左の赤いものがパーム油、右の黄色みがかったものがパーム核油 精製されたパーム油 パーム油 (パームゆ、英語 :palm oil )はアブラヤシ の果実 から得られる植物油 である。通常ギニアアブラヤシ (学名Elaeis guineensis )から得られる。飽和脂肪酸 が多くその内訳はパルミチン酸 が最も多く、次に一価不飽和脂肪酸のオレイン酸 に富み、およそ8割をこの2つの脂肪酸で占める。同じアブラヤシから得られるものとしてパーム核油 がある。パーム油が果肉 から得られるのに対し、パーム核油は種子 から得られるもので、組成も性質も異なる。
食用油 とするほか、マーガリン 、ショートニング 、石鹸 の原料として利用される。近年では、バイオディーゼル エンジン や火力発電 、バイオマス発電 の燃料 としても利用されている[ 1] 。2009年時点で、世界で最も生産されている植物油である[ 2] 。
オレンジ色をした、常温 では固体 の油脂 で、独特の芳香と甘味を持つ。主な成分はパルミチン酸 約50%、オレイン酸 約45%、リノール酸 約10%で、その他ステアリン酸 約5%、ミリスチン酸 約1%が含まれている[ 3] 。常温で固体であるのは飽和脂肪酸 であるパルミチン酸を多く含むためで、組成 全体としては牛脂 に近い性質を持つ。パーム油のオレンジ色はβ-カロテン に由来し、未精製のパーム油にはαカロテン、βカロテンやビタミンEに富むが、精製段階で失われ、色が淡黄色になる。ただし、食用パーム油として製造されるものはβ-カロテンを残すようにすることが多い。これを特に「レッド・パーム油」と呼ぶことがある。[ 4] 。
アブラヤシ Elaeis guineensis アブラヤシE. guineensis は、東アフリカのジャングルに起源があると考えられており、パーム油はファラオの時代(5千年前)のエジプトで使われていたとされる[ 6] 。
西アフリカの アブラヤシE. guineensis については、ポルトガル人が15世紀にブラジルなどの熱帯諸国に導入したが、栽培については1848年にオランダ人がインドネシアに種を持ち込んだことに起源があり、その後シンガポール、マレーシアへと持ち込まれた[ 4] 。
1965年には、ロンドン(イギリス)でパーム油に関する国際会議が開催され、イギリスが熱帯作物の研究成果を普及するもので、イギリス人を除くと当時の最大生産国ナイジェリアの参加者が多かった[ 7] 。しかし、ナイジェリアの内戦により生産量は低下し、アフリカのパーム油が国際市場に登場することはなかった[ 7] 。
1960年代には、マレーシアのゴム農園がアブラヤシ農園に転換しはじめ、1966年にはナイジェリアを上回る最大生産国となり、1980年代にはアメリカの大豆油産業と相対することになる[ 7] 。主にポテトチップス の揚げ油として、アメリカでの輸入量は1965年には約3000トンほどだったものが、1975年には約44万トンとなり、マクドナルドといったファストフード店でも使われ始める[ 7] 。1980年代には、アメリカ心臓病予防協会も、動物性脂肪 や、パーム油、パーム核油、ヤシ油をまとめる熱帯油の言葉によって、これらに含まれる飽和脂肪酸 が心臓病のリスクを高めると呼びかけたが、1989年には、大豆油由来マーガリンは水素の添加によって同様にリスクを高めるトランス脂肪酸 が多いことが明らかになっていくまで、1980年代にはアメリカでのパーム油の使用量は一時的に下落していた[ 7] 。
健康の面と風味や硬化の点から以下のいずれかの選択肢が生じ、動物性脂肪、トランス脂肪酸を含む植物油が由来のマーガリン (やショートニング )、パーム油、そして欧州の一部でトランス脂肪酸の使用禁止が法律化されると、パーム油の使用が増大してきた[ 8] 。
農業の持続可能性 の考えが一般的になると、2004年に「持続可能なパーム油のための円卓会議」が開催され、森林保護と人権の問題が提起された[ 8] 。2013年に欧州パーム油同盟 (EPOA) が組織され、また2020年に向けて欧州の食品チェーン全体に持続可能なパーム油が100%になるよう求める「アムステルダム宣言」が2015年になされ署名国にはイギリス、イタリア、ドイツ、デンマーク、ノルウェー、オランダなどが含まれる[ 8] 。2016年には欧州で使われていた持続可能なパーム油は、69%であった[ 8] 。
アブラヤシの果実には、30-35%の脂肪分が含まれる[ 8] 。インスタント食品 やスナック菓子 、一部の洗剤 成分などに広く用いられている。食品としては、飽和脂肪酸の多さからパーム油の融点が37度前後であるため、口にすると溶けるという点で独特の食感をもたらす[ 8] 。
熱帯 ・亜熱帯 地方では広く料理 に使われる。特に、アブラヤシの原産地である西アフリカ の森林地帯では、料理に色と独特の風味を与えるために古くから食文化体系の中で不可欠とされる食材であり、アフリカの食文化を奴隷貿易 を通して受容したブラジル では「アゼイテ・デ・デンデ」と呼ばれ、北部と北東部の料理 には欠かせないものとされている。その他、タイ料理 など東南アジア の料理などで使われる。加工食品 では揚げ物 や水素化 したショートニング の代用として使われる。
動物性脂肪に豊富な飽和脂肪酸は健康に対する悪影響が広く言われており、同様に飽和脂肪酸の多いパーム油についても研究されてきているが、その影響については明確な結論が出ておらず、動物性脂肪より悪影響が弱い、影響なしといった様々な結果が見られている[ 8] 。パーム油はリドカイン [ 9] 、テストステロン の[ 10] 経皮吸収のための薬物送達 に利用可能である。
