同人文化の聖地として知られ、約50年にわたって文化を支えてきたコミックマーケット。
コロナ禍における来場者の減少からも回復しつつあり、2024年夏の「コミックマーケット104(C104)」には26万人が、冬の「コミックマーケット105(C105)」には30万人が訪れ、盛況を見せました。
国内外から大くの来場者が集まり、メディアからも注目を集める一方で、近年では高齢化や女性の減少がささやかれることも。
ただし、KAI-YOUがコミックマーケット準備会共同代表・市川孝一さんに行ったインタビューでは、チケット購入者の50%が20代以下であることが語られたりと、世間で語られる印象と実際のデータには乖離がある様子。

「コミケは年寄りだらけは大間違い」代表が噂に反論 コミケに起きた変動とは?
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女性の減少についても一部危惧するような意見もありますが、個人的にはあくまで時代の変化という印象です。
KAI-YOUでは今回、今年開催された「コミックマーケット104・105」で、女性向けサークルの参加が多い1日目(外部リンク)に、会場を訪れた女性たちにインタビューを実施。今回参加した目的/これまでのコミケ参加歴/近年のコミケへの所感など、ざっくばらんに聞きました。
コミケ公式のデータで学ぶ、近年の来場者の動向
来場者へのアンケート調査をみる前に、少し周辺環境も振り返っておきたいと思います。
1975年に第1回が開催され、2025年には50周年を迎えるコミックマーケット。半世紀にわたって開催されてきた即売会は、当初は女性参加者が多かったと言われています。

「“コミケは戦場”と必要以上に煽らないで」代表が語る、同人誌即売会を取り巻く環境
世界最大級の同人誌即売会「コミックマーケット102」が、8月12日(土)・13日(日)に東京ビッグサイトで開催される。
例年8月と12月に行われ、それぞれ夏コミ・冬コミと呼ばれるコミックマーケット(通称・コミケット、コミケ)。近年はコロナ禍の影響で、来場者数の上限をはじめ様々な制限を設けてきたコミケ。しかし…
コミケを運営するコミックマーケット準備会が2010年に実施し、2011年に公開した調査では、サークル参加者の約65%、一般参加者の約35%が女性でした(外部リンク)。
二次創作が盛り上がる人気作品の動向にも大きく左右されるため、必ずしも女性向け同人誌が多かったことを意味するわけではありません。
ただそうした時代を経て、近年のコミケが新しい時代へ入っていることは間違いないでしょう。2020年、コロナ禍で苦渋の決断となった「コミックマーケット98」の中止によって、状況は大きく変化しました。
コミックマーケット参加者数/画像はコミックマーケット年表より
コミックマーケット準備会が公開している来場者推移のデータを見ても、4日間開催で史上最多75万人が参加した2019年12月の「コミックマーケット97」を境に、来場者数は激変。
開催規模や運営体制がコロナ禍以降の仕様となったことで、開催期間2日間、来場者数は20数万人が、現在のコミケの姿となっています。
その間、オンライン即売会の充実、通販環境の整備、赤ブーブー通信社などが全国で開催するオンリーイベントの増加および充実など、様々な要因が重なったことも、今のコミケを形づくる大きな要因になったことは間違いありません。
会場で聞いた女性たちの声「あなたな何しにコミケへ?」
では、変遷を辿るコミケに訪れた女性参加者は、何を目的に参加し、そして今のコミケをどう思うのか。世代もバラバラな27人に、率直な意見を聞いてみました。
■40代Aさん(母)と10代Bさん(娘)
Aさん:今日来たのは、二次創作の同人誌を買うのが目的です。コミケには元々、晴海の時代(※東京国際見本市会場、1981年12月に初めて使用)からスタッフとして参加していました。いまや誰に話してもわかってもらえるようなイベントに成長していて、大きくなってしまったなぁと思います。
Bさん:『原神』の同人誌を買いに来ました。コミケ以外の即売会にも参加してます。コミケに来たのは、父がスタッフとして参加しているからです。
■20代Cさん/コミケ参加歴:10回以上
特撮とコスプレが好きで、コミケには10回以上参加しています。他の即売会に参加することもありますが、オンリーイベントは同人誌主体のものも多く、コミケほどコスプレが盛んではないので、買い物目的で行くことが多いです。
ガワコス(着ぐるみや特撮ヒーローのスーツなど、全身を覆うタイプのコスプレ)をされるのは男性の方が多いというのもありますね。
コミケは買い物目的で来るだけじゃなく、色々な人との再会や、これまで通ってきたジャンルをまとめて見れるという点でも好きです。
■40代Dさん/コミケ参加歴:10回以上
コミケには10回以上、数えきれないほど参加しています。お手伝いで来ることも多く、今回は知り合いの『ブルーアーカイブ -Blue Archive-』のサークルの手伝いできました。
年齢も上がってきたので、自分の買い物でイベントに来るっていうのは少なくなってきました。コミケでも、近くに気になるサークルがあれば買うくらいですね。
長らく参加してきましたが、いまだにこの人の多さには驚くことがあります。イベントのメインは男性ですし、更衣室は混みますが、トイレもそこまで待たないで入れるので意外と快適だと思います。

『ブルアカ』同人誌がコミケを席巻 サークル参加者「韓国から買いに来た人もいた」
世界最大級の同人誌即売会「コミックマーケット102」が、8月12日(土)から13日(日)にかけて東京ビッグサイトで開催されている。
コロナ禍におけるイベント開催のガイドラインが廃止されたことを受け、今回は1日あたりの来場者数の上限を撤廃。かつての熱狂を取り戻すかの如く、初日だけでも13万人が訪れた。
そん…
■Eさん(スタッフ参加)
最初は一般参加者として来ていました。「コミティア」にスタッフとして参加した時、周りにコミケのスタッフ経験者が多くて、そこから流れでコミケでもスタッフをやるようになりました。
好きな格好で参加できますし、ボランティアだからこそ、気軽にお祭り感を楽しめるというのもスタッフの魅力だと思います。自分では同人誌はあまり買わないので、次に参加するならまたスタッフとしてだと思います。
■30代Fさん/コミケ参加歴:6回
コミケには、『シティーハンター』のサークルとして6回参加しています。7年前にはじめて参加したときを思い返すと、今はサークルも増えていて、ジャンルとしても盛り上がっていると思います。
年齢層の高いジャンルですし、他の即売会だとジャンルとして存在していないことも多いので、コミケでこそ盛り上がるジャンルだと思います。今後も出るとしたらコミケですね。
■10代Gさん/コミケ参加歴:初参加
今日は『原神』目当てできました。サークルと、企業ブースも回ってます。コミケはコスプレイヤーさんのクオリティが高くてすごい!
他の即売会も行きたいんですけど、スケジュールが合わなくて行けてないです。

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コミケ会場で聞いた参加者たちの声

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連載
2024年12月29日(日)・30(月)の2日間にわたって、東京ビッグサイトの東・西・南展示棟(サークル・企業ブース)で開催される“冬コミ”こと「コミックマーケット105」(C105)を特集。
執筆
ポップポータルメディア「KAI-YOU.net」編集長。1985年生まれ。東京工芸大学アニメーション学科卒業後、エンタメのマーケティング・コンサル会社で業界誌やフリーマガジンの編集/記者として従事。2017年からKAI-YOU inc.、2020年1月から現職。アニメや声優といった領域を中心に、取材・編集・執筆を行っている。KAI-YOUフットサル主催。