『マリオカート ワールド』の最新情報が公開された配信番組「マリオカート ワールド Direct」を見て、筆者は『スーパーマリオ オデッセイ』に近いアプローチが含まれていると感じた。
もちろん、『スーパーマリオ オデッセイ』が3Dプラットフォーマーであるのに対して、『マリオカート ワールド』はレーシングゲームである。しかし、「ステージをクリアする」、あるいは「1位になる」といった目標をクリアすること以外にも、「世界を楽しむ」ことが遊びとして盛り込まれていることは、どちらの作品も共通していると言えるだろう。
『マリオカート ワールド』はこれまでのシリーズ作品と違って、コースを選んで遊ぶだけのレーシングゲームではなく、コースがそのままオープンワールドのようなフィールドに含まれており、コース以外も自由に走り回ることができる。これまでと同様にレーシングゲームでありながら、世界を自由に駆け巡って好きなように「アドベンチャー」することも許されているわけだ。

『スーパーマリオ オデッセイ』はオープンワールドのゲームではないが、3Dマリオの作品として久々に探索に重点を置いたアプローチが採用された。『スーパーマリオ 3Dワールド』はいわゆるステージクリア型、「スーパーマリオ ギャラクシー」の2作もステージに近い構成の惑星を冒険して、「パワースター」をゲットすると拠点に戻されるシステムが採用されていた。だが、『スーパーマリオ オデッセイ』に登場する箱庭では「パワームーン」をゲットしても冒険はそのまま続き、広めのマップを隅から隅まで探索したくなるようにデザインされている。3Dマリオでこのような形式が採用されたのは2002年の『スーパーマリオサンシャイン』以来だった。
広めのフィールドを自由に駆け巡るとなると、アクション以外にも探索要素が必要になってくる。そこで、『スーパーマリオ オデッセイ』は平たく言えば「世界観を満喫する遊び」を、様々な方法で導入した。『スーパーマリオ オデッセイ』に登場する箱庭は「国」と呼ばれており、都会やリゾートといった現実世界にもあるようなものから、「料理の国」や「帽子の国」など、バリエーションに富んだロケーションが登場する。あわせて、各国にはマリオの衣装を購入できるショップ「クレイジーキャップ」があり、その国でしか手に入らない衣装も購入できる。「料理の国」ならコック服、「海の国」ならアロハシャツ、という具合に。
ロケーションにあわせてマリオのコーディネートを楽しみ、充実したフォトモードを使ってそれを写真に収める。当時、私はマリオの世界旅行に夢中になり、延々と写真を撮って、バケーションを満喫していた。クリアするだけなら、そんなことはやらなくてもいいはずなのに……。つまるところ、マリオは単なるアクションゲームではなく、「バカンス」を楽しむアドベンチャーゲームの側面を兼ね備えたタイトルに成長したわけだ。

同じように、『マリオカート ワールド』は引き続きレーシングゲームでありながら、好きなように過ごせる「ドライブゲーム」のアイデンティティを新たに獲得しようとしているように見受けられる。
今作のマップを見ると、砂漠、雪国、森、火山など、エリアごとに環境が激しく異なることがわかる。各地には多種多様なコースが存在し、『スーパーマリオ オデッセイ』に登場する国に負けずとも劣らないバラエティを有している。

各地には「ヨッシーズ」というお店があり、ロケーションにあわせた料理を提供しているようだ。マリオたちが食べるとその料理にちなんだ衣装にチェンジする。ピーチ姫がお寿司を食べれば浴衣に、マリオが辛そうなポテチを食べるとカウボーイ姿になる。一度食べた料理の衣装は、キャラクター選択画面から選べるようになる模様。
『マリオカート ワールド』にもフォトモードが搭載されている。好きな衣装を着てドライブを楽しみ、気に入ったロケーションで写真を撮って、世界を満喫する。単なるレースとはまた違ったゲーム体験が可能になりそうだ。

『スーパーマリオ オデッセイ』はマリオの帽子を様々な対象に投げて憑依するという、革新的なゲームデザインが魅力的だった。だが、同時にマリオの過去へのリスペクトが感じられるタイトルでもあった。土管に入るとドット絵の2Dの場面が始まり、過去作にも登場したロケーション・キャラクター・衣装が満載だった。そうしたレトロな要素もまた「世界観を楽しむ要素」のひとつとして盛り込まれていたと考えられる。

『マリオカート ワールド』もオープンワールドを採用し、同時に24人でレースが楽しめるようになり、さらに「サバイバル」という勝ち抜き戦を取り入れ、『スーパーマリオ オデッセイ』と同様に革新的な挑戦が多い。同時に、過去作のコースが複数収録されており、マリオサーキットの前に立って、スーパーファミコンのドット絵キャラクターの看板の前で集合写真を撮るようなこともできる。「マリオ」及び「マリオカート」の歴史が、今作においても「世界観を楽しむ」要素のひとつとして採用されていることがわかる。

『スーパーマリオ オデッセイ』に登場する国は「パワームーンを集める」というメインの目的以外にも様々なチャレンジや収集アイテムが用意されていた。『マリオカート ワールド』のオープンワールドにおいても、すでにPスイッチやハテナパネルを起動することで始まるチャレンジやゲットできるコインのほか、特別な「隠しコイン」の収集アイテムも確認できる。『マリオカート ワールド』が優れたレーシングゲームであることはもちろん、新しい発見の尽きないドライブゲームとしても夢中になれる作品に仕上がっていることに期待したい。

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