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ヒロシマの心を世界に [春宵十話]

核のない平和な未来を創るために

電子メディアと子どもたち ――引き離すのが基本――

電子メディアと子どもたち

――引き離すのが基本――

ワイゼンバウム教授が日本語訳の表紙に

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記録として残しておきたいので、かなり前に遡って私の関心事の一つについて簡単に触れておきたいと思います。

タフツ大学時代には、1981年から始まって82年ごろですが、ノーバート・ウィーナー・フォーラムという学内の研究組織を立ち上げました。タフツ大学の卒業生で、サイバネティクス創始者ノーバート・ウィーナーに因んでの命名ですが、科学技術と社会について、ノーバトウィンナーが残したメッセージを私たちも引き継ぎたいという強い思いがありました。

この時期はコンピューターが社会に大きく入り込み始めた時代ですので、コンピューターと社会との関係についての私たちがどう考えるべきなのか組織的に研究する必要性が学内で共有されたからでした。

タフツ内でこの動きを作ったのは、哲学者ダニエル・でネットなのですが、私も彼と別にずっとこの問題について強い関心がありました。特に広島・長崎に重きを置いた活動をしていましたし、ジャーナリストを広島・長崎に招待して取材の機会をつくる「アキバ・プロジェクト」を発足させた時期でもありました。核兵器は、科学技術が社会に大きな影響を与えた特別な事例の一つですので、その視点からも関心をずっと持っていました。

また、AIの創始者のひとりであるMITのジョセフ・ワイゼンバウム教授の『Computer Power and Human Reason』が出版され、直接教えを乞うことができた時でもありました。ワイゼンバウム教授の警告については、このブログで取り上げていますので、そちらも御覧下さい。

そして幸いなことに、日本では東海大学の坂田俊文先生を中心とするグループの皆さん、そして日経産業研究所のリーダーだった鳥井弘之氏なども、この問題についての強い関心があり、共同研究を開始することができ、それが1985年には東海大学とタフツ大学のジョイント・フォーラムを開催するまでに至りました。

そして、このグループからは、私が市長に就任して以来、広島市の科学技術政策を中心に基本的な面での貢献をして頂きました。例えば広島市の科学技術政策大綱を作成する上で、このグループの皆さんが中心になって下さいました。

その中でも電子メディアと社会、特に電子メディアと子どもたちの関係については特に重要視した積りです。その点を振り返るため、当時月に二度発行していた市長日記の中で2005年に取り上げた文章をまずお読み下さい。

電子メディアと子どもたちを引き離すことが大事だという点を歩強調していますが、同時に、引き離すだけではなくて、子どもたちが成長する上で役に立つ新しいメカニズムも導入したいという考え方にも触れています。それがメンター制度なのですが、その点にも注目して頂ければ幸いです。

次回もお楽しみに。

 

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[2025/12/16   人間イライザ]

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一次元上のスマホ対策 ――聖なるものとの一体化――

一次元上のスマホ対策

――聖なるものとの一体化――

デモに行くのもその内の一つ

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アメリカのZ世代の人たちの精神的な問題について警鐘を鳴らしているJonathan Haidtの著書『The Anxious Generation』 (『不安に取り付かれた世代』と仮に訳しました。また「不安」と略します)の内容を紹介しています。

ハイトの考察の中で、一番最後に出てくるのが、霊的あるいは神的な面での社会全体の劣化です。聖なるものとの関係性が薄れているのです。

ハイとは2014年頃から、アメリカの大学のキャンパスで起きている大きな動きに気付き、それがアメリカの政治や社会の変化とも呼応していることにも危機感を持ち始めたのです。それ以降、調査・研究・思索を続け、その結果「不安」を始め、いくつかの著作を世に問うことになりました。ハイトの言葉を借りると、2014年に始まった彼の違和感を一言で表すとそれは「スピリチュアル・デグラデーション」になるのだそうです。霊的な劣化と訳しておきましょう。

「ディビニティー」、(神性と訳すことができます)が、私たちの社会、私たちが構成する社会を判断する上で、社会がどのような状態にあるのかを考える上でとても重要な価値観、あるいは指標になっていることが前提です。

