合成樹脂で作られた家庭用品 合成樹脂 (ごうせいじゅし、英 :synthetic resin )とは、人為的に製造された高分子 化合物からなる物質の一種。合成樹脂から紡糸 された繊維 は合成繊維 と呼ばれ、合成樹脂は可塑性 を持つものが多い。
合成樹脂は一般的には石油 を原料とするモノマー を重合 してできたポリマー に添加剤 を加えた物質の総称である[ 1] 。合成樹脂は、主に原油 を蒸留 して得られるナフサ を原料として製造され、この製造は石油化学 産業の重要な一部門となっている[ 2] 。
他方、他の原料からも製造は可能であり、特に、再生産が可能であるサトウキビ やトウモロコシ などのバイオマス を原料としたバイオマスプラスチック(バイオプラスチック )は石油資源の枯渇対策の一つとして注目されている[ 3] 。ただし、バイオマスプラスチックと生分解性プラスチック は全く別の概念であり、バイオマスプラスチックであるからと言って自然に分解するわけではないことは注意が必要である[ 4] 。
金型 などによる成形が簡単なため、大量生産される各種日用品 や工業分野、医療分野の製品などの原材料となる。製品の使用目的や用途に合わせた特性・性能を有する樹脂の合成が可能であり、現代社会で幅広く用いられている。
一般的なプラスチックの特徴としては、電気を通さない絶縁体 である、水に強く腐食 しにくい、比較的熱に弱い等が挙げられる。ただし硬度 や耐熱性 、強度 に関しては改善が可能であり、こうした点を強化したエンジニアリング・プラスチック (エンプラ)やスーパーエンプラと言った高性能なプラスチックも使用されている。
また、絶縁性や腐食耐性はプラスチック本来の性質である。しかし、使用目的に応じてこれらの性質に当てはまらないプラスチックも開発されている。
導電性に関しては、1970年代に白川英樹 らによって導電性ポリアセチレン が開発されて以降、様々な導電性ポリマー が開発され、タッチパネル などに利用されるようになった[ 5] 。
腐食耐性に関しても、微生物 による分解が可能な生分解性プラスチック が開発されているが、分解には特殊な条件や長い期間が必要なものも多い[ 4] 。
親水性 に関しても、非常に大量の水を吸収し保存することが可能な高吸水性高分子 が開発されており、保水剤や紙おむつ など幅広く利用され、その保水性から砂漠の緑化 への利用も計画されている[ 6] 。
プラスチック (plastic) という語はギリシャ語のπλαστικός (plastikos) に由来しており「形作ることができる」という意味がある[ 7] 。πλαστός (plastos) では「成形された」という意味になる[ 8] 。18世紀の英国の書物においてすでに可塑性という意味でplasticという単語は利用されているが[ 9] 、19世紀に本格的に英語に取り入れられ、特に合成樹脂のように成形可能な材料を指す用語になったとされる[ 10] 。
合成樹脂と同義である場合や、合成樹脂が「プラスチック」と「エラストマー 」という2つに分類される場合、また、原料である合成樹脂が成形され硬化した完成品を「プラスチック」と呼ぶ場合、多様な意味に用いられている[ 11] [ 12] 。
合成樹脂は高分子化合物の一種である。例えば、ポリエチレンは炭素2個のエチレン を多数繋いだ重合体 であり、この場合のエチレンは「モノマー 」と呼ばれ、ポリエチレンは「ポリマー」と呼ばれる。「モノ」は1つ、「ポリ」はたくさんを意味する接頭辞 である。モノマーを繋げていく反応を重合反応 と呼び、モノマーが繋がっている個数を重合度と呼ぶ。エチレン500個が繋がったポリエチレン(炭素数1000)の重合度は500である。重合度が大きくなるにつれ、より硬くより強い樹脂になる。ポリエチレンは熱をかけると融けて流動するので、その状態で成型する。流動し始める温度(ガラス転移温度)は分子量が大きくなるほど高くなる。分子量が一定以上に大きくなると、熱をかけても流動せず、さらに温度を上げると分解する。
用途によって、2種類以上のモノマーを使用して合成樹脂を作ることがある。これを共重合と呼ぶ。例えば自動車の内装に多用されているABS樹脂 は、アクリロニトリル -ブタジエン -スチレン 樹脂の略称で高い強度と耐衝撃性を有する。硬いが衝撃に弱く割れやすいアクリロニトリル樹脂とスチレン樹脂の性能と、柔らかいが衝撃に強いブタジエン樹脂の性能を組み合わせ、強度と耐衝撃性を両立させている。アロイとは日本語で合金と呼ばれるもので、金属の華々しい開発に樹脂開発者が憧れて命名されたといわれている。
