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洗掘

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
洗掘の発生状況を模した図

洗掘(せんくつ)とは水流により川底堤防が削り取られることである[1]

原理

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洗掘は、河床が広い範囲にわたって全面的に低下する河床低下(全面低下)と、橋脚付近の河床が橋脚の影響で局所的に低下する局所洗掘(局部洗掘)に分かれる[2]。ただし、文献によっては河床低下は洗掘と異なる現象としているものがある[3]

洗掘の原因となる要素は流速水深・流れの向き・河床材料の粒径構成・岩質・河床勾配・橋脚の形状など数多く、一義的に洗掘深さを算定するのは難しい[4]。ただし、鉄道橋の橋脚での局部洗掘による洗掘深さが橋脚幅の1.45倍以上(水深が橋脚幅以上の場合)の式が一般的に用いられている[3]。時代が下るにつれて河川から砂利の乱掘や砂防ダムの整備で河床低下が進んだため、橋脚などは根入れ長が浅くなり、洗掘による事故の危険性が高まっている[4]

河床低下

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河床低下は、河幅のほぼ全域にわたって低下するものと、流心の移動により河床の低い所が移動するものがある[2]。この内の前者の全域にわたる河床低下は、主に河川の全流域での環境変化に絡むもので、特定の地点で流入土砂より流出土砂の方が多い時に生じる[2]。上流でダム設置や砂防工事が行われた場合、あるいは河川改修や砂利採取が行われた場合に発生することが多い[2]。後者の流心の移動に伴むのは、河川が蛇行しようとする特性により徐々に起きるものと、近くでの河川工事や砂利採取による河川環境の変化で急激に生じるものがある[5]

局所洗掘

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局所洗掘は、橋脚などの水流に対する障害物の影響で局部的な河床の低下が生じるものである[6]洪水海流津波なども原因となる[7]。河床材料が洗掘により失われると、橋脚は支持力を失い変状を起こす[8]

橋梁の周辺で水流の流速が高まり、が発生することで洗掘が生じるとされる[7]。橋脚上流部での下向きの流れが河床に達すると河床材料を巻き上げ、下流側に流される[3]。橋脚の下流端ではカルマン渦が発生することでより洗掘が大きくなる[8]。洗掘深さは最大で橋脚幅の1.5倍に達し[9]、4 m(メートル)に達することもあるという[7]。河川が増水するほど水流は速くなり、その分洗掘が大きくなる[3]。洗掘の平面形状は橋脚の形の相似形(同じ大きさ・大きさが異なる)になる[3]

越流

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堤防は越流水のせん断力によって小段法尻が洗掘されることがある[10]。この洗掘が堤防を不安定な形状にさせ、最終的には破堤を招く[10]

防潮堤は基本的に津波の越流を想定せず設計されてきたため、東日本大震災では越流した津波が防潮堤前後の地盤を洗掘させ倒壊する事例が多く見られた[11]。まず、越流水が防潮堤背後の地盤を洗掘することで、地盤の抵抗力を著しく下げて倒壊させる[11]。また、越流水が地盤に浸透することで堤体背後から静水圧を掛けると同時に、防潮堤前面の水位が引き波で低下し、堤体前面の地盤も洗掘されて抵抗力が小さくなる[11]。その結果、堤体の高さ全域で静水圧が働くと同時に、前面の水位も下がるので、転倒に対する抵抗力は堤体の自重のみとなり、防潮堤が転倒する[11]

被害

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橋脚の基礎で洗掘が起きる様子を示したアニメーション

橋梁の事故で最も多いのが洗掘による橋脚の倒壊・傾斜・沈下である[7]。その数は地震による被災よりも多い[8]

橋梁の橋脚では直接基礎型式のものが最も洗掘されやすい[12]。古い橋梁は橋脚の数が多く、河床低下があれば洗掘されやすくなる[12]。次いで、ケーソン基礎も洗掘されやすいが、そのおおくが根入れの浅いオープンケーソン形式である[12]鋼管杭RC杭・PC杭など他の形式では施工機械の発達で深い基礎を設置できるようになったため、洗掘による被害が少ない[12]

  • 橋脚が洗掘により沈下した橋梁(日野橋)
    橋脚が洗掘により沈下した橋梁(日野橋

対策

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一般には既設・新設問わず洗掘の恐れがある橋脚に対しては基礎のフーチング全面に鋼矢板(シートパイル)を打ち回すか、基礎を深く根入れさせることが対策となる[12]。そのほか、河床にコンクリートブロックなどの重量物を設置する方法、橋梁付近の河床全体をコンクリートで覆う方法、橋梁の下流側にを設けて土砂を堆積しやすくする方法などがある[3]。対策の方法は河川の状況や現場の状況に応じて選択する[3]

ヨーロッパで見られる石積アーチ橋では、橋脚に石積の大きい基礎を設けることで洗掘対策とした[7]ハーディンジ鉄道橋バングラデシュ)や明石海峡大橋では橋脚の周りを予め掘り下げ、地盤面を捨て石で保護する方式を取っている[7]。明石海峡大橋では、最大流速毎秒4 mの中流が1日2回の干満を繰り返すことで洗掘深さが数十メートルと予測された場所であり、主塔基礎の数位の掘り下げた部分に砕石を網袋に詰めたフィルターユニットを全面に敷設し、その上に1トン級の捨て石で全面を被覆した[13]。これで主塔基礎の底面付近に静水域が生まれ、潮流はその上を流れることで洗掘を起こす渦が生じづらくなった[13]

脚注

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[脚注の使い方]
  1. ^補足 河川構造物”. 国土交通省. 2025年9月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年9月8日閲覧。
  2. ^abcd野沢太三・森重竜馬 1987, p. 98.
  3. ^abcdefg佐溝昌彦 2008, p. 38.
  4. ^ab塩井幸武・橋詰豊 2020, p. 270.
  5. ^野沢太三・森重竜馬 1987, pp. 98–99.
  6. ^野沢太三・森重竜馬 1987, p. 99.
  7. ^abcdef塩井幸武・橋詰豊 2020, p. 58.
  8. ^abc塩井幸武・橋詰豊 2020, p. 271.
  9. ^末次忠司 2015, p. 63.
  10. ^ab末次忠司 2015, p. 55.
  11. ^abcd港湾学術交流会 2014, p. 171.
  12. ^abcde塩井幸武・橋詰豊 2020, p. 273.
  13. ^ab塩井幸武・橋詰豊 2020, p. 274.

参考文献

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  • 野沢太三・森重竜馬『土木構造物の問題点と対策』吉井書店、1987年2月26日。doi:10.11501/12650213 
  • 佐溝昌彦「ワンポイント基礎知識 [13-4] 橋梁の洗掘」『Railway Research Review』、鉄道総合技術研究所、2008年3月、38頁。 
  • 港湾学術交流会『新版 港湾工学』朝倉書店、2014年6月20日。ISBN 978-4-254-26166-0 
  • 末次忠司『実務に役立つ総合河川学入門』鹿島出版会、2015年1月30日。ISBN 978-4-306-02465-6 
  • 塩井幸武・橋詰豊『構造物基礎の教科書』総合土木研究所、2020年7月31日。ISBN 978-4-915451-19-5 

関連項目

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