
総合型選抜は、受験生の個性や将来性を評価し、大学側が求める人物像に合う受験生を選抜する入試方式です。
多くの国公立大学や私立大学で導入されているものの実施内容は大学によって異なります。
本記事では総合型選抜について、選考方法や対策を詳しく紹介していきます。総合型選抜での合格を目指す皆さんは、ぜひ参考にしてください。
- 総合型選抜の基本情報
- 総合型選抜とは何か
- 一般選抜・学校推薦型選抜との違い
- 総合型選抜の入学者割合
- 総合型選抜のメリット
- 旧AO入試からの変更点
- 選考方法と評価のポイント
- 大学別の特徴的な総合型選抜
- 総合型選抜に向いている人の特徴
- 探究心が強く、主体的な学びを実践している人
- 課外活動や資格取得で成果を出している人
- 「自分の考え」を深め、表現できる人
- 総合型選抜の対策スケジュール
- 1年生からの準備
- 2年生での具体的な対策
- 入試の直前期にやっておくべき準備
- 総合型選抜の対策に特化した塾
- 1.Loohcs志塾(ルークス)
- 2.総合型選抜専門塾AOI
- 3.総合型選抜対策の専門塾 ホワイトアカデミー高等部
- 総合型選抜の具体的な対策方法
- 総合型選抜はアドミッション・ポリシーに当てはまるかが重要
- 基本的な選考の流れ
- 志望理由書の書き方と注意点
- 面接対策のポイント
- 小論文の書き方のコツ
- その他の選考方法(プレゼン・グループディスカッション)の場合
- まとめ:総合型選抜をねらうなら1年生のうちから意識しよう
総合型選抜の基本情報
まずは、総合型選抜とはどういう制度なのかを解説します。
総合型選抜とは何か
総合型選抜は、大学側が求める学生像に合った受験生を選抜する入試方式です。
個性や将来性を判断するために、志望理由書などの書類審査に加え、面接や小論文などが実施されることが多いです。
一般選抜・学校推薦型選抜との違い
大学入試には、大きく分けると、一般選抜、総合型選抜、学校推薦型選抜の3種類があります。

一般選抜では、筆記試験によって受験生の学力を評価します。学校推薦型選抜では、高校での成績や活動実績をもとに選抜が行われます。
総合型選抜は、他の2つと比較して、より大学に入ってからの活躍に重点を置いて評価されるのが特徴です。
それぞれの方式の一般的な選考スケジュールは、以下の通りです。
出願 | 選考 | 合格発表 | |
総合型選抜 | 9月〜 | 10月頃 | 11月 |
学校推薦型選抜 | 11月〜 | 10月〜11月頃 | 12月 |
一般選抜 | 私立:1月上旬〜 国公立:1月下旬〜 | 私立:1月下旬〜 国公立:2月中旬(前期)3月中旬(後期) | 私立:2月〜 国公立:3月 |
総合型選抜を取り入れる大学は増えていますが、すべての大学・学部で採用されているわけではありません。
たとえば、関西大学では全学部で実施される一方(2025年度予定)、東京工業大学や大阪大学、早稲田大学などでは、一部の学部でのみ採用されています。
また、東京大学や上智大学のように、総合型選抜を採用していない有名大学もあります。
総合型選抜の入学者割合
大学受験における、一般選抜、総合型選抜、学校推薦型選抜の割合は、以下のようになっています。
近年は、私立大学を中心に総合型選抜・学校推薦型選抜での入学者の早期確保が活発化しており、入学者における一般選抜の割合が低下しています。
令和4年度(2022年)の大学入学者の選抜方法では、半数以上が総合型選抜・学校推薦型選抜で入学しています。