共重合はモノマーの配列の仕方によって、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合に分類される。ランダム共重合はモノマーがランダムに結合した物。ブロック共重合は単一モノマーでできたある程度の長さのポリマー同士が縦に繋がっているもの。グラフト共重合は注連縄 に似ている。単一モノマーで出来た長いポリマーの所々に違う種類のポリマーがぶら下がっている。
共重合は、2種類以上のモノマーが化学的に結合して出来ているが、ポリマーアロイ は異種の単独ポリマー同士を混合して製造する(アロイは合金 のこと)。ポリマーアロイの例として耐衝撃性ポリスチレンがある。ポリスチレンは上記のように硬くて割れやすいが、少量のゴムを混合することにより割れにくい性質を持たすことができた。
語史的な観点から述べうるプラスチックは考古学的史料から発見されており、それらは天然ゴムや樹脂、卵、血液、牛の角などにより制作されたものであった。紀元前1600年頃のメソアメリカ人はボールや結束具、人形に天然ゴムを使用していた[ 13] 。中世西欧では、加工した牛の角を窓の材料に利用していたとされる。
現代我々が考える工業製品としてのプラスチックは、1835年 に塩化ビニル とポリ塩化ビニル 粉末を発見したのが最初といわれる。初めて商業ベースに乗ったのは、1869年にアメリカで開発されたセルロイド である。これはニトロセルロース と樟脳 を混ぜて作る熱可塑性樹脂だが、植物のセルロース を原料としているので半合成プラスチックと呼ばれることがある。セルロイドはもともと、アフリカゾウ の乱獲による象牙 の不足を受けたビリヤードボール 会社の公募によって商品化されたものであり、ビリヤードボールをはじめフィルム やおもちゃ などに大量に使用されたが、非常に燃えやすく、また劣化しやすい性質があるため次第に使用されなくなった[ 14] 。
本格的な合成樹脂第一号は、1909年にアメリカのレオ・ベークランド が工業化に成功したベークライト (英語版 ) (商品名)といわれている。フェノール とホルムアルデヒド を原料とした熱硬化性樹脂で、一般にはフェノール樹脂と呼ばれている[ 15] 。その後、パルプ 等のセルロース を原料としてレーヨン が、石炭 と石灰石 からできるカーバイド(en:Carbide )を原料にポリ塩化ビニルなどが工業化された。戦後、石油化学 の発達により、主に石油 を原料として多様な合成樹脂が作られるようになる。日本では、1960年代以降、日用品に多く採用されるようになる。
1970年代には工業用部品として使用可能なエンジニアリングプラスチック が開発され、1980年代には更に高度なスーパーエンジニアリングプラスチックが使用されるようになった。これらの合成樹脂は金属 に代わる新たな素材として注目されている。
1970年頃までは「プラスチックス」という表記が見られた。これはアメリカでも同様で、"plastics" という「形容詞+s」で集合名詞としていたが、名詞であるという意識が高まり、"s" が抜け落ちた。その時期は日本より約10年早い(なお、整形外科を plastic surgery というように、形容詞 plastic の原義は「形をつくる」「成型による」「成型可能な」といった意味である)。
高分子材料である合成樹脂は熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂に分けられる[ 16] 。
熱硬化性樹脂 (英 :Thermosetting resin ) は、加熱すると重合を起こして高分子の網目構造を形成し、硬化して元に戻らなくなる樹脂のこと[ 17] 。網化状樹脂、橋かけ形樹脂、三次元化樹脂ともいう[ 16] 。熱硬化性樹脂には縮合重合形と付加重合形がある[ 16] 。
縮合重合形フェノール樹脂やメラミン樹脂などがある[ 16] 。
など
付加重合形にはエポキシ樹脂などがある[ 16] 。
など
熱可塑性樹脂 (英 :Thermoplastic resin ) は、ガラス転移温度 または融点 まで加熱することによって軟らかくなり、目的の形に成形できる樹脂のこと。線状樹脂ともいう[ 16] 。一般的に、熱可塑性樹脂は切削・研削などの機械加工がしにくいことが多く、加温し軟化したところで金型に押し込み、冷し固化させて最終製品とする射出成形 加工などが広く用いられている。成形法にはほかにも、金型から押し出して成形する押出成形 など様々な成形法が存在する[ 18] 。熱硬化性樹脂 よりも靭性 が優れ、成形温度は高いが短時間で成形できるので生産性 が優れる。
熱可塑性樹脂には結晶性樹脂と非結晶性樹脂(無定形樹脂)がある[ 16] 。
