株式会社IHI(アイ・エイチ・アイ、英:IHI Corporation)は、東京都江東区豊洲に本社を置く、重工業を主体とする日本の大手製造会社。
三菱重工業(MHI)・川崎重工業(KHI)と共に三大重工業の一角を成している。日経平均株価の構成銘柄の一つ[1]。
旧商号は石川島播磨重工業株式会社(いしかわじまはりまじゅうこうぎょう、英:Ishikawajima-Harima Heavy Industries Co., Ltd.)。石川島重工業と播磨造船所の合併以来「IHI」を略称とし[注釈 1]、2007年に商号をこの略称に変更した[3]。
概要
幕末以来160年を超える歴史があり、重機などの重工業において、日本を代表する企業の一つである。東京駅丸の内駅舎の鉄骨の建造(施工は大林組が担当し、1914年に開業)[4]、永野治による日本初のターボ・ジェットエンジン開発(1945年)、日本国内最大の大型海水淡水化装置建設(1967年)、東京湾アクアライン工事用シールド掘進機納入(1997年)、明石海峡大橋では風洞試験用100分の1模型の製作[5]に始まり、同橋梁の建設工事においてもケーソンやタワー(主塔)部材の製造を通して建設(1998年)に関わってきた[6]。
同社のトップは政財界でも様々な活動を行っている。最近では伊藤源嗣が日本経済団体連合会(日本経団連)の評議員会副議長を務めていた(就任時は社長、2003年~2007年)[7]。1980年代に中曽根康弘首相が進めた行政改革においては、その基本方針をまとめた第二次臨時行政調査会の会長を同社出身の土光敏夫が務め[8]、その主要政策として実行された日本電信電話公社の民営化では真藤恒が同公社の最後の総裁、及び日本電信電話(NTT)の初代社長としてその移行を実現させた。また、稲葉興作は1993年から2001年に日本商工会議所の会頭であった[9]。
元来独立系の企業だが、土光敏夫が三井グループの東京芝浦電気(現・東芝)の再建に関わって[8]以来、東芝と密接な関係にあり、三井グループを構成する二木会(社長会)・三井業際研究所(二木会直轄のシンクタンク)・綱町三井倶楽部(三井系の会員制クラブ)[10]及び月曜会(三井グループ各社の役員間の相互親睦と情報交換を目的とする会合)に加盟している[11]。一方、旧石川島重工業と旧・第一銀行とのつながりから、メインバンクはみずほ銀行であり、IHIは第一勧銀グループにも属している[12]。
2012年10月からコーポレートメッセージを「Realize your dreams」としている[13]。
沿革
石川島造船所 → 東京石川島造船所 → 石川島重工業
播磨船渠 → 播磨造船所
- 1907年(明治40年) - 播磨船渠株式会社設立(初代社長・小曽根貞松)[20]。兵庫県相生村(現在の相生市)に船渠建設開始。
- 1909年(明治42年) - 播磨船渠株式会社が解散。同年に起きた建設中の事故により船渠が崩壊し、出資者が事業意欲を失った事が原因とされる。
- 1911年(明治44年) - 播磨船渠合名会社を設立。旧社の事業を引き継ぐ。
- 1912年(明治45年) - 船渠完成。播磨造船株式会社に改組・商号変更。
- 1916年(大正5年) - (旧)株式会社播磨造船所に商号変更。
- 1918年(大正7年) - 帝国汽船株式会社と合併。鳥羽造船所と共に同社の造船部となる。
- 1921年(大正10年) - 帝国汽船造船部を株式会社神戸製鋼所に営業譲渡。神戸製鋼所造船部となる。
- 1929年(昭和4年) - (新)株式会社播磨造船所として神戸製鋼所から分離設立。この時、造船部傘下の鳥羽電機製作所(現・シンフォニア テクノロジー)は、神戸製鋼所に残る。
呉船渠・NBC呉造船部 → 呉造船所
石川島播磨重工業
IHI
事業拠点
主力工場は次の通り。
- 航空・宇宙事業[注釈 2]
- エネルギー・プラント事業
- その他の事業
主要製品
