
大学入試の中でも「学校推薦型選抜」は多くの高校生が検討する重要な入試方式の一つです。
一般選抜とは異なり、高校での学習成績や課外活動を総合的に評価され、比較的早い時期に進路を決められる特徴があります。
しかし、「指定校推薦」と「公募制推薦」の違いや、それぞれのメリット・デメリットを正確に理解している方は少ないのではないでしょうか?
また、近年の入試制度改革により、従来の「推薦入試」から「学校推薦型選抜」へと名称や制度が変更され、その内容も少しずつ変化しています。
この記事では、学校推薦型選抜の基礎知識から実践的な対策まで、高校生のみなさんにわかりやすく解説していきます。
自分に合った入試方式を選び、効果的な準備を進めるためのヒントになれば幸いです。
- 学校推薦型選抜の基礎知識
- 学校推薦型選抜とは?
- 学校推薦型選抜のメリットとデメリット
- 専願の仕組みと注意すべきポイント
- 学校推薦型選抜の種類と特徴
- 指定校推薦の仕組みと特徴
- 公募制推薦の仕組みと特徴
- 学校推薦型選抜で求められる条件
- 評定平均(内申点)の重要性
- 課外活動や生活態度の評価ポイント
- 学校推薦型選抜に向いている人とは?
- 学校推薦型選抜対策のポイント
- 早期準備が成功のカギ!学校生活で意識すべきこと
- 志望理由書・小論文対策
- 面接対策
- 推薦対策は塾で対策したほうがいい理由
- 志望理由書や小論文の添削や面接練習を受けられる
- 最新の入試情報や大学ごとの推薦基準や傾向を把握できる
- スケジュール管理や学習計画のサポートが整っている
- まとめ:早期から計画的な準備を始めるために
学校推薦型選抜の基礎知識
学校推薦型選抜とはどういうものなのか、以前の推薦入試とどのように変わったのかを紹介します。
学校推薦型選抜とは?
学校推薦型選抜とは、高校から推薦された受験生を大学が選抜する入試制度です。
この入試形態には指定校推薦と公募推薦の2種類があり、それぞれで応募条件や選抜基準が異なります。
出願と入学試験は11月頃、合格発表は12月頃に行われます。ただし、共通テストが評価対象になっている場合は、合格発表が2月頃になります。
旧推薦入試との違い
旧推薦入試は、2021年度から学校推薦型選抜に変わりました。
旧推薦入試は書類審査と面接が選考の中心でしたが、学校推薦型選抜では書類審査や面接に加え、学力検査や小論文、共通テストなどによって学力の評価も行われます。
一般選抜や総合型選抜との違い
一般選抜は、主に学力検査で選抜する入試制度です。高校からの推薦は必要なく、高校卒業者または卒業見込み者であれば誰でも受験できます。
総合型選抜は、志望理由書や小論文、面接などにより、大学側が求める生徒像に合うかどうかを判断する入試制度です。
大学・学部によっては、プレゼンテーションやディスカッション、提出作品などが評価されることもあります。
特技や課外活動の成果、大学でやりたいことなど、個性や意欲が評価されるのが特徴です。
総合型選抜について詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてみてください。
関連記事:総合型選抜(旧AO入試)とはどんな入試制度? 実施時期・内容・学校推薦型選抜との違いを徹底解説

学校推薦型選抜のメリットとデメリット
学校推薦型選抜はメリットの大きい入試方式ですが、デメリットもあります。
メリット:早期に進路が決まる
学校推薦型選抜は、一般選抜より早い時期に進路が確定するのがメリットです。多くの大学・学部では12月に合格者が発表されるので、合格すれば卒業までの時間を好きなことに充てられます。
まとまった時間ができるので、大学に向けての準備や資格試験の勉強、旅行、運転免許の取得なども可能です。
デメリット:専願制の場合がある(特に指定校推薦)
学校推薦型選抜の中でも、特に指定校推薦では専願制が採用されているケースが多いです。
合格後に後悔することのないよう、卒業後の進路や自分の志望を十分に検討して出願しましょう。
専願の仕組みと注意すべきポイント
専願制とは、合格したら入学するという条件で出願する大学入試の方式です。合格したにもかかわらず入学を辞退したり、他大学を受験したりすることは、基本的には認められません。
指定校推薦は高校と大学の信頼関係によって成り立っています。
もし合格者が入学辞退するようなことがあれば、大学側は翌年からその高校の推薦枠を減らす可能性があります。そのため高校側も慎重に推薦者を選ぶことになります。
指定校推薦の校内での募集は9月頃に行われることが多いので、それまでに志望をはっきり確定しておく必要があります。
学校推薦型選抜の種類と特徴