結晶性樹脂にはポリエチレン やポリプロピレン などがある[ 16] 。
非結晶性樹脂にはアクリル樹脂 やポリカーボネート などがある[ 16] 。
熱可塑性樹脂を用途により分類すると、以下のとおりになる。
家庭用品や電気製品の外箱(ハウジング)、雨樋や窓のサッシ などの建築資材、フィルムやクッションなどの梱包資材など、比較的大量に使われる。
など
家電製品に使われている歯車 や軸受け 、CDなどの記録媒体等、強度や壊れにくさを特に要求される部分に使用される。略してエンプラ とも呼ばれる。
など
特殊な目的に使用され、エンプラよりもさらに高い熱変形温度と長期使用出来る特性を持つ。略してスーパーエンプラとも呼ばれる。
など
別途、熱可塑性樹脂 を硬度で分類すると、上記の硬度高めの「プラスチック」と硬度低めの(柔らかく、弾力がある)「熱可塑性エラストマー 」がある。
プラスチックが本格的に開発されたのは20世紀に入ってからであるが、その軽さや衝撃への強さ、腐りにくさ、絶縁性 の高さ、そして何よりも用途に合わせて安価に大量生産 が可能であることから、それまで木材 や繊維 、ガラス や陶器 などを素材に用いていたものがプラスチックに置き換えられることも多く、用途は非常に多岐にわたる[ 19] 。
日本における2018年度の生産のうちもっとも利用が多いのはフィルムやシート向けであり、全生産量の43%を占める。この中にはポリ袋 などの包装 用品や各種農業用フィルム が含まれている。次いで利用が多いのはペットボトル やポリタンク 、洗剤 やシャンプー 容器などの容器 類であり、生産量の14.8%を占める。第3位は機械 の筐体・機構部品、電子機器 や小型機械 、家電製品 といった機械器具や部品類であり、全体の11.6%を占める。第4位は各種パイプ や継手 であり、7.5%を占めている。食器 などの台所 ・食卓用品や、風呂 、トイレ 、洗濯 、掃除 用品、文房具 、楽器 など各種日用品は5%を占め第5位となっている。以下、雨樋 や床材などの各種建材 が4.7%、発泡スチロール などの発泡プラスチック が4.3%、ドア や看板 、波板などの板が2%、浴槽 やボート の船体、釣り竿 などに用いられる強化プラスチック が1.2%、靴 や鞄 、衣服 などに用いられる合成皮革 が1%、そのほかの用途が4.9%となっている[ 20] 。
機械的性質は引張りや圧力等の外力に対する特性であり、機械部品など広範囲に使用される素材であることから各種の試験がある[ 21] 。
吸水率、水分含有率、耐薬品性、比重、密度などの物性である[ 21] 。
一般的には絶縁体であり電線の被覆や電気機器の筐体に用いられている。一方で絶縁体であることから静電気が発生しやすく、電圧が限界に達すると絶縁性が失われる(絶縁破壊)[ 21] 。
透明性が必要な合成樹脂の場合には光学的性質が重要となる[ 21] 。
製品としては使用限界温度である熱変形温度、寒地での脆化温度、構造材料としての熱伝導度、温度変化が大きい用途での熱膨張や熱収縮などが重要となる[ 21] 。
プラスチック成形品は、原料となる合成樹脂の種類によって劣化要因が異なる。劣化要因としては、材料自身の経時変化、単一の外的要因による変化、複合的な外的要因による変化などがある。
熱による劣化
合成樹脂は、主に炭素、酸素、水素で構成される高分子化合物であり、分子構造は紐状の構造となっている。合成樹脂は加熱されることで、分子運動が活発化し空気中の酸素と反応しやすくなり、酸素と反応することで紐状の構造がバラバラになり劣化する[ 22] 。
光による劣化
合成樹脂は、光エネルギーを吸収し、分子同士の化学結合が切断、または分子を励起させることで酸化が起こり劣化する。合成樹脂の劣化を引き起こす太陽光の波長は、紫色の可視光から近紫外光の領域に該当する300~400ナノメートルである。プラスチックの種類別に劣化しやすさは異なり、それぞれの波長は以下のようになる[ 22] 。
プラスチックを光劣化させる波長[ 22] 材料名 劣化しやすい波長長さ(nm) ポリエステル 325 ポリスチレン 318 ポリプロピレン 300 ポリ塩化ビニル 310 塩ビ―酢ビ共重合体 310 ホルムアルデヒド樹脂 322~364 硝酸セルロース 300~320 ポリカーボネート 310 ポリメチルメタクリレート 295
水による劣化
合成樹脂の種類や環境によっては、加水分解により劣化する。ポリウレタン (PU) やポリエチレンテレフタラート (PET) のように分子構造にエステル結合を有する合成樹脂は加水分解しやすい性質がある。また、湿気がある状態で合成樹脂を溶融し成形すると加水分解しやすくなる[ 22] 。
有機溶剤による劣化
