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ISO 15919

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ISO 15919 「デーバナーガリー及び関連インド文字のラテン文字への翻字」は、2001年に制定された、インドブラーフミー系文字ラテン・アルファベット翻字するためのISO規格である。

デーヴァナーガリーの翻字標準としてはIASTが存在するが、IASTはあくまでサンスクリットを対象としており、ヴェーダ語プラークリット、および現代語に対応していない。ISO 15919はIASTに類似しているが、サンスクリット以外の表記、およびデーヴァナーガリーと関係ある諸表記体系に対応している。

対象となる表記体系

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ISO 15919は、インドネパールバングラデシュスリランカで使われる以下の10種類の文字体系を対象とする。Unicodeではこれらの文字は基本多言語面のU+0900からU+0DFFまでに連続的に領域が取られている[1]

対象外のブラーフミー系文字でもおおむね同じ翻字方式を用いることが可能である[2]

オプション

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ISO 15919では5つのオプションが選べる[3]

  • ダイアクリティカルマークを使うか、ASCIIの7ビットのみで翻字するか。
  • 鼻音の翻字方式。アヌスヴァーラを実際の音を表す文字に変換し(例:「संग」を「saṁga」でなく「saṅga」と翻字する。マラヤーラム文字の語末のアヌスヴァーラは「m」に翻字する)、鼻母音は ã のように母音にチルダを加える方式(strict nasalization)と、変換しない方式(simplified nasalization)のどちらを用いるか。
  • 長い e o の上にマクロンをつけるかどうか。伝統的に e o は常に長母音なので、IAST ではマクロンを加えない。ISO 15919では同様の方式(non-uniform vowel)と、長母音を ē ō のように翻字する方式(uniform vowel)が選べる。ただし、ドラヴィダ系諸文字とシンハラ文字では e o の長短が区別されるので、長い e o は常に ē ō と書かれる。
  • デーヴァナーガリーによるネパール語翻字で、「まつげのr」を「」とするか、「r」とするか。
  • マラヤーラム文字で、「ṟṟa, nṟa」をそのまま翻字するか、「ṯṯa, nṯa」に直すか。

IAST との互換性

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ISO 15919は IAST に対しておおむね上位互換になっているが、一部の文字については異なる翻字がなされる。オプションで選べる e o の表記方法のほかに、以下のような違いがある。

デーヴァナーガリーIASTISO 15919
r̥̄
l̥̄
अंaṃaṁ

一覧表

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基本デーヴァナーガリー

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aāiīuūr̥̄l̥̄
अंअँअः
e/ē[4]aio/ō[4]auaṁ[5]am̐[5]aḥ
kakhagaghaṅacachajajhaña
ṭaṭhaḍaḍhaṇatathadadhana
paphababhamayaralava
śaṣasaha

拡張デーヴァナーガリー

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क़ख़ग़ज़ड़ढ़फ़
ê[6]ô[6][7][8]ḷaqak͟haġazaṛaṛhafa
  • マラーティー語・ネパール語で使う「まつげのr」は「」と翻字する(例:र्य rya :ऱ्यr̆ya)。ただしネパール語の場合にはオプションで単なる「r」に翻字することができる。

デーヴァナーガリー以外

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デーヴァナーガリーとの対応が明らかな文字については省略する。

ベンガル文字の「য়」は「ẏa」と翻字する。

アッサム文字の「」は「ra」、「」は「wa」と翻字する。

グルムキー文字の重子音記号は子音字の1字目を重ねる。2種類のアヌスヴァーラのうち、ビンディは、ティッピーはと翻字する。

オリヤー文字の「」は「ẏa」、「」は「wa」と翻字する。

タミル文字・テルグ文字・カンナダ文字・マラヤーラム文字・シンハラ文字では e o の長短は区別される。短母音を e o、長母音を ē ō で表す。

タミル文字・テルグ文字・カンナダ文字・マラヤーラム文字に固有の子音字は以下のように翻字される。シンハラ文字でタミル語が記されている場合にも同様に翻字する。

翻字ṉaṟa/ṯa[10]ḻaḷa
タミル
テルグ
カンナダ
マラヤーラム

タミル文字の「」は「」と翻字する。

テルグ文字の「」は「ĉa」、「」は「za」と翻字される。「అఁ」は「an̆」と翻字する。

マラヤーラム文字のヴィラーマは「ŭ」と翻字する。

シンハラ文字に固有の文字は以下のように翻字する。

æǣn̆gan̆jan̆ḍan̆dam̆ba

アラビア・ペルシア文字の翻字

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アラビア・ペルシア文字の子音字のうち、基本デーヴァナーガリーに対応する音のない15字についてはインド系の文字ではさまざまに表記されるが、それらの文字は以下のように翻字される[11]。実際には「k͟h z ġ f q w」以外は滅多に使われない。

ثحخذزژصضطظعغفقو
k͟hzžżʻġfqw

ASCII 翻字

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ASCIIのみを使用する場合、ダイアクリティカルマークは以下のように変換する[12]

その他

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例えば「au」が「」の翻字でなく、「a」と「u」に分かれる場合は、間にコロンをはさんで「a:u」のように記す[13]

原文が分かち書きしていない場合、子音で終わる語の後ろにスペースを入れることが推奨される[3]

数字は算用数字に翻字する。

脚注

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  1. ^ISO 15919:2001 p.1
  2. ^ISO 15919:2001 p.19
  3. ^abISO 15919:2001 p.18
  4. ^ab母音オプションによる
  5. ^ab厳密な鼻音オプションでは環境によって異なる翻字がなされる
  6. ^ab英語からの借用語に使用
  7. ^[x] (jihvāmūlīya)
  8. ^[ɸ] (upadhmānīya)
  9. ^ISO 15919:2001 pp.17-18
  10. ^マラヤーラム文字で、「ṟṟa, nṟa」を「ṯṯa, nṯa」と翻字するオプションがある
  11. ^ISO 15919:2001 Annex C (normative) および Annex D (informative)
  12. ^ISO 15919:2001 Annex B (normative) および Annex C (normative) に一覧あり
  13. ^ISO 15919:2001 p.17

関連項目

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外部リンク

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ISO標準
国際標準一覧 · ローマ字表記国際規格一覧 · 国際電気標準会議が定める国際標準一覧
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