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親族 (しんぞく)は、血縁 関係または婚姻 関係で繋がりを有する者の総称である。「親戚 」(しんせき)、「親類 」(しんるい)とも言う。また、血縁が近いものを「近親(者) 」(きんしん(しゃ))とも言う。
血族 法において血縁の繋がっている者(血縁関係にある者)を血族という[ 1] [ 2] 。日本の旧民法 では「血統ノ相連結スル者ノ関係」と定義されていた(旧民法人事編19条1項)。血族には自然血族と法定血族とがある。なお、「血族」の概念はあくまでも法的な観点から決定される点に注意を要する(自然の血縁関係がなくとも養子縁組 は血族を擬制 し、他方、生物学上 の血縁関係があっても非嫡出子 は父や父の血族との関係を生じるためには父の認知 が必要となる〈民法第779条 〉)[ 2] [ 3] 。 自然血族 相互に自然の血縁関係(生物学上の血縁関係)にある者を自然血族という[ 4] [ 1] 。直系・傍系を問わない[ 2] 。また、法律上の婚姻によるか否かを問わない(ただし、日本の現行民法では嫡出推定 、認知 、親権 、氏 、扶養 、相続 などの点で法律上の差異がある)[ 2] 。 法定血族 法律の規定により血族とされる者。準血族 あるいは人為血族 ともいう[ 4] [ 2] 。日本の現行民法では養子縁組による血族関係のみが法定血族となっている。明治民法 (旧728条)では養子関係のほか継親子関係(父の後妻と先妻の子との間)や嫡母庶子関係(父の家に入った父から認知された庶子と父の妻との間)も法定血族とされていたが、現行民法 では姻族関係にとどまる[ 1] 。 姻族 配偶者の一方からみて他方配偶者の血縁関係にあたる者[ 5] 。婚姻関係にある配偶者の一方が、単独で養子として縁組を行った場合、養親と他方配偶者との間に姻族関係が成立するかについては見解が分かれる。 血統の連絡の関係を親系 という[ 6] 。以下のような種別がある。
血統が直上直下で連結する親族関係を直系 あるいは直系親という[ 7] [ 8] 。祖父母 、親 、子供 、孫 などがこれに含まれる。つまり、本人から見て、親の親の親…、あるいは、子の子の子…、で繋がる関係をいう。
血統が共同の始祖より直下する異なった親系に属する者相互の間の親族関係を傍系 あるいは傍系親という[ 7] [ 8] 。兄弟姉妹 、おじ おば 、甥 姪 などがこれに含まれる。わかりやすく言えば、本人及びある先祖の兄弟姉妹の子孫をいう。
誤用されがちであるが、直系・傍系を本家(嫡流 )・分家(庶流 )の意味で用いるのは誤り である。直系・傍系とは、あくまで、ある人物から見た相対的な生物学的血統上の関係をいうのであるから、分家の人物から見た本家の人物は傍系である。あくまで生物学的血統上の相対関係 であるから、家筋や家系とは一切関係がない 。
父及びその血族親を父系 (父系親、父方)、母及びその血族親を母系 (母系親、母方)という[ 6] 。
男系とは、父の父の父…というように男親のみを辿る血統であり、女系とは、母の母の母…というように女親のみを辿る血統をいう。血統がもっぱら男子で連絡する 場合を男系 あるいは男系親といい、それ以外 の場合を女系 あるいは女系親とする見解もある[ 6] 。
自分より前の世代 に属する者を尊属 という[ 7] 。尊属には父 母 、祖父母 、叔父 などが含まれる。
一方、自分より後の世代 に属する者を卑属 という[ 7] 。子 、孫 、姪 などがこれに含まれる。
尊属と卑属の区別は、現在では尊属を養子とすることを禁じた 民法第793条 くらいで法律効果はほとんどないに近いとされる[ 9] 。
自分と同世代 の者には尊属・卑属の区別はない[ 10] 。また、尊属と卑属の区別は血族に関するもので姻族にはこれらの区別はないとされる[ 10] 。