学校推薦型選抜には、指定校推薦と公募制推薦の2種類があります。それぞれの仕組みと特徴について、詳しく解説します。
指定校推薦の仕組みと特徴
まずは、指定校推薦について紹介します。
大学が指定した高校のみが対象
指定校推薦は、高校が大学に対して受験生を推薦する方式の入試制度です。
大学から高校に受け入れ人数や対象となる学部が通知されるので、高校は希望者の中から受験生を選抜して推薦します。
大学が指定した高校からのみ出願できる制度なので、自分の高校に推薦枠がない場合は指定校推薦を受けることができません。
希望する大学の推薦枠がない場合は、総合型選抜や一般選抜など他の方法で出願しましょう。
校内選考を通過すれば合格率が高い理由
指定校推薦は、他の方式と比較すると合格しやすいのが特徴です。
大学と高校との信頼関係で成り立っている制度であり、高校が適切な推薦を行うことが前提になっているためです。
指定校推薦で重要なのは、校内選抜です。
校内選抜では1年生から3年生までの成績や部活動の実績が重視されるので、1年生の1学期から良い成績を維持し、校内行事やさまざまな活動に積極的に参加した生徒が有利になります。
公募制推薦の仕組みと特徴
続いて、公募制推薦について紹介します。
全国の高校生が受験可能
公募制推薦も、学校推薦型選抜と同様に高校からの推薦で出願する入試方式です。
ただし、公募制推薦の場合は大学からの指定は不要なので、全国の高校からでも出願が可能です。
多くの受験生が出願するため倍率が高く、指定校推薦と比較すると合格率が低くなる傾向があります。
一般的な公募制推薦では12月に合格者が発表されます。
一般推薦と特別推薦の違い
公募制推薦には、一般推薦と特別推薦の2種類があります。
一般推薦では、高校での成績や活動実績、学力検査によって合格者が選考されます。
それに対し、特別推薦は、スポーツや文化活動などの特定分野で優れた実績を持つ生徒を対象とする形式です。
たとえば、部活動での全国大会出場経験や、音楽や芸術分野での受賞実績などが評価の対象となります。
専門分野での能力が重視されるため、学力検査ではなく実技試験を実施する大学もあります。
学校推薦型選抜で求められる条件
学校推薦型選抜では、評定平均や、課外活動、生活態度など、学校生活全般が評価されます。選抜されるための具体的な条件と、その評価ポイントを解説します。

評定平均(内申点)の重要性
評定平均(内申点)は、学校推薦型選抜で重視される評価項目の一つです。
評定平均の計算方法と基準値
評定平均とは、高校1年生から3年生の1学期までの全教科の成績を合計し、科目数で割った平均値です。
なお、評定平均は5段階評価が基準のため、10段階評価の学校では5段階評価に換算し、小数第2位以下は四捨五入して算出されます。
基準値は大学や学部によって異なりますが、多くの大学では3.5〜4.0以上、難関大学では4.0以上に設定されていることが多いです。
学習成績概評(A~E)の仕組み
学習成績概評とは、評定平均をもとに示されるA~Eの5段階評価です。
- A(4.3以上)
- B(3.5〜4.2)
- C(2.7〜3.4)
- D(1.9〜2.6)
- E(1.8以下)
学校推薦型選抜では、この学習成績概評が評価対象になっており、一般的にはB以上、難関大学ではAが条件になっていることが多いです。
課外活動や生活態度の評価ポイント
学校推薦型選抜では、課外活動や日常の生活態度も重要な評価対象となります。
部活動や生徒会活動のアピール方法
部活動での大会出場実績や主将・副主将の経験、生徒会での活動実績などは、推薦入試における大きな強みとなります。
この点を評価されるためには、説得力のある話として面接で伝える必要があります。活動を通して成長したことやエピソードなどを、具体的に説明できるようにしておきましょう。
ボランティアや資格取得が評価される理由
学校推薦型選抜では、ボランティアの経験や取得した資格などがあると評価されます。
その理由は、現在の大学入試では、学習の3要素(①知識・技能 ②思考力、判断力、表現力 ③主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度)が重視されているためです。
ボランティア活動の実績がある生徒は、主体性を持ち、多様な人々と協働して学ぶ姿勢を備えていると評価されます。
また、外部資格を取得している生徒は、その知識や技能が客観的に認められていると評価されます。
学校推薦型選抜に向いている人とは?
学校推薦型選抜に向いているのは、1年生の1学期から学業や活動に主体的に取り組み、着実に成果を上げてきた人です。
評定平均が高く、学校内外での活動実績が豊富な受験生は高く評価されます。
将来の目標を早い段階で明確にし、それにもとづいて行動を続けてきた人も、この選抜方式に適しています。
学校推薦型選抜対策のポイント
学校推薦型選抜での合格を目指す場合の、対策のポイントを解説します。