詳細は、同社ウェブサイト製品案内[26]を参照。
航空・宇宙
ジェットエンジン
航空の分野において、IHIはジェットエンジン製造を専業とし、日本国内初のターボ・ジェットエンジン「ネ20」は同社の製品である。日本国内におけるジェットエンジンのシェアは60%を超え、トップである。
日本製
ライセンス生産
宇宙
宇宙事業は100%子会社のIHIエアロスペースがその多くを担っている。
機械事業
物流・鉄構事業
- ローダー
- アンローダー
- スタッカー
- リクレーマ
- クライミングクレーン
- 自動倉庫
- 物流システム
- 橋梁
- 初代石狩川橋梁 1933年(昭和8年)、東京石川島造船所にて札沼線の開業に合わせて建造。上路式プレートガーター38連、下路式曲弦ワーレントラス4連で構成され、総延長1074.1mは道内最長だった。2001年(平成13年)、新橋が上流側に架けられたことにより役目を終えた。
- 駐車装置
- タワーパーキング
- 鉄骨
- 水門
- シールド掘進機
- シールド工法にてトンネルを掘削する機械
- セグメント自動組立
- コンクリート製品
- プレストレストコンクリート製品
- 鉄道車両
- 案内軌条式鉄道車両
- 制震装置/免震床
- 除雪機械
エネルギー・プラント
- 事業用ボイラ
- 産業用ボイラ
- 舶用ボイラ
- 排煙脱硫装置/排煙脱硝装置
- 原子力機器
- 太陽エネルギー利用プラント
- 石炭液化ガス化プラント
- 石油精製プラント
- 石油化学プラント
- 大型風力発電設備
- セメントプラント
- 医薬プラント
- 海水淡水化装置
- LNGタンク/LPGタンク
- 原油タンク
- 水処理装置
- 廃棄物処理装置
- ガスタービン/ガスエンジン
その他
- ディーゼルエンジン
- 土木・建設機械
- 農業機械
- この他、1980年代のF1において、ホンダ製のターボエンジンのタービンにIHI製のタービンが使用されている。
- 東宝映画『連合艦隊』(1981年8月8日公開)の特撮シーン撮影用・戦艦大和縮尺1/20モデル(船体はIHIクラフト製で、艦橋や煙突、砲塔やマストなどの上部構造物は東宝美術、ならびに、東宝特殊美術(現:東宝映像美術)で製作。完成は1981年1月20日。水冷ディーゼルエンジン搭載。船体内部に3人が搭乗し、速力6ノットでの自力航行が可能。また、火薬を使用して、46cm3連装主砲の発射シーンの再現も可能。撮影終了後、東京・お台場の船の科学館の玄関脇に屋外展示されていたが、2004年12月、台風並みに発達した暴風雨により破損し、解体処分となった)。
過去の製品
船舶・海洋事業
船舶・海洋事業については、2002年に分社化したアイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド(IHIMU)、2013年からはIHIMUがユニバーサル造船と合併したジャパン マリンユナイテッド(JMU)に移行した。
商船・海洋製品
艦艇
戦前の日本海軍からの受注は小型艦が主立っていたが(幕末および明治初期に数隻建造したのみで軍艦建造から離れたが、大正期になり駆逐艦建造で復帰)、当時先進的な上陸戦能力を備えていた日本陸軍の船舶部隊より、特殊船と称す大型揚陸艦(現代の強襲揚陸艦の嚆矢とされる船種)を受注しており主力船2隻を建造している。
戦後は輸出向けに建造されたことはないため、納入先は海上自衛隊のみである。
- 東京石川島造船所(戦前)
- 播磨造船所(戦前)
- 呉造船所
- 石川島播磨重工業
官公庁船
関連会社
国内事業者は全て株式会社である。2007年に行った会社名変更に合わせ、子会社も従来の「石川島~」から「IHI~」に名称を改めてきている。また本店住所、出資比率もあわせて記載する。
かつて存在した関連会社
- IHIメタルテック - 東京都江東区豊洲、100%。2013年10月に主力事業を三菱日立製鉄機械に承継。2014年1月、IHIへ吸収合併。
