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角運動量

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(2011年10月)
角運動量
angular momentum

フィギュアスケートのY字スピン。腕を下げると回転速度が落ちる。腕の幅×回転速度が角運動量で、それは保存する
量記号L
次元ML2T−1
種類擬ベクトル
SI単位ニュートンメートル秒 (N·m·s)
プランク単位有理化されたプランク定数 (ℏ)
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古典力学
歴史英語版
分野

静力学  · 動力学 / 物理学における動力学  · 運動学  · 応用力学  · 天体力学  · 連続体力学  · 統計力学

定式化
基本概念

空間 · 時間 · 速度 · 速さ · 質量 · 加速度 · 重力 ·  · 力積 · トルク /モーメント /偶力 · 運動量 · 角運動量 · 慣性 · 慣性モーメント · 基準系 · エネルギー · 運動エネルギー · 位置エネルギー · 仕事 · 仮想仕事 · ダランベールの原理

主要項目

剛体 · 運動 · ニュートン力学 · 万有引力 · 運動方程式 · 慣性系 · 非慣性系 · 回転座標系 · 慣性力 · 平面粒子運動力学 · 変位 · 相対速度 · 摩擦 · 単振動 · 調和振動子 · 短周期振動 · 減衰 · 減衰比 · 自転 · 回転 · 円運動 · 非等速円運動 · 向心力 · 遠心力 · 遠心力 (回転座標系) · 反応遠心力 · コリオリの力 · 振り子 · 回転速度 · 角加速度 · 角速度 · 角周波数 · 偏位角度

科学者

ニュートン · ケプラー · ホロックス · オイラー · ダランベール · クレロー · ラグランジュ · ラプラス · ハミルトン · ポアソン

角運動量(かくうんどうりょう、英語:angular momentum)とは、運動量モーメントを表す力学の概念である。

定義

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位置r において、運動量p を持つ質点の原点まわりの角運動量L

Lr×p{\displaystyle {\boldsymbol {L}}\equiv {\boldsymbol {r}}\times {\boldsymbol {p}}}

で定義される[注釈 1]。ここで、× は外積である。従って、角運動量の大きさL

L=rpsinθ{\displaystyle L=rp\,\sin \theta }

と表される。ここで、θrp のなす角を、r, p はそれぞれr,p の大きさを表す。

質点が質量m、速度v のとき、運動量はp =mv であり、角運動量は

L=r×mv=mr×v{\displaystyle {\boldsymbol {L}}={\boldsymbol {r}}\times m{\boldsymbol {v}}=m{\boldsymbol {r}}\times {\boldsymbol {v}}}

となる。

また、角速度ω のとき、角運動量は

L=Iω{\displaystyle {\boldsymbol {L}}=I{\boldsymbol {\omega }}}

と表すことができる。ここでI慣性テンソルである。

座標原点の移動

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角運動量は、その定義から座標原点の選択に依存する。原点を位置a へ移動した座標系を考える。新たな座標系における量を ' を付けて表すものとすれば、r' =ra,p' =p であり

L=r×p=r×pa×p=La×p{\displaystyle {\boldsymbol {L}}'={\boldsymbol {r}}'\times {\boldsymbol {p}}'={\boldsymbol {r}}\times {\boldsymbol {p}}-{\boldsymbol {a}}\times {\boldsymbol {p}}={\boldsymbol {L}}-{\boldsymbol {a}}\times {\boldsymbol {p}}}

となる.

→「ガリレイ変換」および「回転座標系」も参照

運動方程式

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質点の角運動量の時間変化は

dLdt=r×dpdt+drdt×p{\displaystyle {\frac {d{\boldsymbol {L}}}{dt}}={\boldsymbol {r}}\times {\frac {d{\boldsymbol {p}}}{dt}}+{\frac {d{\boldsymbol {r}}}{dt}}\times {\boldsymbol {p}}}

となる。ここで、ニュートンの運動方程式dp/dt =F を用いれば、第一項は力のモーメントN =r×F となる。また、第二項は(dr/dtp =mv×v =0 となる。したがって、角運動量はニュートンの運動方程式と同様なオイラーの運動方程式

dLdt=N{\displaystyle {\frac {d{\boldsymbol {L}}}{dt}}={\boldsymbol {N}}}

を満たす。

力のモーメントはその定義から座標原点の選択に依存する。しかし、座標原点の移動による力のモーメントの変化と角運動量の変化が相殺され、運動方程式は常に成り立つ。

角運動量の保存

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→詳細は「角運動量保存の法則」を参照

力のモーメントが 0 であるとき、角運動量は時間とともに変化せず一定となる。このことを角運動量保存の法則(角運動量の保存則)という。力のモーメントが 0 となるのは、力が 0 であるか、力が位置ベクトルと平行であるときである。

力が作用していないときは等速直線運動となる。等速直線運動においては運動量と角運動量はともに保存する。これに対し等速円運動においては、運動量の大きさは一定であるが向きが時間により変化するため運動量は保存せず、角運動量のみが保存する。

