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登録有形文化財

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
曖昧さ回避この項目では、日本の登録有形文化財について説明しています。その他の登録有形文化財については「登録有形文化財 (曖昧さ回避)」をご覧ください。
文化財 >有形文化財 >登録有形文化財
登録有形文化財の標識
1996年登録(宗教)/日本基督教団大阪教会(大阪府)
1996年登録(学校)/東京大学安田講堂(東京都)
1996年登録(文化福祉)/南座(京都府)
1997年登録(住宅)/畠中家住宅(野良時計)(高知県
1998年登録(産業一次)/二ヶ領用水久地円筒分水(神奈川県)
2000年登録(生活関連)/長良川発電所本館(岐阜県)
2001年登録(学校)/灘中学校・高等学校本館(兵庫県)
2003年登録(産業三次)/海岸ビルヂング(兵庫県)
2006年登録(官公庁舎)/松山地方気象台愛媛県
2004年登録(産業二次)/旧横浜ゴム平塚製造所記念館(神奈川県)
2006年登録(治山治水)/堂々川六番砂留(広島県)
2007年登録(交通)/美保関灯台(島根県)
2024年登録(産業二次)/戸上電機製作所本館(佐賀県)

登録有形文化財(とうろくゆうけいぶんかざい)は、1996年平成8年)の文化財保護法改正により創設された文化財登録制度に基づき、日本国によって文化財登録原簿に登録された有形文化財のことである。登録対象は当初は建造物に限られていたが、2004年(平成16年)の文化財保護法改正により建造物以外の有形文化財も登録対象となっている。登録物件は近代(明治以降)に建造・製作されたものが主であるが、江戸時代のものも登録対象になっている。

概要

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登録制度創設の背景

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1996年の文化財保護法改正により、従来の文化財「指定」制度に加えて、文化財「登録」制度が創設された。第二次大戦以降の日本においては、急激な都市化の進展などにより、近世末期や近代以降の多種多様な建造物が、その建築史的・文化的意義や価値を十分認識されないまま破壊される事例が相次いだ。このような反省に立ち、昭和40年代ごろから、近世の民家建築、近代の洋風建築などが国の重要文化財や、地方公共団体の文化財に指定される例が漸増していった。

しかし、急激に消滅しつつある近代の建造物の保護にあたっては、国レベルで重要なものを厳選する重要文化財指定制度のみでは不十分であり、より緩やかな規制のもとで、幅広く保護の網をかけることの必要性が議論された。このような中、1995年の阪神淡路大震災では多数の歴史的建造物にも大きな被害が出たが、指定文化財以外にどこにどういう建物があるか把握されていないという現状も露わとなった。こうして、重要文化財指定制度を補うものとして創設されたのが、文化財登録制度であり、登録された物件を登録有形文化財と称する。

登録の対象

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1996年の文化財保護法改正の時点では、登録の対象は当面建造物のみとされ、美術工芸品、歴史資料などは登録対象となっていなかった。この理由は、建造物に関しては、都市化や開発の進展、生活・居住形態の変化などにより、取り壊される可能性があり、緊急に保護措置をとる必要があるためであった。

2004年の同法改正により、建造物以外の有形文化財も登録の対象となった。また、有形民俗文化財、記念物(史跡名勝天然記念物関係)についても、従来の「指定」制度を補完するものとして「登録」制度が導入された。庭園等の登録記念物、地域の生業・衣食住に関わる用具類の登録有形民俗文化財、伝統料理の製造技法等の登録無形民俗文化財、伝統的酒造り等の登録無形文化財がある。

登録の抹消

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この登録制度は指定制度を補完するものであるため、登録対象となる有形文化財は、国や地方公共団体の指定を受けていないものに限られる。登録有形文化財として登録された後、国の重要文化財、または地方公共団体の文化財として指定を受けた場合は、登録有形文化財としての登録は抹消される[1]。ただし、地方公共団体の文化財として指定を受けた場合において、その登録有形文化財について、その保存および活用のための措置を講ずる必要があり、かつ、その所有者の同意がある場合は、例外的に登録を抹消しないことができる(第59条第2項ただし書)[2][1]。焼失や解体などの現状変更が行われた場合も抹消される[1]。登録は、所有者の意思により、国は指導・助言が出来るが強制は出来ない。近年は、建造物が老朽化により維持できなくなったことで解体され、抹消が行われるものが増えている。2026年1月15日まで374件が抹消され、内293件は2015年以降の抹消である。

