高級住宅街(こうきゅうじゅうたくがい、英語:upscale neighborhood)とは、一般的に高額な住宅(邸宅・豪邸)が集中的に分布していることを特徴とする特定の都市の地域のことである。
お屋敷町(おやしきまち)、邸宅街(ていたくがい)とも呼ばれる。
その定義は主観的なものであり、要件は国や地域によって異なるが、不動産の鑑定評価等において大きなブランド力を保持していることも事実である。
定義は多分に曖昧かつ主観的であり、下記の要件についても国や地域・時代によっても認識は多様である。
日本においては、国土交通省の「不動産鑑定評価基準運用上の留意事項」では、「住宅地域」を①~④の4つに細分化し、①を「敷地が広く、街区及び画地が整然とし、植生と眺望、景観等が優れ、建築の施工の質の高い建物が連たんし、良好な近隣環境を形成する等居住環境の極めて良好な従来から名声の高い地域」と定義する[1]。これを「高級住宅地域」とする理解が見られる[2]。
固定資産評価においては、「敷地が広大で、かつ、平均的にみて、一般住宅よりも多額の建築費を要する住宅の宅地が連続集中している地区」が「高級住宅地区」と定義されている[3][4]。
立ち並ぶ建物が共同住宅か一戸建てかといった形態で高級住宅街を定義できるものではないが、高層マンション群は、その独自の景観や居住環境から、高級住宅街として定義されないこともある[5]。この問題からしばしば伝統富裕層と新興富裕層の対立構造がメディアなどによって描かれる場合もある[5]。
高級別荘地は、住宅の用途・目的の違い(「日常生活のための利用」か「余暇のための利用」かの違い)を除けば、高級住宅街とほぼ同義である。実際、時代とともに高級別荘地から高級住宅街へと変容した地域も多い。別荘地でありながら移住者がいる場合もある。また高級別荘地は、日常生活を送る上で必須ではないレジャー施設である別荘にまで多額の費用を投じることができるほどの財力がある個人や法人のコミュニティであるため、潜在的に莫大な資金力を保有していると考えられている。伝統的な避暑地やサマーリゾートでは「夏になると首都が移転してくる」といった比喩が生まれるほど、高級別荘地は高級住宅街との人的往来も顕著に見られる。一方で「高級」とはいえ、都市化している住宅街とは異なり、別荘地の多くは、森林や海浜などの自然が周囲に広がる田舎や地方にあることも大きな特徴である。例として日本では、軽井沢[6]、日光中禅寺湖畔[7]、京都南禅寺界隈[8]、ニセコ[9]等が高級別荘地として知られる。その他世界の有名な別荘地については、別荘#世界の有名な別荘地を参照。


ロンドン中心部のメイフェア地区(シティ・オブ・ウェストミンスター)、ベルグレイヴィア地区(シティ・オブ・ウェストミンスター及びケンジントン&チェルシー区)などが最高級住宅地とされているが、サウス・ケンジントン地区やチェルシー地区(ケンジントン&チェルシー区)、リンカーンズ・イン・フィールズ界隈やプリムローズ・ヒル地区(カムデン区)なども知られている。なお、ロンドン市内の高級住宅街の殆どが高級アパートメントである。反対に、上記の地域やシティから東側一帯のイーストエンド地区は、スラムなど歴史的な貧困地区とされた。
イギリスの他の地域の例としては、スコットランドのエディンバラにある、マーチモント (en)、ブランツフィールド (en)、カムリー・バンク (en)、ジョッパ (en) の各地区が知られている。
ベルリン南西部のツェーレンドルフ地区 (en) 等が位置するシュテーグリッツ=ツェーレンドルフ区内が高級住宅地とされているが、隣接するグリューネバルド地区 (en,シャルロッテンブルク=ヴィルマースドルフ区) も知られている。
また、デュッセルドルフ近郊メアブッシュ (en) には裕福な住人が多く、1人当たりの納税額が例年ドイツ国内で1位である。緑が多く落ち着いた街並みとなっている。メアブッシュ市内のビューダリッヒ地区 (de) には高級住宅街が2ヶ所あり、そこにはプールが付いた大きな庭のある豪邸が多く立ち並んでいる。デュッセルドルフから西に約10kmの位置にある。

