特化型VTuberなら“オンリーワン”として輝ける かなえ先生×宇推くりあ×潤音ノクト座談会

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今や、ポップカルチャーの一大ジャンルに成長したVTuber。

ホロライブにじさんじなど、大手企業に所属するそのトップランカーたちは、ゲーム実況や歌ってみたといった、インターネット上で主流のエンタメを網羅しているタレントが多い。

一方で、それとは異なる形で発展を続けているのが“特化型VTuber”だ。

特化型VTuberとは、自身の専門性を武器に活動しているVTuberのこと。その一部は学術系/教養系と称されることもある。

たとえば、クラシック音楽界初のバーチャルアーティスト開発プロジェクト「ポルタメタ」の第一弾アーティストとして、2024年4月にデビューした潤音ノクトさんもその一人だ。

潤音ノクト:東京交響楽団特別監修のもとスタートした、クラシック音楽界初のVTuberプロジェクト「ポルタメタ」の第一弾アーティスト。イタリアで修行した経歴を持ち、指揮者・原田慶太楼さんが審査員長をつとめるオーディションを突破した実力派。

今回は、間もなくデビュー1周年を迎える潤音ノクトさんと、特化型VTuberとして活躍する先達たちとの交流を取材。

犯罪学を専門とするかなえ先生、“ロケット工学アイドルVTuber”の宇推くりあさんの2人を招き「特化型VTuber座談会」を開催した。

3人が語る、特化型VTuberならではの生存戦略とは!?

取材・文:ヒガキユウカ 編集:都築陵佑

特化型VTuberの3人は、なぜその生き方を選んだのか?

宇推くりあ こんばっしょん! ロケットアイドルVTuberの宇推くりあです!

宇推くりあ:ロケット工学アイドルVTuber。VTuber個人勢。2020年10月から活動を開始し、ロケット打ち上げの実況・解説配信を行っている。JAXAとのコラボや内閣府の衛星測位システム「みちびき」アンバサダー就任など、ロケットに関するアウトリーチ活動の第一人者として活躍している。

かなえ先生 はいどうも! 犯罪学教室のかなえ先生です。

かなえ先生:VTuber個人勢。2020年9月に活動を開始。少年院で勤務していたキャリアを活かし、事件解説を中心に配信している。2024年年2月には3冊目の著書『世の中の8割はどうでもいい。: 頑張ってもうまくいかない人生を変える思考術』(小学館)を上梓。

潤音ノクト ポルタメタ所属のバーチャルアーティスト・潤音ノクトです。今日はよろしくお願いします! お2人が以前ご一緒されていたコラボ配信、拝見しました。

宇推くりあ それこそ特化型VTuberについての話をしたんだよね。もっと話したいなと思っていたのでちょうどよかった。

かなえ先生 僕も嬉しいです。しかも今回は、音楽の話もあるとのことで。

かなえ先生と宇推くりあさんのコラボ配信

宇推くりあ そう、りあ(=宇推くりあさんのこと)音楽大好きなんだよ!

潤音ノクト お、本当ですか!

かなえ先生 僕もです。実家にグランドピアノがあったりして、ちょこちょこクラシック音楽に触れる機会があったので。

──早速盛り上がってくださって嬉しいです! まずは、みなさんがVTuberになった経緯から教えてください。

かなえ先生 VTuberの存在自体は、2018年ぐらいから知っていました。自分がそこに飛び込もうと思ったきっかけはコロナ禍ですね。あの時期に、VTuberをちゃんと見るようになりました。

僕は元々、少年院の先生として働いていたので、顔出しするハードルがすごく高かったんです。だから発信活動をする上で、VTuberというやり方は、すごく都合がよくて。そこから、VTuberのことをしっかり研究するようになりました。

宇推くりあ りあは、キズナアイ(KizunaAI)ちゃんを筆頭に、VTuberが今ほどメジャーな存在ではなかったころから、「こんな人たちがいるんだなあ」という感じで見ていました。

地球に来る前(※編注:宇推くりあさんは惑星クラリス出身の宇宙人)のりあには、夢がふたつあって。ひとつは「『ラブライブ!』の矢澤にこちゃんみたいなアイドルになって歌を歌いたい」。もうひとつは「大好きなロケットを追いかけ続けたい」。

普通だったら両立しないその夢も、VTuberなら両方できる。むしろ、その二つをやっていることが、自分だけの個性にもなると思って、地球でVTuberとして活動をはじめました!

