
特集
「面白い!読ませる!」と好評の読書欄。魅力ある評者が次々と登場し、独自に選んだ本をたっぷりの分量で紹介。

今週の本棚・次回の予定
12月20日の毎日新聞朝刊「今週の本棚」で掲載予定の本の主なラインアップを紹介します。 ①加藤陽子さん評『歴史学者と天皇・戦争』(直木孝次郎著・吉川弘文館) ②本村凌二さん評『社会自由主義の思想家 福田徳三』(山内進著・信山社) 著名人が思い出の本についてつづる「なつかしい一冊」は、サックス奏者の

今週の本棚・著者に聞く
(藤田麗子訳、平凡社・2640円) ◇大事にしたいものは何? ステンドグラスから差す虹色の光がワンピースの裾に踊る。待ち合わせの図書館、懐かしい友達のような笑顔で駆け寄ってきた。 韓国を代表する日本文学翻訳家でエッセイスト。村上春樹さんや小川糸さん、三浦しをんさんら多くの作家の作品300冊余を訳し

今週の本棚
◇鴻巣友季子(翻訳家) <1>世界99 上・下 村田沙耶香著(集英社・各2420円) <2>ザ・ルーム・ネクスト・ドア シーグリッド・ヌーネス著、桑原洋子訳(早川書房・2420円) <3>ゲーテはすべてを言った 鈴木結生(ゆうい)著(朝日新聞出版・1760円) <1>村田沙耶香の主題の表現手段が更
今週の本棚・編集後記
多彩な分野の本が並んだ「この3冊」は、いかがでしたか? 来週は「下」をお届けします。どうぞお楽しみに。(代)<デザイン・絵 寄藤文平>

今週の本棚
「今週の本棚」の書評執筆者が、この1年に読んだ中から印象に残った書籍を紹介します。面白そうと思った本はぜひ、この年末に手に取ってみてください。 ◇荒川洋治(現代詩作家) <1>伸子 宮本百合子著(ちくま文庫・1430円) <2>若山牧水全歌集 若山牧水著、伊藤一彦編(角川文化振興財団・5500円)

今週の本棚・なつかしい一冊
(文春文庫 759円) 恥ずかしい話になるが、私は大学に入るまで、小説を読んだことがなかった。 漫画だけは、藤子不二雄のF・A両先生の作品をはじめ、片っ端から読んでいたが、小説はまるで読んでいなかった。家族で読んでいる者が、誰ひとりいなかったからであろう。 私の友人で映画や音楽、さらには小説にも詳

今週の本棚
(岩波書店・2860円) ◇「惑星的思考」構築のために 約20年前、比較文学者ガヤトリ・スピヴァクは「グローバル」から「プラネタリー」への思考転換を提起した。グローバル思考は人間中心主義的な単一世界を志向するのに対して「惑星的思考」は人間と他種が共存する多元世界を探究する。人間は地球上の特別な主体

今週の本棚
(みすず書房・3630円) ◇思ったより広大な認知、表現の領域 言語が異なるということは、世界像が異なるということである。目に映る画像は同じものであっても、それをどう切り分けどこにハイライトを当てるかは、言語によって大きく異なる。小さな違いも積み重なれば、まったく違う世界を見ているということにつな

今週の本棚・次回の予定
12月13日の毎日新聞朝刊「今週の本棚」で掲載予定の本の主なラインアップを紹介します。 ①中島岳志さん評『ポストヨーロッパ』(ユク・ホイ著、原島大輔訳・岩波書店) ②渡邊十絲子さん評『無数の言語、無数の世界』(ケイレブ・エヴェレット著、大久保彩訳・みすず書房) 著名人が思い出の本についてつづる「な

今週の本棚・なつかしい一冊
(創元SF文庫 1320円) SF好きは、まず手始めに中学生の頃に星新一、高校生にかけて筒井康隆、同時期に初めての海外SFとして、レイ・ブラッドベリの短編集へと、移行していくのではないだろうか。 私がおそらく初めて手に取ったのが、この『ウは宇宙船のウ』だったと思う。ブラッドベリの短編すべてに共通す