なお、「尊属」と「卑属」という語は、儒教 が起源の古代中国の輩行制度に由来するとされるが[ 11] 、親や祖父母の世代を「尊属」、子や孫の世代を「卑属」と呼ぶのは「子供を蔑む言い方だ」など法の下の平等 から問題であるとする論[ 12] や、これらの語は現代においては適切でないとして改めるべきとの論[ 13] がある。しかし、他の語に変えようがないのが現状とされる[ 14] 。
親族の範囲の定め方には、「等親 」という階級を用いて各種の親族ごとに法定する階級等親制 と、世数を「親等 」という単位で数えて客観的に定める世数親等制 がある[ 11] [ 10] 。
階級等親制(列記主義)とは、親族の範囲について「祖父母」、「夫の姪 」、「前夫の子」、「姑 の子」という具合に、各種の親族ごとにそれぞれ個別的に列記する形で定める法制[ 11] 。日本では大宝律令 や新律綱領 第5条がこの方式をとっていた[ 11] 。階級の単位には「等親 」を用いるが、等親は法定されたものであり客観的な世数とは一致しない(日本の新律綱領第5条は5等親までを親族とし、「夫」や「子」などを1等親、「妻」「妾」や「孫」などを2等親、「庶子 」や「継父」などを3等親、「兄弟ノ妻」や「前夫ノ子」などを4等親、「妻ノ父母」や「玄孫」などを5等親として規定していた[ 15] )。 日本の民法 などで採用されている方式。世数1世をもって1親等として数え、その親等の数によって客観的に親族の範囲を定める法制で、単位には「親等 」を用いるが、親等の数え方には下のローマ法 式とカノン法 式とがある[ 16] 。 親等 とは親族関係の親疎・遠近をなす尺度をいい[ 12] 、親等の数え方にはローマ法式とカノン法式がある。
ローマ法 に由来する方式。直系親族の場合には血族間の世数を数え、傍系親族間の場合にはそれぞれの共同始祖(同一の祖先)に至る世数を合算して親等とする方式(本人から世数を起算して共同始祖にまで遡ったのち一方の者まで下って世数を数える)[ 11] [ 10] [ 9] 。日本の民法は親族の範囲について、直系親族の場合には「親族間の世代数を数えて、これを定める」とし(民法第726条 第1項)、また、傍系親族の場合には「その一人又はその配偶者から同一の祖先にさかのぼり、その祖先から他の一人に下るまでの世代数による」(民法第726条 第2項)としており、ローマ法式の数え方を採用している。この法制では兄弟姉妹間は2親等(本人→共同始祖である父母で1親等→兄弟姉妹で2親等)、伯叔父母とは3親等(本人→父母で1親等→共同始祖である祖父母で2親等→伯叔父母で3親等)、従兄弟姉妹は4親等(本人→父母で1親等→共同始祖である祖父母で2親等→伯叔父母で3親等→従兄弟姉妹で4親等)となる。日本民法での親等の数え方については#日本国の法に基づく親族 も参照。カノン法 に由来する方式。寺院法主義あるいは教会法主義ともいう[ 11] 。直系親族間の数え方についてはローマ法式と同じだが、傍系親族間においては共同始祖(同一の祖先)に対する本人及び一方の者の世数をそれぞれ数え、数に差がある場合には多い方の数を親等とする方式[ 10] [ 9] 。この法制では兄弟姉妹間は1親等(本人と兄弟姉妹の共同始祖である父母から起算するため1親等)、伯叔父母とは2親等(本人と伯叔父母の共同始祖である祖父母から起算し、伯叔父母側は1親等、本人側は2親等となるが多い方をとるため2親等)、従兄弟姉妹も2親等(本人と従兄弟姉妹の共同始祖である祖父母から起算するため2親等)となる[ 12] [ 14] 。歴史的には教会が親族間の婚姻障害の範囲を広く適用するためにとられた方式とされるが、現在、この法制を採用している国はない[ 10] [ 9] 。異なる文化における親族の呼称 米国 の文化人類学 者、ルイス・ヘンリー・モーガン はアメリカ先住民 を中心とした様々な文化における親族の呼称について調査したのち、大まかに6種類のタイプがあるという結論を出した[ 17] 。