指定と登録

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ウェブサイトや観光案内書などで、「登録有形文化財に指定されている」という表現をしばしば見かけるが、文化財保護法の規定上、文化財の「指定」と「登録」とは明確に区別されており、「登録有形文化財として登録されている」と表記するのが正確である。官報告示においても「文化財を登録有形文化財に登録する」という表現が用いられている。「指定」は現状変更に厳しい規制がかかるが修理等に手厚い補助があるのに対し、「登録」は内装変更は届出は不要など規制が緩やかだが補助は限定的である。登録は所有者の希望に基づいて行い、文化庁等が調査、文化審議会の答申を受けて登録される、あるいは自治体が独自に行うケースもある。

登録文化財所有者の会、ヘリテージマネージャー

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2005年(平成17年)、日本初の登録文化財所有者の会として大阪登文会が設立された[3]。その後、京都府、秋田県、愛知県(愛知登文会)、群馬県、東京都、和歌山県、三重県、神奈川県、滋賀県の順に登録文化財所有者の会が設立されている。2019年(令和元年)6月には全国組織として全国登文会が設立され、愛知県半田市の小栗家住宅で設立総会が開催された[4]。登録の際の書類作成や文化財の保護・活用の提言を行うヘリテージマネージャーは、阪神淡路大震災をきっかけに意義が注目され、2001年に兵庫県で講習会が始まり、全国に広まり、建築士会などが養成講座を開催していることもある。

登録有形文化財(建造物)

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1996年12月、第一弾として118件の建造物が登録された。2025年令和7年)12月1日現在、建造物の登録件数は14,391件である。要件は、築50年以上、国土の歴史的景観に寄与すること等である。東京タワーのような著名なものばかりでなく、古い街並みに点在する建物等も多い。登録されている物件には、以下のような多様な分野の建造物がある。

住宅が半数近くを占めるとも言われる。これらの登録物件には、建設当時のまま現役のもの、ホテルなど別の用途で活用しつつ保存されているもの、博物館・資料館などとして公開活用されているものとに分かれる。規制が緩やかなため、古民家活用の形などで、ある程度改装しても活用することで寧ろ維持保存につなげようとする試みもみられる。茨城県桜川市の真壁町では、市民団体が積極的に登録に取組み、2025年現在101件の登録があり、2010年に中心部の17.6haが国の「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されている。

統計

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都道府県別

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2025年(令和7年)12月1日現在、都道府県別の建造物の登録件数は以下のとおりである。登録有形文化財一覧を参照。なお2県以上なのは、栃木県群馬県の県境にある「わたらせ渓谷鐵道笠松トンネル」と、山梨県長野県の県境にある「唐沢堰堤」である。この2件はそれぞれの県の登録件数に含めず、「2県以上」に分類している。

 都道府県件数
 総数14,616件
1大阪府884件
2兵庫県798件
3京都府667件
4長野県656件
5新潟県582件
6愛知県580件
7滋賀県511件
8東京都483件
9香川県452件
10和歌山県395件
11岡山県382件
12群馬県362件
13神奈川県345件
14奈良県341件
15三重県327件
 都道府県件数
16静岡県322件
17千葉県319件
17広島県319件
19茨城県300件
20高知県296件
21岐阜県287件
22石川県283件
23福島県273件
24栃木県270件
25福井県264件
26鳥取県257件
27福岡県249件
28大分県234件
29秋田県230件
30宮城県225件
31埼玉県224件
 都道府県件数
32山形県219件
33徳島県214件
33熊本県214件
35島根県211件
36愛媛県193件
37山梨県189件
38富山県165件
39北海道155件
40長崎県137件
40山口県136件
42佐賀県132件
43鹿児島県124件
44青森県111件
45岩手県109件
46宮崎県101件
47沖縄県87件
-2県以上2件

分類別

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2025年(令和6年)11月22日現在、分類別の建造物の登録件数は以下のとおりになっている。

分類件数
総数14,780件
産業1次141件
産業2次1,520件
産業3次1,811件
交通545件
分類件数
官公庁舎256件
学校461件
生活関連339件
文化福祉523件
分類件数
住宅6,625件
宗教2,242件
治山治水225件
その他92件