※文部科学省「令和4年度大学入学者選抜実態調査」をもとにグラフを作成
総合型選抜のメリット
総合型選抜には、以下のようなメリットがあります。
- 学力以外を評価してもらえる
- 一般選抜より早い時期に合格発表される
- 一般選抜と併願できる
学力以外の面も含めて総合的に評価されるため、いろいろなことに興味を持って活動してきた受験生や、将来に向けて明確な目標を持っている高校生には有利な制度です。
また、一般選抜と併願できるため、同じ学校・学部を受験するチャンスが2回あるという点も大きなメリットです。
旧AO入試からの変更点
総合型選抜は、旧AO入試の後継として、2019年から導入されました。大きな変更点は、旧AO入試にはなかった学力検査が加わったことです。
学力検査の内容は学校によって異なり、共通テストを採用する場合もあれば、独自の学力検査が実施される場合もあります。
選考方法と評価のポイント
総合型選抜では、受験生の適性や将来性を見極めるために、さまざまな角度から評価されます。内容は大学や学部によって異なりますが、ここでは一般的な出願条件や評価のポイントを解説します。

一般的な出願条件
総合型選抜の出願条件は大学・学部によって異なりますが、一般的なものを紹介します。
- 高等学校を卒業していること、または卒業見込みであること
- 評定平均が一定以上であること
- 指定する資格を保有していること
ただし、これらの条件はすべての大学・学部に当てはまるものではありません。詳細は各大学の入試要項を確認してください。
評定平均値の重要性
総合型選抜では、評定平均値が一定以上であることが出願条件になっている場合があります。
基準は大学によって異なり、一般の大学では評定平均値3.5以上、難関大学では4.0以上が条件になっていることがあります。
総合型選抜を目指す場合でも、日頃の定期テストで高得点を維持することが必要になります。
学力評価の扱い方
総合型選抜では学力検査が導入されており、旧AO入試と比べて学力の評価が重視されるようになりました。
学力検査の内容は大学や学部ごとに異なり、共通テストや個別学力検査、またはその両方が課されます。
総合型選抜では他の評価項目も重視されるため、学力検査の比重が一般選抜より低いことが多いものの、一定の学力水準を満たしていることが前提です。
大学入学共通テストの活用
総合型選抜では、大学入学共通テストが選考の一部に利用される場合があります。
また、一部の国立大学では、総合型選抜の1次試験として共通テストが利用され、2次試験として個別検査が実施されています。
同じ大学でも共通テスト利用の有無が異なる場合もあるので、要項を丁寧に確認しておきましょう。
大学別の特徴的な総合型選抜
各大学が実施している総合型選抜の中でも、特に特徴のあるものを紹介します。
学部 | 特徴 | |
滋賀大学 | データサイエンス学部 | ・オンライン講座受講型選抜がある |
近畿大学 | 経済学部理工学部文芸学部総合社会学部(環境・まちづくり系専攻)ほか | ・それぞれの学部や専攻に合わせた外部試験の資格や受賞歴が出願資格になっている学部がある。 ・2次審査にプレゼンテーションが行われる学部がある。 |
お茶の水女子大学 | 文系学科 | 新フンボルト入試 ・授業を受講し、レポートを提出する |
創価大学 | 経済学部経済学科 経営学部経営学科 法学部法律学科 文学部人間学科 ほか | PASCAL入試という方式がある ・事前に予習したうえで、グループディスカッションを行う(文系学部) ・プレゼンテーションを行う(理系学部) |
慶應大学 | 法学部 | FIT入試 ・講義を受けた後、論述と、口頭で与えられた課題について考えを述べる口頭試問がある |
国際基督教大学(ICU) | 教養学部アーツ・サイエンス学科 | ・英語外部試験利用、理数探究型、IB認定校対象の3つの選抜方式がある |
総合型選抜に向いている人の特徴
総合型選抜で合格しやすいのは、どのような人なのでしょうか。具体的な特徴を3点紹介します。
探究心が強く、主体的な学びを実践している人
総合型選抜では、日頃から自分が興味関心を持つテーマを深く追求しており、その成果を具体的に示せる人が評価されます。
高校生活での課題研究や、自主的に行ってきた学習活動を具体的にアピールできる人は総合型選抜に向いています。
課外活動や資格取得で成果を出している人
部活動やボランティア、資格取得などの活動実績は、総合型選抜での評価対象になります。
ただ実績を述べるだけでなく、どのような目標を持って取り組み、どういう成果を得たかを整理し、簡潔に伝えることがポイントです。
「自分の考え」を深め、表現できる人
面接や小論文では、自分の意見を論理的にわかりやすく伝える能力が求められます。経験や目標について具体的に考え、大学でどのように活かすかを示せるように準備しておきましょう。
総合型選抜の対策スケジュール
総合型選抜を受験する場合、1年生から対策を始めるのが理想です。そのための具体的なスケジュールを解説します。

