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確定した刑事裁判をやり直す再審制度の見直しを巡り、法制審議会(法相の諮問機関)の部会が2日、法改正の骨格となる要綱案をとりまとめた。 検察側と裁判所側の意見を色濃く反映した内容で、日本弁護士連合会側は「改悪」と反対する。現行の運用を是認する形で裁判官に幅広い裁量を認め、識者の間でも評価が分かれる。

相手は「ホシカワ」と名乗った。 銀行口座の情報を教えてくれれば、報酬を支払うという。特殊詐欺に利用される典型だ。 だが、男性は2万円と引き換えに自身の口座情報を渡した。 これは「闇バイト」に走った若者の話ではない。堕落した中年警察官の話だ。 ◇特殊詐欺の被害7000万円か 警視庁の元巡査部長、米川

傍聴人の視線が集まる中、手錠・腰縄につながれた被告が入廷する――。刑事裁判で当たり前だった光景が変わろうとしている。 最高裁が26日、傍聴席から手錠・腰縄姿の被告が見られないようにする運用を全国の裁判所に通知した。 なぜ運用変更に至ったのか。そこには法廷警備と憲法の理念の衝突があった。 ◇傍聴席か

凶弾
「絶望と危機感」。山上徹也被告が法廷で発したその言葉を聞いた時、敗北感を抱かずにはいられなかった。 被告を追い詰めた責任の一端は、メディアにあるのではないか――。 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が引き起こす社会問題を20年以上にわたり追い続けてきたジャーナリストの鈴木エイトさん(57)は、そう

凶弾
「私たちは家庭を壊された被害者ですが、法的にはなんの被害者でもありません。親が宗教に入ってしまった場合の相談窓口は探したけど、そんなところはありませんでした」 安倍晋三元首相銃撃事件の第9回公判。弁護側証人として出廷した山上徹也被告(45)の妹は、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)による宗教被害に

凶弾
静まりかえった奈良地裁の法廷で、被告はうつむいたまま主文を聞いた。 これまでと同じく髪を後ろで一つに束ねていた。一礼して席に戻り、1時間超に及んだ言い渡しに表情を変えることなく臨んだ。 被告はこの日、裁判長から名前を確認されて「はい」と小さな声で答えただけで、何も語らなかった。 ◇母の入信 「地獄

安倍晋三元首相(当時67歳)が2022年7月、奈良市で参院選の応援演説中に銃撃され死亡した事件で、殺人罪などに問われた山上徹也被告(45)の弁護側は4日、求刑通り無期懲役とした奈良地裁判決を不服として控訴した。審理の舞台は大阪高裁に移る。 事件では、首相経験者が白昼堂々、有権者が見守る中で射殺され

「手紙は読みました」。拘置所の面会室に現れた男性(51)の声は少しかすれていた。 男性は司法書士だった。しかし、依頼者からの預かり金計約1億5000万円を横領した罪に問われていた。 記者は事前に手紙で問いかけていた。ギャンブル依存症の末だったのですか、と。 司法書士や弁護士といった「プロ」による横

田中角栄元首相が逮捕されたロッキード事件の発覚から50年となる年に検察が「門外不出」としてきた新資料が明らかになった。 大手商社丸紅ルートの5億円に上る賄賂の「使途」に関し、榎本敏夫元首相秘書官が東京地検特捜部の取り調べに対し作成した一覧表を毎日新聞は入手した。 「首相の犯罪」を解明する上でキーマ

田中角栄元首相が逮捕されたロッキード事件で、大手商社丸紅ルートの5億円に上る賄賂の「使途」に関し、榎本敏夫元首相秘書官が東京地検特捜部の取り調べに対し作成した一覧表(リスト)を毎日新聞は入手した。1974年7月の参院選で候補者26人に一律2000万円を配布したことが実名でまとめられている。刑事裁判

地検は不起訴の理由を明らかにしていない――。新聞やテレビでよく見聞きするフレーズだ。実際に取材現場では、記者の質問に木で鼻をくくったような対応をする検事も少なくない。 最高検が12月、「不起訴処分広報の具体的運用について」と題したペーパーを報道機関に配布した。検察なりにこれまでの広報に思うところが

「こんな母親でごめんね」 33歳の女性は裁判で、8年しか生きられなかった娘に涙を流しながら謝った。 たんの吸引が日常的に必要だった次女だが、女性は一晩、家を空けて出かけていた。 次女の介護で周りの人たちをほとんど頼ることのなかった女性。「自分の行動を後悔しています」とつぶやいた。 ◇生後2カ月、脳

たんの吸引や人工呼吸器による管理など、日ごろから医療的なケアが必要な子供は2万人超いると推計されている。子供やその家族を支援する法律が4年前に成立。当事者らは「親がSOSを出せる社会に」と訴えている。 ◇4年前には支援法も 医療的ケア児は、新生児医療の進歩に伴って救命できるようになるなど増加傾向に

地区一番の献金者――。すぐにうわさは広まった。奈良市内の教会に通っていた信者の女性は「勝利者」とたたえられ、誇らしげだった。 およそ30年後の2022年7月8日。奈良市の近鉄大和西大寺駅前で安倍晋三元首相が銃撃され、死亡した。 関西在住の70代女性は、容疑者として逮捕された山上徹也被告(45)の名

法制審議会の部会が16日、再審制度の見直しを巡り「玉虫色」の検討資料を示した。 全方位に配慮した内容に裁判所、弁護士、検察からは不安と一定の評価が入り交じる。 議論は折り返し点を迎え、今後は一致点を見いだせるかが焦点となる。 問われているのは「再審は何のためにあるのか」という原点だ。 ◇裁判官「暗

かつて信仰していた宗教があった。脱会した後、一念発起して弁護士になった。 「宗教被害」に向き合う中で起きた前代未聞の事件は、痛恨でしかなかった。努力が足りなかったからだと自らを責め続けている。 「彼は間違った。ただ、私はおわびをしなければならない」。裁判で被告の前に立つ時が来た。 ◇心に刺さった「

安倍晋三元首相銃撃事件で起訴された山上徹也被告(45)の裁判員裁判で、被告は2022年に事件が起きてから初めて世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の信者である母親と顔を合わせた。 2人は弁護人、検察官の質問に答える形で、それぞれの視点で今に至る道のりを振り返った。 浮き彫りになったのは、母親の「無関

法廷が静寂に包まれた。5秒、10秒――。「どんな事件で裁判を受けているか分かりますか」。裁判長の声が時折響いたが、被告は無言のままだった。 たまりかねた裁判長に促され、書記官が被告に紙とペンを渡した。法廷で、裁判長と被告による異例の「筆談」が始まった。 寝たきりの母(当時71歳)に頼まれ、殺害した

かつて、同性愛は、国語辞典に「異常」と書かれていた。 時は流れ、記述は誤りとして削除された。しかし、偏見や差別は根深く残り、同性愛者は好きな相手と法的な家族になれないままだ。 「婚姻の自由をすべての人に」 東京高裁が28日、同性カップルたちが起こした訴訟に判決を言い渡した。 同性婚を認めない法制度

透明なパネルの向こう側に座る彼は、自分とさほど変わりない生い立ちだった。 抱えていた悩みも同じだったのだろう。解決への手立てを一緒に見つけられたかもしれないのに、今の立場は大きく違う。 彼は人をあやめた罪で裁かれている。 「もう区切りをつけないといけない」。自らの決意が定まっていった。 ◇被告に自