力が位置ベクトルと平行であるときは

F(r)=f(r)r{\displaystyle {\boldsymbol {F}}({\boldsymbol {r}})=f(r)\,{\boldsymbol {r}}}

と表すことができる。この形の力は中心力と呼ばれる。

質点系の角運動量

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角運動量は加法的な量であり、系の全角運動量は、部分の角運動量の和であらわされる。質点系の全角運動量L は、質点i の角運動量をli とすれば

L=ili=iri×pi{\displaystyle {\boldsymbol {L}}=\sum _{i}{\boldsymbol {l}}_{i}=\sum _{i}{\boldsymbol {r}}_{i}\times {\boldsymbol {p}}_{i}}

である。質量中心rg に全質量M があると考えたときの角運動量は

Lg=Mrg×drgdt{\displaystyle {\boldsymbol {L}}_{\mathrm {g} }=M{\boldsymbol {r}}_{\mathrm {g} }\times {\frac {d{\boldsymbol {r}}_{\mathrm {g} }}{dt}}}

となる。全角運動量とLg の差は、質量中心からみた相対運動の角運動量とみなすことができる。

Lr=LLg{\displaystyle {\boldsymbol {L}}_{\mathrm {r} }={\boldsymbol {L}}-{\boldsymbol {L}}_{\mathrm {g} }}


質点i の角運動量の時間変化は、質点i に作用する力のモーメントNi =ri×Fi に等しく

dlidt=Ni=ri×Fi{\displaystyle {\frac {d{\boldsymbol {l}}_{i}}{dt}}={\boldsymbol {N}}_{i}={\boldsymbol {r}}_{i}\times {\boldsymbol {F}}_{i}}

を満たす。ここで質点i に作用する力Fi を、外力fi と、質点j が及ぼす内部相互作用fij に分ると、力のモーメントは

Ni=ri×(fi+jfij){\displaystyle {\boldsymbol {N}}_{i}={\boldsymbol {r}}_{i}\times ({\boldsymbol {f}}_{i}+\sum _{j}{\boldsymbol {f}}_{ij})}

と表される。全角運動量の時間変化を考えると

dLdt=idlidt=iri×fi+i,jri×fij{\displaystyle {\frac {d{\boldsymbol {L}}}{dt}}=\sum _{i}{\frac {d{\boldsymbol {l}}_{i}}{dt}}=\sum _{i}{\boldsymbol {r}}_{i}\times {\boldsymbol {f}}_{i}+\sum _{i,j}{\boldsymbol {r}}_{i}\times {\boldsymbol {f}}_{ij}}

となる。運動の第3法則からfji = −fij なので、内力のモーメントの和は

i,jri×fij=12i,j(ri×fijri×fji)=12i,j(rirj)×fij{\displaystyle \sum _{i,j}{\boldsymbol {r}}_{i}\times {\boldsymbol {f}}_{ij}={\frac {1}{2}}\sum _{i,j}({\boldsymbol {r}}_{i}\times {\boldsymbol {f}}_{ij}-{\boldsymbol {r}}_{i}\times {\boldsymbol {f}}_{ji})={\frac {1}{2}}\sum _{i,j}({\boldsymbol {r}}_{i}-{\boldsymbol {r}}_{j})\times {\boldsymbol {f}}_{ij}}

と変形できる。

ここで、内力が中心力であるならば、内力fij は質点i の質点j から見た相対位置rirj と平行で、内力のモーメントの和は 0 となる。このとき

dLdt=iri×fi{\displaystyle {\frac {d{\boldsymbol {L}}}{dt}}=\sum _{i}{\boldsymbol {r}}_{i}\times {\boldsymbol {f}}_{i}}

となり、質点系の全角運動量の時間変化は作用する外力のモーメントの総和と等しくなる。

回転運動と角運動量

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固定された回転軸をもつ系に対して、力を作用させた時の物理量の関係。力のモーメントτ と、位置r と力F との関係(上の式)、および角運動量L と位置r と運動量p との関係(下の式)。

角運動量は回転運動と深く関係している物理量である。ただし、角運動量自体は回転運動をしていなくとも定義される物理量である。

惑星間に働く万有引力は中心力であり、したがって、惑星の角運動量は保存される。保存則は、ケプラーの第2法則の「面積速度一定」と密接な関わりがある。時刻t における位置ベクトルr(t) と、微小な時間dt が経った後の位置ベクトルr(t +dt) が作る微小な三角形の面積は

dS=12r(t)×r(t+dt){\displaystyle d{\boldsymbol {S}}={\frac {1}{2}}{\boldsymbol {r}}(t)\times {\boldsymbol {r}}(t+dt)}

である。従って、面積速度は

dSdt=12r(t)×v(t)=12mL(t){\displaystyle {\frac {d{\boldsymbol {S}}}{dt}}={\frac {1}{2}}{\boldsymbol {r}}(t)\times {\boldsymbol {v}}(t)={\frac {1}{2m}}{\boldsymbol {L}}(t)}

