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爆発物

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(2020年12月)

爆発物(ばくはつぶつ)とは、化学的またはエネルギー的に不安定で、刺激や衝撃によって爆発と呼ばれる衝撃波を伴う急速な化学変化を生じさせる物質物体のこと。

歴史

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GHSに定める爆発物の表示。
国際連合危険物輸送勧告に定める爆発物の表示の例。
欧州の旧危険物指令に定める爆発物のハザードシンボル

人類の歴史において最も早く発明された爆発物は黒色火薬であり、中国においておおよそ800年から850年ごろに発明されたとみられている[1]。当初は硝石の配合比率が少なかったため爆発はしなかったと考えられているが、硝石配合比率が徐々に高くなるにつれて爆発性を持つようになり、13世紀前半にはごく初期の爆弾である「震天雷」が開発されている[2]。黒色火薬はやがて1270年から1280年ごろにはイスラム諸国に伝播し[3]、1300年ごろにはヨーロッパへの伝播も確認されている[4][5]。黒色火薬は火砲花火といった発明品を生み出しつつ、1000年以上にわたって人類の知る唯一の爆発物となっていた。ただし黒色火薬は高価で信頼性が低いうえ非常に危険だったため、採鉱や土木工事への利用は限定的なものにとどまり[6]、大半は軍事面での利用となっていた。

火薬に代わる爆発物が登場したのは、科学革命と産業革命によって人類の知識の著しく増大した19世紀中盤であり、ドイツクリスチアン・シェーンバインが1845年にニトロセルロース[7]イタリアのアスカニオ・ソブレロが1847年ニトログリセリンをそれぞれ発明した[8]。これらの新しい爆発物は非常に不安定であり、相次いで爆発事故を起こしたため多くの国で製造が禁止された[9]。しかし1866年にスウェーデンアルフレッド・ノーベルがニトログリセリンを珪藻土にしみこませることで安定化させ、新しい火薬であるダイナマイトを発明。これによりニトログリセリンは安定して使用可能となり、人類は火薬を越える新しい爆発物を手に入れた。1875年にはゼリグナイトも発明された。この2つの爆発物は主に鉱山や建設現場で使用され、大規模工事の効率を大幅に向上させた[10]。また、ニトロセルロースの方も1886年にポール・ヴィエイユがB火薬を発明し、さらに1889年にはフレデリック・エイベルジェイムズ・デュワーによってより安全なコルダイトが発明されて、実用化のめどがついた[11]。これらの無煙火薬は発射用火薬として黒色火薬にとってかわることとなった[12]。この両爆発物の開発以降も、次々と新しい爆発物が開発されるようになった。20世紀初頭にはリダイト(ピクリン酸)が開発され[13]日露戦争では下瀬火薬として利用されたものの[14]、1863年に発明されたトリニトロトルエン(TNT)[15]が爆薬として1902年に生産が開始されるとそちらが主に生産されるようになった[16]。なお、例えば1917年のハリファックス大爆発を始めとして爆発物による事故は幾度となく起きている。

用途

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爆発物の用途は多岐にわたり、軍事から産業社会にまで大きな役割を果たしている。

産業爆薬の用途は幅広い。土木工事においては爆薬が多用され、特にトンネルの掘削や運河の建設、建物の爆破解体など大規模な工事で用いられる[17]。鉱山の採掘に爆薬は欠かせないほか、瞬間的に大電力が得られる爆薬発電機金属加工における爆発圧接(爆着)でも爆発物が使用される[18]。信号弾や照明弾発煙筒などにも火薬は用いられている[19]。また、エアバッグは爆薬によってバッグを瞬間的に膨らませるため、爆発物は不可欠である[20]。なお、通常強力な爆薬を爆発させるには起爆薬で爆発を起こすことが必要であり、雷管信管などの起爆装置が開発され使用されている[21]

黒色火薬は無煙火薬の登場によって軍事面での用途がほぼなくなり[22]、またより強力な爆薬の発明で工事や採掘用の用途もほぼなくなったものの[23]、21世紀においても花火導火線、採石などの用途には利用が見られる[24]。なかでも花火においては黒色火薬はいまだ広く使用されており、花火の玉から打ち上げ用火薬にいたるまで、基本的に黒色火薬によって行われる[25]