アブラヤシ・プランテーション パーム油の原料であるギニアアブラヤシ の生産地は、主にインドネシア やマレーシア などの東南アジア地域である。これらの国の生産現場では、無秩序な開発と劣悪な労働環境が横行するようになったため、2013年 9月11日 、RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)によってパーム油の認証制度が制定されている[ 11] 。特に、温暖化ガス である二酸化炭素 (CO2)を吸収する熱帯雨林 や、CO2を地中に留めている泥炭 湿地 を破壊 して造成したプランテーション で採取したパーム油を使う火力発電を再生可能エネルギー とみなすことには批判がある[ 12] 。
パーム油は菜種油に比べて6倍以上も生産効率が高いが、需要・生産量の急増により森林破壊の4大原因のうちの一つとなっている。
^ 【真相深層】バイオマス発電 黄信号/燃料調達難で大半稼働できない恐れ/パーム油使用、乱開発助長も 『日本経済新聞』朝刊2018年4月17日(2面)^ 植物油の生産から消費まで (1)世界の植物油生産 (一般社団法人 日本植物油協会) データは2004 - 2011年のISTA Mielke社「Oil World」誌^ 『15710の化学商品』 化学工業日報社、2010年、1380頁。 ^a b Kalyana Sundram, Ravigadevi Sambanthamurthi, Yew-Ai Tan (2003). “Palm fruit chemistry and nutrition”. Asia Pacific journal of clinical nutrition 12 (3): 355–362. PMID 14506001 . ^ USDA National Nutrient Database ^ Chiabi, Andreas; Kenmogne, Maguerite Hortence; Nguefack, Seraphin; et al (2011). “The empiric use of palm kernel oil in neonatal skin care: Justifiable or not?”. Chinese Journal of Integrative Medicine 17 (12): 950–954. doi :10.1007/s11655-011-0938-1 . PMID 22139548 . ^a b c d e 岡本正明「もう一つの油戦争:―不健康なパーム油という言説,その対抗言説の誕生と発展 」『東南アジア研究』第55巻第2号、2018年、217-239頁、doi :10.20495/tak.55.2_217 。 ^a b c d e f g Gesteiro, Eva; Guijarro, Luis; Sánchez-Muniz, Francisco J.; et al (2019). “Palm Oil on the Edge” . Nutrients 11 (9): 2008. doi :10.3390/nu11092008 . PMID 31454938 . https://www.mdpi.com/2072-6643/11/9/2008/htm . ^ Khamdiah Khodari, S.N.; Noordin, Mohamed Ibrahim; Chan, Lucy; et al (2017). “In vitro and in vivo Evaluation of New Topical Anaesthetic Cream Formulated with Palm Oil Base”. Current Drug Delivery 14 (5). doi :10.2174/1567201813666160801113302 . PMID 27480118 . ^ Didi Erwandi Mohamad Haron, Zamri Chik, Mohamed Ibrahm Noordin, Zahurin Mohamed (2015-12). “In vitro and in vivo evaluation of a novel testosterone transdermal delivery system (TTDS) using palm oil base” . Iranian journal of basic medical sciences 18 (12): 1167–1175. PMC 4744355 . PMID 26877845 . https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4744355/ . ^ “開催報告:企業向け森林セミナー「パーム油と森林破壊」 ”. WWF (2013年10月7日). 2018年4月8日閲覧。 ^ 【イチからオシえて】想定外のパーム油発電拡大/再生エネ買い取り対象 CO2削減に逆行も 『毎日新聞 』朝刊2018年2月21日(くらしナビ面)2019年4月11日閲覧。ウィキメディア・コモンズには、
パーム油 に関連するカテゴリがあります。
原因
影響 各地の森林破壊 対策
森林の種類 その他 カテゴリ