早期準備が成功のカギ!学校生活で意識すべきこと
学校推薦型選抜は、学校生活全般が評価の対象になる入試方式です。早くから準備を始めると、合格の可能性を高められます。
1年生から始める評定維持のコツ
評定平均を少しでも上げるために、1年生の1学期から良い成績を維持することがポイントです。
日頃から予習・復習を確実に行って学力をつけるのはもちろんのこと、苦手科目がある場合は、塾に通うなどして早めに克服しておきましょう。
課外活動や資格取得への取り組み方
課外活動や資格取得などの実績は、学校推薦型選抜の評価の対象になります。
それらの活動実績が大学での学びや将来の目標と関連していると、志望理由書や面接で一貫して筋の通った話ができます。
1年生のうちから自分の将来について考え、進路につながる活動を重ねることで、評価される要素を増やしていくのがおすすめです。
志望理由書・小論文対策
志望理由書や小論文の対策は、各大学・学部のアドミッション・ポリシーを確認し、以下の点を意識して行います。
アドミッション・ポリシーとは、受験生の受け入れ方針などをまとめたもので、大学の入学案内やホームページに掲載されています。
志望理由書作成のポイント
志望理由書には、なぜ入学したいのか、入学して何を学びたいのかを書きます。印象に残りやすい志望理由書を作るためには、自分のこれまでの経験や今後の目標を、大学での学びと結びつけて書くのがポイントです。
また、読み手に伝わりやすい文章を心がけることも大切です。長すぎる説明や抽象的な表現を避け、簡潔に書きましょう。
まずは一人で書いてみて、先生や信頼できる人に添削を依頼し、改善点を取り入れて仕上げていくと完成度が高まります。
小論文対策で意識すること
小論文は、与えられたテーマについて、自分の意見や考えを書くものです。
大学入試では、受験生の思考力、判断力、表現力を評価するために小論文の試験が実施されており、社会問題や時事問題、志望学部に関連した内容などがテーマとして取り上げられています。
小論文は、自分の考えが伝わりやすいよう、論理的に書くよう心がけます。また、志望理由書や面接などの内容と一貫した内容にすることも重要です。
慣れていないと書くのが難しいので、日頃からニュースなどについて考え、文章にまとめる訓練をしておくことをおすすめします。
面接対策
面接では、受験生の人間性やコミュニケーション能力、熱意などを測ります。
よく聞かれる質問と答え方の例
面接では、「志望理由」「大学で何を学びたいのか」「高校生活で頑張ったこと」「将来の目標」などがよく質問されます。
それらについて、「なぜなのか」「何をするのか(したのか)」を明確に答えられるように準備しておきましょう。
たとえば「志望理由」の場合は、なぜ入学したいのか、そう思ったきっかけは何なのか、なぜこの学校でなければならないのかを回答します。
模擬面接を活用した準備方法
実際に面接形式で話す練習をする「模擬面接」は、面接対策におすすめの方法です。
本番と同じように面接を行い、フィードバックをもらいながら何度も練習を重ねることでブラッシュアップされ、自信を持って臨めるようになります。
面接は独特のコツがあるので、できれば専門の塾で対策を行うのが理想です。
推薦対策は塾で対策したほうがいい理由
学校推薦型選抜での受験を希望する場合は、塾で対策をするのがおすすめです。その理由は、大きく3点あります。
志望理由書や小論文の添削や面接練習を受けられる
塾の推薦対策講座では、志望理由書や小論文、面接の練習を重ねながら、自分の考えを整理し、それをわかりやすく表現する力を身につけていきます。
大学に評価されやすい書き方・話し方について、ベテランの講師に指導・添削してもらえる点が塾のメリットです。
最新の入試情報や大学ごとの推薦基準や傾向を把握できる
塾では、毎年更新される入試情報や大学ごとの推薦基準、選抜傾向などの最新情報を把握しています。
各自の志望に合わせて対策してもらえるので、無駄がなく、より的確なアドバイスがもらえます。
スケジュール管理や学習計画のサポートが整っている
学校推薦型選抜の対策は、志望理由書や小論文、面接準備だけでなく、評定平均の維持や課外活動への取り組みなど多岐にわたります。
そのため塾では、1年生の1学期から受験生がどのように動くべきなのか計画を立てます。
塾通うメリットやおすすめの塾についてもっと詳しく知りたい方は、下記の記事も合わせてご覧ください。
関連記事:総合型選抜・学校推薦型選抜対策におすすめの塾8選!独学での対策はできる?塾に通うメリットは?
まとめ:早期から計画的な準備を始めるために
学校推薦型選抜での合格を目指す場合、できるだけ早い段階から準備を始めるのが理想です。
評定平均のために良い成績を維持するのはもちろんのこと、課外活動などを計画的に進めるためにも、1年生のうちから入試を視野に入れて対策することで合格に近づきやすくなります。
独学での対策には限界があるので、塾の推薦対策コースなどを活用して着実に準備を進めていきましょう。
監修者

古岡 秀士(ふるおか ひでし)
株式会社ユナイトプロジェクト代表取締役
教育評論家。全国1万以上の教室を掲載する学習塾検索サイト「塾シル」の代表。 青山学院大学会計大学院を経て、病院・医院の検索サイトに従事。2016年、株式会社ユナイトプロジェクトを創業し「塾シル」を展開中。 本サイトでは全国の学習塾の紹介、塾選びのお役立ち情報を発信しています。
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