爆弾地雷など、軍事用途でも爆発物は広く利用される。軍用爆薬としては、TNTトリメチレントリニトロアミン (RDX、ヘキソーゲン)などが広く利用されている[26]

危険性

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→「事故の一覧 § 爆発事故」、および「人によって引き起こされた核爆発以外の大爆発一覧」も参照

爆発物は適切な取り扱いが行われない場合、不意に爆発を起こすことがあるため、厳重な取り扱いが必要である。爆薬や爆発物による大事故はしばしば発生している。例としては、2015年に中国の天津市において倉庫に貯蔵されていた硝酸アンモニウムが大爆発を起こし、死者・行方不明者173人を出した2015年天津浜海新区倉庫爆発事故[27]、2020年にレバノンの首都ベイルートにおいて倉庫に保管されていた硝酸アンモニウムが爆発し、死者170人以上を出したベイルート港爆発事故などが挙げられる[28]

規制

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安全性の観点から不特定多数の者が立ち入る施設、公共交通機関では持ち込みが制限されるほか[29]危険性によっては製造及び移動についても規制される[30]

爆発物は危険性が非常に高いため、各国で法により規制がなされている。日本においては明治17年(1884年)に爆発物取締罰則が制定され、数度の改正を経て現在でも効力を有する法律となっており、爆発物の使用や製造、輸入等を規制している[31]。また、火薬やボイラーなど爆発しうるものを爆発させ建造物等に損害を与えた場合は、激発物破裂罪によって処罰される[32]。火薬類については、火薬類取締法によって推進的爆発用途に使用される火薬、破壊的爆発用途に使用される爆薬、これらを用いた製品である火工品の3種に分類され管理されている[33]

条約としては、1997年にテロリストによる爆弾使用の防止に関する国際条約が採択されて2001年に発効し、同年日本政府もこれを批准した[34]。爆発物を含む危険物の輸送に関しては、1952年に国際連合危険物輸送勧告によって分類や定義、各種基準が定められ[35]、2年に一度改訂が行われている[36]。また輸送以外の一般的取り扱いについても、2003年に化学品の分類および表示に関する世界調和システムが制定されている[37]

