この項目では、香辛料について説明しています。植物種については「トウガラシ 」をご覧ください。
みじん切りにした唐辛子 乾燥させた唐辛子 唐辛子畑 唐辛子 (とうがらし、唐芥子、蕃椒)は、中南米 を原産とする、ナス科 トウガラシ属 (Capsicum ) の果実 あるいは、それから作られる辛味 のある香辛料 である。栽培種だけでなく、野生種が香辛料として利用されることもある。
トウガラシ属の代表的な種であるトウガラシ には様々な品種 があり、ピーマン 、シシトウガラシ (シシトウ)、パプリカ など辛味がないかほとんどない甘味種(甘唐辛子・あまとうがらし)も含まれるが、ここでは辛味のある品種から作られる香辛料について述べる。
トウガラシ属は中南米が原産地であり、メキシコ での歴史は紀元前6000年に遡るほど非常に古い。しかし、世界各国へ広がるのは15世紀になってからである[ 1] 。トウガラシ属が自生している南米 では、ウルピカ などの野生種も香辛料として使われる。
唐辛子の辛味成分はカプサイシン 類であり、痛みを与える[ 2] 。この痛みが「辛味 」の正体であるが、唐辛子の場合は刺激が強く、人により好みが分かれる。粘膜 を傷つけるため、適量を超えて過剰に摂取すれば胃腸 等に問題を起こすこともある。皮膚の弱い部分に附着すると激しい痛みを引き起こすことが多い。唐辛子の収穫や加工、料理のため唐辛子を触った手で粘膜に触れた場合、強い刺激を受ける。
「火を噴くような」と形容される唐辛子の辛さは激辛 料理という料理ジャンルを生んだ。極端な例では唐辛子から抽出したカプサイシンの結晶も販売されている[ 3] 。
トウガラシ属には数十種が属するが、そのうち栽培種は次の5種である。
日本 で栽培されているのは主にトウガラシだが、沖縄 や伊豆諸島 ではキダチトウガラシの品種の島唐辛子 が栽培されている。
赤いブート・ジョロキア と青いバード・アイ (英語版 ) カプサイシン受容体 TRPV1は痛み関連受容体に分類されており[ 13] 、唐辛子の辛味は口内の「痛覚」である[ 14] 。
鳥類 はカプサイシンを感じ取るレセプターが存在せず、唐辛子の辛みを感じないと考えられており、種子の散布戦略としてこのような進化をしたと考えられる。野生の哺乳類 などは一般的にカプサイシンの辛みを好まないが、マウス に少量ずつカプサイシン入りの餌を与えると逆にカプサイシンの入った餌を好むと言った実験結果も存在する[ 15] 。
「唐辛子」の漢字は「唐 から伝わった辛子 」の意味であるが、歴史的に、この「唐」は漠然と「外国 」を指す語とされる。同様に南蛮 辛子 (なんばんがらし)、略した南蛮 という呼び方もある。
「鷹の爪 」は唐辛子の総称ではなくて、一栽培品種 の名である[ 16] 。
九州 の一部や長野県 北部地域などでは唐辛子を「胡椒」と呼ぶことがある(「柚子胡椒 」の「胡椒」も唐辛子のことである)。「外来の」という意味で南蛮胡椒 、高麗 胡椒 とも呼ばれ、沖縄県 では「コーレーグス 」という方言で呼ばれる。一説には大陸(唐土)との交易で潤っていた地域では「唐枯らし」に音が通ずる「トウガラシ」の呼び名を避けたためともいわれる。また他地域で言うところの「胡椒 」を、区別のため「洋胡椒」と呼ぶことがある。
英語では、産品としては「レッド・ペッパー (red pepper)」あるいは「チリ・ペッパー (chili pepper)」、植物名としては「カプシカム・ペッパー (Capsicum peppers)」と呼ばれる[ 17] 。胡椒(コショウ科コショウ属 )とは関係が無いにもかかわらずpepperと呼ばれている理由は、胡椒と同様に辛い香辛料だからである[ 18] 。
英語での一名「チリ」(chili, chile, chilli, chille)はメキシコのナワトル語 での唐辛子の呼称chilli に由来する。南米西側の地名・国名「チリ (Chile)」とは語源が異なる[ 19] 。
緑から赤へと熟していく唐辛子の果実 胡椒 と同様、料理 に辛みをつけるために使われる。また、健胃薬、凍瘡・凍傷 の治療、育毛など薬としても利用される。果実 は緑のままでも食べることが出来る。一般に、緑色のものは青唐辛子 、熟した赤いものは赤唐辛子 と呼ばれる。果実を鑑賞するためのトウガラシの品種もある。