- IHIテクノソリューションズ - 神奈川県横浜市磯子区新中原町(IHI横浜事業所内)100% 2012年4月IHIへ吸収合併
- アイメック - 神奈川県横浜市磯子区新中原町(IHI横浜事業所内)2012年7月IHI機械システムへ吸収合併
- IHI知多・E&M - 愛知県知多市北浜町 2010年10月IHI環境エンジニアリングへ吸収合併
- 名古屋プラスチック・ハンドリング - 愛知県名古屋市港区昭和町 2010年10月IHI環境エンジニアリングへ吸収合併
- IHI西播磨サービス - 兵庫県相生市那波南本町 2010年7月IHIビジネスサポートへ吸収合併
- ニッシン - 長野県上伊那郡辰野町 2010年4月IHI回転機械へ吸収合併
- IHI物流 - 神奈川県横浜市磯子区新中原町(IHI横浜事業所内) 2010年1月IHIへ吸収合併
- IHI造船化工機 - 東京都江東区新砂 2010年1月IHIへ吸収合併
- 東京湾土地 - 東京都江東区新砂 2010年1月IHIへ吸収合併
- 日本ヘイズ - 岐阜県各務原市テクノプラザ 2009年10月IHI機械システムへ吸収合併
- IHI建機東京販売 - 東京都千代田区神田須田町、2009年4月IHI建機へ吸収合併
- IHI精機 - 滋賀県大津市真野、2009年4月IHI回転機械へ吸収合併
- 石川島運搬機械エンジニアリング - 東京都大田区大森北 2008年石川島運搬機械(現・IHI運搬機械)へ吸収合併
- 関東セグメント - 茨城県行方市 2015年4月IHI建材工業へ吸収合併
- IHIシバウラ - 長野県松本市石芝、91%、ヤンマー農機(2009年2月21日をもって解散。それ以降はヤンマーが受け持つ)と農業機械販売部門を業務提携、2017年10月IHIスター(現・IHIアグリテック)と統合
- IHIシバウラテック - 長野県松本市南原、IHIシバウラ出資100%、2016年4月IHIビジネスサポートへ吸収合併
- ディーゼル ユナイテッド - 東京都千代田区神田須田町、100% 2019年7月IHI原動機(旧・新潟原動機)へ吸収合併
- JAPAN EAS INVESTMENTOS E PARTICIPAÇÕES LTDA(JEI) - ブラジルのアトランチコスル造船所への出資を行うための特定目的会社。2013年設立、2016年撤退により解散。
提供番組
現在
- news zero(日本テレビ系列、テレビ宮崎を含む) - 2015年4月~、金曜後半枠1社
過去
不祥事
- 2019年4月9日、IHIは航空機エンジン整備の不正検査問題で国土交通省から業務改善命令を受けた[40]。
脚注
注釈
- ^公式Twitterでの投稿によれば、"Ishikawajima-HarimaHeavyIndustries"の頭字語[2]。
- ^田無工場(東京都西東京市)は、相馬事業所への移転完了に伴い閉鎖となった。
出典
- ^構成銘柄一覧:日経平均株価 Nikkei Inc. 2021年10月8日閲覧。
- ^株式会社IHI [@IHI_ad] (23 August 2023).“日本人の若者の7割どころか全国民の8割は知らないし従業員でも4割は知らない”.X(旧Twitter)より2023年11月9日閲覧.
- ^ab『商号の変更に関するお知らせ』(プレスリリース)石川島播磨重工業、2007年3月26日。https://www.ihi.co.jp/all_news/2006/other/1188247_1806.html。2023年11月9日閲覧。
- ^大内田史郎 (2011). “東京丸の内駅舎保存・復原”. 電気設備学会誌 (一般社団法人 電気設備学会) 31 (1月号): 65. doi:10.14936/ieiej.31.63. https://doi.org/10.14936/ieiej.31.63 2017年11月3日閲覧。.
