ヘーメラー(古希:Ἡμέρα,Hēmerā)とは、ギリシア神話に登場する昼の女神である。ヘーメレー(古希:Ἡμέρη,Hēmerē)ともいう。その名はギリシア語で「昼」、「昼の光」の意味で、昼が神格化された神である。
日本語では長母音を省略してヘメラ、ヘメレとも表記される。
ヘーシオドスの『神統記』によるとヘーメラーの誕生は太陽神ヘーリオスよりも古い原初の時代に位置している。ヘーメラーはカオスの子供であるエレボス(幽冥)とニュクス(夜)の娘で、アイテール(高天、清澄な大気)の兄妹である[1]。ヒュギーヌスはより古くカオスの娘とし、ニュクス、エレボス、アイテールと兄弟であり、アイテールとの間にガイア(大地)、ウーラノス(空)、タラッサ(海)を生んだと述べている[2]。またキケローの『神々の本性について』(De Natura Deorum) によるとウーラノスとの間にヘルメースを生んだ[3]。
母のニュクスとは表裏一体をなす存在で、世界の西の果ての地下に館を共有している。そこはタルタロスの巨大で深い穴があり、巨人アトラースが天を支えている場所である。ニュクスが世界を巡って夜をもたらしている間はヘーメラーがこの館に待機し、ヘーメラーが世界を巡って昼をもたらしている間は、ニュクスがここに待機している。そのため、2神が共に館にいるのは昼と夜の境目の一瞬だけである。両女神は入れ替わりで館の青銅製の敷居をまたぐ際に挨拶を交わし、ヘーメラーは人間たちのために光を携えて館を出て行くとされる[4]。
ヘーメラーの名はしばしば他の女神を指すのに用いられた。バッキュリデースはヘーメラーをアルテミスの別名として用いている[5]。パウサニアースはケパロスの恋人でありメムノーンの母である暁の女神エーオースにヘーメラーを当てている[6][7][8]。シケリアのディオドーロスはエジプトの神々をギリシア神話の神々の名前で呼んでおり、ヘーメラーをクロノス(大地の神ゲブ)の妻とし、オシーリスとイーシスの母としている[9]。
- ^ヘーシオドス、124行-125行。
- ^ヒュギーヌス、序文。
- ^キケロー『神々の本性』3巻56,59(ケレーニイ、p.212。)
- ^ヘーシオドス、744行-757行。
- ^バッキュリデース断片11。
- ^パウサニアス、1巻3・1。
- ^パウサニアス、3巻18・12。
- ^パウサニアス、5巻22・2。
- ^シケリアのディオドロス、1巻27・4‐27・5
ウィキメディア・コモンズには、
ヘーメラーに関連するカテゴリがあります。