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年収の壁

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。
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年収の壁(ねんしゅうのかべ)とは、税制社会保険における比喩。複数の意味で用いられる。

年収の壁

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2024年時点で税制による103万円の壁と、社会保険による106万円の壁130万円の壁が存在する[5]

社会保険料と税を一体化し、給付付き税額控除、あるいは給付の導入等で解消が可能とされる[6][7]

扶養控除

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→「扶養控除」も参照

103万円の壁

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2024年時点で、扶養を受ける者の年収から給与所得控除を引いた金額が、扶養者への扶養控除の適用基準である48万円を超えた場合、(扶養者の)扶養控除が消失し世帯全体での収入が急減する現象[注 1][9]

所得税額が計算される対象は、扶養控除における適用基準の判定対象である「合計所得金額」からさらに基礎控除等を差し引いた金額の「課税総所得金額」であり、本制度における基準額の「48万円」は基礎控除とは何ら関係がない[8]

2025年度の税制改正大綱で、特定扶養親族や特定親族(扶養を受ける19歳以上23歳未満)の被扶養者について配偶者控除と同様、年収が150万円を超えた場合は段階的に扶養者の控除額を減らしていくものとされた[10][11]。これにより世帯単位での手取りが急減する現象は解消されるとされる[12]。一方で、特定扶養親族や特定親族についても、社会保険による130万円の壁は残るとされている[12]

社会保険における壁

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2025年6月において、社会保険には106万円の壁と130万円の壁が存在するが[13]、3年以内に改正の予定である[14]

106万円の壁

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学生以外の被扶養者(配偶者)において、一定の条件を満たした上で、年収(通勤手当を含まない)が106万円を超えると、厚生年金保険料と健康保険料がかかり始める[15][16]。厚生年金における年収要件については、撤廃が検討されている[16]

健康保険(被用者保険)適用事業所において、保険加入義務が生じる[17]。年収106万円以上の週20時間以上労働になると(勤務期間1年以上で従業員数51人以上の企業に限る、学生は対象外)、会社の被用者保険(健保・年金)への加入義務が生じることとなった(2016年10月から)[18]

130万円の壁

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扶養対象者の年収(通勤手当や不動産収入などを含む)が130万円以上(60歳以上や障害者は180万円以上)だと国民年金の保険料がかかり始めること[15][19][18]

解消済みとされる「壁」

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配偶者控除

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→「配偶者控除」も参照

103万円の壁(150万円の壁)

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財務省によれば、既に「壁」はなくなったものと説明される[20]。一方で、パートタイマーアルバイトで働き、配偶者が配偶者控除を受ける者には「心理的な壁」が残り、働き控えにつながっているとされることがある[21]

配偶者の所得税における配偶者控除から除外され、配偶者特別控除の対象となる[18]。1987年の配偶者特別控除創設前迄は100万円を超えると配偶者控除の対象から外れため[22]、給与収入を103万円以内に収めようとする行為が見られた(103万円の壁)[18]。しかし、2018年分以後は給与収入が103万円を超えても201万5,999円までは、配偶者特別控除(最高38万円)の対象となって段階的に控除が受けられる仕組みになっており、201万円6千円以上になり控除が無くなる[18]

もっとも、企業側が家族手当の支給対象を控除対象配偶者に限っている場合、103万の壁を超えると総合収支では家族の収入が減少する可能性があるため、必ずしも年末の就労調整が非合理的とはいえない。しかも、住民税では控除対象配偶者でなくなると、均等割・所得割の非課税基準の加算額の人数に算定されないため、配偶者控除であれば住民税非課税又は均等割課税であったものが、住民税の均等割課税又は所得割課税の対象となることがある[要出典][23]

批判

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日本労働組合総連合会は「2025年度 重点政策」において、年収の壁の対策として給付付き税額控除を支持しており、社会保険料を負担する給与所得65~250万円の層においては、その保険料の半額を所得税から控除し、控除しきれなかった部分は給付することを提案している[24]

日本総合研究所西沢和彦は、社会保険料制度について「正社員の夫とそれを支える専業主婦の妻」という過去の価値観に基づいた制度の抜本的な見直しが必要だとしている[13]