父親及び両親の兄弟は「父親」、母親及び両親の姉妹は「母親」と呼ぶ。従って、自分の兄弟と「父親」「母親」の息子は全員「兄弟」、自分の姉妹と「父親」「母親」の娘は全員「姉妹」と呼ぶ。 実親の「父親」「母親」と実の兄弟姉妹の「兄弟」「姉妹」のほかに、父親の兄弟は「父方のおじ」、父親の姉妹は「父方のおば」、母親の兄弟は「母方のおじ」、母親の姉妹は「母方のおば」に当たる名前と別々の呼称で呼ぶ。また、父親の兄弟姉妹の子は「父方のいとこ」、母親の兄弟姉妹の子は「母方のいとこ」と区別して呼ぶ。 実親の「父親」「母親」と実の兄弟姉妹の「兄弟」「姉妹」のほかに、両親の兄弟は「おじ」、両親の姉妹は「おば」と呼ぶ。両親の兄弟姉妹の子は区別なく「いとこ」と呼ぶ。 父親と父親の兄弟は「父親」、母親と母親の姉妹は「母親」、母親の兄弟は「おじ」、父親の姉妹は「おば」と呼ぶ。従って、自分の兄弟と「父親」「母親」の息子は全員「兄弟」、自分の姉妹と「父親」「母親」の娘は全員「姉妹」、「おじ」「おば」の子は「いとこ」と呼ぶ。 イロコイ型に似ているが、父親と父親の兄弟と父親の姉妹の息子は「父親」、母親と母親の姉妹は「母親」、母親の兄弟は「おじ」、父親の姉妹と父親の姉妹の娘は「おば」と呼ぶ。従って、自分の兄弟と「父親」「母親」の息子は全員「兄弟」、自分の姉妹と「父親」「母親」の娘は全員「姉妹」、「おば」の息子は「父親」、「おば」の娘は「おば」、「おじ」の子のみは「いとこ」と呼ぶ。 イロコイ型に似ているが、父親と父親の兄弟は「父親」、母親と母親の姉妹と母親の兄弟の娘は「母親」、母親の兄弟と母親の兄弟の息子は「おじ」、父親の姉妹は「おば」と呼ぶ。従って、自分の兄弟と「父親」「母親」の息子は全員「兄弟」、自分の姉妹と「父親」「母親」の娘は全員「姉妹」、「おじ」の息子は「おじ」、「おじ」の娘は「母親」、「おば」の子のみは「いとこ」と呼ぶ。 のち、Floyd Lounsburyはこの6つのほかに7つ目のタイプが存在すると提唱した[ 18] 。
基本的にはイロコイ型と同じであるが、とても複雑なシステムを取っている。「父親」:父親、父親の兄弟、父方の祖父の兄弟の息子、母方の祖母の兄弟の息子、父方の祖母の姉妹の息子、母方の祖父の姉妹の息子 「母親」:母親、母親の姉妹、父方の祖父の姉妹の娘、母方の祖母の姉妹の娘、父方の祖母の兄弟の娘、母方の祖父の姉妹の娘 「おじ」:母親の兄弟、父方の祖父の姉妹の息子、母方の祖母の姉妹の息子、父方の祖母の兄弟の息子、母方の祖父の兄弟の息子 「おば」:父親の姉妹、父方の祖父の兄弟の娘、母方の祖母の兄弟の娘、父方の祖母の姉妹の娘、母方の祖父の姉妹の娘 従って、自分の兄弟と「父親」「母親」の息子は全員「兄弟」、自分の姉妹と「父親」「母親」の娘は全員「姉妹」、「おじ」「おば」の子は「いとこ」と呼ぶ。
これらの区分は主に近親結婚 を避けるためであると言われる。多くの文化では兄弟姉妹同士の結婚は禁止されるが、いとこ同士の結婚は可能である。なお、日本語の「いとこ」に相当する親族であっても、親同士が同性であるか異性であるかを婚姻制度などにおいて重要視する文化が存在し、文化人類学 では特に親同士が同性のいとこを平行いとこ 、親同士が異性のいとこを交叉いとこ と呼び区別することがある。
なお、一部の言語では親等を親族の呼称に使われる習慣がある。例えば、朝鮮語 ではいとこを「4寸」、はとこ を「6寸」、みいとこを「8寸」と呼ぶ[ 19] 。
また、きょうだいの名称に関しては松本克己によって以下の類型が挙げられている[ 20] 。
自分の兄弟姉妹を一つの名称のみで表す。命名体系の移行する特殊な状況で生じる。 本人から見て年上の兄姉と年下の弟妹を区別する。 兄と姉は区別するが、年下の弟妹は区別しない。親族名称においては、年少者よりも年長者に関して性別の関与が加わる傾向があり、3項型の命名体系の内もっともよくみられる。 兄、姉、弟、妹の四つを区別する安定な体系である。 兄弟姉妹を性別によって二つに区別する。多くが印欧語族に属し、言語圏内部での変異がきわめて少ないとされる。性 をもつ言語はほぼすべてE型に属する。 同性か異性かを区別する。