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特例市

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
曖昧さ回避この項目では、日本の特例市制度について説明しています。2022年より導入されている韓国の「特例市」制度については「大都市 (韓国)」をご覧ください。
:政令指定都市       :中核市       :施行時特例市
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特例市(とくれいし)は、日本地方公共団体のうち「法定人口が20万人以上」の要件を満たし、地方自治法第252条の26の3第1項に定める政令による特別指定を受けたのこと。かつて存在した都道府県の事務権限の一部を移譲する大都市制度の1つで、2015年に制度としては廃止され、廃止時に特例市だった市のうち中核市等に移行しなかった市は施行時特例市と呼ばれ、中核市移行に際し経過措置がとられている。

概要

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施行当時

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特例市制度は2000年(平成12年)4月1日から施行され、同年11月1日から2014年(平成26年)4月1日にかけて指定がなされた。

これにより日本の大都市制度は、政令指定都市(要件:法定人口50万人以上)・中核市(当時の要件:法定人口30万人以上)・特例市(当時の要件:法定人口20万人以上)の3段階となった。これらはいずれも都市の規模に応じて、都道府県の事務権限の一部が市に移譲される制度で、特例市には「中核市に準じた事務の範囲」が移譲された。

特例市の指定は、関係市からの申出に基づき、市議会及び都道府県議会の議決を経て、政令でなされた。一度指定されると、法定人口推計人口が減少して20万人以下になったとしても指定は解除されず、また法定人口が30万人以上になった場合でも自動的に中核市に昇格するわけではなく、中核市指定の手続きを改めてすることになっていた。

制度の廃止

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「特例市と中核市との区別を無くそう」という意見が中核市市長会全国特例市市長会の双方から出されており、これらの問題を取り扱う国の地方制度調査会側も前向きな姿勢を見せた[1]。その結果、2014年(平成26年)5月23日可決・成立の改正地方自治法(当該部分の施行は2015年4月1日)により、特例市制度が廃止されるとともに、中核市の人口要件を「20万人以上」に緩和し双方を事実上統合することとなった。

改正法施行の時点で中核市に移行していない特例市は、制度上は他の一般市と同格となり、仮に人口が20万人を超えていても中核市指定のためには改めての手続きが必要となっている。ただしこれらの市は「施行時特例市」に指定され、経過措置として従来の特例市の事務権限を引き続き保持出来るとともに、前述の改正法施行後5年間(2020年4月1日まで)に限り、人口が20万人未満になったとしても中核市に移行できるものとされている。この中核市への移行についての人口特例は、期限が延長されずに2020年に終了している。事務権限については、期限はないので2020年4月以降も変更はない。ただしもともと特例市の制度は、一律に権限の委譲がされるのではなく、個々に移譲の範囲が決定され、施行時特例市は、地方自治法の一部を改正する法律(平成26年法律第42号)附則第2条に「施行時特例市が処理する事務に関する法令の立案に当たっては、同号に掲げる規定の施行の際施行時特例市が処理することとされている事務を都道府県が処理することとすることがないよう配慮」と規程されることにより、個々の法令ベースで規定されている。

なお「施行時」特例市の施行時とは、制度廃止の施行時を意味する。先述のとおり、制度施行時からの特例市は存在しない。

移譲される事務

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法令上は、「中核市が処理することができる事務のうち、『都道府県が一体的に処理すべき』とされた事務以外のものを処理する」と定義される。

行政分野ごとに個別にみると、特例市は環境保全行政・都市計画行政の分野において、中核市に近い権限を持つことになる。中核市との大きな相違点(中核市に認められ、特例市には認められないもの)としては、民生行政(社会福祉関係の事務)、保健衛生行政(中核市は自ら保健所を設置して処理)、地方教育行政(中核市は県費負担教職員に対して研修実施の権限)に関する事務などがあげられる。特例市に指定されると、移譲を受けた事務権限を行使するために必要な財源として、地方交付税が増額される。

