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アジア雑語林

2137話 マレー紀行 2025 6 旅番組のような話 3

 イポーでの遅い昼食をとりながら、若社長と雑多な話をした。点心のあと何か食べたいので、麺屋台のメニューを眺めた。この店は、屋台に場所を貸しているような形態で、点心店のほか麺料理などがある。便宜上「麺料理」と書いたが、麦+面で麺という漢字が表すように、小麦粉を原料にしたひも状のものが麺で、麦以外の原料で作ったものは麺ではない。この店には麺はないというから、米を原料にした粿條(クイティアオ、Kuey Teow)を汁そばで注文した。このくらいのことなら、私の中国語でもメニューを読んだり注文もできる。マレーシア語のメニューもある程度読めるので、言葉だけでいえば、英語の通じるマレーシアとシンガポールが私にとってもっとも旅行しやすい場所だ。だから、どうしても「言葉」をテーマに話をしたくなる。

 ちょうどいい機会なので、きょうの午後、ホテルを探していた時の出来事を話した。駅からホテルがあるはずの地区を歩いていた時だ。そのホテルの場所がよくわからないから、商店に入って、ホテルの名と住所を口にして場所をたずねたのだが、連続して無視された。聞こえないふり、「あっちへ行け」という追い払うジェスチャー、「NO!!」と言って無視。それまでも、人はこんなに親切なのだろうかと思えるほど親切な人たちに出会っているのに、このイポーでの冷たい態度はなんだと思った。そして、ふと、マレーシアでは以前にも同じ体験をしたことを思い出した。今回が初めてじゃなかったのだ。路上であれほど親切な人が、店や事務所でのあまりの冷たさに驚いていた。

 「ああ、それね。申し訳ない。ホントに申し訳ないんだけど、店をやっていると、いろんな人が訪ねてくるんです。『カネください』、『事業資金を貸してください』、『儲け話があります。いっしょに儲けませんか』、『うちの会にぜひ寄付を』、『我々の団体に入って、ともに幸せになりましょう』といった面倒な人が、毎日、いくらでも来るんです。ホントにもう、いやになるくらい。だから、『こいつ、怪しい』と思ったら、無視するが、追い払うというわけです。そういう嫌な訪問者が来るせいで、ついつい冷たい態度になってしまいます。どうか理解してください」

 食事を終え、「さて、これからどこに行きますか?」と聞くので、「このあたりを散歩します」と言ったが、「ちょっと車に乗ってください。観光客が集まるところがあるので、そこにご案内します」

 車は、土産物路地に着いた。「るるぶ」がもしイポーを取り上げたら、まっさきに紹介する雑貨屋小路だ。こういう場所が大嫌いだとはもちろん言わず、車を降りようとした。

 「行きたいところがあれば、どこへでも案内しますよ」と言ってくれたが、そろそろひとりで歩きたくなった。「ありがとうございます。その辺を歩くことにします」。案内人がいる旅だと、すぐに「ひとり旅の虫」がうごめいてくる。

 「もし、何か困ったことがあれば、いつでも電話ください。どこへでも行きますから」と名刺を差し出した。

 名刺を受け取り、何度も礼をいい、街散歩を始めた。

 馬(Mah)さん、ありがとうございます。

 残念ながら、散歩をしておもしろい街ではなかったが、暗くなるまでの2時間ほど街を散歩して宿に戻った。親切な人に出会ってうれしかった。ツーリスト・インフォメーション・センターや宿のスタッフもやさしかった。

 やさしさが、マレーシアの宝といってもいい。

 

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