英語を土台としたトクピシンやのビスラマ語 といったクレオール言語 もこの体系である。 男女を同性側に区別するのがF3a型で、異性側に区別するのがF3b型である。 同性と異性の双方で男女を区別する。 同性側では年長、年少を区別するが、異性に関しては区別しない。 同性の年上、同性の年下、男性から見た姉・妹、女性から見た兄・弟の四つの名称がある。 項数が5以上のものを一括して多項型とする。これには様々な体型が含まれるが概ね二つに分けることができる。 複数の型が抱き合わさって組み合わさった体系であり、C型とF/G型の混が多い。ニヴフ語 、アルゴンキン語 、ナバホ語 などでそれぞれ異なる体型がある。 単一の型の中に多数の項が組み込まれた体系。もっとも項数の多い8項のものはセリ語 、ダコタ語 の、男性話者と女性話者でそれぞれ4つずつ用いる体系である。6項のものは、ノス語 、カヤビ語 の、同性のみ性別によりことなるものや、グリーンランド語 の体系がある。 このほかの多項型のものはC型/D型の変種と考えられる。ビルマ語 、ユピック語 、ムン語 、朝鮮語 などがそれぞれ異なる多項型の体系を持つ。 日本法での親族・親等 日本 の民法 は、6親等内の血族 、配偶者 、3親等内の姻族 を「親族 」として定める(民法第725条 )。
親等の数え方について日本の民法は先述のローマ法式を受け、民法第726条 により次のように定められている[ 11] 。なお、配偶者は自分と同一視 して親等を数え、配偶者の親族は自らの親族と同様に扱われる。
親等は親族間の世代数を数える(民法第726条 第1項)。つまり、親子関係を一世代移動するごとに1親等を数えることとなる。 本人又はその配偶者から同一の祖先に遡り、その祖先から他の一人に下るまでの世代数による(民法第726条第2項)。つまり、親子関係に基づく隣接する世代に対してのみ1親等の関係にあり、兄弟姉妹 などの同世代の間では直接1親等の関係にはない。兄弟姉妹、甥 姪 、兄弟姉妹の孫(姪孫、大甥大姪)については、本人との共通の先祖に遡るため、兄弟姉妹は“本人→親→兄弟姉妹”で2親等、甥姪は“本人→親→兄弟姉妹→甥姪”で3親等、兄弟姉妹の孫(姪孫、大甥 大姪 )は“自分→親→兄弟姉妹→甥姪→兄弟姉妹の孫(姪孫、大甥大姪)”で4親等がカウントされる。従兄弟姉妹 や再従兄弟姉妹 の場合にも同様に、従兄弟姉妹 は祖父母に、再従兄弟姉妹再従兄弟姉妹 は曽祖父母に遡ってカウントする。従って、兄弟姉妹は2親等、従兄弟姉妹 は4親等、再従兄弟姉妹 は6親等となる。 日本の民法上の親族の具体的範囲は次の通り(本人を基準として数字は親等を表す)。
6親等内の血族父母、子 祖父母、孫、兄弟姉妹 曽祖父母、曽孫、伯叔父母、甥姪 高祖父母、玄孫、兄弟姉妹の孫(姪孫、大甥・大姪)、従兄弟姉妹(いとこ)、祖父母の兄弟姉妹(大おじ・大おば) 五世の祖、来孫、兄弟姉妹の曽孫(曽姪孫)、従兄弟姉妹の子(従甥・従姪)、父母の従兄弟姉妹(従伯叔父母)、曽祖父母の兄弟姉妹(曽祖伯叔父母) 六世の祖、昆孫、兄弟姉妹の玄孫(玄姪孫)、再従兄弟姉妹(はとこ)、従兄弟姉妹の孫(従姪孫)、祖父母の従兄弟姉妹(従大伯叔父母)、高祖父母の兄弟姉妹(高祖伯叔父母) 日本の民法が血族を6親等内としているのは江戸時代の慣行に由来する[ 21] 。 配偶者は自己と同列として扱われ、いずれの親系にも属さず、血族にも姻族にも含まれず、親等や尊卑の区分もない[ 22] [ 23] 。このことは、本来、配偶者関係は本質的に他の親族関係とは異なる法原理に服する関係にあるためとされる[ 22] 。現代の各国における一般的な法制では、配偶者関係については他の親族関係の観念とは別個の観念として純粋に婚姻関係によって生じる諸々の法的効果が規定されるのが普通とされ[ 24] 、日本民法のような立法例は他に例をみない特異な法制とされる[ 5] 。日本でこのような法制がとられた背景には、律令以来の用例によったこと、配偶者が姻族の基準となること、配偶者を親族と別個に扱うことが立法上不便であることなどが理由とされるが、このような規定の仕方に対しては婚姻概念と親族概念の未分化を露呈するものであるとの批判がある[ 21] 。 