世界から不審の目を向けられている日本
今回は、行事のご案内から始めたいと思います。
来る5月5日「こどもの日」14:00-17:00東京大学本郷キャンパスにて「哲学熟議」を開催します。
「<アンネの日記>と戦後倫理」のタイトルのもと、独文学の高辻知義名誉教授、公共哲学の山脇直司名誉教授をはじめとするメンバーと、現在私たちが本当の意味で直面している問題について開かれた議論を展開する予定です。
より正確な場所、時間、メンバーや内容については、追ってホームページなどを準備します。前回3月11日の「哲学熟議」同様、電子メールでの先行予約優先で受け付けいたしますので、ふるってお申し込み下さい。参加料などは一切無料です。
今回は、ここでの議論に先立つ準備に相当するもの、前提となる現状の認識からお話を始めたいと思います。
事件は世界からどのように見られているか?
4月16日、報道は、現在身柄を拘束されている、都内の図書館などで「アンネの日記」をはじめとする書籍を損壊した容疑者(都下在住、36歳)に刑事責任を問えるかどうか、精神鑑定を行う方針を固めた、と伝えました。
容疑者男性は、犯行の一部を認めているようですが、動機についてはよく意味の分からないことを話すなど不可解な言動を取るとのこと。東京地方検察庁は専門家による精神鑑定を行って、刑事責任が問えるかどうか判断すべく裁判所に近々「鑑定留置」請求するとのことです。
こうした報道がなされると、少なくとも日本国内で今回の事件に関心を持つ人は、「精神状態が正常でない状態の人による犯行だったのか」と納得しやすい状況が生まれるように思われます。
が同時に、4月17日時点でざっくりとインターネットで検索する限り、この報道はもっぱら日本語で日本国内向けになされており、国際的には3月14日頃の時点での「容疑者逮捕を伝える、例えばニューヨーク・タイムズの一報などで止まっているように見えます。
少なくとも逮捕時点では、なぜ容疑者が「アンネの日記」を損壊したか、その動機は不明とされており、国際社会はもっぱら「日本では<アンネの日記>の損壊があった」「現在の日本は図書館に置かれている<アンネの日記>が壊されるような国なんだ」という印象までが、一定広範に伝えられたままの状態になっている。
この落差を意識する必要があると思うのです。
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