特例市に移譲される権限は、すべて列挙すれば1000件程度にのぼるため、ここでは主要な権限のみを抜粋して掲載する。なお、ここに掲げるのはあくまでも標準的な特例市の例であり、都道府県が独自の条例を制定して、更に多くの権限を移譲することも可能である。

事務特例市が移譲される事務中核市との違い(中核市に認められ、特例市に認められない事務)
民生行政に関する事務

特例市に移譲される事務はない

特例市に該当するものはない。
保健衛生行政に関する事務

特例市に移譲される事務はない。
中核市は、自ら保健所を設置。政令市と同様の権限

特例市に該当するものはない。
都市計画に関する事務

都市景観の保全を除き、中核市と同様の権限

左記の特例市の事務に加えて、

環境保全行政に関する事務

中核市の権限の一部

左記の特例市の事務に加えて、

地方教育行政に関する事務

特例市に移譲される事務はない。
中核市は、県費負担教職員に研修を実施する権限

特例市に該当するものはない。
中核市は、県費負担教職員の研修権限がある[注 1]
行政組織上の特例・その他
  • 計量法に基づく勧告・定期検査(計量法関係)

関与の特例については、該当なし。

計量法事務は中核市にも該当。
中核市として移譲された事務については、通常都道府県知事の監督が必要とされる場合でも
その監督を受ける必要がなく、直接主任の大臣の監督となる。 

特例市の一覧

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施行時特例市

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特例市制度廃止時点に特例市に指定されていた市のうち、中核市や政令指定都市に移行していない市。2021年4月1日現在、以下の23市が「施行時特例市」に指定されている。

地方都道府県自治体名特例市の指定日特記事項
関東地方茨城県08220つくば市2007年(平成19年)4月1日中核市移行を検討している[2]
群馬県10204伊勢崎市2007年(平成19年)4月1日
10205太田市2007年(平成19年)4月1日
埼玉県11208所沢市2002年(平成14年)4月1日施行時特例市の中で最も推計人口が多い。2030年4月の中核市移行を目指している[3]
11221草加市2004年(平成16年)4月1日
11214春日部市2008年(平成20年)4月1日
11202熊谷市2009年(平成21年)4月1日特例期限中の中核市移行は見送る方針[4]

神奈川県

14206小田原市2000年(平成12年)11月1日
14213大和市2000年(平成12年)11月1日
14203平塚市2001年(平成13年)4月1日
14212厚木市2002年(平成14年)4月1日
14207茅ヶ崎市2003年(平成15年)4月1日
中部地方新潟県15202長岡市2007年(平成19年)4月1日
15222上越市2007年(平成19年)4月1日施行時特例市の中で最も推計人口が少ない。
静岡県22203沼津市2000年(平成12年)11月1日
22210富士市2001年(平成13年)4月1日
愛知県23206春日井市2001年(平成13年)4月1日
三重県24202四日市市2000年(平成12年)11月1日
近畿地方大阪府27211茨木市2001年(平成13年)4月1日
27202岸和田市2002年(平成14年)4月1日2018年4月の中核市移行を目指していたが、2016年12月6日に見送ることを発表。
兵庫県28210加古川市2002年(平成14年)4月1日
28214宝塚市2003年(平成15年)4月1日
九州地方佐賀県41201佐賀市2014年(平成26年)4月1日県庁所在地

かつての特例市

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「指定解除日」が2015年4月2日以降のものは施行時特例市からの解除、それより前のものは特例市からの解除。