パリの行政区は同心円を形成するように番号が付けられており、その多くに17世紀と18世紀に建てられた歴史的な邸宅があり、一部はフランス政府が所有している[10]。パリ中心部のサン=ルイ島(4区)は高級住宅街とされているが、元々スペースが狭いパリ市街の中でも、更に狭い島でしかない。それは“貴族街”とも呼ばれるアンヴァリッド地区やフォーブール・サンジェルマン界隈(7区)でも事情は変わらず、旧貴族や富豪らが暮らすスペースとしてパッシー界隈(16区)が発展したように、高級化の波はパリ市街西部に拡がっていった歴史を持つ。これらの他に、サンジェルマン・デ・プレ地区(6区)、シャンゼリゼ通り周辺やフォーブール・サントノレ界隈(8区)等が知られている。
フランスの場合、英米圏などと異なり、大都市の都心部やかつての城壁に囲まれた地域が一般的に高級住宅街とされているが、例外として挙げれば、パリ近郊だとヌイイ=シュル=セーヌが隣接する16区と並ぶグレードの高さで知られている。パリ16区(パッシー、オートゥイユ)からヌイイまでまとめて (Neuilly-Auteuil-Passy)、"NAP"(ナップ、en,fr)と呼称されている。

なお、高級住宅地ないし高級リゾート地としては、モナコも包含する南フランス(南仏)のコート・ダジュールが世界的に有名である。コート・ダジュールの中心都市ニースではシミエ地区があげられる[12]。

ポルトガルポルトガルなどルゾフォニアではそのようなタイプの命名法はない[13]。ただし経済的に豊かな人口密集地がある都市の場合、例えばリスボンであれば、ラパ、エストレラ、パルケ・ダスナッソエス、プリンチペレアルとシアードなどいくつかみられる。

ウクライナ。
ロシア。ロシアでは、共産主義政府とソ連の崩壊後、高貴な地域の現象がより一般的になった。これらの地域で最もよく知られているのはルブリオフカである。事実上、ルブリオフカは公式の地区ではなく: ジュコフカ、バルビカ、ゴーリキー2、ゴーリキー-10、セレブリアニーボルなどのゲーテッドコミュニティで構成されている。18世紀の終わりに、16の王子一族と5人のコンダル一族がそこに住んでいた。しかし、ヨシフ・スターリンのダーチャのおかげで、近所は1910年代に自分自身を崇拝した。その後まもなく、ソ連の政治家と知性のメンバーは、近所に彼らのダーチャを建てた。2000年代以降、この地域は政治エリートのメンバーの拠点の一つである(その中には、ドミートリー・メドヴェージェフ[14]、ウラジーミル・プーチン[15]、ミハイル・ゴルバチョフ、ロシアのオリガルヒ、モスクワの有名人がいる)。ルブリオフカの地価は、今日、モスクワ州とすべてのポストソビエト諸国の中で最も高価である。Forbesによると、ここに位置する邸宅の1つは、世界で最も高価な5つのプロパティのリストに含まれている[16]。
ウクライナに関する限り、キエフの南にコンシャ・ザスパがある。他の高貴な地域のように、コンシャ・ザスパは徐々にそして効果的に高潔になった。近隣は閉鎖されたマンションで構成されており、高速道路の左側が最も価値があると考えられている。コンシャ・ザスパは、その高価な地形と金持ちの住民、公人、政治家、政治家でウクライナで有名である[17]。
広大な国土を持つアメリカにおいては大半の場合、高級住宅街は都心部から十数キロメートル以上離れた郊外に存在する。