一般的にどんな素材でも、その構造と類似する構造をもつ材料は取り込みやすい性質をもつ。例えば耐候性、衝撃強さ、耐熱性に優れているポリカーボネイト(PC)も、ある特定の溶剤に対しては、材料内に有機溶剤を取り込みやすく強度が低下する[ 22] [ 23] 。
金属や金属化合物による劣化 金属イオンが合成樹脂の酸化反応の触媒として働き劣化をまねく。とくにコバルトとマンガンが合成樹脂に対して影響を及ぼしやすい。また、ポリプロピレン (PP) やABS樹脂は高温になると、銅に反応しやすくなる[ 22] 。
欠陥・応力・ひずみによる劣化 気泡やクラック、ウェルドライン、異物の混入などの欠陥。成形時のひずみ、残留応力等によるストレスクラックやソルベントクラック現象とよばれる割れが生じることがある[ 22] [ 23] 。
いっぱんに合成樹脂は「腐らない」こと、すなわち微生物 による生分解を受けないことを長所のひとつとするが、いくつかの合成高分子 は生分解を受けることが知られている。細菌 や真菌 による合成樹脂の分解は種々の酵素によって行われる[ 24] [ 25] 。
合成樹脂の生分解は1950年代 - 1960年代ごろから注目されており[ 24] [ 25] 、n-パラフィン 、分子量 の比較的ちいさなポリオレフィン 、ポリビニルアルコール 、脂肪族 ポリエステル、ポリエチレングリコール 、ε-カプロラクタム などの合成高分子類の微生物分解性が研究されてきた。一方、芳香族 ポリエステルのひとつであるポリエチレンテレフタレート (PET) など、プラスチックとして有用で大量生産の対象となる合成高分子の生分解にかんしては、否定的な結果が得られる場合が多かった[ 24] 。近年は、従来生分解が困難であるとされてきた合成樹脂を分解する微生物の報告や、動物 が合成樹脂を摂食し、代謝を行う事例[ 注釈 1] の報告など、合成樹脂の生分解にかんするさまざまな新知見が蓄積されつつあり、プラスチック廃棄物問題 の解決法を探るうえでもいっそうの注目が集まっている[ 25] 。ここでは主にRu, Huo & Yang (2020) によるレビュー にもとづき、近年の合成樹脂の生分解にかんする知見を概説するが、合成樹脂の化学構造 や実験・分析手法の差異によって生分解性の正確な評価が困難であるものもいまだ多い[ 25] 。
ポリエチレン ポリエチレン (PE) の生分解は1970年代ごろから研究対象として注目されていたが、微生物による生分解を受けるのは主として低分子量 成分であり、分子量が 2000 を超える[ 25] 高分子量PEが環境中で生分解を受けることは困難であるとされてきた[ 24] [ 25] [ 28] 。高い分子量が生分解を阻害する主要因となるため、PEの生分解を行うには熱や紫外線 、酸化剤などを用いた機械的・化学的な前処理が必要であると考えられていたが、近年は、前処理が行われていない長鎖PEを分解することができる可能性のある細菌や真菌が環境中から多数見出されており[ 25] 、たとえば、日本からは低密度ポリエチレン (LDPE) を分解するBacillus 属の細菌が報告されている[ 28] 。腐植栄養湖 (英語 :humic lake ) において、生分解されたPE由来の炭素が植物プランクトン の必須脂肪酸 の合成に用いられていることを示したTaipale et al. (2019) のように、環境中でのふるまいの観点からPEの生分解プロセスを調査した研究もある[ 29] 。 また、複数種の昆虫 の幼虫 がLDPEを摂食し、腸内細菌 を介して代謝を行うことができることが報告されており、注目すべき生分解の事例と見なされている[ 25] 。LDPEを摂食することが報告されているのは鱗翅目 に属するコハチノスツヅリガ Achroia grisella 、ハチノスツヅリガ Galleria mellonella 、ノシメマダラメイガ Plodia interpunctella や[ 25] [ 26] 、鞘翅目 ゴミムシダマシ科 のZophobas atratus (スーパーワーム)で[ 30] 、このうちハチノスツヅリガの幼虫を用いた実験では、幼虫がLDPEを摂食してグリコール を主成分とする液状の糞を排泄すること、幼虫の腸内細菌叢から分離培養されたAcinetobacter 属の細菌が、PEを唯一の栄養源として一年以上の生存が可能であることが確認されている。また、幼虫を介したin vivo での生分解と分離培養された細菌によるin vitro での生分解プロセスとを比較すると、前者と比べて後者のPE分解速度が低いことから、幼虫と細菌とが相互に関係することでLDPEの生分解が促進される可能性が示されている[ 26] 。