都道府県自治体名特例市の指定日指定解除日と理由
静岡県清水市2001年(平成13年)4月1日2003年(平成15年)4月1日に廃止[注 2]
北海道函館市2000年(平成12年)11月1日2005年(平成17年)10月1日に中核市移行。
山口県下関市2002年(平成14年)4月1日[注 3]2005年(平成17年)10月1日に中核市移行。
岩手県盛岡市2000年(平成12年)11月1日2008年(平成20年)4月1日に中核市移行。
福岡県久留米市2001年(平成13年)4月1日2008年(平成20年)4月1日に中核市移行。
群馬県前橋市2001年(平成13年)4月1日2009年(平成21年)4月1日に中核市移行。
滋賀県大津市2001年(平成13年)4月1日2009年(平成21年)4月1日に中核市移行。
兵庫県尼崎市2001年(平成13年)4月1日2009年(平成21年)4月1日に中核市移行。
群馬県高崎市2001年(平成13年)4月1日2011年(平成23年)4月1日に中核市移行[5]
大阪府豊中市2001年(平成13年)4月1日2012年(平成24年)4月1日に中核市移行。
枚方市2001年(平成13年)4月1日2014年(平成26年)4月1日に中核市移行。
埼玉県越谷市2003年(平成15年)4月1日2015年(平成27年)4月1日に中核市移行。
広島県呉市2000年(平成12年)11月1日2016年(平成28年)4月1日に中核市移行。
長崎県佐世保市2001年(平成13年)4月1日2016年(平成28年)4月1日に中核市移行。
青森県八戸市2001年(平成13年)4月1日2017年(平成29年)1月1日に中核市移行。
埼玉県川口市2001年(平成13年)4月1日2018年(平成30年)4月1日に中核市移行。
大阪府八尾市2001年(平成13年)4月1日2018年(平成30年)4月1日に中核市移行。
兵庫県明石市2002年(平成14年)4月1日2018年(平成30年)4月1日に中核市移行。
鳥取県鳥取市2005年(平成17年)10月1日2018年(平成30年)4月1日に中核市移行。
島根県松江市2012年(平成24年)4月1日2018年(平成30年)4月1日に中核市移行。
山形県山形市2001年(平成13年)4月1日2019年(平成31年)4月1日に中核市移行。
福井県福井市2000年(平成12年)11月1日2019年(平成31年)4月1日に中核市移行。
山梨県甲府市2000年(平成12年)11月1日2019年(平成31年)4月1日に中核市移行。
大阪府寝屋川市2001年(平成13年)4月1日2019年(平成31年)4月1日に中核市移行。
茨城県水戸市2001年(平成13年)4月1日2020年(令和2年)4月1日に中核市移行。
大阪府吹田市2001年(平成13年)4月1日2020年(令和2年)4月1日に中核市移行。
長野県松本市2000年(平成12年)11月1日2021年(令和3年)4月1日に中核市移行。
愛知県一宮市2002年(平成14年)4月1日2021年(令和3年)4月1日に中核市移行。

人口順位

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  • 推計人口による順位などは、各項目名にあるボタンをクリックすることで得られる。
  • 人口の単位は「人」。


都道
府県
法定人口
(人)
推計人口
(人)
増減率
(%)
種別
推計人口の
統計年月日
1埼玉県所沢市342,464340,762-0.50施行時特例市2025年10月1日
2愛知県春日井市308,681302,786-1.91施行時特例市2025年10月1日
3三重県四日市市305,424298,918-2.13施行時特例市2025年9月1日
4大阪府茨木市287,730290,582+0.99施行時特例市2025年10月1日
5新潟県長岡市266,936252,903-5.26施行時特例市2025年10月1日
6兵庫県加古川市260,878253,487-2.83施行時特例市2025年10月1日
7神奈川県平塚市258,422257,696-0.28施行時特例市2025年9月1日
8埼玉県草加市248,304250,547+0.90施行時特例市2025年10月1日
9静岡県富士市245,392237,927-3.04施行時特例市2025年11月1日
10神奈川県茅ヶ崎市242,389245,075+1.11施行時特例市2025年9月1日
11茨城県つくば市241,656263,309+8.96施行時特例市2025年11月1日
12神奈川県大和市239,169244,704+2.31施行時特例市2025年9月1日
13佐賀県佐賀市233,301227,117-2.65施行時特例市2025年10月1日
14埼玉県春日部市229,792225,190-2.00施行時特例市2025年10月1日
15兵庫県宝塚市226,432219,715-2.97施行時特例市2025年10月1日
16神奈川県厚木市223,705222,940-0.34施行時特例市2025年9月1日
17群馬県太田市223,014221,306-0.77施行時特例市2025年11月1日
18群馬県伊勢崎市211,850210,516-0.63施行時特例市2025年11月1日
19埼玉県熊谷市194,415188,896-2.84施行時特例市2025年10月1日
20大阪府岸和田市190,658183,409-3.80施行時特例市2025年10月1日
21静岡県沼津市189,386179,804-5.06施行時特例市2025年11月1日
22神奈川県小田原市188,856185,027-2.03施行時特例市2025年9月1日
23新潟県上越市188,047176,959-5.90施行時特例市2025年10月1日