今週の本棚
(月曜社・2860円) ◇石牟礼道子の確信犯的役割を鋭く読む 今、石牟礼道子の『苦海浄土』は戦後の日本文学史に聳立(しょうりつ)する名作として知られている。 水俣病という大きな不幸を中心に据えて、患者とその家族、元凶たる企業チッソならびにその背後にいた県と国(つまり日本国民全員)、多くの支援者ら、

今週の本棚
◆『煌(きら)めくポリフォニー』 (岩波書店・2420円) ◇複数言語の中で自分の声を得る 著者は台湾生まれの日本育ち。「ものを考え、思い、感じるときにも日本語に頼り切っている」というのに、日本人から日本語がお上手ですね、と何度も褒められてきた。一方では、台湾や中国のひとから、台湾人なのにその程度

今週の本棚
(慶應義塾大学出版会・2970円) ◇「空腹なるものよ、みなここへ来なさい」 世相は最短最速の花盛り。なので逆に刺さりました。え、今なぜにフランス? 美食? この物価高と食料不作の時代に。料理本も時短ものばかり。むりもない。男女ともに働く21世紀に現実的なのは手間ひまかけないレシピですとも。 でも

今週の本棚・著者に聞く
◆筒井康隆(つつい・やすたか)さん (文藝春秋・2090円) ◇書くことは「生きる道」 作家デビューから65年。SFから純文学まで、日本文学史上で類を見ないほど多彩な作品を生み出してきた。<作家が自伝を書く限り、他人の言ったことの引用は禁じられるべきだ>の一文から始まる本書には、折々の体験が鮮やか
今週の本棚・情報
<1>転生したらスライムだった件 23(伏瀬著・マイクロマガジン社) <2>成瀬は都を駆け抜ける(宮島未奈著・新潮社) <3>転生したらスライムだった件 番外編 ~とある休暇の過ごし方~(伏瀬著・マイクロマガジン社) <4>暁星(湊かなえ著・双葉社) <5>八男って、それはないでしょう!31(Y.

今週の本棚・話題の本
『カウンセリングとは何か 変化するということ』(東畑開人著・講談社現代新書・1540円)は臨床心理士として働く著者による、「カウンセリング室では何が起こっているのか?」を解き明かした本である。占いともコーチングとも違う「カウンセリング」とは何なのだろう。 まるでミステリー小説だ。カウンセリングのか
今週の本棚・編集後記
今年もはや12月。「今週の本棚」を彩るオコジョの「ナツキ」も、冬の装いになりました。この冬は例年と比べて、ぐっと冷え込むのか、それとも……。そんな質問をしてみたい人が今回取り上げた本の著者にいました。気象予報士の資格を持ち、ニュース番組のお天気キャスターも務めた石原良純さん、いかがでしょう!?(代

今週の本棚
(新潮社・1980円) 石原裕次郎主演『嵐を呼ぶ男』を満員の映画館で観(み)た。そのころ、慎太郎はその兄にすぎなかった。だが、兄は健筆家であるばかりか、国会議員にもなり、東京都知事としても活躍した。4人の息子に恵まれ、今や精悍(せいかん)な中年男たち、その雑感集だ。 長男伸晃は、小学卒業文集の「将

今週の本棚
(ちくまプリマー新書・990円) 私(評者)が著者の名を知ったのはおよそ四半世紀前。当時は全国のガスタンクの写真を集めて評論するというウェブサイトを運営していた。現在は読む人が「愉快な気分になる」ウェブメディアの編集長を務める。本書は、常に「面白がること」を追求してきた著者ならではの「楽しく生きる

今週の本棚・CoverDesign
900頁(ページ)超えのまさに重鎮の佇(たたず)まい。その重量を嗤(わら)うかの、童話の挿絵のようなほのぼの装画。と思いきや、その波紋と書誌情報は箔(はく)押しだ。分相応に有難(ありがた)い。 ◆ チェロ形の湖のほとりで生きる一家の物語『チェロ湖(こ)』(いしいしんじ著・新潮社・5500