2手目3二飛(にてめ さんに ひ)は将棋の戦法の一つ。三間飛車の後手番が用いる指し方で、先手の初手▲7六歩に対して△3二飛と飛車を振る。
△持ち駒 なし | 9 | 8 | 7 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 | | | 香 | 桂 | 銀 | 金 | 王 | 金 | 銀 | 桂 | 香 | 一 | | | | | | | | 飛 | 角 | | 二 | | 歩 | 歩 | 歩 | 歩 | 歩 | 歩 | 歩 | 歩 | 歩 | 三 | | | | | | | | | | | 四 | | | | | | | | | | | 五 | | | | 歩 | | | | | | | 六 | | 歩 | 歩 | | 歩 | 歩 | 歩 | 歩 | 歩 | 歩 | 七 | | | 角 | | | | | | 飛 | | 八 | | 香 | 桂 | 銀 | 金 | 玉 | 金 | 銀 | 桂 | 香 | 九 |
▲持ち駒 なし 図1 2手目△3二飛の基本形 | △持ち駒 角 | 9 | 8 | 7 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 | | | 香 | 桂 | 銀 | 金 | | 金 | | 桂 | 香 | 一 | | | | | 王 | | | 飛 | 銀 | | 二 | | 歩 | 歩 | 歩 | 歩 | 歩 | 歩 | | 歩 | 歩 | 三 | | | | | | | | 歩 | | | 四 | | | | | 角 | | | | 歩 | | 五 | | | | 歩 | | | | | | | 六 | | 歩 | 歩 | | 歩 | 歩 | 歩 | 歩 | | 歩 | 七 | | | | | | | | | 飛 | | 八 | | 香 | 桂 | 銀 | 金 | 玉 | 金 | 銀 | 桂 | 香 | 九 |
▲持ち駒 なし 図2 2手目△3二飛戦法の進行例 |
先手が初手▲7六歩とした後、後手が石田流を目指した場合、従来は2手目で△3四歩とし、以降▲2六歩、△3五歩と進むが、研究が進んだ結果後手が作戦負けをすることが多かった[1]。そこで後手が2手目で3筋に飛車を振り石田流を目指す指し方が創案された(図1)。以降、▲2六歩、△6二玉、▲2五歩、△3四歩と進む。その局面で先手は▲2二角成△同銀の角交換から▲6五角と打ち(図2)馬を作ることが可能であり、従来はそれで後手不利とされていたが[2]、研究の結果、後手も指せることが分かり、2手目3二飛が新たな指し方としてプロに注目されることとなった。
先手側の対策としては3手目に▲9六歩と突くというものがあり[3]、△9四歩との交換は後手少し苦しいとの判断が定説である[4]。後手としては先手に▲9五歩と位を取らせることを許す展開となる。また、3手目に▲7七角と指し、相振り飛車を目指す対策もある。久保利明によると、2011年の時点で「先手が簡単によくなる順はない」という[5]。
佐藤康光は、2手目3二飛は「論理的に不可能だと思っていた」と発言している[7]。森内俊之は「コロンブスの卵的な大きな発見」と評している[7]。
藤井猛は「実はこの手は昔研究したことがある。」と発言している[17]。藤井は△3二飛に▲2六歩△6二玉▲2五歩△3四歩に▲4八銀△7二玉▲6八玉△3五歩となり石田流となるなら有力としているが、先手が初手▲2六歩とされると指せないとしている。
