝「金銅製矛鞘(ほこさや)」の内部に、豪華な象眼文

東大阪市花園ラグビー場の前で募金活動をする若者がいた。全国高校ラグビー大会に今回出場した東海大相模(神奈川)の選手たちだ。約3年半前、練習試合中に頸椎(けいつい)脱臼骨折の大けがをしたOBの笹川祐さんの治療費に充てようと寄付を募っていた。 手足にまひが残った笹川さんは退院後間もなく復帰し、車椅子に