生のまま食べる場合と、乾燥した後に使う場合とがある。チポトレ のように燻煙 してから使う場合もある。
醤油 や酢 、食用油 、泡盛 などに漬け込むと、それらに辛味を与えるので通常とは違った風味の調味料 とすることができる。漬かった状態の唐辛子は、取り出して刻みサラダ などに利用することもできる。
日本では1960年代には年間7000トン程度が生産され、輸出もされていた。2018年には逆に輸入品が主で、輸入量1万4000トンに対して国産はその1%程度である。市町村別では「栃木三鷹(さんたか)」を生産する栃木県 大田原市 がほとんどの年で首位を占めている[ 20] 。料理に唐辛子が多く使われるようになったのは比較的最近のことである。1980年代 以降、エスニック料理 が浸透し、「激辛ブーム 」が起こる以前には、薬味や香り付けに一味唐辛子 や日本特有の七味唐辛子 が少量使われる程度であり、市販のカレー も辛口の商品に関しては少数に留まっていた。今も年配の層には唐辛子の辛味を苦手とする人は多い[要出典 ] 。
インド料理 やタイ料理 、韓国料理 などの唐辛子が日常的に使われる地域では、小さい子供の頃から徐々に辛い味に慣らしていき、舌や胃腸を刺激に対して強くしている。一方で日常的に使う習慣のない場合は、味覚としての辛味というよりも「痛み」として認識され、敬遠される。このことからも、痛みを味覚として好むということ自体、多分に社会文化的条件付けによるものと言える。これらの国が唐辛子を積極的に摂取するのは、メキシコ や西アフリカ 、中国の四川省 ・湖南省 など夏に暑い地域が多く、食欲を増進し発汗を促し暑さ負け を防ぐためであると言われる。ただし、台湾 、沖縄 など暑い季節が長いにもかかわらずさほど唐辛子を好まない地域がある一方、韓国、ブータン などそれほど暑くない地域(韓国も大陸性の気候の影響が強く夏は暑くなるが、高温になる季節は長くはない)で唐辛子を特に好む食文化もあり、唐辛子の嗜好は単なる気候的要因ではなく文化的要因によるものが強いことがうかがえる [要出典 ] 。
葉唐辛子の佃煮 フィリピン や中国などアジア圏では葉(葉唐辛子)を青菜と同様に炒めて食べたり、汁物の実としたりすることもある。日本でも葉唐辛子を炒めて食べたり、佃煮 にしたりすることもある。
ごく少量含まれる辛み成分のカプサイシン には、唾液分泌量を増やして食欲を増進する効果がある[ 21] ほか、末梢の血管を拡張させて血流量を増やして体を温める効果、副腎ホルモンの一つエピネフリン (別名:アドレナリン)の分泌量を増やして脂肪の燃焼効率を高める効果などがあり、さまざまな機能性が注目されている[ 22] 。またカプサイシンが食事の食塩の使用量を減らしても物足りなさ感じることがなくなり満足感を得やすいので、食塩摂取量を減少する効果が得られる[ 22] 。
カロテン (体内でビタミンA に変化)とビタミンC が豊富なことから、夏バテ の防止に効果が高く[要出典 ] 、特に暑い地域で多く使われている。除虫の効果もあり、食物の保存に利用されたりすることもあるが、サルモネラ菌 や大腸菌 などの食中毒の原因菌を殺菌する作用は無く[ 23] 、食中毒 を防ぐことはできない。
旨味成分であるグルタミン酸 も含まれている[ 24] 。
ハーバード大学 公衆衛生学部 の研究によると、唐辛子をほぼ毎日食べた人は、死亡のリスクが14%低いことがわかった。研究著者のLu Qiによると、他の研究からのいくつかの証拠は、カプサイシン などの唐辛子の生物活性成分が「悪玉」コレステロール とトリグリセリド を低下させ、炎症 を改善する可能性があることを示唆している[ 25] 。
唐辛子を多く摂る国は胃癌 や食道癌 の発癌率が高いといわれている。唐辛子の過剰摂取と発癌の関連性が指摘されている[ 26] [ 27] [ 28] [ 29] [ 30] が、国際がん研究機関 (IARC) による発がん性の可能性がある物質とは認められていないため、カプサイシン単体が発癌性 をもつわけではない。
高い発癌率は、トウガラシの貯蔵中に発生するカビ が生産するカビ毒 が原因と考えられている[ 31] 。