ハイとの観察では、スマホとかソーシャル・メディアが引き起こしている私たちの社会的変化は、スピリチュアル・デグラデーションという言葉がぴったり当てはまるのです。

そこから抜け出すための提案を、ハイトの著書に従ってこのブログでは紹介してきましたが、その一環として、さらに精神的な問題から私たちが少し健全な状態になったときに、さらに追及して行きたいこととして、聖なる存在との関係を改善するためのいくつかの提案を彼は挙げています。

その出発点は、私たちが倫理的・道徳的に美しい行動を目の前にすると、私たち自身が何か上に持ち上げられたかのような感じを持つという経験です。垂直の方向に持ち上げられたような気持ちになることを「神性」とか「霊性」、「聖なるもの」と言うのだとハイトは説明しています。そして私たちが美しい行動の主体になるために、次に掲げる六つのことを実践しようと提案してくれています。

  1. 「聖なるもの」を共有すること。これは道徳的な、あるいは人のためになる、または霊的な目的で組織されたグループに参加をすることです。例えばカトリック教のミサで聖歌を歌うこととか、市民権獲得のための運動に参加することがその例になります。
  2. 身体で参加すること。これは身体を使っての習慣的な行事、例えば教会に行くことなどもその中に入りますし、会食をすること、スポーツに参加すること、あるいは共に祈ることが入ります。
  3. 静寂、沈黙、そして集中すること。これはメディテーション、瞑想の事です。どのような形でも良いので、ともかく静かでいることを指しています。
  4. 自分を超えること。何らかの犠牲を払って、あなた自身よりも大きな価値のために何かをすることを意味しています。例えば、寄付をすること、あるいはボランティア活動をすることです。
  5. 人を裁くのではなく許すこと。キリストからインスピレーションを受けることでも良いでしょうし、論語でもコーランでも良いでしょう。しかしながら、怒りに駆られるスピードを減らして、速やかに許すことを心がけるのか大切です。
  6. 自然への畏怖を見付けるため外に出ましょう。森林浴でもいいですし、潮風に当たるのもでも良いでしょう。あるいは大学の構内を散歩することでも良いでしょう。とにかく自然とつながることを目指して下さい。

パスカルは、「人間、誰の心にも神の形をした穴が空いている」と言いました。それを埋めるためには宗教がありますが、その他にも何か強いスピリチュアルな行動を通して、私たちの精神的な健康も保たれます。私たち自身のために、そして私たちの子どもたちのためにそう心掛けてみましょう。

以上がジョナサン・ハイトの著書「不安」の最後の部分です。スマホと言う機械、そしてそのスマホの中にプログラムとして組み込まれているコンテンツによって大きな影響を受ける私たちが、人間であり続けるために、遊びが大事ですし、冒険をすること、そして失敗をすることも大切だとハイトは述べていますが、それと同時に私たち自身を超える存在とのつながりを意識すること、そしてそれを私たちの生き方の中の一部として日常化すること、別の言葉を使えば、聖なものとの一体化がいかに大切なのかということを教えてくれているような気がします。

次回はこの電子メディアと私がどう向き合ってきたのか簡単に振り返ってみたいと思います。

 

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[2025/12/15   人間イライザ]

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スマホ対策はオーストラリアに続け ――子どもたちをスマホから引き離せ――

スマホ対策はオーストラリアに続け

――子どもたちをスマホから引き離せ――

学校にはスマホは要らない

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オーストラリアでは16歳未満の子どもたちにソーシャル・メディアを使わせないという法律が施行されましたが、我が国では逆にAIの使用率80%を目指す方針ですし、子どもとスマホとの危険な関係について、識者の中でも十分に認識されていないようです。

この点について、私自身かねてから心配していました。次回以降御報告しますが、広島市では2003年から、電子メディアと子どもたちとの関係を健全なものにするための施策を展開していました。

私自身のそれまでの経験や勉強・思索を元にしての結論なのですが、(当時の最新の調査・研究の結果も勿論踏まえています)、今回紹介しているJonathan Haidt (ジョナサン・ハイト) 著の『The Anxious Generation』 (『不安に取り付かれた世代』と仮に訳しました。また「不安」と略します)では、スマホに焦点を合わせて、2009年以降の急激な変化を詳細かつ説得力のある形での「現実」として、私たちに対応を迫っています。