時代別

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2025年11月22日現在、時代別の建造物の登録件数は以下のとおりとなっている。昭和のうち、昭和20年までの前期は3,681件、昭和40年までの中期は651件、以降の後期は72件である。

分類件数
総数14,780件
江戸以前2,661件
明治4,619件
大正2,953件
昭和4,547件

構造種別

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2025年11月22日現在、構造種別の建造物の登録件数は以下のとおりとなっている。

分類件数
総数14,780件
建築物11,748件
土木構造物697件
その他工作物2,335件

登録有形文化財(美術工芸品)

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登録対象も広がり、建造物以外の有形文化財(美術工芸品)の登録有形文化財についてどのようなものが該当するかは、改正された「登録有形文化財登録基準」(文部科学省告示)に定められている。これによると、製作後50年を経過したものであって、歴史的・系統的にまとまって伝存したもの、系統的・網羅的に収集されたもの、すなわちコレクション等の一括資料になっているものであり、かつ、文化史的意義、学術的価値および歴史上の意義を有するものが登録対象となっている。陶磁器類も考古資料も対象となっている。

2024年8月現在、次の18件が登録されている。

第1回登録

2006年(平成18年)3月30日付で行われ(官報告示は翌31日)、次の4件が登録された。

第2回登録

2008年(平成20年)3月7日付で行われ、次の2件が登録された。

  • 書跡・典籍の部
    • 松原文庫(松原恭譲蒐集仏書資料) 1,090点(東大寺
  • 歴史資料の部
第3回登録

2008年7月10日付で行われ、次の3件が登録された。

第4回登録

2009年(平成21年)7月10日付で行われ、次の1件が登録された。

第5回登録

2010年(平成22年)6月29日付で行われ、次の1件が登録された。

  • 工芸品の部
    • 福井県陶磁器資料(水野九右衛門コレクション) 1,642点(福井県)
第6回登録

2011年(平成23年)6月27日付で行われ、次の2件が登録された。

第7回登録

2012年(平成24年)9月6日付で行われ、次の1件が登録された。

第8回登録

2019年7月23日付で行われ、次の2件が登録された。

  • 歴史資料の部
    • 建築教育・研究資料(仙台高等工業学校建築学科旧蔵)1,437点(国立大学法人東北大学
    • 官立高等教育機関営繕組織近代建築図面(東北帝国大学営繕課旧蔵)1,139点(国立大学法人東北大学)
第9回登録

2020年9月30日付で行われ、次の1件が登録された。

  • 歴史資料の部
    • 近代教科書関係資料(玉川大学収集)12,728点(学校法人玉川学園(玉川大学教育博物館保管))
第10回登録

2024年8月27日付で行われ、次の1件が登録された。

その他

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上記の登録有形文化財は、国が文化財保護法に基づいて登録するものであるが、神奈川県横浜市横浜市登録地域文化財[5]千葉県千葉市千葉市地域文化財[6]京都府[7]および京都市(京都府登録文化財・京都市登録文化財)[8]宮城県仙台市(仙台市登録文化財)[9]などのように、指定文化財制度以外に独自の「登録」文化財制度を制定している地方自治体も存在する。このため、国のものと混同しないよう各自治体の文化財保護条例やホームページを確認する必要がある。

脚注

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[脚注の使い方]
  1. ^abc登録の抹消について 文化庁
  2. ^「登録抹消の例外」2005年(平成17年)4月26日付文化庁通知 pp.7
  3. ^設立趣意 全国登文会
  4. ^全国登文会が発足しました 全国登文会、2019年6月22日
  5. ^文化財・埋蔵文化財(横浜市)
  6. ^千葉市地域文化財(千葉市)
  7. ^京都府登録文化財に関する規則(京都府)
  8. ^京都市内の文化財件数と京都市指定・登録文化財(京都市)
  9. ^仙台市の指定登録文化財(仙台市)

参考文献

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  • 『月刊文化財』402号(1997年3月)「特集 文化財登録制度」、第一法規
  • 『月刊文化財』492号(2004年9月)「特集 登録有形文化財建造物 八年の軌跡と今後の展望」、第一法規
  • 『月刊文化財』500号(2005年5月)「特集 新たな文化財保護行政の展開」、第一法規

関連項目

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外部リンク

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