唐辛子の厄除け 蕃椒 - 唐辛子の生薬名を蕃椒(ばんしょう)という。健胃、発汗作用などがある。また外用薬として温湿布 などに使われるが、カプサイシンの外用に末梢血管を拡張する効果は無い [要検証 –ノート ] 。温かみを感じるのは、カプサイシンが、痛覚、高温などのセンサーであるTRPV1 を刺激することで起こる、擬似的なものである。寒冷地では靴の中に入れてしもやけ や凍傷の予防として使う民間療法 がある。 トウガラシチンキ (医薬品)猛獣や暴徒などに対する自衛手段として用いられるトウガラシスプレー 農作物を獣害から守るために農地の外周に植えられることがある。イノシシ やサル の採食試験では、トウガラシを食べないわけではないが嗜好性が低い。特にタカノツメ は嫌がる[ 32] 。 園芸 では他の作物 と共に植えて虫害 を減らす目的で栽培される。[要出典 ] 米櫃 内の虫避けとして乾燥唐辛子が使用される。入浴剤 乾燥させた唐辛子は、室内外の装飾にも使われる。 羽黒山 の修験道 では、唐辛子を燻し、その煙に耐える修行があった。また、特高警察 などで拷問 にも使われたという。昭和 初期の連続殺人事件一方井事件 (岩手県 )では、容疑者を逆さ吊りにし、その下でなんばん(唐辛子)を燻して自白を迫ったという目撃談があったとされる[ 33] 。原産地はメキシコが栽培の起源地と考えられており、最も古いものはメキシコ中部で紀元前6500 - 5000年ごろの栽培型の出土が確認されている[ 34] 。アメリカ大陸の各地では、紀元前ころから栽培されていたとみられ、1世紀ごろのペルーの遺跡からは唐辛子模様の織物が発見されている[ 34] 。現在世界中の国で多く使われているが、アメリカ大陸 以外においては歴史的に新しい物で、正確な伝来年とヨーロッパ内での伝播についての詳細は不明である。クリストファー・コロンブス が1493年 にスペイン へ最初の唐辛子を持ち帰った[ 34] 。以降、ヨーロッパ全域に広まっていった[ 34] 。
1493年、コロンブスが1回目の航海の際に西インド諸島 で発見した[ 1] (p82) 。 1542年、ヨーロッパの本草書 へはじめて記載された。ドイツの植物学者レオンハルト・フックス が著書『時事起源誌』に「カリカット ・コショウ」の名称で、数年前にインドからドイツに持ち込まれたがまだ普及していないと記述している[ 1] :86 。 16世紀前半にはヨーロッパ人がインドに持ち込んだが、様々な料理 に香辛料として用いられるようになったのは17世紀以降と考えられる[ 1] :89 。 16世紀後半 ヨーロッパでは、純輸入品の胡椒 に代わる自給可能な香辛料として南欧 を中心に広まった[要出典 ] 。 バルカン半島 周辺やハンガリー にはオスマン帝国 を経由して16世紀に伝播した[要出典 ] 。現代の中華料理 はトウガラシ(辣椒 )を多用し、とくに長江 中流域の四川料理 、湖南料理 、湖北料理 、貴州料理 、陝南料理(陝西省南部)は辛いことで知られる[ 35] 。しかしトウガラシの伝来については不明な点が多い。3つのルートが推測されている[ 36] 。
陸路で中央アジアからシルクロード で中国西部の新疆 を経て、西安 にたどり着いた。 海路で原産地のメキシコから太平洋を横断し、フィリピン経由で大陸にたどり着いた。 海路でポルトガル人は植民地ゴア を拠点に東南アジア、新たに植民地にしたマカオ を経て、中国南部の広東省 や広西チワン族自治区 あたりに上陸した。 李時珍 『本草綱目 』(1578年完成)にはまだトウガラシは見えず、文献上は明末の高濂(1620年没)の『草花譜』および『遵生八牋』(1591年刊)[ 37] 、および清初の陳淏子 『花鏡 』(1688年刊)[ 38] に「番椒」の名で見えるものが古い。初期においては主に観賞用であったらしい[ 35] 。四川料理で使われるようになったのはさらに時代が遅れる。乾隆 年間(18世紀)の李化楠・李調元『醒園録』は四川料理に関するもっとも古い書物だが、まだトウガラシは使われておらず、嘉慶 年間(1796年 - 1820年)になって初めて四川でトウガラシを栽培したという記録が見られる[ 35] 。したがって、長江中流域の料理が辛くなったのは19世紀初めと考えられる。
