区(く)は、行政区画の一種。特に、都市を細分する行政区画を区と呼ぶ。
日本国外の大都市を構成する行政区画は、現地語での表現にこだわらず「区」と訳されることが多い。「区」と同様、現地語の表現はしばしば、都市の区にかぎらずさまざまな種類の区画を意味する語であることも多い。日本での相当する制度に倣って特別区・行政区・また自治区などとも訳される。
英語では「ward」[† 1]あるいは「borough」[† 2] などと呼ばれる。
現行の行政区画としての区は、地方自治法下では、都(理論上は東京都に限らない)の区である特別区(第281条)と、政令指定都市に置かれる区(第252条の20)とがある。政令指定都市の区は行政区とも呼ばれる。
特別区は、市町村とほぼ同等の機能を持つ地方自治体(特別地方公共団体)である。一方、政令指定都市の区(行政区)は市の下部機関にすぎない。
日本の都市の区は特別区・行政区とも「ward」と英訳することが多いが、特別区は市と同等であることを反映し「city」と訳すこともある。
上記の、特別区および政令指定都市の区(行政区)を含め、「○○区」と称される区画名については、以下のものが挙げられうる。
歴史的には、1878年の郡区町村編制法で都市部に郡から分離された区が置かれた。東京・京都・大阪の三市にはそれぞれ複数の区が、そのほかの大都市にはそれぞれ1つの区がおかれた。1889年からの市制下では、三市の区は市の下の地方自治体となり、そのほかの区はそのまま市となった。その後、名古屋市(1908年~)、横浜市(1927年~)、神戸市(1931年~)に自治権のない行政区画としての区が設置された。
尚、現在の区と繋がりが薄いものも含め、以下のような区があった。
アメリカ合衆国の市や町には、区 (ward) が置かれていることがある。ただし、行政区画というよりは、選挙区としての役割が強いことが多い。
ニューヨーク市には、5つの区 (borough) が置かれている。
イングランドの都市の区は、borough(バラ)と呼ばれる。boroughは伝統的に自由都市を意味する語なので、区別のためにはmetropolitan boroughという。
都市州、つまりマンチェスター、マージーサイド、サウス・ヨークシャー、タインアンドウィア、ウェストミッドランズ、ウェスト・ヨークシャーの6都市には、区が置かれている。これらはLocal Government Act 1972により1974年から設置された。
ロンドン(グレーターロンドン)にも33の区 (borough) が置かれている。これらは London Government Act 1963 により1965年に設置された。またこれらに先立ち、London Government Act 1899 により1900年に County of London に区が置かれていた(1965年まで)。ロンドンの区は、旧制度・新制度とも、都市州の区とは別の法律に基づく別の制度である。
ムンバイなどに区 (ward) が置かれている。
デリーには9つの区 (district) が置かれている。ニューデリーはその1つである。
中華人民共和国・中華民国(台湾)に置かれている区(繁体字 區、く、ピンインqū チュイ)には、次のようなものがある。
このうち市轄区が、都市部に置かれており、日本での区のイメージに近い。
中華人民共和国では、大都市は広域の行政区画である直轄市(主要4都市)や地級市に再編され、それらの中心部に市轄区が置かれている。なお周辺部では、中小都市域には県級市、農村部には県が置かれている。
中華民国でも、直轄市や市に市轄区が置かれている。
都市州であるベルリンとハンブルクには、行政上の区(独:Bezirk)が置かれている。
最小規模の地方自治体であるバランガイをさらに区分した単位のひとつ、プロック。
フランスの都市の区は、arrondissement(複数形arrondissements)[† 3] と呼ばれる。arrondissement は郡をも意味するので、区別のためにはarrondissement municipal (複数形arrondissements municipaux)という。
パリ、リヨン、マルセイユの3都市に区が置かれている。パリは20の区に分かれ、各区はそれぞれ4つの地区 (quartier) に分かれる。
ブルガリアのソフィア自治体ならびに2つの大都市プロヴディフ、ヴァルナには区(ラヨン)が置かれている。
ベトナムのQuận(郡)は、中央直轄市に設けられる行政区画。日本語では「区」と訳されることが多い。
サンクトペテルブルク、ボルゴグラートなどいくつかの大都市には区 (район、ラヨン) が置かれている。
モスクワには10の区 (округа, административные округа, АО) が置かれている。区はさらにラヨンに分かれる。
ラヨンは、ソビエト連邦時代に制度化された行政区画で、旧ソ連の複数国で現存し、また市以外に州などの下にも存在する。その場合は地区と訳される。