将来人口推計

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  • 人口の単位は「人」。

都道

府県

2045年

推計人口

2021年

推計人口

1埼玉県所沢市292,000342,144
2愛知県春日井市267,694307,181
3三重県四日市市283,410304,000
4大阪府茨木市265,917288,620
5新潟県長岡市208,572262,381
6兵庫県加古川市230,558258,411
7神奈川県平塚市208,823257,503
8埼玉県草加市219,300248,978
9静岡県富士市183328242,890
10神奈川県茅ヶ崎市227190243,951
11茨城県つくば市242804250,724
12神奈川県大和市219973241,956
13佐賀県佐賀市209719231,275
14埼玉県春日部市172,578228,411
15兵庫県宝塚市185968224,614
16神奈川県厚木市193759223,991
17群馬県太田市200107221,355
18群馬県伊勢崎市188505210,742
19埼玉県熊谷市150,068193,126
20大阪府岸和田市147949187,542
21静岡県沼津市134052186,169
22神奈川県小田原市146484187,564
23新潟県上越市143032184,210

脚注

[編集]
[脚注の使い方]

注釈

[編集]
  1. ^中核市には、教職員の研修実施の権限のみがある。ただし、中核市市長会から「研修権限のみでは成果を得にくい」との要望が出ており、文部科学省では、中核市にも人事権を移譲する検討を進めている。(読売新聞平成19年5月2日付)
  2. ^静岡市(当時中核市)と合併し現在の静岡市となった。合併当日に静岡市は改めて中核市の指定を受け、2005年4月1日に政令指定都市に移行。特例市が廃止された唯一のケース。また同区域は全国で唯一、一般市から特例市、中核市、政令指定都市の順に指定を受けている。
  3. ^旧・下関市の特例市指定日。現在の下関市は2005年(平成17年)2月13日に旧・下関市と豊浦郡4町が新設合併して発足したもので、旧・下関市は自治体としては消滅。現在の下関市が特例市に指定されたのは市発足の当日。

出典

[編集]
  1. ^「中核市」と「特例市」の統合をDAILYSPORTONLINE2012年11月7日配信記事(同年11月8日閲覧))
  2. ^つくば市が中核市候補市として中核市市長会へ加入しました(H27.12.1)|中核市市長会 2016年9月5日閲覧。
  3. ^令和12年4月に中核市への移行を目指しています”. www.city.tokorozawa.saitama.jp. 2024年9月6日閲覧。
  4. ^平成28年5月1日発行 くまがや市議会だより第43号 9頁 (平成30年4月1日閲覧)
  5. ^群馬県高崎市が中核市に 来年4月に施行 閣議決定(朝日新聞2010年10月15日付)

関連項目

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外部リンク

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日本の旗日本の施行時特例市
北海道地方

なし

東北地方

なし

関東地方
中部地方
近畿地方
中国地方

なし

四国地方

なし

九州地方
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