潤音ノクト 僕もきっかけはコロナ禍ですね。

あの頃、たくさんの有名アーティストのライブが中止になったと思うんですけど、クラシック音楽の世界でも、多くの演奏会ができなくなっていました。

それでみんな、家の中でできる音楽の在り方を模索していたんですけど、僕は「VTuberならそれができるんじゃないか」と考えるようになったんですよ。

「特化型VTuber座談会」と題し、オンライン上に集った宇推くりあさん、かなえ先生、潤音ノクトさん

潤音ノクト そもそもクラシック音楽って、ちょっとお堅いイメージがありませんか?「スゴい音楽大学を卒業した〇〇先生がやる××講座!」みたいな。

でも僕は、そのなんとなく感じる「敷居の高さ」が、逆に音楽を純粋に楽しむ心を妨げているんじゃないか、と考えていて。その観点からも、VTuberとして素性や経歴を出さずに活動するのは、その解決策になりうると思ったんです。

宇推くりあ なるほどね~!

潤音ノクト そんなとき、たまたま目にしたのが「ポルタメタ」だったんです。

ポルタメタは経歴や背景一切関係なく、クラシック音楽をみんなに純粋に楽しんでもらうことを目指すプロジェクトなので、僕の考えとすごく一致していたんですよね。それで、オーディションを受けることを決めました。

ポルタメタ(portameta):音楽用語の「portamento」と”高次元の”という意味の「メタ」をかけ合わせた造語。「クラシック音楽の演奏会に行ったことがない人をクラシック音楽ファンに」「クラシック音楽をとりまく状況を、滑らかに音程を変える『portamento』のように変身させていきたい」という想いが込められている。

──ありがとうございます。ちょっと素人質問で恐縮なんですけど……。

かなえ先生 出た! 素人質問!

宇推くりあ 学術系がヒエッてなるやつ!

潤音ノクト こわ! 何聞かれるんだろ。

──(笑)。クラシック音楽界って、まずプロの奏者になるのもすごく難しいと思うんですが、その後もその道でキャリアを続けていくのは難しいんでしょうか?

潤音ノクト そうですね、まず大前提としてクラシック音楽界は音大を卒業したら安泰、という世界ではありません。

権威ある国際コンクールで受賞したとか、良い大学を卒業しているとか、本当に狭き門をクリアした一部の人しか、演奏活動で食べ続けることはできないんです。

だからこそ、「ポルタメタ」の活動を通して、そういう人たちの新しい選択肢が確立できたらいい、という思いもあります。

かなえ先生 難しいですよね。特にクラシック音楽は宮廷音楽をルーツに持つ業界だから、前提として太い実家や、太いパトロンやスポンサーが必要になる。プロになる前の早い段階で、どれだけ教育にお金をかけてもらえるかに大きく左右されてしまう。

宇推くりあ 美術もそうだよね。

潤音ノクト 本当にそうなんです。どうしてもお金がかかる世界なので。

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東京交響楽団が特別監修! VTuberプロジェクト「ポルタメタ」

東京交響楽団が特別監修! VTuberプロジェクト「ポルタメタ」

クラシック音楽バーチャルアーティストプロジェクト「ポルタメタ」。最新のモデル開発技術や配信技術を使って、“持っている演奏技術以外の何にも縛られない“新しいタイプのアーティスト像を目指す。クラシック音楽の世界にあらたな風を吹かせる存在として、幅広い世代の人がクラシック音楽コンサートに足を運ぶきっかけをつくる。そして、高い演奏技術を持ちながら、演奏機会の少ないプレイヤーに、バーチャルアーティストとして新しいかたちで活躍できる機会を提供する。

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    平成生まれ、ニコニコ動画育ちのフリーライター。歌い手、ボカロ、VTuberなどネットを主戦場とするカルチャーについて企画、取材、執筆、書籍構成をしています。