3親等内の姻族配偶者の父母(舅・姑)、父母の再婚相手(継父母)、子の配偶者(嫁・婿)、配偶者の子(配偶者の前婚における子など) 配偶者の祖父母、祖父母の再婚相手(父母の継父母)、継父母の父母、配偶者の兄弟姉妹(小舅・小姑)、兄弟姉妹の配偶者(兄嫁・姉婿・弟嫁・妹婿)、継父母の子、孫の配偶者、配偶者の孫(配偶者の前婚における孫など)、子の配偶者の子(子の配偶者の前婚における子など) 配偶者の曽祖父母、曾祖父母の再婚相手(祖父母の継父母)、祖父母の再婚相手の父母、継父母の祖父母、配偶者の伯叔父母(舅・姑の兄弟姉妹)、伯叔父母の配偶者(おじ嫁・おば婿)、継父母の兄弟姉妹、祖父母の再婚相手の子、配偶者の甥姪(小舅・小姑の子)、甥姪の配偶者(甥嫁・姪婿)、兄弟姉妹の配偶者の子(前婚における子など)、継父母の孫、曽孫の配偶者、配偶者の曽孫(配偶者の前婚における曽孫など)、子の配偶者の孫(前婚における孫など)、孫の配偶者の子(前婚における子など) 以上から、再従兄弟姉妹(はとこ)の子供 や父母の再従兄弟姉妹、従兄弟姉妹の曽孫は7親等の血族、従兄弟姉妹(いとこ)の配偶者や、配偶者の兄弟姉妹の孫(姪孫、大甥・大姪)や、伯叔父母の配偶者の前婚の子などは4親等の姻族に当たるため、親戚であっても民法上の親族から外れ、いわゆる「遠い親戚」になる。
なお、親族の範囲は民法で法定されており、勘当 や義絶 など個人の意思でその範囲を変えることは認められない[ 25] 。現行法制度上、親族に法的な制裁を与える唯一の方法として、相続権の一切を剥奪する 相続廃除 があるが、家庭裁判所 の審判 を要するため、認められた例は多くない。
民法第725条については今後の立法上の課題として取り上げられることがある[ 26] [ 5] [ 27] 。親族の範囲の定め方については、婚姻取消権者の範囲や近親婚 にあたる範囲など対象となる親族の範囲について各条項ごとに個別的に定める個別的立法(限定主義)と親族の範囲について一般的な条項を設けて定める総括的立法(包括的限定主義)とがある[ 28] 。
日本法は後者の法制を採用しているが、日本民法のように血族と姻族の一定範囲を限って、これを「親族」と称して法律上特別の身分とする法制は現代では他に立法例をみないとされる[ 27] [ 14] 。この点については、民法上の「親族」の概念は現実の家族集団とかけ離れたものとなっていると指摘されており[ 27] 、また、実際には親類として交際しておりながら法律上は必ずしも親族とはされず、他方で全くの面識・交際のない者が法律上は親族とされることになると問題点を指摘する立場がある[ 29] 。そもそも血族関係・姻族関係には無限の広がりがあり、現実の親族による共同生活の範囲は一定の経済生活の下、習俗 や道徳 を中心に規律され構成されるものであるとされる[ 30] 。現代の各国における一般的な法制でも、血族は無制限に「血族」で、姻族については血族に準ずる関係とした上で、配偶者関係については他の一般の親族関係の観念とは別個の観念として規定されるのが普通とされる[ 24] 。そして、近親婚の制限、扶養義務、相続権などについて個別的に何親等内の血族あるいは姻族に対して一定の法的効果(権利義務)を認めるという形式で規定するのが通例とされる[ 31] 。
実際には日本の民法においても基本的には近親婚の制限、扶養義務、相続権などについて個別的に範囲が定められており、他方、民法725条に定める親族全体に包括的一律に一定の効果をもたせることは少ないことから、結果的に民法725条で親族の範囲を規定しているにもかかわらず、わざわざ個々の条項において具体的効果の及ぶ親族の範囲について更に定めるという二重の構成となってしまっているとして問題視する見解がある[ 11] [ 31] 。また、そもそも親族編の冒頭に本規定を置く意味があるのか疑問視する見解も出されている[ 32] 。そのため、昭和34年7月の「法制審議会 民法部会身分法小委員会仮決定及び留保事項」の第一では民法725条については削除すべきとされている(なお、将来的に民法725条を削除することとなった場合には他規定において調整すべきことが同項に明記されている)[ 26] [ 5] 。