爆発物となりうる物質、物体

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脚注

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  1. ^「世界を変えた火薬の歴史」p28-29 クライヴ・ポンティング著 伊藤綺訳 原書房 2013年4月30日初版第1刷発行
  2. ^「世界を変えた火薬の歴史」p52 クライヴ・ポンティング著 伊藤綺訳 原書房 2013年4月30日初版第1刷発行
  3. ^「世界を変えた火薬の歴史」p80-82 クライヴ・ポンティング著 伊藤綺訳 原書房 2013年4月30日初版第1刷発行
  4. ^「火器の誕生とヨーロッパの戦争」p75 バート・S・ホール著 市場泰男訳 平凡社 1999年11月20日初版第1刷発行
  5. ^「世界を変えた火薬の歴史」p112 クライヴ・ポンティング著 伊藤綺訳 原書房 2013年4月30日初版第1刷発行
  6. ^「世界を変えた火薬の歴史」p251-253 クライヴ・ポンティング著 伊藤綺訳 原書房 2013年4月30日初版第1刷発行
  7. ^「世界を変えた火薬の歴史」p264-265 クライヴ・ポンティング著 伊藤綺訳 原書房 2013年4月30日初版第1刷発行
  8. ^「世界を変えた火薬の歴史」p262 クライヴ・ポンティング著 伊藤綺訳 原書房 2013年4月30日初版第1刷発行
  9. ^「世界を変えた火薬の歴史」p265 クライヴ・ポンティング著 伊藤綺訳 原書房 2013年4月30日初版第1刷発行
  10. ^「世界を変えた火薬の歴史」p263-264 クライヴ・ポンティング 伊藤綺訳 原書房 2013年4月30日初版第1刷
  11. ^「世界を変えた火薬の歴史」p266-268 クライヴ・ポンティング著 伊藤綺訳 原書房 2013年4月30日初版第1刷発行
  12. ^「世界を変えた火薬の歴史」p268 クライヴ・ポンティング著 伊藤綺訳 原書房 2013年4月30日初版第1刷発行
  13. ^「世界を変えた火薬の歴史」p269 クライヴ・ポンティング著 伊藤綺訳 原書房 2013年4月30日初版第1刷発行
  14. ^「改訂新版 SUPERサイエンス 爆発の仕組みを科学する」p159-160 齋藤勝裕 シーアンドアール研究所 2024年4月19日初版発行
  15. ^「改訂新版 SUPERサイエンス 爆発の仕組みを科学する」p52 齋藤勝裕 シーアンドアール研究所 2024年4月19日初版発行
  16. ^「世界を変えた火薬の歴史」p269 クライヴ・ポンティング著 伊藤綺訳 原書房 2013年4月30日初版第1刷発行
  17. ^「改訂新版 SUPERサイエンス 爆発の仕組みを科学する」p104-107 齋藤勝裕 シーアンドアール研究所 2024年4月19日初版発行
  18. ^「改訂新版 SUPERサイエンス 爆発の仕組みを科学する」p122-124 齋藤勝裕 シーアンドアール研究所 2024年4月19日初版発行
  19. ^「改訂新版 SUPERサイエンス 爆発の仕組みを科学する」p124 齋藤勝裕 シーアンドアール研究所 2024年4月19日初版発行
  20. ^「改訂新版 SUPERサイエンス 爆発の仕組みを科学する」p121-122 齋藤勝裕 シーアンドアール研究所 2024年4月19日初版発行
  21. ^「兵器の歴史」p33-34 加藤朗 芙蓉書房出版 2008年1月25日第1刷発行
  22. ^「火の科学 エネルギー・神・鉄から錬金術まで」p71 西野順也 築地書館 2017年3月3日初版発行
  23. ^「世界を変えた火薬の歴史」p262-266 クライヴ・ポンティング著 伊藤綺訳 原書房 2013年4月30日初版第1刷発行
  24. ^「花火の科学と技術」p5 丁大玉・吉田忠雄 プレアデス出版 2013年5月2日第1版第1刷発行
  25. ^「改訂新版 SUPERサイエンス 爆発の仕組みを科学する」p112-115 齋藤勝裕 シーアンドアール研究所 2024年4月19日初版発行
  26. ^「爆発物探知・CBRNEテロ対策ハンドブック」p9-11 火薬学会爆発物探知専門部会編 中村順・中山良男編著 丸善出版 平成28年1月25日発行
  27. ^https://business.nikkei.com/atcl/opinion/15/101059/111500074/ 「驚くほど刑罰が軽かった天津爆発事故の一審判決 死者・行方不明者173人、経済損失1078億円も高級官僚は安泰」日経ビジネス 2016.11.18 2025年8月23日閲覧
  28. ^https://www3.nhk.or.jp/news/special/new-middle-east/beirut-explosion/ 「レバノン大規模爆発 いったい何が」NHK 2020-8-20 2025年8月23日閲覧
  29. ^鉄道:鉄道のテロ対策 - 国土交通省”. www.mlit.go.jp. 2024年10月1日閲覧。
  30. ^e-Gov 法令検索”. laws.e-gov.go.jp. 2024年10月1日閲覧。
  31. ^https://kotobank.jp/word/%E7%88%86%E7%99%BA%E7%89%A9%E5%8F%96%E7%B7%A0%E7%BD%B0%E5%89%87-113820#goog_rewarded 「改訂新版 世界大百科事典 「爆発物取締罰則」」コトバンク 2025年9月4日閲覧
  32. ^https://www.bengo4.com/c_1009/guides/1560/ 「激発物破裂罪が成立する要件と刑罰の内容を解説」弁護士ドットコム 2019年10月31日 2025年9月4日閲覧
  33. ^「火薬のはなし」p237-240 松永猛裕 講談社 2014年8月20日第1刷発行
  34. ^https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/cwc/agreement_bakutero_outline.html 「爆弾テロ防止条約の概要」日本国経済産業省 2025年9月4日閲覧
  35. ^「火薬のはなし」p241-242 松永猛裕 講談社 2014年8月20日第1刷発行
  36. ^https://www.jniosh.johas.go.jp/groups/tdg/tdg.html 「国連危険物輸送勧告(TDG)」労働安全衛生総合研究所 2025年9月9日閲覧
  37. ^「火薬のはなし」p242 松永猛裕 講談社 2014年8月20日第1刷発行

関連項目

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外部リンク

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