東京財団政策研究所森信茂樹は、英国の世帯単位の手取り所得に応じて額が決まるユニバーサルクレジット英語版を例に挙げ、中低所得者に対して給付付き税額控除を行うことで、社会保険料の106万円や130万円の壁の対策になるとしている[3]

高橋洋一は、106万円の壁のような収入の逆転現象・就労控えが生じないように、欧米では税額控除などの制度を導入していることを指摘し、マイナンバーを利用することで、把握した世帯の収入に応じて社会保障給付を逓増・逓減させたりする制度が求められているとしている[25][26]

年収の「坂」

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2024年度時点で、所得が基礎控除給与所得控除の合計である103万円を超えると、超えた分の所得に所得税がかかり始めることも「103万円の壁」と呼ばれることがある。

一方で、この場合控除された所得に課税は行われない(超過累進課税)ため、収入の逆転現象は生じない[4][27]。したがって、これを「壁」と呼ぶこと自体が誤解だという見解が存在する[28]。一部ではこれを「坂」と呼ぶ場合がある[29]

108万円(110万円)の壁

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43万円(住民税基礎控除)+ 65万円(給与所得控除)= 108万円 < 110万円 (2026年度より)

都内23区、大阪市京都市その他の指定都市など1級地では給与収入が110万円を超えると本人にも税金が課される。住民税の基礎控除が43万円なので、給与収入が108万円を超えると税金が課されると思われがちであるが、実際に1級地では合計所得金額が45万円以下の場合には、所得割も均等割も課されない仕組みになっている。[30][31][32]。住民税の非課税の範囲は市町村の条例で定められており、市町村ごとに異なる[33][34]。例えば、南山城村では前年の合計所得金額が38万円を超えると税金が課される。[35]

そのほかの「壁」

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1億円の壁

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→詳細は「1億円の壁」を参照

「年収の壁」とは異なり、所得が1億円を超えると税負担率が減少する傾向にあることを指す言葉。労働所得金融所得の税率の違いによるとされる。

脚注

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注釈

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  1. ^所得が給与所得のみの場合。所得税法には「合計所得金額」という言葉が定義されており、この「合計所得金額」のうち、「総所得金額」に「給与所得の金額」が含まれ、この金額が給与所得控除後の金額である事により、48万円と給与所得控除の合計の103万円が基準となることによる[8]

