封切り三日目。
席数191の【CINE10】の入りは二割ほど。

この国に「差入店」との生業があることを初めて知った。
拘置所や刑務所の近所で営業し、
被告人や受刑者に差し入れる物品を販売するのだと言う。
また、家族や知己の依頼で、
面会人の代行や差し入れ品を届けもするのだと。
その背景には、
差し入れ品には厳しい制限があり、
加えて面会は平日の決まった時間のみ可能で、
実際に訪問しても、
タイミングによっては会えぬことも多いことも挙げられるよう。
刑務所の近くで差入店を営む『金子真司(丸山隆平)』は
嘗て傷害事件を起こし服役していたこともあるが、
今は伯父の後を継いでいる。
世に必要な商いであり、
人の役に立っているにもかかわらず、
犯罪者と関係を持つことを疎んじる世間がある。
店の前に置かれている植木鉢が、
思い出したように壊されているのだ。
それが、ある事件を境にエスカレーションする。
息子の同級生の女児が殺害され、
犯人とは何の関係も無いのに、
世間は何故か『金子』一家をあからさまにヘイトする。
「コロナ禍」の際に、
医療関係者にぶつけられた心無い言葉の数々を思い出す。
怒りをどこに向けていいのか判らぬ心情とは言え、
我が身に置き換えることのできない、
想像力の欠けた人間が多いことに慄然とする。
その矛先が自身の小学生の息子に向かった時に
『真司』の怒りは爆発、
元々の短慮な性格も災いし、暴力を振う。
しかし、そんな彼を救うのは、やはり家族。
妻の『美和子(真木よう子)』や叔父の『辰夫(寺尾聰)』に助けられ、
幾度目かの立ち直りをする。
『美和子』も息子の『和真』も
『真司』の仕事に誇りを感じている。
それと対比するように、
子を自分が生きるための道具としか思っていないような母親や、
エキセントリックな性格の母親が幾人か登場する。
一つ間違えば、『真司』も同じような道に進んでいたかもしれぬのだ。
そうならなかったのは・・・・、とのハナシだが、
貴方は見捨てられてはいないのだと思わせるために、
「差入店」が果たす役割はあるのだろう。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。
母を殺された女子高生『佐知(川口真奈)』が
犯人の『横川(岸谷五朗)』に
拒絶されても面会要求を繰り返すエピソードは心に沁みる。
この挿話が、二人の男の大いなる救済に繋がるのだから。
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