きりん座 (きりんざ、Camelopardalis)は現代の88星座 の1つ。17世紀 に考案された新しい星座 で、キリン をモチーフとしている[ 1] [ 6] 。天の北極 の近くに位置しているため、日本では年間通して見ることができる。16世紀以降に考案された星座の中では最も面積が大きな星座[ 4] だが、星座が置かれていない領域に作られたため、明るい星もなく目立たない星座である。
2022年 4月現在、国際天文学連合 (IAU) によって2個の恒星に固有名が認証されている[ 7] 。
そのほか、以下の恒星が知られている。
19世紀イギリスの星座カード集『ウラニアの鏡 』に描かれたきりん座。 1612年 に、オランダ の神学者 で天文学者 のペトルス・プランシウス が自作の天球儀 に「Camelopardalis 」としてキリンの姿を描いたことに始まる[ 6] 。この名前は、ヘレニズム期 にコイネー でキリンを表すのに使われた、キリンの長い首をラクダ に、斑点模様をヒョウ に喩えた合成語「καμηλοπάρδαλις」に起源を持つ[ 6] 。Camelopardalisは、καμηλοπάρδαλιςをラテン語化したもので、マルクス・テレンティウス・ウァッロ や大プリニウス もキリンを表すのにこの表現を使っていた[ 19] 。
ドイツ の天文学者ヤコブス・バルチウス が1624年 [ 注 1] に出版した天文書『Usus astronomicus planisphaerii stellati』の中で「Camelopardalis」を紹介していた[ 21] ことから、誤ってバルチウスが作った星座と紹介されることもあった[ 22] 。当のバルチウスは、1621年にアイザック・ハプレヒト2世 (英語版 ) が作った星座であると思い違いしていた[ 6] 。また、バルチウスはこの Camelopardalis のモチーフをラクダと勘違いしており、「旧約聖書 の創世記 でリベカ がイサク の元へ嫁ぐエピソードに登場するラクダ を記念したもの」と誤解に基づいた説明を残している[ 6] [ 21] 。
プランシウスやバルチウスは現代と同じく「Camelopardalis」と綴ったが、のちの17世紀 ポーランド の天文学者ヨハネス・ヘヴェリウス や19世紀 ドイツの天文学者ヨハン・ボーデ が「Camelopardalus」と綴ったため、表記に混乱が生じていた。この混乱は、1908年にアメリカ の天文学者エドワード・ピッカリング によって「「コイネーや古典ラテン語 での表記」「動物学者 に使われる表記」「天文学者が最も良く使う表記」の3つの観点から「Camelopardalis」が最も相応しい」とする研究結果が発表された[ 19] ことによって決着がつけられた[ 6] 。
イギリス生まれの天文学者リチャード・アンソニー・プロクター (英語版 ) は、この星座をラクダを意味する「Camelus」と呼ぶことを提唱したが、追随する者も少なく廃れた[ 20] [ 22] [ 23] 。また、アメリカの学者ウィリアム・クロスウェルは、カシオペヤ座 との境界に近いこの星座の領域に自らが考案した「モモンガ座 (Sciurus Volans)」を配したが、のちに取り上げる者もおらず廃れている[ 24] 。
1922年 5月にローマ で開催されたIAUの設立総会で現行の88星座が定められた際にそのうちの1つとして選定され、星座名はCamelopardalis 、略称はCam と正式に定められた[ 25] 。新しい星座のため星座にまつわる神話や伝承はない。
中国の天文では、きりん座の星は「三垣 」の1つ「紫微垣 」に配されていた。きりん座には明るい星がなく、バイエル符号もフラムスティード番号も振られていない暗い星が多いが、そのような星も数多く星官に配されている。天の北極 近くの星官「北極」の星「天枢」にはHD 112028が充てられていた。北極の隣の星官「四輔」にはHD 89571とHD 90089が配された。星官「右垣」の星「上衛」に43番星、「少衛」にα星、「上丞」にHD 20336が充てられた。星官「六甲」には、HD 46588、HD 49878、HD 64486、HD 55966、HD 33564の5星が充てられた。星官「五帝内座」にはカシオペヤ座 、ケフェウス座 の星とともにHD 25274が配された。星官「杠」には、γ星とカシオペヤ座の8星が充てられた。星官「八穀」にはぎょしゃ座 の星とともに26・14・11・31の4星が配された。星官「伝舎」にはカシオペヤ座の6星とともにCS星、CE星、HD 21447の3星が充てられた[ 6] [ 26] 。
日本では明治末期には「麒麟 」という訳語が充てられていた。これは、1910年 (明治43年)2月に刊行された日本天文学会 の会誌『天文月報』の第2巻11号に掲載された、星座の訳名が改訂されたことを伝える「星座名」という記事で確認できる[ 27] 。この訳名は、1925年 (大正14年)に初版が刊行された『理科年表 』にも「麒麟(きりん) 」として引き継がれ[ 28] 、1944年 (昭和19年)に学術研究会議 によって天文学用語が改訂された際もこの呼称が継続して採用された[ 29] 。戦後の1952年 (昭和27年)7月に日本天文学会が「星座名はひらがなまたはカタカナで表記する」[ 30] とした際に、Camelopardalis の日本語の学名は「きりん 」と改められた[ 31] 。これ以降は「きりん」が星座名として継続して用いられている。
現代の中国では「鹿豹座 」と呼ばれている[ 32] 。なお、中国ではいっかくじゅう座 を「麒麟座」と呼んでいる[ 32] 。
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