自然血族たる身分は出生 によって取得する[ 33] 。戸籍法 上の手続がなくとも出生という事実があれば血族としての身分を取得する(最判昭50・4・8民集29巻4号401頁)。ただし、非嫡出子 については母子関係については分娩 の事実によって生じるが(最判昭37・4・27民集16巻7号1247頁)、父子関係については父による認知 が必要となる(民法第779条 、父方の血族との関係も同じ)[ 34] 。なお、原則として父母の離婚 や再婚 は子との血族関係には影響しない[ 34] 。 自然血族の身分は死亡 により消滅する[ 35] 。また、子が特別養子 となったときも消滅する(民法第817条の9 )。 法定血族たる身分は養子縁組 によって取得する(民法第727条 )。これにより養子は養親の嫡出子と同様の血族関係となるが、養子についてのみ血縁関係を生じるのであり養子の血族と養親の血族の間に血族関係は発生しない[ 36] 。フランス法 、ドイツ法 、英米法 では養子縁組により養子は完全に嫡出子 と同様の関係となり実方との関係を断絶させるが、日本法では特別養子 制度を設けており特別養子となる場合に限って実方との関係を断絶させる(民法第817条の2 ・民法第817条の9 )。 法定血族の身分は死亡、離縁 、養子縁組の取消しにより消滅する[ 37] 。 配偶者 たる身分は婚姻 によって取得され、離婚 や婚姻の取消し によって失われる[ 38] 。
姻族 たる身分は(当事者となる配偶者の)婚姻によって取得され、離婚や婚姻の取消しによって失われる[ 38] 。ただし、夫婦の一方の死亡は当然には姻族関係を消滅させず(民法第728条 第2項を参照)、さらに、配偶者と死別した者が別の者と再婚したとしても継続する (この場合、前配偶者の血族と現配偶者の血族、両方が姻族となる)。姻族関係を終わらせるには戸籍法第96条 による届け出(姻族関係終了届 )が必要である。
このほか姻族たる身分は姻族自身の死亡によっても失われる[ 38] 。
日本法での親族の効果には次のようなものがある[ 39] 。
(参考文献)『財界家系図』、『日本の有名一族』、『御侍中先祖書系圖牒』、『土佐の墓』、『日本人なら知っておきたい名家・名門』、『閨閥』、『板垣精神』、『平成新修旧華族家系大成 』
^a b 1日でも早く出生していれば年長者に該当する。 ^a b c 泉久雄著 『親族法』 有斐閣〈有斐閣法学双書〉、1997年5月、5頁 ^a b c d e 谷口知平編著 『新版 注釈民法〈21〉親族 1』 有斐閣〈有斐閣コンメンタール〉、1989年12月、91頁 ^ 前田陽一・本山敦・浦野由紀子著 『民法Ⅵ 親族・相続』 有斐閣〈LEGAL QUEST〉、2010年10月 ^a b 久貴・右近・浦本・中川・山崎・阿部・泉(1977)46頁 ^a b c d 久貴・右近・浦本・中川・山崎・阿部・泉(1977)47頁 ^a b c 谷口知平編著 『新版 注釈民法〈21〉親族 1』 有斐閣〈有斐閣コンメンタール〉、1989年12月、103頁 ^a b c d 遠藤・原島・広中・川井・山本・水本(2004)40頁 ^a b 久貴・右近・浦本・中川・山崎・阿部・泉(1977)49頁 ^a b c d 泉久雄著 『親族法』 有斐閣〈有斐閣法学双書〉、1997年5月、7頁 ^a b c d e f 遠藤・原島・広中・川井・山本・水本(2004)41頁 ^a b c d e f g h 谷口知平編著 『新版 注釈民法〈21〉親族 1』 有斐閣〈有斐閣コンメンタール〉、1989年12月、106頁 ^a b c 久貴・右近・浦本・中川・山崎・阿部・泉(1977)50頁 ^ 遠藤・原島・広中・川井・山本・水本(2004)40-41頁 ^a b c 千葉洋三・床谷文雄・田中通裕・辻朗著 『プリメール民法5-家族法 第2版』 法律文化社、2005年11月、5頁 ^ 谷口知平編著 『新版 注釈民法〈21〉親族 1』 有斐閣〈有斐閣コンメンタール〉、1989年12月、84頁 ^ 谷口知平編著 『新版 注釈民法〈21〉親族 1』 有斐閣〈有斐閣コンメンタール〉、1989年12月、107頁 ^ Schwimmer, Brian. “Systematic Kinship Terminologies ”. 