2017ランクイン作家インタビューファイアパンチ少年ジャンプ+藤本タツキ
2017/02/27
秋田県出身。
第9回「クラウン新人漫画賞」にて、『恋は盲目』で佳作を受賞。同作が2014年に、「ジャンプSQ.」(集英社)に掲載され、デビュー。
現在「少年ジャンプ+」で『ファイアパンチ』を連載中。『ファイアパンチ』第4巻は、3月3日(金)発売予定。
――『ファイアパンチ』は、集英社のコミック配信サイト「少年ジャンプ+」で、2016年4月18日から週刊連載(毎週月曜日に更新)が始まりました。第1話が公開された直後、ネット上ではSNSを通じてイッキに拡散し、いわゆる“バズった”状態になりました。
藤本 全然、予想してませんでした。
担当 連載開始当初は、あんまり宣伝していなかったんですよ。それがいきなりバズったので、正直驚きました。
――それはなぜですか?
担当 新連載ですと宣伝費もなかったんですよ……。おもしろい作品なので、最初は注目されなくてもゆっくりと認知されていくだろうな、とは思っていましたけど。
――そもそも、なぜ「少年ジャンプ+」での連載になったのでしょうか?
藤本 もともとは「ジャンプSQ.」での連載用にネームを進めていた作品なんです。
担当 それがウマくハマらなかったんですけど、僕がどうしても連載まで持っていきたいと思っていたので、それで「少年ジャンプ+」に持っていったんです。
藤本 なんか……いろいろな人から伝え聞いたところによると、『ファイアパンチ』を連載させるために、上の人とかなり意見が衝突したって聞いたんですけど……。
担当 おもしろいと思うものを、おもしろいと主張しただけなので、編集部内での意見の衝突はよくあることかと(笑)。
――いい話じゃないですか(笑)。いろんな漫画家さんに取材させてもらっていますけど、現場で上と下が熱くなっているエピソードが出てくるのって、圧倒的に集英社さんなんですよね。それこそ『バクマン。』じゃないですけど。それは「いい話」ですよ。
藤本 僕としては、ただただ申し訳なかったなぁ、と。
――「少年ジャンプ+」用に仕切り直したタイミングって、どのあたりですか?
藤本 第2話までは「ジャンプSQ.」での連載ネームとして進めていました。アグニがサンを救出するところまでが第2話だったんです。だから、作り直さなきゃなぁ、って思っていたんです。
担当 でも第1話はそのままが絶対いいと思ったので、第1話はそのまま描きあげてもらって、第2話のネームを切り直してもらったんです。
藤本 そうですね。月刊用だった第2話を、週刊用に2本(2話と3話)に切りわけました。
普通、「週刊少年ジャンプ」に載るような作品だと、第2話目って、もう一度主人公についてのエピソードになることが多いと思うんですよ。でも『ファイアパンチ』は、今いったような経緯だったので、そういうつくりにはならなかったんです。だから、序盤は「少年ジャンプ+」で追うよりは、単行本で読んでもらったほうが、ストーリーは伝わりやすいんじゃないかと思います。
――その第1話ですが、タイトルの挿入の仕方が絶妙でしたね。
藤本 僕、タランティーノの映画とかで、タイトルがバンッ! って出てくるのが好きなんです。だけど、マンガではあんまり見ないですよね。『最終兵器彼女』(高橋しん)とか『ヒメアノ~ル』(古谷実)はやってましたけど。『最終兵器彼女』は、それまでは全然別の仮のタイトルだったのに、2話か3話のところで「最終兵器彼女」って出て、かっこいいなと思ったんです。
読者に『ファイアパンチ』というタイトルを強烈に印象づける意味でも、絶妙だった第1話のタイトル挿入シーン。
――第1話でバズり、コミックス1巻が発売されると当サイトの月間ランキングでは、オトコ編1位になりました。その時の手応えは?
藤本 このまま「このマンガがすごい!」の本でのランキングでも10位以内に入って、ちょっとでも読む人が増えてくれればいいな、と思いました。
――じゃあ年間3位というのは、予想していたよりも上?
藤本 ここまできたら1位になりたかったです(笑)。
――それはそうですよね(笑)。今年は上位は接戦でしたしね。
藤本 順位の集計期間中に出たのが2巻までだったんですよ。ストーリー的には3巻までがひとつの区切りになっているので、そこまで読んでもらわないと満足してもらえないんじゃないか、って思ってました。そこは、まぁ、仕方ないことなので。
でも3位までに入ると、書店での扱いも違ってくるじゃないですか。大勢の人に読んでもらえれば、うれしいです。
――ちょうど今「3巻までがひとつの区切り」というお話が出たので、全体の構成についてお聞きしたいんですが。
藤本 こういうインタビューで、あまり内容や構想について話すと、それを確認するような読み方になっちゃうんじゃないかと心配はあるのですが…もっとおもしろくしていくつもりです。
――『ファイアパンチ』という作品は、先の読めない展開が魅力ではあるんですが、たとえば「このマンガがすごい!」を日頃から読んでいるようなマンガ好きの読者からすると、先が読めないだけに「ちゃんとお話に決着はつくのだろうか」という不安もあると思うんですよ。
藤本 ああ、なるほど。
担当 わかります。これがすでに売れている先生だったら、どんなにまわり道をしたとしても、読者は安心して読んでくれると思います。そういう意味では、藤本先生はまだ「読者との約束がすんでいない作家」だと思うので。いちおう、3巻までで一定の信頼は得たと思うのですが、まだ足りないとは思っています。
藤本 そういうところはありますね。えっと、『ファイアパンチ』は3巻までが第1部で、全体では「序破急」の3部構成です。
新たな謎の登場とともに幕を閉じた3巻……。ここから物語はどこへ!?
――ラストは決まっている?
藤本 決まっています。
――じゃあ読者は安心して、毎回期待を裏切られていって、大丈夫ですね(笑)。
藤本 はい(笑)。
(C)藤本タツキ/集英社
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