POPなポイントを3行で
- 海賊サイト「漫画村」が社会現象に
- 10代〜20代の利用実態をアンケート調査
- 利用者の7割は「購入もする」など意外な結果に
運営されて1年以上が経過している「漫画村」ですが、同じく著作者者に無断でアップロードされた漫画を閲覧できる「フリーブックス」が閉鎖となった2017年春以降(関連記事)、特に利用者が急増していると言われています。
日本の法律では違法と断定しきれない巧妙な手口で、問題になっているものの現在も運営が続いています。
すでにいくつかのメディアでは名前を出して報道され始めているためここで伏せることはしませんが、しばしば、こういった海賊サイトを利用しているのは若年層が中心とされています。
先日成人を迎えたばかりの筆者は、「漫画村」の存在は知っていたものの当然利用したことはありません。ただ、同年代は「漫画村」についてどう思っているのでしょうか?
筆者の友人を中心とした10〜20代前半の約70名の若者を対象に利用率や実態についてアンケートを行い、デジタルネイティブ世代はどう思っているのか聞いてみました。
そもそも「漫画村」はどれだけ利用されているのか?
SimilarWebでの「漫画村」解析ページ/一部モザイクは筆者
Webサイト分析ツール「SimilarWeb」で見てみると、「漫画村」のサイトランキングはなんと日本で31位。月間利用者数(UU)は約9892万人という数字です。(2018年1月19日時点。国内ランキングについて、個別ページでは32位だが一覧では31位となっている)
SimilarWebでの国内ランキングの一覧/こちらでは31位に位置付けられている
「SimilarWeb」は独自のクローラーで取得したデータなどに基づいた分析をしているため正確な数字ではありませんが、ユーザー数も右肩上がりであることがわかります。
「漫画村」アンケートの回答結果
「漫画村」を知っていますか?
友達同士、物の貸し借りより情報をシェアして気になる作品を無料サイトで読んでいるのでしょうか? SNSを通して知る人も多くいました。
「漫画村」を利用していますか?
無料であること、気になったらすぐに読めること、品揃えが豊富であることなど、様々な理由があるようです。
そもそも、現在の著作権法上では、有料販売または配信されている音楽や映像において、それが違法配信されたものであることを知りながらダウンロードした場合には刑罰の対象になるのですが、現時点で刑罰の対象に漫画は入っていません。
しかも、「漫画村」はダウンロードではなくあくまでビューアーで閲覧という仕様になっています。
「漫画村」の利用が違法であると明確になっていない以上、罪の意識の有無は、作品の先にいる作者や出版社のことを想像できるかどうか、にかかっていると言えます。
「漫画村」を知っているという人のうち76%(50人中38人)が、「漫画村」を利用しながら単行本や雑誌など、何らかの形で漫画にお金を支払うと回答しているからです。
つまり、「漫画村」という無料の海賊サイトの存在を知っていながら──利用している人も含めて──、何らかの形で購入をしているという事実があります。
すでにたくさんの人から指摘されている通り、「漫画村」が人気の理由は、「無料である」ことだけではありません。数ある海賊サイト、そして正規の商業サイトと比べても、サイトデザインが優れていて利用しやすい、という点が挙げられます。
例えば「漫画村」はビューアーの種類が豊富で、モバイル版では横型ビューアー(横スクロール)や縦型ビューアー(縦スクロール)があります。自分の好みで読みやすい方を選べる細やかな設計にも、人気の秘訣があるのかもしれません。
「漫画村」のことをどう思いますか?
「なんで全部無料なの?」と疑問に思いつつ、手軽なために“利用してしまっている”という若者のリアルな感覚がわかりました。
音楽については、現在「Spotify」や「Apple Music」といった定額制で著作権者に還元される仕組みが充実しつつあり、かつ、ライブが大きな収益源になりつつあると指摘されています。筆者も頻繁にライブに足を運んでいるため、感覚的にも理解できます。便利だなと思う反面、「ライブ」という生でしか味わえない最後の砦がある音楽とは違って、漫画は見られたらそれでおしまいだから漫画業界を揺るがしかねないと思うKAI-YOUの「漫画村」アンケート回答より
一方で漫画は、各出版社が試し読みを揃えていたり、Web漫画アプリなどは存在しますが、各個が乱立している状態です。品揃えの薄い「Kindle Unlimited」はじめ、音楽と比べて、横断的な定額サービスが充実しているとは言えないと思います。
そして、漫画におけるライブ感は、雑誌やサイト上での連載にあると筆者は考えています。しかし結局、「漫画村」では毎週、あらゆる雑誌が掲載されてしまっているので、そのライブ感さえも垂れ流しになってしまっているのが現状です。
ただし、集計から見えてきたのは、「漫画村をきっかけに作品と出会えた」という体験を提供している事実を否定できないということ。前述の通り、「漫画村」を利用しつつも漫画にお金を落としているという層も存在はしているからです。
良いと思った作品には対価を払うという姿勢は、海賊サイトの存在が普及した現在も、なくなってしまったとは断言できません。これは私見ですが、書店やコンビニで立ち読みする感覚で「漫画村」を利用する人もいる、ということなのかもしれません。
とはいえ、当然ですが、「もし自分が作者だったとして、作品を無料で読まれるのに抵抗ないの?」という回答もあった通り、海賊サイトの横行は、本来支払われるべき正当な対価が支払われなくなっているということです。
おそらくこの記事を執筆している現在も、海賊サイトの対策に各出版社は動いているはずです。今後どのように是正されていくのか、それはまだわかりません。
いずれにしろ、一人ひとりの行動が、結果的に漫画家や出版社を生かすことにも苦しめることにもなり、それが未来の一冊に繋がっていることを今一度見つめ直したいものです。
※当初、「漫画村を利用している人のうち、漫画を購入もする層」の割合が7割としておりましたが、正しくは「漫画村の存在を知っている人のうち、漫画を購入もする層」の割合が7割でした。タイトル及び本文について、お詫びして訂正いたします
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