重大な問題ですので、重複を避けずに問題提起を続けます。第一歩は、これまで人類の進化の過程で積み上げられてきた、子どもを育てるためのシステムがスマホによって歪められている現実を直視することです。

このシステムの柱は「遊び」です。遊びを中心に子どもたちを育んできた世界の特徴として、四つの要素があるとハイトは指摘します。簡単にまとめておきますが、この点については12日の本ブログを御覧下さい。(リンクを開くには、右クリックして新しいタブを開いて下さい。)

伝統的な「遊び」中心の世界の特徴は、

  1. 身体が本質的に関わっている。
  2. 周りの人たちと時間を同時に共有している。
  3. コミュニケーションは高々数人を限度として、一人または数人との関係。
  4. このコミュニケーションの輪に入るためのバリアーが高い。

対照的にスマホでのやり取りでは、

  1. 身体は関与していない。
  2. 即時的なやり取りでなくても良い。
  3. 相手とのやり取りが直線的ではない。
  4. 参加のためのバリアーは低い。

その結果として、「遊び」の代りに「スマホ」を中心に据えた子ども時代を過ごす事で、子どもたちは次の四つの基本的な害を受けてしまうとハイトは指摘しています。 (こちらも、12日のブログを参照して下さい。)

  1. 人付き合いにおける貧困。
  2. 睡眠不足。
  3. 注意散漫になる。
  4. スマホドーパミン獲得の手段として使用し、企業はそれを奨励するサービスを提供。

それが子どもたちの精神面にも大きな影響を与えていますが、被害状況は12月6日の本ブログと12月13日の本ブログを御覧下さい。

こうした状況に対処するためには、基本的に子どもたちをスマホやソーシャル・メディアから引き離さなくてはならない、とハイトは考えています。具体的には次のような措置が必要だと述べています。これまでの説明から充分納得のいくものだと思います。4つの基本的な改革です。

  1. 14歳未満の子ども、つまり高校生になるまではスマホを持たせない。それまでは基本的に文字のやりとりができるだけ、そして通話のできるだけの電話を使わせるということです。
  2. 16歳未満の子どもにはにはソーシャル・メディアを使わせない。これまでも見てきたように、コンピューターのアルゴリズムとして作られ、提供されている内容を持つスマホ、そしてそこではインフルエンサーとの比較が限りなく行われる環境で子どもの自己肯定感を損ねてしまうからです。
  3. 学校からスマホを追放する。授業中にスマホを禁止するだけではなくて、学校の中ではスマホへのアクセスを完全に断ってしまうことが大事です。ハイトとの研究によると、生徒同士、それから先生との間に必要な「注意力」を維持するためには、それが唯一の方法だからです。

それを示している研究があります。学校でのスマホとの距離を次の三つのグループに分けることにします。第一群はロッカーのような場所にスマホを完全に隔離してしまうグループ、第二群は、スマホは使わないけれども、自分の近くにあるカバンの中に入れておくグループ、そして最後の第三群は、スマホは使わないけれど、机の上に置いておくグループです。この三つに分けて授業を受けさせ、その後みんな同じ試験を受けました。

その結果は、第一群のロッカーにしまったグループが一番結果が良く、その次がカバンにしまったグループ、そして机の上に置いてあったグループが一番成績が悪かったという結果になりました。使わないというだけでは注意力が散漫になることは防げないのです。どのくらいの覚悟でスマホを遮断しているのかが子どもたちの気持に大きな影響を与えているのです。ですから、学校では一定の場所を設けそこにスマホを完全に隔離してて鍵をかけておく必要があるのです。

   4. 大人の管理のない遊びと子供たちへの独立を保障すること、子供たちが自ら
     試み、そして失敗をしてその結果として学ぶと言う機会を作らなくてはいけ
     ないと言うことです。

以上、遊びを元にした子ども時代を過ごさせるため、スマホからの隔離が必要だということですが、1から3まで、スマホの扱い方について、日本社会が全く問題意識持っていないということがとても大きな問題だと思います。

次回はこのようにスマホとの距離を取ることによって、子どもたちにどのような環境を作り出そうとしているのか、少し抽象的な枠組みから整理をしておく必要があるとハイトは考えています。それを示します。

 

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[2025/12/14   人間イライザ]

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