ヒマワリ (向日葵、学名 :Helianthus annuus )は、キク科 の一年草 の植物である。花は黄色で、種は食用 となる。日廻り や日回り と表記されることもあり、また、コウジツキ・ヒュウガアオイ (向日葵[ 2] )、ヒグルマ (日車)、ヒグルマソウ (日車草)、ヒマワリソウ (日回り草)、サンフラワー (英 :Sunflower )、ソレイユ (仏 :Soleil :太陽花)、ニチリンソウ (日輪草)とも呼ばれる[ 3] [ 4] 。
種実を食用 や油糧とするため[ 5] 、あるいは花 を花卉 ( かき ) として観賞 するために広く栽培 される。また、ヒマワリは夏 の季語 でもある。ロシア とウクライナ 、ペルー の国花 になっている。
リンネ の『植物の種 』(1753年 ) で記載された植物種の一つである[ 6] 。
原産地は、北アメリカ 。高さ3mくらいまで成長し、夏から秋にかなり大きな黄色 の花を咲かせる。また、ヒマワリの花の色の濃い部分はやや赤 みがかった黄色 (黄金 っぽい黄色 )をしている。
花弁 は大きな1つの花のように見えるが、実際は頭状花序 と呼ばれ、多数の花が集まって1つの花の形を形成している。これは、キク科の植物に見られる特徴である。外輪に黄色い花びらをつけた花を「舌状花」 、内側の花びらがない花を「筒状花」 と区別して呼ぶ場合がある。
和名「向日葵」の由来は、太陽 の動きにつれてその方向を追うように花が回るといわれたことから。ただしこの動きは生長に伴うものであるため、実際に太陽を追って動くのは生長が盛んな若い時期だけである。若いヒマワリの茎の上部の葉は太陽に正対になるように動き、朝には東を向いていたのが夕方には西を向く。日没後はまもなく起きあがり、夜明け前にはふたたび東に向く。この運動はつぼみを付ける頃まで続くが、つぼみが大きくなり花が開く頃には生長が止まるため動かなくなる。その過程で日中の西への動きがだんだん小さくなるにもかかわらず夜間に東へ戻る動きは変わらないため、完全に開いた花は基本的に東を向いたままほとんど動かない。なお、これは茎頂に一つだけ花をつける品種が遮るもののない日光を受けた場合のことであり、多数の花をつけるものや日光を遮るものがある場所では必ずしもこうはならない。
ヒマワリの種は螺旋状に並んでおり、螺旋の数を数えていくとフィボナッチ数 が現れる[ 注釈 1] 。
種は長卵形でやや平たい。種皮色は油料用品種が黒色であり、食用や観賞用品種には長軸方向に黒 と白 の縞模様がある。
太陽 の動きを追うといわれるが、追うのは生長が盛んな若い時期だけ
ヒマワリの種は螺旋状に並んでおり、螺旋の数を数えていくとフィボナッチ数が現れる
[ 8] 小輪ヒマワリ ヒマワリの原産地は北アメリカ大陸西部であると考えられている。既に紀元前 からアメリカ先住民 の食用作物として重要な位置を占めていた。インディアンは花びらから染料をとった。葉はガチョウの餌になり、油脂はマーガリン、また絵具の材料としても使われている[ 9] 。1510年 、スペイン 人がヒマワリの種を持ち帰り、マドリード 植物園で栽培を開始した。マドリード植物園はダリア やコスモス が最初に栽培されたことでも有名である。
ヒマワリがスペイン 国外に持ち出されるまで100年近くを要し、ようやく17世紀 に至りフランス 、次にロシア に伝わった。ロシアに到達してはじめて、その種子に大きな価値が認められた。
正教会 は聖枝祭 前の6週間を大斎 とし[ 10] 、食物品目の制限による斎 (ものいみ)を行う。19世紀 の初期にはほとんど全ての油脂食品が禁止食品のリストに載っていた。しかしヒマワリは教会の法学者に知られていなかったのか、そのリストにはなかったのである。こうした事情から、正教徒 の多いロシア人たちは教会法と矛盾なく食用可能なヒマワリ種子を煎って常食 としたのであった[ 10] 。その後、19世紀 半ばには民衆に普及し、ロシアが食用ヒマワリ生産の世界の先進国となったのであった。
日本 には、ヨーロッパから中国へ伝わった後、1660年代後半に伝来した。『訓蒙図彙 』には「丈菊、俗に言ふてんがいくわ(天蓋花)、一名迎陽花(げいようくわ)」として載っていて、その後「日廻り(ひまわり)」から「向日葵(ひまわり)」(現代中国語 名:向日葵 )と呼ばれるようになり、1700年ごろには「ひまわり」が定着した。[ 11]
種ができる頃のヒマワリ U.S. Department of Agricultureの統計によるとヒマワリの種子生産量は2024/25年産、油料用植物として大豆 (4億2714万トン)、ナタネ (8600万トン)に次ぐ、生産量(5214万トン)を誇る[ 4] 。食用種子としての生産量も大豆、ナタネに次いで多い。また、2006年 -2007年 の植物油生産量はパーム油 (37,985千トン)、大豆油 (36,716千トン)、ナタネ油 (18,425千トン)、ヒマワリ油 (11,171千トン)である。ヒマワリの生産地域は5割強がソ連構成国 に集中しており、ヨーロッパ と南アメリカ州 がそれぞれ1割程度を生産している。