2022年10月4日のネイチャー・コミュニケーションズでは、ハチノスツヅリガの幼虫の唾液に含まれる酵素はポリエチレンを分解することができるとの発表がされている[ 31] [ 32] 。 PE分解酵素としては、Phanerochaete chrysosporium 由来のマンガンペルオキシダーゼ 、大豆 由来のペルオキシダーゼ 、Rhodococcus ruber C208株が細胞外に分泌するラッカーゼ などが知られている[ 25] 。 ハチノスツヅリガG. mellonella 幼虫,アメリカ ポリスチレン Xanthomonas 属やPseudomonas 属などに属する細菌がポリスチレン (PS) の生分解を行うことが知られているが[ 33] 、いっぱんに、細菌や真菌によるPSの分解速度は非常に低いとされる[ 25] 。一方、幼虫期にPSを摂食することのできる昆虫が複数種知られており、PSの生分解研究において注目されている。PSを摂食することが報告されているのはチャイロコメノゴミムシダマシ Tenebrio molitor (ミールワーム )、コメノゴミムシダマシ Te. obscurus (ダークミールワーム)、Z. atratus (スーパーワーム)[ 25] [ 30] 、コクヌストモドキ Tribolium castaneum (以上、鞘翅目ゴミムシダマシ科)[ 34] および、鱗翅目のハチノスツヅリガで[ 35] 、このうちミールワーム、スーパーワーム、ハチノスツヅリガ幼虫を用いた実験では、三種ともPSフォーム を唯一の餌として30日間の飼育が可能であり、腸内細菌を介した生分解の証拠も得られたものの、通常の餌で飼育した対照群 と比較して生存率や体重が有意 に低下しており、PSでは幼虫の発育に必要なエネルギーを満たせない可能性が指摘されている[ 35] 。また、幼虫の腸内細菌叢からPSの生分解に関与する可能性のある微生物が多数分離されている[ 25] [ 35] 。PSの生分解にかかわる酵素としては、Azotobacter beijerinckii HM121株が分泌するヒドロキノン ペルオキシダーゼが知られている[ 25] 。 ポリプロピレン ポリプロピレン (PP) の生分解を行う可能性のある細菌や真菌が複数環境中から見いだされているが、それらは可塑剤 や低分子量成分の分解にのみ寄与し、高分子量の長鎖PPの解重合は行われていない可能性もあり、評価が難しいとされている。分解酵素も知られていないが、PEと同様に機械的化学的前処理によって生分解が促進される可能性が指摘される[ 25] 。 ポリ塩化ビニル ポリ塩化ビニル (PVC) は利用の際に可塑剤が添加されることが多い合成樹脂である。可塑剤は炭素源として多くの細菌や真菌によって利用される(生分解される)ことが知られており、可塑化されたPVCを用いる製品、たとえば浴槽の蓋や農業用シートはさまざまな微生物によって損傷を受け得る。しかしながら、可塑剤とPVCの両方を分解できる微生物や酵素は知られておらず、生分解後の残留物の問題は大きい[ 25] 。 ポリウレタン ポリウレタン (PUR) は、合成に用いるポリオール の種類によってポリエステル PURとポリエーテル PURの二種に分けられる。ポリエステルPURの生分解にかんする研究はひろく行われており、Pseudomonas putida (シュードモナス・プチダ )など多数の細菌・真菌によって生分解を受けることが報告されている。一方で後者のポリエーテルPURにかんしては、生分解を行う可能性のある細菌や真菌がいくつか報告されているものの、前者と比較して微生物による生分解を受けにくいと考えられている。分解酵素についても同様で、ポリエステルPURにかんしては、エステル結合 を加水分解 するさまざまなリパーゼ やエステラーゼ が種々の微生物から見い出されているが[ 25] 、ポリエーテルPURを分解する酵素は知られていない[ 25] [ 36] 。 ポリエチレンテレフタレート ポリエチレンテレフタレート (PET) の生分解性は結晶化度 (英語 :crystallinity ) の程度によって異なり、大まかに結晶化度の低いもの(low-crystallinity PET: lcPET)と結晶化度の高いもの(high-crystallinity PET: hcPET)に分けたとき、生分解を受けることが知られているのはもっぱら前者のlcPETであり、後者のhcPETはほとんど生分解を受けない[ 25] [ 37] 。熱成型されるPETボトルなどのPET製品は結晶化度が高く、したがって、PET製品の多くはそのままでは生分解に適さないとされる[ 37] 。