| 幕末太陽傳 | |
|---|---|
| 監督 | 川島雄三 |
| 脚本 | 田中啓一 川島雄三 今村昌平 |
| 製作 | 山本武 |
| ナレーター | 加藤武(クレジットなし[1]) |
| 出演者 | フランキー堺 左幸子 南田洋子 石原裕次郎 芦川いづみ 梅野泰靖 岡田真澄 二谷英明 小林旭 |
| 音楽 | 黛敏郎 |
| 撮影 | 高村倉太郎 |
| 編集 | 中村正 |
| 製作会社 | 日活 |
| 配給 | 日活 |
| 公開 | |
| 上映時間 | 110分 |
| 製作国 | |
| 言語 | 日本語 |
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『幕末太陽傳』(ばくまつたいようでん、新字体で幕末太陽伝とも表記)は、1957年(昭和32年)7月14日に公開された日本の時代劇映画。監督:川島雄三、主演:フランキー堺。モノクロ、スタンダード(1.37:1)、110分。
古典落語の世界観を取り入れた異色コメディ映画で、幕末の品川宿を舞台に起こるさまざまな出来事が、グランド・ホテル形式で描かれる。第31回キネマ旬報ベストテン(1957年度)で日本映画部門第4位に選出されたのちも、時代を問わず観客の支持を得ており、川島の代表作とみなされているだけでなく、日本映画史上の名作に数えられる。
フランキー堺演じる主人公が走り去るラストシーンで、彼がそのままスタジオを飛び出し、(製作当時の)現代の街並みを走り抜ける、という演出構想を川島は持っていたが、現場の反対を受け却下された(後述)。
(※タイトルバックにおいて、製作当時の品川宿=京浜国道・八ツ山橋周辺および、品川橋通りの様子が紹介され、ナレーションで「今は、北品川カフェー街と呼ばれる16軒の特飲街。売春防止法施行のため、閉鎖を余儀なくされている」と、舞台の歴史的経緯が伝えられる。)
文久2年(1862年)末。品川宿の妓楼「相模屋」前で、イギリス人と長州藩士が小競り合いとなる。その際に藩士・志道聞多のふところから金装の西洋式懐中時計が落ち、通りかかった佐平次という町人の男がそれをたまたま拾う。佐平次は仲間を連れ、懐中時計を使って金持ちを装い相模屋に入り、派手に遊んで飲み食いし、仲間を帰してそのまま居座る。
一方、売れっ子の遊女・こはるの部屋にもうひとりの居残り男がいた。長州藩士で攘夷の志士・高杉晋作であった。高杉は志道ら仲間とともに、御殿山に建設中の英国公使館の焼き討ちを計画していたが、建物の間取りがわからないために頓挫しかかっていた。高杉は佐平次が懐中時計を持っているのを見かける。時計はもともと高杉の私物で、金策のために志道に渡していたものだった。時計が売れなかったことを志道から聞いていた高杉は、時計をそのまま佐平次に贈る。
ある夜佐平次は、勘定を取りに来た妓夫の喜助に「無一文だ」と明かす。楼主の伝兵衛は怒り、佐平次に「居残り」を言い渡し、代金支払いの目処がつくまで行灯部屋(物置)に押し込めた。佐平次は給仕や幇間のまねごとをして座敷から座敷を渡り歩いて金を稼ぎ、彼が客をあしらう間に体を休める女郎たちに感謝されるようになる。
年の暮れ(西暦では年が明けて1863年)。佐平次は掃除のために高杉らの部屋に入り、たどんを片付けようとするが、激しい調子で止められる。それはたどんではなく、焼き討ちのために用意された手製の焼き玉であった。佐平次は盗み聞きによって彼らの計画をなんとなく知るようになる。
