『バンコクの好奇心』(1990年)を書いたときに、自動販売機設置条件について考察した。クアラルンプールで、そのことを思い出した。私が書いた設置条件とは、次のようなものだった。 人件費が安いこと。 自販機で売る商品が自国で生産できるか、輸入する経…
クアラルンプールの都市交通に大いに苦情がある。以前より格段に鉄道路線数は増えたが、運営やメンテナンスに大いに問題がある。もう、それはひどいものですよ。 ある大きな駅で、まず電車の切符(トークン。プラスチックのコイン)を買うことにする。自動券…
あれは20年くらい前だったか。マレーシアの島ペナンの街を歩いていたら、変な感覚に襲われたことがある。道路に見覚えがない車が何台も走っている。歩道から眺める景色がタイの路上とまるで違うのだ。マレーシア製の車は知っているから、まったく見たことの…
イポーでの遅い昼食をとりながら、若社長と雑多な話をした。点心のあと何か食べたいので、麺屋台のメニューを眺めた。この店は、屋台に場所を貸しているような形態で、点心店のほか麺料理などがある。便宜上「麺料理」と書いたが、麦+面で麺という漢字が表す…
食堂での会話は、私の趣味で言葉の話を聞いた。 「使える言葉を得意な順に並べると、どうなります?」 「なんといっても、マンダリンが1位ですね。中国語学校で教育を受けたから」 マンダリンをどう訳そうか。北京官話、標準中国語、中国で普通話、台湾では…
イポーに着いたのは昼過ぎだったが、宿まで歩いて行ったからけっこう時間がかかった。2キロ弱の距離なら、荷物(ショルダーバッグ)を肩にかけたまま歩けるなと想定し、実際歩いて行った。こういう移動をしたいから、ゴロゴロ・キャスターのトランクは使わな…
マレーシア到着は深夜になり、翌日にはクアラルンプールを出てしまうので、宿泊先はKLセントラル駅(KLは、クアラルンプールのこと)近くにした。空港からのバスはここに着くし、地方に出るのもこの駅からだ。 深夜に宿探しをするのはいやなので、ホテルは日…
インターネットで「マレーシア旅行」を検索すると、ありきたりの観光情報を除けば、あまり評判がよくない。「おもしろくない」という意見が少なくない。そういう感覚は、実はよくわかる。私も、同じように感じている。マレーシアは生活するには便利だが、「…
サンダルを履いて日本を出たのはいつ以来だろうか。 外国旅行をするなら、当然靴を履くものだという認識もなく、何も考えずに靴を履いて日本を出たのは、初めての海外旅行だった1973年のことで、熱帯の旅は暑くて、靴のなかが汗でぐちゅぐちゅになるのがたま…
■旅行史の文章を書いていた時は、関連事項の資料紹介や出典紹介はしても、きちんと本の話はしてこなかった。いや、別の理由もあって、「これはいいぞ」と言える本が少ないのだ。でも、まあ、本の話を少ししよう。 『現代中国のトイレ革命』(周星、徐青訳、…
■もう40年以上前になるだろ。ある雑誌の企画で、「マスコミ志望の若者に推薦する本10冊」というのがあり、その取材を担当した。誰にインタビューするかというリストは編集部でできており、連絡先もわかっている。相手によっては「電話取材も可」とあるから…
■韓国KBSが2011年から放送している長寿番組「韓国人の食卓」は、さすがにネタ切れを感じる回もあるが、ときどき「おお、そうか?!」と驚くような食文化を見せてくれるので楽しみにしている。この番組は「韓国の伝統食文化」を中心にしているから、外食は…
■安藤広重の作品に、「四ッ谷内藤新宿」というのがある。馬の脚のクローズアップという構図で、地面には馬糞が落ちている。この絵の解説は、子供たち馬糞を拾い、小遣い稼ぎをする。馬糞は乾燥させて、燃料にする。この話の情報源は、『広重の浮世絵と地形で…
■「世界の殺人発生率 国別ランキング・推移」という統計がある。GLOBAL NOTEを出典に、その内容を紹介してみよう。人口10万人あたりの殺人事件の発生件数ランキング(ワースト150)で、当然、イスラエルやウクライナのような戦争犯罪は除外されている。 殺人…
■テレビやラジオで、街頭インタビューというものがある。昨今、「街頭」には外国人が多いから、アナウンサーは勇気を振り絞って外国人にマイクを向けるのだが、そのときの英語のヘタさに驚く。有名大学を卒業して、難しい試験を受けてアナウンサーになったと…