鑑賞用のトウガラシ 日本への伝来には諸説ある[ 39] 。日本に伝来した初期は食用として用いられず、観賞用や毒薬、足袋のつま先に入れて霜焼け止めとして用いられた[要出典 ] 。
1542年 にポルトガル人宣教師 が豊後国 の戦国大名 大友義鎮 (よししげ、出家 後に宗麟と称す)に種を献上したという説[ 39] 。江戸時代後期の農政学者・佐藤信淵 (のぶひろ) が『草木六部耕種法』(1829) の中で「蕃椒は最初は南亜墨利加(南アメリカ)州の東海浜なる伯亜兒国(ブラシリア)より生じたるものにして、天文 十一年(1542年)に波爾杜瓦爾(ポルトガル)人の持ち来る」、南瓜の種子と共に「天文年中西洋人初めて豊後国に来航し...国主大友宗鱗に献じ」[ 40] と記している。ただし、「天文十一年」は「天文二十一年」(1552年)[ 41] の誤記である [独自研究? ] 。南蛮胡椒 と呼ばれていたのはこのためであるとされる[要出典 ] 。1552年 ポルトガル人宣教師バルタザール・ガーゴ が大友義鎮に種を献上したという説[要出典 ] 。 1577年 ポルトガル人宣教師ルイス・フロイス が来日する同僚宣教師宛ての手紙に、「酢漬けトウガラシ」が珍重されることを記述[要出典 ] 。 1592年の豊臣秀吉 による朝鮮出兵 のときに朝鮮から伝わったという説[ 39] 。貝原益軒 の『菜譜』[ 42] や『大和本草 』[ 43] などには「昔は日本に無く、秀吉公の朝鮮伐の時、彼の国より種子を取り来る故に俗に高麗胡椒と云う」などと朝鮮から渡来したことが書かれている。これは「朝鮮へは日本から伝来した」とする他説とは一見相反するが、日本に唐辛子が伝わった当初は、西日本を中心にしか広まっておらず、その後、豊臣秀吉の朝鮮出兵に従事した兵士により日本へ唐辛子が逆輸入されたことで、朝鮮から日本へ来たものと考えた日本人がいた、という解釈がある[ 44] [ 45] 。 奈良 の興福寺 の塔頭 、多聞院 の住職の日誌『多聞院日記 』の文禄 2年(1593年)の記事に、こうある。コセウノタネ尊識房ヨリ来。茄子タネフエル時分ニ植トアル間、今日植了。茄子種ノ様ニ少ク平キ也、惚ノ皮アカキ袋也。其内ニタネ数多在也。赤皮ノカラサ消肝了。コセウノ味ニテモ無之、辛事無類。
1592年 の朝鮮出兵 の際、武器(目潰しや毒薬)または血流増進作用による凍傷予防薬として日本からの兵(加藤清正 )が持ち込んだものである。1614年の『芝峯類説』では「南蛮椒には大毒があり、倭国からはじめてきたので俗に倭芥子 (倭辛子)といい、近ごろこれを植えているのを見かける」と書かれており、イ・ソンウ(이성우 、李盛雨)が『高麗以前の韓国食生活史研究』(1978年)[ 47] で日本からの伝来説を示して以降、通説となっている。
メキシコ トウガラシの原産国で、栽培される種類も多く、生のまま、乾燥させたもの、燻製にしたものなど様々な使い方がされている。有名なのは「ハラペーニョ 」や「ハバネロ 」と云う品種。 ボリビア ボリビアの食卓にはロコト やアヒ・アマリージョ を使ったヤフア(リャフア) というサルサ(ソース)が置かれているのが普通である。ウルピカも食用とされる。 ペルー サルサやパパ・アラワンカイナなど料理の味付けおよび色付けにアヒ・アマリージョが多用される。ロコトにファルス を詰めた料理もある。 コロンビア アヒーと呼ばれる薬味が料理の味付けに使われる。唐辛子とネギ 、トマト のみじん切りに塩 、レモン 汁を混ぜて作る。 アメリカ合衆国 旧メキシコ領であったアメリカ合衆国南西部 では、テクス・メクス料理 などメキシコ系の料理にトウガラシがよく用いられる。西アフリカの料理の影響を受けたルイジアナ州 のクレオール料理 やケイジャン料理 も同様で、赤いタバスコペッパー (キダチトウガラシの一種)やハラペーニョから作ったタバスコ ソースは同州の特産である。また、チリコンカーン の味付けに用いられるチリパウダー の主原料は中辛の唐辛子である。 ハイチ ハイチ料理 には、カプシクム・キネンセ の一品種ピーマン・ブークを他の野菜と一緒に酢漬けにしたものが調味料としてよく使われる。イタリア イタリア料理 (主に南イタリア)で使われることが多い。砕いた赤い唐辛子を使用するのが普通。基本的なスパゲッティ (またはパスタ 一般)の料理法である「アーリオ・オリオ・ペペロンチーノ 」のペペロンチーノは唐辛子の意味。