1年生からの準備
総合型選抜では評定平均が出願条件に含まれることがあるため、1年生の1学期から良い成績を収めることが前提です。
そのうえで、部活動や学校行事、課外活動などに積極的に参加して、入試でアピールできるよう実績を積み重ねていきます。
資格試験などにも挑戦し、できることの幅を広げておくと、総合型選抜で有利になる可能性があります。
2年生での具体的な対策
2年生では、引き続きいろいろな活動で実績を積んでいくことに加え、入試の具体的な対策を始めます。
3年生になると受験対策が忙しくなるため、たとえば小論文対策などは2年生のうちに始めておくのが理想です。
また、総合型選抜の要項を早めに確認しておくと、余裕を持って準備ができるのでおすすめです。
入試の直前期にやっておくべき準備
入試の直前期には、面接練習や学力検査の過去問対策などを行います。
志望理由書などの作成や小論文対策に時間を取られてしまうと、入試直前期に学力検査の準備ができなくなってしまうので、もっと早い段階で終わらせておくのが理想です。
総合型選抜の対策に特化した塾
総合型選抜を受験する場合、専門の塾で対策するのもおすすめです。ここでは、総合型選抜の対策におすすめの塾を厳選して3つ紹介します。
もっと知りたい方は、下記の記事も参考にしてください。
関連記事:総合型選抜対策におすすめの塾8選!独学での対策はできる?塾に通うメリットは?
1.Loohcs志塾(ルークス)

Loohcs志塾は、総合型選抜や学校推薦型選抜に特化した塾で、たとえば慶應義塾大学のFIT入試では70名の合格実績を持っています。それぞれの大学に合わせた志望理由書や小論文などの添削指導を徹底的に行う塾です。
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2.総合型選抜専門塾AOI

AOIは、総合型選抜の専門塾です。総合型選抜においては圧倒的な強さを持ち、2024年の総合型選抜合格率は97.7%でした。総合型選抜を見据えた課外活動についても、PDCAを回しながら徹底的にサポートしてもらえます。
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3.総合型選抜対策の専門塾 ホワイトアカデミー高等部

総合型選抜対策の専門塾 ホワイトアカデミーは、総合型選抜と推薦対策専門の塾です。活動や小論文などの添削はもちろんのこと、総合型選抜対策として英語や数学などの評定を上げるための定期テスト対策も行っています。
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総合型選抜の具体的な対策方法

ここからは、総合型選抜の具体的な内容や対策について紹介します。
総合型選抜はアドミッション・ポリシーに当てはまるかが重要
総合型選抜で合格するためには、「アドミッション・ポリシー」を理解し、対策することがポイントです。
アドミッション・ポリシーとは
アドミッション・ポリシーとは、大学の入学者受け入れ方針のことを指します。アドミッション・ポリシーは各大学のホームページや入試要項に掲載されており、総合型選抜では、それに適合する受験生が選抜されます。