『イメージと読みの将棋観』ではこの他、谷川浩司は研究会で久保利明に指されたことがあり、そのときは△3二飛に▲2六歩△6二玉▲2五歩△3四歩に▲2二角成△同銀▲6五角△7四角▲4三角成△4七角成となり、結局は後手を手をとがめられずに馬をつくりあって囲い合いになったとし、こうして収まってしまえば先手不満という気と、ほかの公式戦もみて、感心したという。渡辺明は石田流に組ませても一局の将棋で、居飛車が角道を止める必要がないのでその1手を指さなくてすむとするが、△3二飛に▲2六歩△6二玉▲2五歩△3四歩のときに▲2二角成△同銀▲6五角△7四角▲4三角成△4七角成▲5八金右△7四馬を決行するかどうかは結構悩むといい、藤井猛もこの順で意外と難しい将棋としている。また2008年の王位戦で羽生善治が実際に採用し、2008年8月までにプロ公式戦での採用数13局のうち後手の5勝7敗1千日手という結果になっているとしている。
- ^後手の角道が開いていても、角飛車交換は先手有利の順に進む。
- ^後手からの△8六歩▲同歩△同飛の仕掛けは、▲7八金で2つの大駒に複数の紐がついた先手有利(他局での土佐の解説、2020年11月12日)
- ^門倉自身は「8五桂ポン」と呼んでいる(「将棋世界」実戦譜の解説)。名称の似た居飛車のポンポン桂とは跳ねる方向、タイミングや狙いが異なる。
- ^門倉が監修の「えとたま」第9話「花鳥歩月(かちょうふげつ)」にも本戦法の描写がある。
- ^『佐藤康光の石田流破り』12頁 - 24頁
- ^『久保の石田流』164頁
- ^『2手目の革新 3二飛車戦法』62頁
- ^『久保の石田流』174頁
- ^『久保の石田流』184頁
- ^『先崎学のすぐわかる現代将棋』128頁
- ^abc『イメージと読みの将棋観』24頁
- ^『2手目の革新 3二飛車戦法』94頁
- ^将棋世界2008年4月号
- ^2018.5.29・第31期竜王戦1組 5位決定戦・対糸谷哲郎
- ^2015.4.7・第28期竜王戦6組昇級者決定戦・対所司和晴
- ^2017.3.14・第75期順位戦 C級1組 最終戦・対永瀬拓矢
- ^2017.9.1・第67期王将戦 二次予選 1回戦・対斎藤慎太郎
- ^2017.10.2・第59期王位戦 予選トーナメント「携帯中継」コメント
- ^2018.1.25・第31期竜王戦 5組 ランキング戦
- ^2019.1.18・第77期順位戦B級2組 8回戦
- ^『イメージと読みの将棋観』25頁
- ^2019.2.24~25・第68期王将戦 七番勝負第4局
- ^日本将棋連盟・携帯中継(2018.1.24)鈴木大介対深浦康市・観戦記者コメント
- ^2015年4月7日・解説コメント
- ^2017年4月12日新人王戦・阿部光瑠戦の携帯中継では、「山本三段は、奨励会の三段リーグでの採用もある」旨がコメントされている。
- ^2017.2.25・第65期竜王戦 二次予選・対千田翔太
- ^2017.8.22・第11回 一次予選・対藤井聡太
- ^2017.6.27・第89期 一次予選・対今泉健司
- ^第7期加古川青流戦・携帯中継(2017.8.29)
- ^2017.12.22・第31期竜王戦 6組 ランキング戦 1回戦・対藤原結樹アマ
- ^2021.8.3・第63期王位戦 予選 3回戦・対高田明浩
- ^2018.12.14・第32期竜王戦 6組 ランキング戦
- ^2018.5.4・第31期竜王戦 4組 ランキング戦
- ^2017.7.23放送・第67回 NHK杯戦 1回戦第17局・対阿久津主税
- ^2018.6.15・第90期棋聖戦 一次予選 2回戦・対山本真也ほか
- ^2019.1.14・第32期竜王戦 6組 ランキング戦
- ^2019.1.15・第50期新人王戦 本戦 2回戦
- ^2020.6.30・第92期棋聖戦 一次予選 2回戦・対渡辺和史(他に長谷部浩平、青嶋未来など)
- ^2021.5.14・第34期竜王戦 5組 残留決定戦・対上村亘戦(携帯中継の解説・飯島栄治)