出典

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  1. ^年収の壁”. 野村総合研究所(NRI) (2023年12月12日). 2025年1月9日閲覧。
  2. ^配偶者特別控除「150万円の壁」突破 上限160万円に引き上げへ”. 毎日新聞. 2025年1月11日閲覧。
  3. ^ab問題は「103万の壁」より「貧困の罠」、根本的な対策は給付付き税額控除で(森信茂樹) - エキスパート”. Yahoo!ニュース. 2025年1月11日閲覧。
  4. ^ab「年収の壁」の“誤解” 103万円は本当に壁と言えるのか?本丸は「社会保険料の壁」 緩和ではなく実態は基準強化か”. TBS CROSS DIG with Bloomberg (2024年11月23日). 2025年1月9日閲覧。
  5. ^日本放送協会 (2024年11月8日). “103万の壁って?106万、130万も…違いは?年収の壁を詳しく | NHK”. NHKニュース. 2025年1月8日閲覧。
  6. ^「103万円の壁」の問題は、大きなビジョンの下で、給付付き税額控除などの議論を—連載コラム「税の交差点」第124回 | 研究プログラム”. 東京財団政策研究所. 2025年1月18日閲覧。
  7. ^内政部, 時事通信 (2024年12月21日). “特定扶養控除の年収要件大幅緩和 国民民主の要求丸のみ―税制改正:時事ドットコム”. 時事ドットコム. 2025年1月9日閲覧。
  8. ^abe-Gov 法令検索”. laws.e-gov.go.jp. 2025年2月14日閲覧。
  9. ^No.1180 扶養控除|国税庁”. www.nta.go.jp. 2025年1月12日閲覧。
  10. ^特定扶養控除、150万円に緩和 学生バイトの「年収の壁」で政府・与党”. 日本経済新聞 (2024年12月12日). 2025年1月12日閲覧。
  11. ^内政部, 時事通信 (2024年12月21日). “特定扶養控除の年収要件大幅緩和 国民民主の要求丸のみ―税制改正:時事ドットコム”. 時事ドットコム. 2025年1月9日閲覧。
  12. ^ab平石隆太. “2025 年度税制改正大綱解説 大綱の公表で完結せず、法案の衆議院通過まで議論が続くか”. 大和総研 金融調査部. 2025年1月12日閲覧。
  13. ^ab日本放送協会 (2023年7月3日). “「年収の壁」対策どうなる 106万円 130万円…支援強化パッケージは | NHK”. NHK首都圏ナビ. 2025年1月12日閲覧。
  14. ^「年収の壁」への対応(厚生労働省)
  15. ^ab「年収の壁」対策がスタート!パートやアルバイトはどうなる?”. 政府広報オンライン. 2025年1月12日閲覧。
  16. ^ab日本放送協会. “「106万円の壁」撤廃案 審議会部会で了承 厚生労働省|NHK 首都圏のニュース”. NHK NEWS WEB. 2025年1月12日閲覧。
  17. ^健康保険法 第3条9のロ
  18. ^abcde永由裕美「女性の活躍」 と税・社会保障制度」『DIO』第297巻、連合総研、2014年、NAID 40020236433 
  19. ^た行 第3号被保険者”. www.nenkin.go.jp. 2025年1月12日閲覧。
  20. ^日本放送協会 (2024年11月7日). “年収の壁 見直すとどうなる 減税額 年収による違いは? 基礎控除 給与所得控除 課税所得 103万円の壁の仕組みとは| NHK”. NHK首都圏ナビ. 2025年1月11日閲覧。
  21. ^日本放送協会 (2024年11月7日). “年収の壁 見直すとどうなる 減税額 年収による違いは? 基礎控除 給与所得控除 課税所得 103万円の壁の仕組みとは| NHK”. NHK首都圏ナビ. 2025年1月11日閲覧。
  22. ^配偶者控除を考える(財政金融委員会調査室)
  23. ^総務省|個人住民税
  24. ^日本労働組合総連合会2025年、10頁。https://www.jtuc-rengo.or.jp/activity/seisaku_jitsugen/teigen/。 
  25. ^高橋洋一 (2024年5月31日). “【日本の解き方】「配偶者控除」の見直し論相次ぐ 日本に「年収の壁」問題 欧米方式への移行は一案だが…〝便乗増税〟に警戒すべき(1/2ページ)”. zakzak:夕刊フジ公式サイト. 2025年1月11日閲覧。
  26. ^教育無償化や「106万円の壁」の解消、誰もが納得する方法はある”. ダイヤモンド・オンライン (2017年12月8日). 2025年1月11日閲覧。
  27. ^年収103万円の壁、実は大したことない!?手取りがガクッと減る「本当に怖い壁」とは”. ダイヤモンド・オンライン (2024年11月7日). 2025年1月9日閲覧。
  28. ^「年収の壁」の“誤解” 103万円は本当に壁と言えるのか?本丸は「社会保険料の壁」 緩和ではなく実態は基準強化か”. TBS CROSS DIG with Bloomberg (2024年11月23日). 2025年1月11日閲覧。
  29. ^労働力不足が主婦の労働を減らす「130万円の壁」の恐怖 | 株予報コラム”. 2025年1月11日閲覧。
  30. ^大阪市市税条例第19条
  31. ^京都市市税条例第17条の3
  32. ^個人住民税均等割の非課税限度額制度(総務省)
  33. ^地方税法第24条の5第3項
  34. ^地方税法第295条第3項
  35. ^南山城村税条例第24条第2項

関連項目

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国税
普通税
直接税
間接税
目的税
直接税
間接税
地方税
(道府県税)
普通税
直接税
間接税
目的税
直接税
間接税
地方税
(市町村税)
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