2016年12月24日閲覧。 ^ Lounsbury, Floyd G. (1964), “A Formal Account of the Crow- and Omaha-Type Kinship Terminologies”, in Ward H. Goodenough (ed.), Explorations in Cultural Anthropology: Essays in Honor of George Peter Murdock , New York: McGraw-Hill, pp. 351–393 ^ 金泰虎 (2008). “日韓社会の人間関係における「兄」について ─ 呼称と名称を中心とした特徴の比較─” . 言語と文化 (甲南大学 国際言語文化センター) 12 : 123-150. https://doi.org/10.14990/00000469 . ^ “世界諸言語のキョウダイ名 —その多様性と普遍性— ”. 2024年1月27日閲覧。 ^a b 千葉洋三・床谷文雄・田中通裕・辻朗著 『プリメール民法5-家族法 第2版』 法律文化社、2005年11月、7頁 ^a b 谷口知平編著 『新版 注釈民法〈21〉親族 1』 有斐閣〈有斐閣コンメンタール〉、1989年12月、96頁 ^ 遠藤・原島・広中・川井・山本・水本(2004)37頁 ^a b 泉久雄著 『親族法』 有斐閣〈有斐閣法学双書〉、1997年5月、39頁 ^ 遠藤・原島・広中・川井・山本・水本(2004)42頁 ^a b 遠藤・原島・広中・川井・山本・水本(2004)44頁 ^a b c 泉久雄著 『親族法』 有斐閣〈有斐閣法学双書〉、1997年5月、8頁 ^ 谷口知平編著 『新版 注釈民法〈21〉親族 1』 有斐閣〈有斐閣コンメンタール〉、1989年12月、85頁 ^ 我妻榮編著 『判例コンメンタール〈Ⅶ〉親族法』 コンメンタール刊行会、1970年、45頁 ^ 我妻榮・有泉亨・川井健『民法3 親族法・相続法 第2版』勁草書房、2005年10月、32頁 ^a b 泉久雄著 『親族法』 有斐閣〈有斐閣法学双書〉、1997年5月、40頁 ^ 二宮周平著 『家族法 第2版』 新世社〈新法学ライブラリ〉、2005年1月 ^ 泉久雄著 『親族法』 有斐閣〈有斐閣法学双書〉、1997年5月、43頁 ^a b 谷口知平編著 『新版 注釈民法〈21〉親族 1』 有斐閣〈有斐閣コンメンタール〉、1989年12月、92頁 ^ 谷口知平編著 『新版 注釈民法〈21〉親族 1』 有斐閣〈有斐閣コンメンタール〉、1989年12月、93頁 ^ 泉久雄著 『親族法』 有斐閣〈有斐閣法学双書〉、1997年5月、43-44頁 ^ 谷口知平編著 『新版 注釈民法〈21〉親族 1』 有斐閣〈有斐閣コンメンタール〉、1989年12月、95頁 ^a b c 泉久雄著 『親族法』 有斐閣〈有斐閣法学双書〉、1997年5月、44頁 ^ 谷口知平編『新版 注釈民法〈21〉親族1』有斐閣〈有斐閣コンメンタール〉1989年12月、99頁以下 遠藤浩・原島重義・広中俊雄・川井健・山本進一・水本浩著 『民法〈8〉親族 第4版増補補訂版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、2004年5月 久貴忠彦・右近健男・浦本寛雄・中川良延・山崎賢一・阿部徹・泉久雄著 『民法講義〈7〉親族』 有斐閣〈有斐閣大学双書〉、1977年11月