- ^“吊橋 | 橋梁建設事業 | 製品情報”. IHIインフラシステム. 2025年7月28日閲覧。
- ^“IHI統合報告書2024(2024年9月30日発行、11月15日更新)” (pdf). p. 16 (2024年9月30日). 2025年7月28日閲覧。
- ^“新副会長に7氏内定/評議員会議長・副議長も”. 日本経団連 (2003年3月13日). 2017年11月3日閲覧。
- ^ab“東芝、改革精神に“ゆがみ” 歴代名経営者と正反対の「当期利益至上主義」”. 産経新聞社 (2015年8月3日). 2017年11月3日閲覧。
- ^“稲葉興作氏のご逝去にあたって”. 日本商工会議所 (2006年11月29日). 2009年4月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年11月3日閲覧。
- ^“ご利用案内”. 綱町三井倶楽部. 2017年11月3日閲覧。
- ^“三井グループの100年企業”. 三井グループ広報会 (2014年7月18日). 2017年11月3日閲覧。
- ^田中彰、「六大企業集団の無機能化: ポストバブル期における企業間ネットワークのオーガナイジング」『同志社商学』 2013年 64巻 5号 p.330-351,doi:10.14988/pa.2017.0000013201。
- ^『IHIグループの新コーポレート・メッセージを策定』(プレスリリース)IHI、2012年9月24日。https://www.ihi.co.jp/all_news/2012/other/1190223_1716.html。2023年11月9日閲覧。
- ^abc寺谷武明「日本造船業成立期における政府と企業 -造船奨励法と石川島造船所-」『経営史学』第2巻第2号、経営史学会、1967年、85-119頁、doi:10.5029/bhsj.2.2_85、ISSN 0386-9113。
- ^abc石川島重工業株式会社社史編纂委員会 1961, p. 308.
- ^“開業前の東京駅写真、横須賀で見つかる オリジナルプリント、鉄骨まで鮮明”. 毎日新聞 (2019年3月6日). 2019年3月6日閲覧。
- ^ab中沖満+GP企画センター、2005、『国産トラックの歴史』、グランプリ出版 p.23
- ^[17] p.25
- ^重松一義『日本刑罰史年表 増補改訂版』柏書房、2007年、258頁。ISBN 9784760131655。
- ^創業時代JMUアムテック
- ^石川島重工業株式会社社史編纂委員会 1961, p. 605.
- ^“IHIメタルテックと三菱日立製鉄機械が、圧延機分野での事業統合に基本合意”. 株式会社IHI. 2021年10月13日閲覧。
- ^“熱処理受託加工の独VTN社の株式を取得,子会社化へ”. 株式会社IHI. 2021年10月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年10月13日閲覧。
- ^“IHI建機株式会社の株式譲渡について”. 株式会社IHI. 2017年10月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年10月13日閲覧。
- ^“IHIが明星電気を完全子会社化 新規事業創出狙う”. 上毛新聞. 2021年5月14日閲覧。
- ^製品案内
- ^abcdefg『日本のカーフェリー―その揺籃から今日まで―』海人社〈世界の艦船別冊〉、2009年3月15日。
- ^ab千早 1969, p. 336.
- ^プレスリリース
- ^千早 1969, p. 12.
- ^千早 1969, p. 14.
- ^千早 1969, p. 13.
- ^abcdefghij千早 1969, p. 337.
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- ^abcd『世界の艦船2005年1月号』第636号、海人社、2005年1月1日。
- ^abcdefghij『世界の艦船7月号増刊 海上自衛隊2015-2016』第819号、海人社、2015年6月18日。
- ^『世界の艦船2005年12月号』第651号、海人社、2005年12月1日。
- ^“IHI、検査不正で改善命令 航空部品自主回収へ - 日本経済新聞”. www.nikkei.com. 2023年5月19日閲覧。
関連文献
- 石川島重工業株式会社社史編纂委員会, ed (1961-02-01). 石川島重工業株式会社108年史. 石川島播磨重工業. 全国書誌番号:61007861
- 千早正隆(編)、坂本金美、松本喜太郎(編)、1969、『写真図説 帝国連合艦隊』、講談社
関連項目
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