今回は、「あなたが本当に欲しいと思っていること ~ パフォーマンス問題の分析 ~」 について少しだけ考えてみます。

これは、少し前に取り上げた「学習者のニーズアセスメント(Needs assessment)」 とも若干被る部分はありますが、
「研修・訓練=万能ではない」ことを明確にすること
「研修・訓練の前に、本当にそれが必要か」を見極めること
が目的であり、
” 研修は受けたし、知識・スキルも習得した ”
しかし、
” 学んだ知識やスキルが職場に転移されていない ”
といった問題に対して、
研修(教育)を行うことが、研修をする側、学ぶ側ともに、
” その研修(教育)って本当に必要? ”
” パフォーマンス問題の原因を訓練で解決できるか? ”
を判断するための意思決定フローが必要では? という真っ当な疑問を表沙汰(?)にしたことで有名なフレームです。
「あなたが本当に欲しいと思っていること ~ パフォーマンス問題の分析 ~」とは、Robert MagerとPeter Pipeの著書『Analyzing Performance Problems』のことです。
Robert Magerといえば、そうです、このブログでも事あるたびに記している、
「メーガーの3つの質問」
・Where am I going? (どこへ行くのか?)目標
・How do I know when I get there? (たどりついたかどうかをどうやって知るのか?)評価
・How do I get there? (どうやってそこへ行くのか?)方略
のメーガーです!
この本でも少し触れられているようなのですが、かなり有名な本だと思うのですが日本語訳が出ていないので、詳細は不明です。
とりあえず、何人かの人が取り上げている内容があったので、見てみます。
(Analyzing Performance Problems)
パフォーマンス問題を分析するためのモデルを提言。
質問と回答の方向性を示す包括的なフローチャートとして提示され、このモデルに従うことで、パフォーマンス問題に対する適切な解決策を選択することができる。
(7つの主要なステップ)
1.What is performance problem ?
「パフォーマンス問題とは何?」
2.Is it worth fixing ?
「修正する価値はあるか?」
3.Can we apply fast fix ?
「迅速な修正を適用できるか?」
4.Are the consequences appropriate ?
「結果は適切か?」
5.Is there a skill deficiency ?
「スキルの欠如があるか?」
6.Are there other causes ?
「他の原因はあるか?」
7.Which solutions are best ?
「最適な解決策はどれか?」
パフォーマンスの欠陥(ステップ1)、問題を解決する価値があるかどうか(ステップ2)。(ステップ3)(ステップ4)では、パフォーマンス問題を解決するための非トレーニングソリューションが存在するかどうかを判断。
”トレーニングは、オプションのソリューションであり、多くの場合、最もコストのかかるソリューション”
非トレーニングソリューションによって、不明確な期待、不明確なパフォーマンス測定、不十分なリソース、望ましいパフォーマンスに直接結びつかない報酬/結果といったパフォーマンス障壁を取り除く。
「非トレーニングソリューション」=「パフォーマンス問題に対する ” 迅速な解決策 ” 」
(ステップ5)では、トレーニングの必要性があるかどうかを判断。”スキルと知識が不足している場合にのみ、トレーニングが必要”になる。
(ステップ6)(ステップ7)では、評価と簡潔な解決策が示される。
パフォーマンス問題があるか?
↓
重要な問題であるか?
↓
パフォーマンス期待は明確か?
↓
適切な資源やツールはあるか?
↓
動機・報酬に問題はあるか?
↓
能力・スキルの欠如が原因か?
↓
といったフローが最後まで ”YES”で、流れれば、そこで初めて、
→ 訓練(トレーニング)を実施
するということですね。
「パフォーマンス問題の原因を訓練で解決できるか?」
というのは、根本的な問題なのですが、通常の企業での研修・教育は、それ自体で別に存在しています。
必要かどうか、効果があるかどうかなどは判断されません。
” 管理職になったから、この研修を! ”
” 誰もが習得すべき知識・スキルだから、この教育を! ”
ということが最初にあり、担当部署の人たちは、スケジュールや方略を決めたり、専門のコンサルに委ねたり、教える資格を取らせたりします。
つまり、「本末転倒」なことが日常行われているわけです。
「垂れ流しの e-Learning 」
「とりあえず研修」
が横行するには、このような分析がされていないことが原因だと思います。
このようなフローで、「その研修(教育)が必要」であり、「パフォーマンス問題の原因を訓練で解決できる」と分析できた後は、「3つの質問」に進んで行けばいいのです。
その研修・教育は、「あなたが本当に欲しいと思っていること」ですか?
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