■アメリカに住んでいる古い友人ペンからメールが来た。 「元気ですか?」という1行だけのメールだった。すぐに返信すると、「あー、よかった。実はもう亡くなったんじゃないかと心配だったんだ。もし、メールが送れなかったら、『やっぱり』と・・・」 前回…
■「石破首相、辞任を発表」という誤報を出したのは読売新聞で、毎日新聞もおなじような誤報を載せたことがあった。もしも、これが朝日新聞の誤報だったら、週刊新潮や週刊文春などが狂喜乱舞猪突猛進の大騒ぎで「反朝日大キャンペーン」ができたのに、さぞか…
■韓国に、キム・ジュンミという女性歌手がいる。1953年生まれだというから、今も現役歌手かどうかは知らない。ネットには彼女の記事がいくつも出ていて、「韓国サイケデリック・フォークの女王」とか「韓国のマリアンヌ・フェイスフル」とか、よくわからない…
帰国して、outlookを開いたら、全部消えていた。受信メールが消えたのはあきらめるとして、アドレス控えも全部消えた。紙でメモした一部の人を除き、アドレスがわからない。受信はできるように業者に修復してもらったから、来たメールに返信するという方法で…
うたた寝をするほどの短いものだったが、熱帯を散歩してきた。スコールのなかを走る長距離バスの旅は、五割増しで感情を刺激するといった話はいずれ書くことになるだろうが、雑話の原稿をだいぶ書きだめたので、しばらくは前回からの続きを載せていく。 ■ち…
■昭和100年ということで、朝日新聞の戦後間もない東京の写真が何度か載っていて、そのなかにまったく同じ輪タク(自転車タクシー)の写真があった。戦後の日本でごく短期間走っていたのは、タイの自転車タクシー(サムロ―・ティープという)と同じように、自…
旅行史の連載をしているときに、 小ネタがいくつも集まった。今まで発表できなかったから、ここで一気に。 ■台湾在住中国人ブロガーが、「朝起きたら、いたるところで中国国旗がはためいていたら、きっとステキでしょうね」と投稿したことで、台湾政府の逆鱗…
今から100年ほど前の女性ブルース歌手の歌声を集めたアルバム“The Rough Guide to Bleus Daives”には25曲入っているが、知っている歌手はふたりしかいない。そのうちのひとり、Bessie Smith(1894~1937)が歌う”Nobody Knows You When You’re Down And Out”が…
どこかの国や地域を旅すれば、その場所の歴史や政治や経済や衣食住などさまざま事柄に好奇心が向かいそうなのだが、現在の旅行記はほとんど「行ったど~! 撮ったど~!」で終始している。1960年代から70年代に数多く出版された素人の旅行記のほとんどは、…
たぐいまれなる文章力がないライターなら、調べて、考えて、文章にするしかない。ところが、旅本の世界に反知性主義のようなものがあるような気がしてならない。数十年前の旅行記には、調べたり考えたりしたものがいくらでもあったが、海外旅行が大衆化して…
客観的な「良い旅」とか「悪い旅」とかいうものはない。旅するその人が「良い旅」だと思えば、それがたとえ不道徳であれ違法であれ、その人にとって「良い旅」なのだ。このあたり、幸福感と似ているかもしれない。誰かの旅を、「あんな旅はつまらん」と思っ…
「旅行を考える文章」をテーマに本を探していて、『旅学的な文体』(赤坂憲雄、五柳書院、2010)を読んだ。第1章「旅師たちの肖像」では、旅で学び、旅を学んだ人たちとその著作を紹介している。その文章は読書案内にもなると思いリストにしてみた。取り上…
私は「スマホ中毒」にはかかっていない。このブログをパソコンで書いているから、ネットで調べものをするし、本やCDを買っているし、ユーチューブで音楽を視聴しているから、デジタル世界と無縁の生活をしているわけではないが、スマホ依存症患者ではない。…
長々と書いてきた若者の旅行史の話は、1980年代あたりで終えることにする。 若者の海外旅行史研究のなかでポッカリあいた空洞は、学割航空券や格安航空券販売の歴史だ。航空会社や航空券の問屋や旅行代理店といった業界に関して、私はまったく知らないので、…
1978年に横浜からソビエト船で香港に行ったとき、10人ほどいた西洋人はみな観光ビザで不法就労している英語教師たちで、日本のビザを取り直すための日本出国だった。 香港の安宿のロビーに、日本の仕事情報の英語メモがいくつか貼ってあった。そのなかに、ス…
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