オリーブオイルに唐辛子や各種ハーブなどで香りづけしペペロンチーニ と呼ばれる香草オイルがある [要出典 ] 。ギリシャ 砕いた赤唐辛子を家庭 の野菜料理によく用いる。 ハンガリー 熟したパプリカ を乾燥させて粉にしたものをグヤーシュ やパプリカーシュ などの煮込み料理 に用いる。 イベリア半島 パプリカに似た粉唐辛子をソーセージ (チョリソ など)の調味や煮込み料理に用いる。ポルトガルでは、キダチトウガラシの一種で辛味の強いピリピリ も用いられる。 バスク地方 エスプレット という品種が有名。日本 日本の唐辛子は多種[ 48] である。かつて、日本は50種類以上の唐辛子を生産する辛子の輸出大国であった[ 49] が、その後は輸入が多くなっている。料理や漬物 の薬味など幅広く使われており、蕎麦 屋の店頭には、七味唐辛子、一味唐辛子などがテーブルに置かれ、各自の好みにより料理に加えることができる。沖縄そば には泡盛 につけ込んだ調味料コーレーグス が欠かせない[ 50] 。国民一人当たりの消費量はそれほど多くは無い。 朝鮮半島 キムチ 、チゲ など、唐辛子を使った料理が多い。唐辛子が伝わる以前には、山椒 の実がよく使われていた。キムチに使われる唐辛子は、韓国特有の辛みが少ない大きめの唐辛子で、ほんのりと甘みがある。コチュジャン も味付けに利用される。また、男児が誕生すると縄に唐辛子をはさんで戸口に掲げる習慣がある。中国 中国西南部 で多用される。四川料理 は唐辛子と「花椒 」と呼ばれる山椒の一種を多用する。湖南料理 は唐辛子と酢で、酸味のある辛さを特徴としている。特に唐辛子の味を強く出しているのは、貴州 料理と雲南 料理で、とりわけ雲南のタイ族 などの少数民族料理が最も辛さを強調した料理を特徴としている。他にもミャオ族 、ヤオ族 なども唐辛子を多用している。広東料理 はさほど唐辛子を使わないが、「野山椒」と呼ばれる青唐辛子の酢漬けを好む人もいる。杭州 ではししとう に似た「杭椒」をピーマンのように炒め物に使う。タイ タイ料理 にはトムヤムクン (スープ)やグリーンカレー など、唐辛子を多く使った辛い料理が多い。唐辛子が伝わる前は胡椒(タイ語 でプリッタイと呼ばれる)が用いられていた。「プリッキーヌー」は小粒で非常に辛い品種で、通常は青いまま使われる。ブータン 唐辛子そのものを主要な野菜と見做し、調理して食べている。従って、世界最高の辛さを誇る料理である。唐辛子が伝る以前には、山椒の実が使われていた。唐辛子を野菜として用いたブータン料理 としては、エマダツィ が挙げられる。 インド、バングラデシュ 香辛料を使った料理 の歴史が長い。地方によって辛みを出すのに唐辛子を多く使う地域とそれ以外の香辛料を多く使う地域がある。また一般に野菜よりも肉を使った料理に唐辛子を多用する傾向がある。唐辛子の漬物 (アツァール )も作られる。ギネスブック に世界一辛い唐辛子と認定されていた「ブート・ジョロキア 」はアッサム地方 原産である。 スリランカ スリランカ料理 は、インド料理と同様に唐辛子により辛みをつけることが多い。トルコ 、アルメニア パプリカに似た粉唐辛子を煮込み料理に用いる。 マグリブ (特にチュニジア )唐辛子とコリアンダー (実)、クミン などの香辛料を合わせて砕いたハリッサ をクスクス などの料理に調味料として添えたり、オリーブオイル と混ぜて薄切りパンに付け前菜としたりする。 エチオピア 、エリトリア 唐辛子を主原料とした配合調味料ベルベレ をワット などの味付けに用いる。 ^a b c d 高橋, 保「アジアを中心としたトウガラシの生産と伝播の史的考察 」『アジア発展研究(国際大学の紀要)』、国際大学、1994年11月1日。 ^ 神戸保「トウガラシ 」『生活衛生』第31巻第2号、大阪生活衛生協会、1987年、115-115頁、doi :10.11468/seikatsueisei1957.31.115 、ISSN 0582-4176 、NAID 130003877547 。 ^ “世界一辛い「Blair’s 16 Million Reserve」の中身は何? ”. 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