英国公使館の建設に従事する大工・長兵衛は、相模屋に借金をしており、担保として娘・おひさを預けていたほか、仕事を終えるたびに大工道具を相模屋に置いて帰ることを決められていた。おひさは飯炊きや風呂焚きといった女中仕事に専念していたが、期日までに借金を返すことができず、おひさは女郎になることが決まる。おひさに惚れていた相模屋の息子・徳三郎は、女郎になる前に婚約すればすべてが帳消しになると考え、佐平次に十両を渡し、仲立ちを頼む。佐平次は高杉からもらった懐中時計を徳三郎に渡し「これを質入れすれば身請けするだけの大金になる」と吹き込む。徳三郎は店を出た途端に伝兵衛と鉢合わせし、さらに時計の蓋が開いて内蔵のオルゴールが鳴ってしまう。時計のことを以前から知っていた伝兵衛は徳三郎の魂胆を見抜いて怒り、徳三郎を土蔵の座敷牢に閉じ込めてしまう。おひさは父親の大工道具を使って救出を試みるが露見し、ともに座敷牢に閉じ込められる。
ここまでの様子を見届けた佐平次は長兵衛にかけ合い、おひさの解放を約束するのと引き換えに、英国公使館の絵図面を手に入れる。佐平次は高杉らに絵図面を売り、またも儲ける。高杉らが小舟で焼き討ちに出発する夜、佐平次は徳三郎とおひさを連れてきて船に同乗させ、駆け落ちさせる。
御殿山に火が上がり、女郎や客たちが鈴なりになって見物するのを尻目に、佐平次は「ここらが潮時だ」と逃げるための荷造りを始める。そこへ喜助が飛んできて「こはるの客・杢兵衛お大尽が『こはるを呼べ』と大騒ぎしている」と報告し、佐平次に対応を頼む。嫌気が差した佐平次は杢兵衛に「こはるは急死した」と告げ、座敷を去る。
寝静まる女郎や妓夫たちを見届け、佐平次は相模屋を出る。すると提灯を持った杢兵衛が待ち受け「墓に案内しろ」と佐平次に言う。佐平次はしかたなく近くの墓地に杢兵衛を連れて行き、適当な石塔を指して「こはるの墓だ」と教えた。杢兵衛は一心に拝むが、ふと顔を上げると、「享年二歳」となっていた。「墓石を偽ると地獄に落ちねばなんねえぞ」と怒る杢兵衛を尻目に、佐平次は「地獄も極楽もあるもんけえ。俺はまだまだ生きるんでえ」と捨て台詞を吐き、東海道の松並木を駈け去って行った。
脚本段階では、上記のラストシーンに続き、墓場のセットが組まれているスタジオ(と観客に分かる状況)を佐平次が走り抜け、さらにスタジオの扉を開けて外に飛び出し、タイトルバックに登場した現代(1957年)の品川へ至り、そこにそれまでの登場人物たちが現代の格好をしてたたずみ、ただ佐平次だけがちょんまげ姿で走り去っていく、という案があった(採用されなかった経緯は下記)。
本作の冒頭に表示される「日活製作再開三周年記念」とは、戦時中の企業整備令(1942年)によって製作部門が(大都映画、新興キネマとともに)大映に合併したことで配給専門の会社となっていた日活が、戦後の1954年に日活撮影所が再興したことで自社作品の製作を再開してから3周年という意味である。新生日活は撮影所再開に際し、主に技術部門を東宝から、監督部門を松竹大船撮影所からそれぞれ引き抜いた。本作をまかされた川島雄三もまた、松竹大船からの移籍組(他に西河克己、鈴木清順、今村昌平などがいる)であった。
脚本に原作はなく、田中啓一(山内久の変名)、本作のチーフ助監督も務めた今村昌平、川島の3人が共同でオリジナル脚本を執筆した。落語『居残り佐平次』から主人公を拝借し、『品川心中』『三枚起請』『お見立て』など、遊郭・妓楼を舞台にした落語の演目の要素が随所に散りばめられ、英国公使館焼き討ち事件が題材に加えられた。
日活は当初文芸映画や新国劇との合作を主としたが、1956年に『太陽の季節』を大ヒットさせると、同作出演により新時代のスターとなった石原裕次郎らが主演する若者向けの作品を量産する路線に転換した。『太陽の季節』など一連の「太陽族映画」に対する世間の風当たりは強く、日活内部でもこの路線を拒否する傾向が強かった。そんな中で川島らが会社に提出した脚本は幕末の「太陽族」を意識させるものであり、以後映画が完成するまでの間、川島と日活上層部との軋轢が絶えなかったという。
