ローレンツ力(ローレンツりょく、英:Lorentz force)は、電磁場中で運動する荷電粒子が受ける力のことである。名前はヘンドリック・ローレンツに由来する。
電場
と磁束密度(磁場)
の空間中を運動する荷電粒子(位置
、速度
、電荷
)に作用する電磁気的な力
は

であり、この
をローレンツ力と言う。ここで、「×」はベクトル積である。
上式で右辺第一項は電場中で荷電粒子が受ける力でありクーロン力とも呼ばれる。なお、第二項は磁場中で荷電粒子が受ける力

であるが、ローレンツ力という用語がこの項のみを指すものとされる場合もある。
荷電粒子が加速度運動している場合、その荷電粒子自身による電磁場の効果が存在するが[要校閲]、その影響はごく小さい場合が多いので通常は無視されるか、ごく小さなものとして扱われる[疑問点 –ノート]。(参考:制動放射、ラーモアの公式 放射の反作用、en:Abraham–Lorentz force)
ローレンツ力の向きについて、電場による力
は電場と平行である。また、磁場による力
は右手の法則に従い、下図のようにフレミングの左手の法則で表される。
磁場による力の向きを表すフレミングの左手の法則
右手の姿で示す方法また、右手の姿で示す方法もある。
ローレンツ力のする仕事は

である。ここで、磁場による力の項は、

であり、磁場は仕事をしない。
電場による力の項は、

である。この電場による仕事量は、巨視的に見るとジュール熱に相当する。
磁場による力は速度と直交する方向に生じるので、運動の向きを変えるだけで粒子の運動エネルギーは変化しない。エネルギーの移動は電場により生じている。
電荷qi の時刻t における位置をri(t)、速度をvi(t) とすると、電荷密度ρ、電流密度j は、

と表すことができる。δ(x)はディラックのデルタ関数である。
ローレンツ力Fは多数の粒子系に対しては

となる。ここで、電場Eと磁束密度Bを

として、和と積分を入れ替えると、

このようにミクロな粒子に作用する力(ローレンツ力)から、マクロな粒子系に作用する力(クーロン力及びアンペール力)が導かれた。
ローレンツ力を相対論的に記述すると

となる。ここでX = (ct,r) は粒子の相対論的な位置、p = (E/c,p) は粒子の相対論的な4元運動量、ドットは運動のパラメータによる微分である。F は電場と磁場を合わせた電磁場テンソルで、その成分は具体的に

と表される。
位置の微分は非相対論的な速度v によって

と表される。従って、この式の空間成分は

となる。非相対論的な力f は

となる。