東海岸を見ると、ニューヨーク都市圏では、ウエストチェスター、ニュージャージー州のアルパイン、コネチカット州などが知られている。
西海岸をみると、サンフランシスコを中心とするサンフランシスコ・ベイエリア都市圏では、サンフランシスコ市の緑豊かなプレシディオ地区、スタイリッシュな店が軒を並べるパシフィックハイツ地区、ゴールデンゲートブリッジ対岸のサウサリート、またサンフランシスコ・オークランド・ベイブリッジ対岸の大学都市であるバークレーの背後に広がる丘陵地帯バークレー・ヒルズ、その尾根づたいのケンジントン市やオークランドのクレアモント地区などがサンフランシスコ湾を見渡す好立地条件にあり一般的に高級住宅街として知られている。ロサンゼルス都市圏では、ビバリーヒルズ、ベルエア、パサデナ、サンタモニカ等が知られている。マリブの他[19]、カラバサス[注 1]は"ハリウッドセレブ"の住む高級住宅街として映画にも登場する[20]。その他、ハワイ州オアフ島のカハラなども中心部から離れた場所にある。
ニューヨークの中心部であるマンハッタンには一戸建てがほとんど無く、数少ない例外であるがアッパー・イースト・サイドにはタウンハウスが存在し数十億円で取引されている。高級アパートメントが立ち並び治安や環境の良い地域はアッパー・イースト・サイドが代表的である。北東部に位置するマサチューセッツ州ボストンのビーコンヒルも数少ない例外の1つであり、一戸建てが非常に少ない。
概して経済力による住み分けの激しいアメリカは「豪邸が立ち並んでいるから高級住宅街」というわけではなく「どのような人(人種や職業など)が住んでいるか」が重要となる。事実、その国土の広さがもたらす地価の安さ及び人口密度の低さ故、立地次第では中流階級でも巨大な土地にプール付きの邸宅を構えることも可能である(日本の住宅と比べれば大半の一戸建てが「豪邸」と呼ぶに相応しいサイズである)。
日本の都市はオフィス街と住宅街が隣接していることも多いが、アメリカにおいてはその区別は非常に明確で、殆どの都市において一定以上の経済力を持つ富裕層で家族をもつ世帯は、概して郊外への移住を好む。主な理由として緑が多く閑静で好環境であること、貧困層が少ないため治安が良いこと、サイズの大きな家に住めること、などがある。デメリットとしては都心部への通勤時間が長くなることがあるが、アメリカの労働環境やアメリカ人富裕層の住宅事情を鑑みた場合、メリットがデメリットを凌いでいる。またこれらの郊外高級住宅街のいくつかは「ゲーテッド・コミュニティ」と呼ばれ、周辺を監視カメラなどを装備した塀で覆い、出入り口には警備員を常駐させたゲートを構えるなどして内部の治安を保つようにされている。
このように、「レジデンシャル・セグレゲーション」と呼ばれるアメリカの経済格差による住み分けは激しく、ニューヨーク都市圏などの一部の例外(なおニューヨーク都市圏にも、上述の郊外のウエストチェスターにスカースデールやハーツデールなどの高級住宅街がある)を除けば「郊外=富裕層 都心=貧困層」と考えても概ね差し支えない。例えば郊外で生活する為には車の購入は必須であり、賃貸住宅も少ない(アパートメントはほぼ皆無)ため必然的にローンを組める信頼度が必要なことなど「郊外族」にはそれ相当の収入が必要となる一方、都心部の場合公共交通機関が安価で利用でき、尚且つ賃貸住宅(主にアパートメント)に入居するので審査が軽い。もちろん多くの大都市の都心部にも富裕層は在住しているが全体的な比率や人口動性を見た場合、郊外の住宅街へと移り住むことがはるかに多い。

カナダ西部太平洋岸のブリティッシュコロンビア州、バンクーバー市を中心とするバンクーバー都市圏では、ダウンタウンの郊外北西に位置するウェストバンクーバー市南部が、大富豪の巨大邸宅が連なるエリアとして知られている。

メキシコ。メキシコでは、サン・アンヘル、ロマス・デ・チャプルテペック、ポランコ、ハルディネス・デル・ペドレガルなどの例がある。
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古くから外国人が居住した台北市の士林区天母が高級な住宅街の雰囲気を醸し出しているとして有名[61]。
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