出典:慶応義塾大学
大学が求める学生像に合わせたアピール方法
総合型選抜の志望理由書や小論文、面接では、この方針に沿った内容をアピールすると選考で有利になります。
たとえば、国際理解を重視する大学では、環境問題や貧困など地球規模の課題への関心を示したり、留学経験や海外交流プログラムなどでの経験を伝えたりするのも良い方法です。
大学がどのような学生を求めているかを徹底的に分析し、それに合う活動実績を積み重ねてアピールしましょう。
基本的な選考の流れ
総合型選抜の選考は、次のような流れで実施されるのが一般的です。
■1次選考
- 書類審査(志望理由書、調査書など)
■2次選考
- 面接試験
- 小論文
- プレゼンテーション
- 学力検査など
ただし、大学や学部によって異なりますので、要項を必ず確認してください。
志望理由書の書き方と注意点
志望理由書は、重要な評価対象の一つです。
志望理由書とはどんなもの?
志望理由書は、自分がなぜその大学を志望するのかを伝えるための書類です。
どのような目標を持っていて、大学で何を学びたいか、なぜその大学なのかを明確にするものなので、論理的で説得力のある内容を書くようにします。
具体的なエピソードを盛り込むコツ
志望理由書には、自分の経験をもとにした具体的なエピソードを盛り込むのがおすすめです。
たとえば、過去の経験に基づいて興味関心を持った内容や、そこから生まれた将来の目標などをストーリーにすると、説得力が増します。
単に事実を並べるだけでなく、自分がどう感じたのかを具体的に書くと、共感を得られる志望理由書になります。
面接対策のポイント
面接では、アドミッション・ポリシーとの適合性や、学習の意欲、人間性などがチェックされます。
面接でよく聞かれる質問とその意図
面接では、「なぜこの大学を志望したのか」「これまでの活動で得たもの」「将来の目標は何か」といった質問のほか、現在の関心ごとや趣味などについても聞かれることがあります。
これらの質問は、受験生が大学の求める学生像に適しているかどうかを見極めるためのものです。
質問の意図を理解し、自分の考えを簡潔かつ明確に伝えられるように練習しておきましょう。
自分の経験を具体的に語るコツ
自分の経験を話す際は、エピソードに具体性を持たせると伝わりやすくなります。
また、その経験から得た学びや、それを大学でどう活かすかについても触れると良い印象を与えられます。
面接で聞かれそうな質問についての情報を5W1Hを使って具体的に書き出しておくと、その場で答えやすくなるのでおすすめです。
小論文の書き方のコツ
小論文は、自分の意見を論理的に伝える力を問われる試験です。
自分なりの問題意識を持つことが重要
小論文では、与えられたテーマについて自分の意見を論理的に述べる力が求められます。
自分が関心を持つ分野や受験する大学の専門分野についてはもちろんのこと、社会課題などについても普段から疑問を持ち、考えを深めておくと、どのような課題に対しても対応できるようになります。
過去問を活用したトレーニング
小論文対策には、過去問を使った練習がおすすめです。時間を計りながら書く練習をして、それを塾などで添削してもらい、文章力を高めることができます。
たとえ文章を書くのが苦手でも、何度も繰り返し書いて慣れておくと、本番で自信を持って書けるようになります。
その他の選考方法(プレゼン・グループディスカッション)の場合
慶應大学法学部や明治大学農学部食料環境政策学科、横浜市立大学(国際教養学部/国際商学部/理学部/データサイエンス学部)などでは、総合型選抜の評価にプレゼンテーションがあります。
また、九州大学共創学部などでは、2次選考にグループディスカッションが選考に含まれています。
独自の選考方法を導入している大学を受験する場合は、早めに要項を確認し、徹底して対策しましょう。
まとめ:総合型選抜をねらうなら1年生のうちから意識しよう
総合型選抜を目指す受験生は、大学から選ばれるために、1年生のうちから対策をして、大学の方針に合った活動実績を積み重ね、入試対策を行っています。
総合型選抜に特化した塾もあるので、志望大学の要項をしっかり確認し、できるだけ早く対策を始めることをおすすめします。
関連記事:総合型選抜対策におすすめの塾8選!独学での対策はできる?塾に通うメリットは?
監修者

古岡 秀士(ふるおか ひでし)
株式会社ユナイトプロジェクト代表取締役
教育評論家。全国1万以上の教室を掲載する学習塾検索サイト「塾シル」の代表。 青山学院大学会計大学院を経て、病院・医院の検索サイトに従事。2016年、株式会社ユナイトプロジェクトを創業し「塾シル」を展開中。 本サイトでは全国の学習塾の紹介、塾選びのお役立ち情報を発信しています。
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