| この項目では、企業の経営上の中枢となる事務所について説明しています。商法で営業上の主軸となる店舗を指す用語の「本店」、または商法用語ではない日本語で、主たる営業所の意味の「本店」については「本店」を、神社用語の「本社」については「神社」をご覧ください。 |
本社(ほんしゃ、英語:Head office ヘッドオフィス あるいはheadquarters ヘッドクォーター略してHQ)は、会社(企業)において最も経営機能が集中している事務所のことであり、通常、会社の最高意思決定者であるCEOや代表取締役を含め主要幹部が意思決定の場としており、会社の経理部や人事部も備えた事務所のことである。
本社と主に対比されている概念は「支社」である。本社 / 支社 という対比が根底にある。
なお「本社」は、「主たる営業所」を意味する商法上の「本店」とは必ずしも一致しない。
英語ではheadquarters を「組織の運営・指揮・統制が行われる主要な拠点」あるいは「中心事務所・本部」などと定義している。[1][2]なお、英語では “headquarters” は形式上複数形をとる単語であるが、意味的には「単一の中枢拠点」を指すことが多く、文法的には単数扱い(is)または複数扱い(are)の両方が用いられる。そしてheadquartersは民間企業の本社だけでなく、軍や警察についてもheadquartersの語を用いる。本項目では日本語の本社と英語のheadquartersの中の民間企業のものを扱う。head officeを使うかheadquarters(HQ)を使うかは、報道や記者個人によっても揺らぐ。head officeとheadquartersは、どちらが正解とか正式というわけではなく、表現の揺らぎの範疇である。[例 1] HQと表記すると2文字で済むので、特に忙しい会社や忙しい部署、またせっかちな人はそちらを好む。
通常、本社には、会社の最高意思決定権を持つ人物(CEOや代表取締役など)や主要な経営幹部が常駐する部屋、最高意思決定者を補佐して経営企画を立案する部署("経営企画部"など)、人事部・経理部などの管理部門、営業の本部などが置かれ、その会社の中枢の役目を果たす。
世界の多くの国で、法的に主たる事務所として登記されている場所と、実質的に経営の中枢が置かれている事務所の場所がずれるという現象が起きている。#登記上の事務所と実際の主要な事務所の場所のずれ
企業における "本社"は、産業化、技術革新、組織理論の進展と密接に結びつきながら登場し、時代とともに変容してきた。以下に主要な変遷を示し、デジタル化やリモートワークが進んだ現代の企業における"本社"の課題も示す。
19世紀後半から20世紀初頭にかけて、自動化機械の普及、鉄道・電信・電話といった通信交通技術の発展により、製造・流通・販売の各段階が遠隔地で分散化されるようになった。こうした分散工程(flow process)にはボトルネックの存在が不可避であり、各部門を調整・統制する集中的な指揮機能が求められるようになる。このような技術的要求が、中央統御型の本社機能を持つ企業構造を促したという説がある。[3]
企業が多角化・地域展開を進めるにつれて、単一の本社がすべての機能を直接統括することは処理能力の限界を迎えるようになる。こうした経営上の制約を克服する手段として、「多部門型組織(multidivisional form, 略称 M‑form)」が導入された。本社は、各部門(事業単位)を統括しつつ、長期戦略・資源配分・企業統治を担う中枢機能と位置付けられるようになった。[4]
組織論の古典的研究者アルフレッド・チャンドラー(Alfred D. Chandler Jr.)は、多部門型組織を採用した企業において、本社は事業部間の調整・目標設定・資源配分を担う役割を担ったと唱え、その理論は現代企業組織論の基盤の一つとなっている。
20世紀後半には、大企業の多くが M‑form を採用し、本社機能の階層性やスタッフ機能の強化が進んだ。
近年では、デジタル化・グローバル化・リモートワーク普及・意思決定迅速化などが、本社機能に変化を及ぼしている。研究によれば、本社(corporate headquarters, CHQ)は、スマート情報処理機能・オペレーティング部門との関係強化・価値創出機能の再定義などを通じて変化を遂げつつある。[5]
また、デジタル時代における本社の価値創出に関する視点も議論されるようになっている。例えば、How corporate headquarters add value in the digital ageでは、情報技術が本社と現場部門との連携強化や意思決定支援を促す可能性を論じている。[6]
さらに、一部企業では実質的に本社を解体・分散・仮想化する動きも見られ、「集中型本社」モデルの限界と代替構造の模索が続いている。
世界企業ランキングではアメリカの企業が上位を占めるので、まずアメリカの企業の事情から説明する。
たとえば、アメリカ合衆国は連邦制であり、州ごとに法律が異なり、デラウェア州の会社法が企業に有利で税務・訴訟面でもメリットがあるため、登記のみそこに置き、実務機能を他州に置くことが一般的である。[例 2]
日本でも「本社」と商法上の「本店」は同一とは限らない。会社によっては「本社」と称する営業所が登記上の本店と異なることもある。[例 3]
日本国内では主に次のような経緯、事情で起きる。
(本社所在地が適度にアメリカの広い国土に分散しているアメリカの企業と異なり)日本の上場企業では、統計的に見てその本社が東京と大阪に過度に集中しすぎている、ということが指摘されることがある。
大企業においては、東京本社や大阪本社など、複数の本社を置き、本社機能を分散している場合がある[例 6][例 7]、日本取引所グループ</ref>。また、大阪・名古屋などの他都市に本社(登記上の本店)があっても、「東京本部」「東京営業部」「東京本社」といった東京の拠点が実質上の本社になっている企業もある[例 8]。
このような会社の場合、一般的に日本の国税は登記上の本店の所在地を管轄する税務署(大規模な会社は国税局)が徴収・監督する。また、会社の組織に関する訴えは、登記上の本店の所在地を管轄する地方裁判所の専属管轄となる。
所在地に関しては、好立地のオフィスビルを本社とする企業が多い一方、自社の作業施設に本社を併設する企業もある[例 9]。
イギリスでも、法人登記機関(Companies House)に登録される住所は "registered office" であり、実際の経営拠点("head office" や "corporate headquarters")とは別の場所に設定されることがある。だが、アメリカほど多くはない。イギリスで「“headquarters” ≠ “registered office”」が起きる理由は、(1)法制度上の自由度- 登記住所と実務拠点を別にすることが合法で、慣行としても一般的だから (2) 税制上のメリット - 地域ごとに事業税(business rates)や不動産コストが異なるため (3)創業地への配慮・象徴性- 歴史的本拠地や創業地にregistered officeを残すことがある (4)法的通知と実務の分離 - 登記上の住所は「通知の受領先」であり、日常業務を行う必要はないからという理由で分離する などであり、イギリスでは、理由は会社ごとに異なる。
会社や神社が、自社のことを指すときに使う代名詞として「本社」を用いる場合がある[7]。「当社」「弊社」などともいう。
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