
連載
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衆院選の投票日を迎えた。超短期決戦のうえ、各政党の政策の違いが見えにくく、選択が難しい選挙となった。国の針路を考えて大切な1票を投じたい。 60年ぶりに通常国会冒頭で衆院が解散され、投票日まで16日間という史上最短の日程だった。選挙事務が間に合わず、投票所入場券の送付が遅れるなどの混乱が生じた。寒

憲法違反の裁判と認めたにもかかわらず、やり直しは否定する。適正手続きの原則を軽視するようでは、司法への信頼は失われる。 ハンセン病とされた男性が殺人罪で死刑判決を受け、執行された菊池事件で、熊本地裁は遺族の再審請求を退ける決定を出した。 男性は、熊本県で村役場の元職員を刺殺したとして1952年に起

核軍縮の責務を放棄した大国の身勝手な振る舞いである。時代を逆行させ、野放図な軍拡競争を招くことは許されない。 米国とロシアが核弾頭数などを制限するため結んでいた新戦略兵器削減条約(新START)が5日失効した。両国は当面、自主的に制限を守る方向で協議しているとされる。そうだとしても、相互に核施設を

東京大で再び汚職事件が明るみに出た。信じがたい倫理観の欠如だ。教職員の意識改革と、不正を防ぐガバナンス(組織統治)体制の立て直しを急ぐべきだ。 皮膚科医の東大教授が、共同研究相手の民間団体から高級クラブや性風俗店での接待を繰り返し受けた収賄の疑いで逮捕された。研究室の元特任准教授も一緒に接待を受け

急速な軍拡を続ける中国で軍幹部の失脚が相次いでいる。東アジアの安全保障環境への影響も懸念される。周辺国の不安を招く異変と言わざるを得ない。 中国国防省によると、軍の最高指導機関である中央軍事委員会のメンバー2人が、重大な規律違反と法律違反の疑いで調査を受けることになった。制服組トップの張又俠・軍事

人口減少と地方の将来を巡る問題は、国政選挙で問われるべき最も重要なテーマのひとつだ。 にもかかわらず、与野党が正面から提起せずに議論が素通りされる展開が繰り返されている。「後ろ向きで票につながりにくい」とみられているためだろう。 2023年公表の国の推計によると、人口は少子化のため56年に1億人を

「冬の祭典」をどう持続させるか。新たな姿を模索するうえで転機となる大会である。 ミラノ・コルティナ冬季オリンピックが6日開幕する。90を超える国・地域から3000人近い選手が参加し、22日まで熱戦を繰り広げる。 イタリア北部の四つの競技会場群で分散開催されるのが特徴だ。スケート会場があるミラノと、

自民党派閥の裏金問題は、過去のことだと言いたいのだろうか。衆院選で自民が、裏金問題に関与した議員ら43人を公認した対応である。 比例代表での重複立候補も認めた。小選挙区で敗れても復活当選の可能性がある。前回衆院選では見送っていた。 高市早苗首相は「不記載があった議員にも、ぜひ働く機会を与えてやって

パレスチナ自治区ガザ地区の和平や復興を監督する平和評議会が設立された。イスラエルとイスラム組織ハマスの停戦を受けて、米国が主導する和平プロセスの一つである。 国連安全保障理事会決議で設立が承認された。問題は、トランプ米大統領の権限があまりに大きいことだ。公正な国際機関と呼べるかは疑問で、米国による

政治の利下げ圧力に屈せず、中央銀行の独立性を堅持できるか。世界が注目している。 トランプ米大統領が米連邦準備制度理事会(FRB)の次期議長に、ウォーシュ元理事を指名した。米議会上院の承認を得られれば、5月からパウエル議長の後任となり、4年間の任期を務める。 ウォーシュ氏は米証券業界出身で、2006

働き方改革は、人口減少社会における成長戦略を考える上でも重要な論点だ。にもかかわらず、衆院選での論戦は深まっていない。 昨年末、14日以上の連続勤務を禁じる労働基準法改正案の通常国会への提出見送りが決まった。高市早苗首相が労働時間の規制緩和を検討するよう、新たに厚生労働省に指示したためだ。働き方改

少子高齢化が加速し、社会保障制度の持続性が問われている。論戦を通じて、安心できる社会への道筋を示さなければならない。 衆院選では各党とも、現役世代の社会保険料の負担が重いとして、引き下げを主張している。だが、医療や介護は保険料と税が財源となっており、それが細れば、サービス水準の低下や自己負担の増加

中国の威圧に毅然(きぜん)とした態度で臨むのは当然だが、強硬一辺倒で国益を守れるのか。対中関係の安定化は喫緊の課題であり、各党は衆院選での論戦を通じて具体策を示す必要がある。 台湾有事を巡る高市早苗首相の国会答弁を機に、日中両国の対立が深まっている。中国は答弁の撤回を求め、事実上の対抗措置を相次い

いったんは死刑囚となった袴田巌さんは、冤罪(えんざい)を晴らすまでに44年かかった。長期の拘束で心身をむしばまれた。その教訓を踏まえ、始めた議論ではないのか。 確定した刑事裁判をやり直す再審制度の見直し議論が大詰めを迎えている。法制審議会の部会が刑事訴訟法の改正に向けた要綱案を近く取りまとめる。

日本で暮らす外国人への規制を強める項目が並ぶ。共生の理念から遠のくばかりだ。 政府が外国人政策の基本方針となる総合的対応策をまとめた。「国民の安全・安心」を前面に出し、「秩序」に重点を置いたのが特徴だ。 対応策は、即戦力となる労働者の在留資格「特定技能」の創設を機に、2018年に初めて策定され、改

不公正な総選挙で民意に基づく政権樹立を装っても、国の未来を切り開くことはできない。 5年前のクーデターによって国軍が実権を握ったミャンマーの総選挙で、国軍系政党が大勝した。議会勢力の9割近くを国軍系が占めることになる。 ただ、正当性は認めがたい。 前回の総選挙で圧勝した民主派の国民民主連盟(NLD

トランプ米大統領の再登板で、日本の外交戦略は再構築を迫られている。にもかかわらず、衆院選での論戦は低調だ。 自民党や中道改革連合は、法の支配などに基づく国際秩序を堅持するとしつつ、日米同盟が基軸であると訴える。こうした従来と変わらぬ発想では、秩序をないがしろにするトランプ氏の米国と向き合えるとは思

2026年春闘が本格スタートした。連合は3年連続で「5%以上」の賃上げ目標を掲げたものの、中小企業の余力は乏しい。賃上げの裾野を広げられるかが問われている。 人材不足を背景に、基本給を底上げするベースアップ(ベア)の動きが広がっている。定期昇給とベアを合わせた賃上げ率は、昨年まで2年連続で5%を超

安心を提供する生命保険会社として、あるまじき不祥事だ。背景も含め不正の全容が解明されなければ、顧客の不安や不信は解消されまい。 米大手保険会社の日本法人プルデンシャル生命保険の社員・元社員計107人が、1991~2025年に顧客500人超から総額31億円を不正に得ていた。 同社によると、顧客に架空

2025年の訪日外国人客(インバウンド)が約4268万人となり、初めて4000万人を超えた。この10年で2倍以上に急増したことになる。円安が進み、日本での宿泊や買い物に割安感が広がっていることが要因だ。 訪日客が日本で使ったお金も約9・5兆円と過去最高だった。外貨を獲得できる点では輸出と同じ効果が