食品業界では、商品の特性上、廃棄ロスは長年の課題です。
しかし近年、独自の取り組みによってこの課題を克服しつつある企業があります。
その一つが、うどんチェーン大手の丸亀製麺です。
丸亀製麺は、2024年に新商品「うどーなつ(UDONUTS)」を発売しました。
うどんの生地を活かしたドーナツ風の商品で、販売開始から大ヒット商品となりました。
公式には「新鮮なうどん生地で作る」としており、店舗で余った麺そのものを再利用したわけではありません。
ただし、うどんの素材を新たに活かす発想から、食品ロス削減の啓発にもつながったと評価されています。
同社の食品ロス対策は「うどーなつ」だけにとどまらず、
・茹で麺管理表を用いて過去データを分析し、最適な調理量を算出
・経験の浅いスタッフでも効率的に調理できる仕組みを整備
・廃棄された麺を豚の飼料に再利用するリサイクルループを構築
・店舗への生ごみ処理機導入も推進
これらにより「できたてのおいしさ」と「廃棄削減」を両立させています。
丸亀製麺の「うどーなつ」は、製麺の際に余った麺生地を有効活用するために考案されたメニューで、
製麺工程で余った麺生地を無駄にせず、おやつとして提供することで食品ロスを減らす取り組みの一環となっています。
しかし、実は「うどーなつ」は食品ロス対策だけで販売されたものではなく綿密な戦略を立てて販売されました。
「うどーなつ」は、うどん店が店舗で手づくりドーナツ、しかもうどん粉からできている、
独自のもちもち食感、といった驚きを提供すると予定調和を外した商品になります。
これにドーナツ市場も敏感に反応し、25年6月にはミスタードーナツがもち粉と米粉を使用した「もっちゅりん」を発売、
店舗に行列ができるほどの大ヒット商品になりました。
「うどーなつ」は、食感にこだわったドーナツという市場を盛り上げるきっかけにもなったかもしれません。
丸亀製麺のマーケティング戦略の軸は「人のぬくもりある食体験」「驚きとわくわく」の2つを提供することです。
生活者調査から捉えたこの2つのインサイトに、エンターテインメント性、人の力、五感への訴求を掛け合わせているのが、
丸亀製麺のマーケティングの強みで、これを体現する施策として、
「うどーなつ」の販売、麺職人の全店配置、オープンキッチンでの調理、ワカメなどのトッピングの無料提供が生まれました。
「うどーなつ」販売の背景には、女性・子ども・若年層を新規顧客として獲得したいブランドの狙いもあり、
これを丸亀製麺のマーケティング軸にのっとって実現する施策として最も効果が高いと見込んだのが「うどーなつ」です。
結果、発売から3カ月で約700万食を突破する史上最大のヒット商品となり、
25年9月には2000万食を販売しており、うどんや天ぷらといった主要商品の間接的な売り上げにも貢献しています。
加えて、従来であれば小腹がすいたときにコンビニエンスストアやファストフード店に足を運んでいた人たちの来店動機になり、
午後3~6時というアイドルタイムや夜にも集客できるようになりました。
生活者が商品やサービスを思い出し、ブランドを選択してもらう入り口となるジャンルを新たに設けることに成功し、
狙い通り女性や子連れのファミリー層、若年層といった新規顧客層の来店が増えました。
どんとドーナツという、一見意外な組み合わせですが、うどんを活用した新しい市場の開拓をし、
丸亀製麺ならではの体験を掛け合わせ、ドーナツという発想が生まれました。
フードロス問題の解決も大事ですが、改めて新たに市場を開拓する挑戦を続けていくことが重要だと思い知らされますね。
北見尚之
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