lcPETの生分解にかんしては、Yoshida et al. (2016) によって記載 されたIdeonella sakaiensis (イデオネラ・サカイエンシス )と、本種から分離同定されたPET分解酵素PETace がよく知られているが、PETaceは熱不安定性であり分解速度も非常に遅いことから、PET加水分解酵素としての要件を満たさないという指摘がなされている。一方、Thermobifida fusca などから得られたクチナーゼ 類からは、熱安定性かつ高いPET分解性を示すものが知られており、PET加水分解酵素として有望視されている[ 25] [ 37] 。 合成樹脂を用いた複合材料 の一種として繊維強化プラスチック (FRP) がある。繊維強化プラスチックの代表的なものにガラス繊維強化プラスチック (GFRP) と炭素繊維強化プラスチック (CFRP) がある。ガラス繊維 は引っ張り強度がプラスチックよりはるかに強いので、成型部品の強度向上によく使用される。炭素繊維 の強度はガラス繊維より更に強いが高価なので、CFRPは軽くて強い(高価な)素材として航空機 等に使用されている[ 38] 。また建材として、合成樹脂と木質系材料(木材や竹など)を微細化した木粉または木繊維を主原料とする木材・プラスチック複合材 (WPC ) および木材・プラスチック再生複合材 (WPRC ) があり[ 39] 、主にデッキ やフェンス 、ルーバー 等の外構材として用いられている。
形状記憶樹脂は形状記憶合金 と同様に塑性変形された樹脂が所定温度以上に加熱されるともとの形状にもどるという特異な性質を備える樹脂で形状記憶合金に比べて軽量で廉価であり、変形時の形状の自由度が形状記憶合金よりも高いなどの特徴を備える[ 40] [ 41] 。
2012年のプラスチックの世界生産は2億8800トンであり、最大の生産国は中国 で5213万トン、以下EU が4900万トン、アメリカ 4805万トン、韓国 1335万トン、日本1052万トンの順となっていた[ 42] 。プラスチックの生産量は急増しており、2015年には3億2200万トンに達している[ 43] 。日本での生産量は1990年代前半までは増加傾向にあったものの、1997年に1521万トンを記録した後は減少に転じた。その後、2008年までは1400万トン前後の横ばいで推移していたものの、2009年のリーマンショック の影響で生産量が1100万トン台にまで激減し[ 44] 、それ以降は1000万トン前後の生産量で推移している[ 42] [ 20] 。
2018年の日本国内生産においては総生産量1067万トンのうちポリエチレンが23.1%、ポリプロピレンが22.1%、塩化ビニールが15.8%を占め、これらを含む熱可塑性樹脂が全体の88.8%、熱硬化性樹脂が9.1%となっていた[ 20] 。
廃プラスチックの累積輸出量が多い国・地域(1988年から2016年) プラスチックは回収してリサイクル することが可能である。リサイクルには、廃プラスチックを溶融してそのままプラスチックに再生するマテリアルリサイクル と、分解していったん原料に戻し、そこから加工するケミカルリサイクル 、そしてプラスチックを燃料化して熱エネルギーを回収するサーマルリサイクル の3つの方法が存在する[ 45] 。プラスチックを再び石油へと戻す、いわゆる油化 もリサイクルの一方法であるが、これを原料化とみなすか燃料化と見なすかについては国ごとに差異がある[ 46] 。ただしプラスチックリサイクルのシステムが確立されている国家においても、回収されたプラスチックのすべてがリサイクルや燃料化に回されるわけではなく、他国への廃プラスチック輸出が盛んに行われてきた[ 47] 。
2019年にバーゼル条約 の改正案が発効したことにより、2021年以降は汚れたプラスチックごみを輸出する際に相手国の同意が必要となった[ 48] 。
日本も例外ではなく、2006年にはすでに廃プラスチックの13%が海外輸出へと回されていた[ 49] 。2017年には、排出されたプラスチック903万トンのうちリサイクルされたものが251万トンで、うち149万トンが海外に輸出され処理されていた[ 50] 。しかし主な輸出先であった中国 が2017年末に廃プラスチックの輸入禁止を打ち出し、さらにそれに代わる輸出先となっていたタイ ・マレーシア ・ベトナム ・台湾 が2018年に相次いで輸入規制を導入したため、廃プラスチックの国内滞留および国内処理が増加した[ 51] 。