ロシア (カミツレ とともに国花とする)- 1690万トンウクライナ (セイヨウカンボク やスミミザクラ とともに国花 とする) - 1300万トンアルゼンチン - 510万トンカザフスタン - 183万中国 - 175万トン被子植物では果実の中に種子があり、日常語では果実のことを「実」、種子のことを「種」と呼ぶものが多いが、ヒマワリの場合は慣用的に果実全体を「種」と呼んでいる。ヒマワリの種は痩果 で、種の殻と呼ばれている部分は果皮 であるが、本項では便宜上「種」「殻」と記述する。
種は絞って搾油されヒマワリ油 として利用される。ヒマワリ油には不飽和脂肪酸 が多く含まれる。1990年代 までリノール酸 が70 - 80%、オレイン酸 が10 - 20%のハイリノールタイプが主流であった。ω-6系列の脂肪酸であるリノール酸の発ガンや高脂血症、アレルギー等との因果関係が報告されるにいたり、リノール酸が15 - 20%、オレイン酸が40 - 60%の中オレインタイプのNuSun品種が伝統的な交配育種法により育成され、2000年 以降は主流となっている。
煎って食用とすることができる。種子はカルシウムを多く含み、噛むと歯が悪くならないという[ 9] 。特に中国や米国ではおやつとして好まれる[ 12] 。噛みタバコ やガム と同様にアメリカの大リーガー が試合中に食す嗜好品 としても普及している[ 13] 。
乾燥した種子を用いる生薬名は「向日葵子」(こうじつきし、ひゅうがあおいし)で、出血性下痢に用いられる[ 14] 。
ペット (ハムスター 、小鳥 など)の餌に利用される。
ディーゼルエンジン 用燃料(バイオディーゼル )として利用する研究も進められている。
村おこし・町おこしや、災害からの復興活動として、全国にヒマワリ畑があり、イベントも開催されている。
他、多数
ヒマワリはカリウム などと共に性質が類似するセシウム を吸収する性質を持つことから、原発事故 などで放射能汚染 された土地に植えたら除去できる(ファイトレメディエーション )という説が流布しているが、そのような効果は認められていない[ 15] 。
そもそも、一般的に植物にとって必須元素であるカリウムの吸収が、放射性セシウムの除染のために価値がある程大きいのであれば、ヒマワリの生えた後の土壌は極端に貧栄養化しているはずである。また農林水産省 は「ヒマワリはセシウムの吸収率が低く、除染に極めて長い時間がかかるため実用的ではない」としている[ 16] 。
ヒマワリ畑 これらの自治体 ではヒマワリによる地域特産化を図り、油等食品、化粧品等のヒマワリ関連製品を販売している。北海道の標準播種期は5月上旬であり、霜 や氷点下の気温にも耐性はある[ 17] 。
北海道 山形県 茨城県 栃木県 埼玉県 千葉県 東京都 神奈川県 山梨県 長野県 愛知県 三重県 京都府 大阪府 兵庫県 奈良県 和歌山県 広島県 徳島県 愛媛県 福岡県 長崎県 宮崎県 鹿児島県 ヒマワリは、ロシア 、ウクライナ の国花 である。米国カンザス州 の州花 である。日本でも、北九州市 など各地の市区町村の花 として定められている。ペルーでは、太陽神の象徴。古いインカの神殿には、太陽神に仕える聖女が、ヒマワリを模した純金の冠や装身具を身に着けている様子が彫刻されている[ 18] 。
画家ではゴッホ の「ひまわり 」やモネ の作品などが著名である[ 19] 。
この他に、ヒマワリは各種の社会運動 、例えば耽美主義 、台湾のひまわり学生運動 、心霊主義 、緑の政治 などのシンボルとしてしばしば使われてきた。
日本弁護士連合会 は弁護士バッジ にデザインされているヒマワリを「正義と自由」の象徴としている。
俳人 三橋鷹女 (1899-1972)は「真夏の日を逐うて咲くひたむきな花を好もしく思ひ」第一句集を『向日葵』(三省堂 1940)と名付けた。また後の歌集『羊歯地獄』(俳句評論社1961)には「向日葵を斬って捨つるに刃物磨ぐ」などヒマワリを詠じた句が15句収録されている[ 20] 。
^ 螺旋の数が多い場合、中心から離れると螺旋の隙間にも種ができてしまうため、途中から枝分かれしてフィボナッチ数にならないこともある[ 7] 。 ウィキメディア・コモンズには、
ヒマワリ畑 に関連するカテゴリがあります。
ウィキメディア・コモンズには、
ヒマワリ に関連する
メディア および
カテゴリ があります。
ウィキスピーシーズに
ヒマワリ に関する情報があります。