川島は本作を最後に日活から東京映画へと移籍することになった。記念作品としてシリアスな大作を期待されたにも関わらず喜劇映画となったことや、石原や小林旭などのスター俳優を脇に回し軽喜劇で人気を博していたフランキー堺を主役に据えたことおよび、品川宿のセット予算などの制作費の問題によって、会社と現場が軋轢を生じたこと、そして川島がかねてから抱いていた待遇の不満などが積み重なってのこととされる。
日活が2012年に創業100周年を迎えることを記念して、それに先立つ2011年に、日活と東京国立近代美術館フィルムセンターの共同事業として本作のデジタル修復作業が行われた。修復の際、本作で録音を担当した橋本文雄が、「録音・修復監修」の肩書で参加した。
このデジタル修復版は同年に世界各国で巡回上映された[4]。日本でも一般公開された[1][5]のち、12月より日本全国でも順次公開された。
映画雑誌等で、以下のように選出されている。
上記のラストシーン案は、のちに映画人に知られるに至り、さまざまな作品でオマージュされている。
本作を原案とした同名タイトルの舞台化作品が複数上演されている。
江本純子の脚本・演出、青木崇高の主演で、2015年9月に本多劇場で上演された[7]。
2017年4月から7月まで、宝塚歌劇団雪組公演として宝塚大劇場と東京宝塚劇場で上演。脚本・演出は小柳奈穂子が担当。主演は、早霧せいな・咲妃みゆ。併演はShow Spirit『Dramatic “S”!』(作・演出は中村一徳)。本作は早霧と咲妃の退団公演であった[8]。
また、宝塚大劇場公演は、宝塚歌劇団103期生の初舞台公演であった[9]。
『川島雄三監督生誕100周年プロジェクト 幕末太陽傳 外伝』の題で2019年4月18日 - 28日、三越劇場にて上演された。脚本・演出:なるせゆうせい[11][12]。
川島雄三監督作品 | |
|---|---|
| 1940年代 | ニコニコ大会 追ひつ追はれつ(1946) |
| 1950年代 |
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| 1960年代 | |
| 映画 | 太陽の季節 -狂った果実 -乳母車 -地底の歌 -月蝕 -お転婆三人姉妹 踊る太陽 -ジャズ娘誕生 -幕末太陽傳 -俺は待ってるぜ -嵐を呼ぶ男 -陽のあたる坂道 -赤い波止場 -紅の翼 -清水の暴れん坊 -男が命を賭ける時 -あした晴れるか (映画) -あじさいの歌 -青年の樹 -アラブの嵐 -堂堂たる人生 -闘牛に賭ける男 -鉄火場の風 -街から街へつむじ風 -あいつと私 -男と男の生きる街 -青年の椅子 -金門島にかける橋 -太平洋ひとりぼっち -赤いハンカチ -鉄火場破り -泣かせるぜ -城取り -素晴らしきヒコーキ野郎 -赤い谷間の決斗 -二人の世界 -夜のバラを消せ -帰らざる波止場 -夜霧よ今夜も有難う -栄光への挑戦 -波止場の鷹 -遊侠三国志 鉄火の花道 -黒部の太陽 -忘れるものか -風林火山 -栄光への5000キロ -人斬り -嵐の勇者たち -ある兵士の賭け -スパルタ教育くたばれ親父 -戦争と人間 -富士山頂 -男の世界 -甦える大地 -影狩り -影狩り ほえろ大砲 -反逆の報酬 -凍河 -わが青春のアルカディア | ||||||||||
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