2016年時点で海外へのプラスチックごみ輸出量は153万トンだったが、2018年には101万トンまで減少した。減少分は国内で処理されていることになるが、環境省のアンケート調査によると、一部地域において保管上限の超過や受入制限が発生しており、国内においてリサイクル処理施設の整備を進めることが急務となっている[ 50] 。
2021年時点で、日本のプラスチックリサイクル率は87%で、うち焼却してエネルギーとして利用するサーマルリサイクルが62%、マテリアルとケミカルリサイクルは25%だった。比較して、2020年度の欧州ではマテリアルとケミカルリサイクルは35%だった[ 52] 。
世界のプラスチック生産(青)、廃棄(黄)、埋立て(茶)、焼却(赤)、リサイクル(緑) このコアホウドリ のひなは、親鳥によりプラスチックを与えられ、それを吐き出すことができなかった。そして飢えか窒息により死亡した。 世界のプラスチック年間生産量は、1950年の200万トンから2015年には約200倍の4億700万トンに達した[ 53] 。2050年には11億トンに達するといわれている[ 54] 。プラスチックの多くは使い捨てされており、リサイクルされたのは生産量のわずか9%となっている。2016年時点で、1人あたりのプラスチックごみの排出量は1位がアメリカ、2位がイギリスである[ 47] 。イギリスでは国内で処理しきれないため、トルコなど国外に送っている[ 47] 。
利用後に処理されず環境中に流出してしまうことも少なくない。2018年現在、既に世界の海に存在しているプラスチックごみは1億5,000万トン、そこへ少なくとも年間800万トンが新たに流入していると推定され、2050年に魚類 の総量を上回ると警告されている[ 55] 。
難破船とともに海岸に打ち上げられて残るプラスチック製品(積丹半島 西の河原 ) 漂流・漂着ごみ の影響により、魚類、海鳥、アザラシなどの海洋哺乳動物、ウミガメを含む少なくとも約700種もの生物が傷つけられたり死んだりしているが、このうち92%がプラスチックの影響と考えられており[ 56] 、プラスチックごみを体内に摂取している個体の比率は、ウミガメで52%、海鳥で90%にのぼると推定されている[ 57] 。
また、2014年頃から国際的な会議の場で、海洋中のマイクロプラスチックの環境への影響が取り上げられるようになった[ 58] 。石油で作られたプラスチックは、半永久的に分解されず直径5ミリ以下の粒子となり、自然界に存在する有害物質を吸着し海面や海底等に留まり、生物の体内にも取り込まれている[ 57] 。マイクロプラスチックは大気中にも広く含まれ[ 59] [ 60] 、人が飲食や呼吸を通じて体内に取り込むマイクロプラスチックの量は最大で年間12万1000個に上り、ヒト組織の内部に入り込み局地的な免疫反応を引き起こす恐れがあるとする研究結果も発表されている[ 61] [ 62] 。
太平洋ゴミベルト[ 63] は、北太平洋の中央(およそ西経135度から155度、北緯35度から42度の範囲[ 64] )に漂う海洋ごみの海域である。浮遊したプラスチックなどの破片が北太平洋循環の海流に閉ざされ、異常に集中しているのが特徴の海域である。太平洋ゴミベルトの面積はテキサス州の2倍に相当する[ 63] 。プラスチックは海洋生物にとって最大の脅威となっている。海洋生物がゴミを食べ物と間違えて食べることにより、結果として海洋生物が大量のポリスチレンを摂取してしまう[ 65] 。
2019年5月、国際環境法センター (英語版 ) は新しく発表した報告書で、生産から廃棄にいたるまでの過程でプラスチックが大気中に放出する温室効果ガス の量について、2019年は8億5000万トンに上ると予測している[ 66] 。
2019年時点で流入量は1000万トン超とされているが、海面上にあるのは44万トンであり、残りは海底に沈むなどして観測できず行方不明となっている。また低温では分解が進まないため、2019年に房総半島 の約500km沖合で水深6000mの海底を調査した際には、昭和59年(1984年)に製造された食品の梱包材が発見されるなど、長期間にわたって残留することが判明している[ 67] 。
主に海洋プラスチックや二酸化炭素 (CO2 ) の削減から、欧米諸国ではプラ製品の製造を削減する議論が活発であり、欧州議会では2021年までに使い捨てプラ食器などの使用を禁止している[ 68] 。
日本は、プラスチックの1人当たりの容器包装プラスチックごみの発生量で世界第2位[ 69] 。生産量は世界第3位となっており、日本近海でのマイクロプラスチックの濃度は、世界平均の27倍に相当するという調査結果もある。また四国の沖合ではプラスチックごみが滞留し、直下の海底へ沈降しているとの想定もある[ 67] 。