となり、面積速度が一定ならば、角運動量も一定となる。

角速度

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角速度ω

ω=2r2dSdt=1r2r×v{\displaystyle {\boldsymbol {\omega }}={\frac {2}{r^{2}}}{\frac {d{\boldsymbol {S}}}{dt}}={\frac {1}{r^{2}}}{\boldsymbol {r}}\times {\boldsymbol {v}}}

と表される。従って、質点の慣性モーメント

I=mr2{\displaystyle I=mr^{2}}

となる。

原点を中心とした円運動をしている質点の速度v は次のように表される。

v=ω×r{\displaystyle {\boldsymbol {v}}={\boldsymbol {\omega }}\times {\boldsymbol {r}}}

量子力学での角運動量

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量子力学では、角運動量は以下の交換関係を満たす演算子J^{\displaystyle {\hat {\boldsymbol {J}}}} として定義される。

[J^x,J^y]=iJ^z, [J^y,J^z]=iJ^x, [J^z,J^x]=iJ^y{\displaystyle [{\hat {J}}_{x},{\hat {J}}_{y}]=i{\hat {J}}_{z},~[{\hat {J}}_{y},{\hat {J}}_{z}]=i{\hat {J}}_{x},~[{\hat {J}}_{z},{\hat {J}}_{x}]=i{\hat {J}}_{y}}

あるいは、3つの式をまとめて

[J^i,J^j]=iϵijkJ^k{\displaystyle [{\hat {J}}_{i},{\hat {J}}_{j}]=i\epsilon _{ijk}{\hat {J}}_{k}}

ϵijk{\displaystyle \epsilon _{ijk}}完全反対称テンソルである。これらの交換関係は角運動量代数と呼ばれる。

この角運動量の性質を調べると、

J^=L^+S^{\displaystyle {\hat {\boldsymbol {J}}}={\hat {\boldsymbol {L}}}+{\hat {\boldsymbol {S}}}}

の二つの部分に分けられ、それぞれが角運動量代数を満たす。

[L^i,L^j]=iϵijkL^k, [S^i,S^j]=iϵijkS^k, [L^i,S^j]=0{\displaystyle [{\hat {L}}_{i},{\hat {L}}_{j}]=i\epsilon _{ijk}{\hat {L}}_{k},~[{\hat {S}}_{i},{\hat {S}}_{j}]=i\epsilon _{ijk}{\hat {S}}_{k},~[{\hat {L}}_{i},{\hat {S}}_{j}]=0}

軌道角運動量L^{\displaystyle {\hat {\boldsymbol {L}}}} は、L^=r^×p^{\displaystyle {\hat {\boldsymbol {L}}}={\hat {\boldsymbol {r}}}\times {\hat {\boldsymbol {p}}}} のように位置と運動量の外積で表すことができ、その固有値が整数のみに限られる。

→詳細は「軌道角運動量」を参照

スピン角運動量S^{\displaystyle {\hat {\boldsymbol {S}}}} は、位置と運動量では表現することができず、その固有値が整数に加えて半整数も許される。

→詳細は「スピン角運動量」を参照

特殊相対性理論での角運動量

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特殊相対性理論においては二階テンソルLμν{\displaystyle L^{\mu \nu }}として定義される。

Lμν=2!x[μpν][0LzLycNxLz0LxcNyLyLx0cNzcNxcNzcNy0]{\displaystyle L^{\mu \nu }=2!x^{[\mu }p^{\nu ]}\rightarrow {\begin{bmatrix}0&L^{z}&-L^{y}&cN^{x}\\-L^{z}&0&L^{x}&cN^{y}\\L^{y}&-L^{x}&0&cN^{z}\\-cN^{x}&-cN^{z}&-cN^{y}&0\\\end{bmatrix}}}

ここで,四元位置xμ{\displaystyle x^{\mu }},四元運動量pμ{\displaystyle p^{\mu }},および質量モーメントN{\displaystyle {\boldsymbol {N}}}は次式で定義される。

(xμ)=(x, y, z, ct),(pμ)=(px, py, pz, E/c),N=m(rvt){\displaystyle {\begin{aligned}(x^{\mu })&=(x,~y,~z,~ct),\\(p^{\mu })&=(p_{x},~p_{y},~p_{z},~E/c),\\{\boldsymbol {N}}&=m({\boldsymbol {r}}-{\boldsymbol {v}}t)\end{aligned}}}


対称性との関係

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角運動量は空間の等方性(回転対称性)に対応する保存量である。空間の一様性(併進対称性)に対応する保存量である運動量、時間の一様性に対応する保存量であるエネルギーとともに、基本的な物理量である[1]。それぞれ「角運動量保存の法則」、「運動量保存の法則」、「エネルギー保存の法則」に関連づけられる。

→「ネーターの定理」および「ポアンカレ対称性」も参照

脚注

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[脚注の使い方]

注釈

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  1. ^通常、簡単のために回転中心を原点とする。回転中心が原点ではなく点roまわりの角運動量を求めたい場合、rを相対座標r-roに置き換える必要がある。

出典

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  1. ^ランダウ=リフシッツ物理学小教程

参考文献

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関連項目

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国立図書館
その他
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