日本では回収したプラスチックの材料自体のリサイクルは約20%にとどまり、57%を多くの先進国ではリサイクルと認められないサーマルリサイクル で熱回収に利用しており、原油由来のプラスチックの燃焼処理は地球温暖化 対策とも逆行する[ 70] 。
2018年6月にカナダで開催されたG7シャルルボア・サミットにて、プラスチックの製造、使用、管理及び廃棄に関して、より踏み込んで取り組むとする「G7海洋プラスチック憲章」では、日本とアメリカだけが署名しなかった[ 56] 。
2019年5月には日本政府が海洋汚染に対して海洋で分解可能なプラスチックに対して、国際規格を定めて日本企業を支援する報道がなされている[ 71] [ 72] が、安倍晋三 首相は2019年10月6日の国立京都国際会館 で開かれた科学技術と人類の未来に関する国際フォーラム において、海洋プラスチックごみ問題に対してプラスチックの社会への重要性を説きつつ「プラスチックを敵視したり、その利用者を排斥したりすべきことではありません」「必要なのはゴミの適切な管理ですし、イノベーションに解決を求めることです」と発言し[ 73] 、日本企業の生分解性プラスチック 開発への取り組みを評価しつつ、ゴミの適切な処理と、技術革新によって海洋プラスチックごみが解決されることが重要である旨の発言をした[ 74] 。
2022年4月1日にプラスチック資源循環促進法 が施行される予定になっている。
BBCニュース としてミシガン州立大学の包装学部長Susan Selkeは「ペットボトル飲料を仮にガラス瓶に置き換えた場合、輸送エネルギーは40%増加する」と話す。米国化学工業協会 (英語版 ) と環境評価企業Trucost (英語版 ) は清涼飲料水のプラスチックをスズ、アルミ、ガラスなどに置き換えた場合に、環境汚染への対策費は5倍に増えると推定している。また真空パックによって食品ロス も削減されており、単純にプラスチックを使わなければよいという意見には、議論が存在する[ 75] [ 76] 。なおペットボトルからアルミ缶への移行はアルミのリサイクルシステムが構築されていることや、賞味期限の延長のという恩恵があるため有用という意見もある[ 77] 。食品ロスと脱プラスチックの両立案として、小売店での量り売りや店側による容器の回収と再利用などがある[ 47] 。
プラスチックの石油消費量は、日本の石油消費全体の3%[ 78] [ 79] ~7%[ 80] 程度であり、燃料 (77%) など石油製品 全体の割合からすると少ない。食品容器はさらに、この一部(全体の0.2%)であるため、石油原料の消費量の点において、プラ容器は環境負荷が元々少ないという主張もある[要出典 ] 。
国内で生産される業務用ストローの約50%を生産する岡山県 のシバセ工業 では、プラスチック製品の存在が悪いのではなく、廃棄の仕方に問題があると考えており、「脱プラ製ストロー」の動きに関しては、特に分別回収 が徹底され、ほぼ焼却されている日本にはそぐわない。海洋汚染を語るなら、本当の問題は"垂れ流し"を行っている途上国 や先進国でも洪水 の可能性があるも関わらず埋め立て という手法を取っている欧米諸国にあると指摘している[ 81] [ 82] 。
バイオプラスチックが及ぼす食料需給への懸念[ 編集 ] バイオプラスチック の普及、生産のためには多くの農地が必要である。食糧生産のための農地がバイオプラスチックやバイオ燃料の材料用農地に変わる可能性がある。そうなれば世界総人口の増え続ける世界の食料需給に影響を与える可能性がある。特に影響を受けるのは発展途上国や低所得の貧困層になるだろう。これからバイオ素材が普及し大量に使われ長期的に利用料されるようになれば食料需給に影響をあたえる可能性が高い[ 83] 。
マイクロプラスチックは飲料や食品に混入していることがあり、それらを摂取することで体内に入る。マイクロプラスチックは生体バリアを突破し血液や胎盤から[ 84] ポリスチレンナノプラスチック (PS-NP) は血液脳関門 (BBB) を通過し人体に影響を与えることが懸念されている[ 85] 。ただし、ナノサイズ粒子のナノマテリアルになると生体バリアや血液脳関門を通過する異物はプラスチック以外にも多く存在することに留意が必要である[ 86] [ 87] 。2025年 、アメリカ合衆国 に在るニューメキシコ大学 の研究チームは「人体に取り込まれたプラスチック微粒子は、肝臓や腎臓よりも脳内に高濃度で蓄積される可能性がある」との研究結果を、米医学誌のネイチャー メディシン へ2月7日までに発表している[ 88] 。
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