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ハト科 (ハトか、学名 Columbidae )は、鳥類 ハト目 の科である。ハト (鳩)と呼ばれる。
ハト科の鳥は、サハラ砂漠 の最も乾燥した地域、北極圏 最北部、南極大陸 とその周辺の島々を除いた全世界のあらゆる場所に分布している[ 1] 。ハト科は大海の孤島にも生息域を広げており、太平洋 の東部ポリネシア やチャタム諸島 、インド洋 のモーリシャス やレユニオン 、セーシェル 、大西洋 のアゾレス諸島 にまで生息している。
ハト科は地球上で居住可能なほとんどの地域に生息地を広げており、樹上性、陸生、半陸生であることもある。ハト科に属する様々な種はサバンナ 、草原 、砂漠 、疎林 、森林 、マングローブ 林、さらには環礁 の不毛な砂 や砂利 の上にすら生息している[ 2] 。
ハト科に属する種のレベルでも、広い生息範囲を持つ種がいくつか存在する。ミミグロバトはコロンビア からフエゴ島 に至る南アメリカ全域に生息しており[ 3] 、シラコバト はイギリスからヨーロッパ、中東、インド、パキスタン、中国に至る、不連続だが広大な生息域を持つ[ 4] 。ワライバトはインド、パキスタン、中東からサハラ以南のアフリカにかけて生息している[ 5] 。逆に、いくつかの種、特に島の固有種 などでは、分布域は小さく制限されたものとなっている。キガシラヒメアオバトはフィジー のカンダブ島 のみに生息しており[ 6] 、マミムナジロバトはカロリン諸島 の中のチューク諸島 とポンペイ島 の2つの島のみに生息している[ 7] 。そして、グレナダバト はカリブ海 のグレナダ 島のみに生息している[ 8] 。大陸 に生息する種でも、いくつかの種は小さな生息域にとどまっているものがある。例としては、クロオビバトはオーストラリア のアーネムランド のみに生息しており[ 9] 、ソマリーヒメモリバトはソマリア北部の小さな地域にのみ生息する[ 10] 。キガオハシリバトは、アルゼンチン 北部のサルタ やサン・ミゲル・デ・トゥクマン 周辺のみに生息している[ 11] 。
ハト科の中で最も広い地域に生息する種はカワラバト である[ 12] 。この種は自然生息域が元々広く、イギリスとアイルランド から北アフリカ 、ヨーロッパ 、アラビア 、中央アジア 、インド、ヒマラヤ 、さらに中国とモンゴル に至るまでの広大な地域に生息していた[ 12] 。さらにこの種は家畜化 されており、世界各地に導入された後野生化したため、生息域はさらに劇的に増大した[ 12] 。この種は本来の生息域に加え、現在北アメリカの大部分に生息しており、さらに南アメリカやサハラ以南のアフリカ、東南アジア、日本、オーストラリア、ニュージーランドの都市や都市部にも生息している[ 12] 。人類の介入によって生息域を拡大した種はカワラバト以外にも存在しており、いくつかの種は人類の元から逃れて本来の生息域以外の地に分布を広げ、またいくつかの種は人類活動によって変化した自然環境に入り込む形で生息域を拡大した[ 11] 。
体形は頑丈で丸みを帯びる。頭部は小型。全身は柔らかい羽毛で密に覆われる。
嘴や後肢は短い。
卵は白い殻で覆われ、全長と比較すると相対的に小型である。多くの種は雌雄同色である。
主に森林 に生息するが、草原 や砂漠 に生息する種もいる。鳴き声は単純である。
食性は植物食もしくは植物傾向の強い雑食 で、植物の葉 、花 、果実 、種子 などを食べる。地表で採食を行う種が多い。嘴を水に指し入れ、頭を下にしたまま水を飲む事ができる。
繁殖形態は卵生。多くの種は樹上に木の枝を組み合わせた皿状の巣を作り、1回に1–2個の卵を年に数回に分けて産む種が多い。主にメスが営巣するが、巣材はオスが集めることが多い。卵から孵化した雛は、親が吐き出した食道の一部(そ嚢)からの分泌物(ピジョンミルク 【タンパク質 を多く含む】)を食べて育つ(雛が成長すると、親が他の食物も一緒に与える)。
雛の成長にはタンパク質が必要なため、他の鳥類はタンパク質を多く含む食物、主に昆虫の幼虫(青虫)を雛に与えるため、春から夏にかけてしか繁殖しない。しかし、ハト科の鳥は上述のように自らのタンパク質を与えるため、春・夏に限らず、秋・冬にも繁殖することがある。
単型 のハト目 Comunbiformes を構成する。かつてはサケイ科 がハト目に含められ、ハト科はハト目ハト亜目Columbae に分類されていた。ハト科はサケイ科とやや近縁ではあるが[ 13] [ 14] 、姉妹群 はクイナモドキ科 である可能性が高い[ 15] 。
ハト科は3つの系統に分かれ[ 16] 、Pereiraet al. (2007) では Clade A・Clade B・Clade C と仮称されている。Clade A・Clade B 内の系統関係はよくわかっているが、最大の Clade C は類縁関係の不確かないくつかの小系統からなる。Clade B は新熱帯区 (中南米 )固有である。Clade C はエチオピア区 ・東洋区 ・オーストラリア区 (オセアニア を含む旧世界 の熱帯)に生息しオーストラリア区起源、Clade A は新旧両世界の熱帯に生息し新熱帯区起源のようである[ 16] 。
従来の一般的な分類ではカワラバト亜科Columbinae ・アオバト亜科Treroninae ・カンムリバト亜科 Gourinae ・オオハシバト 亜科Didunculinae の4亜科またはゴクラクバト 亜科Otidiphabinae を加えた5亜科に分けられ[ 16] 、さらに従来別科とされていたドードー科 Raphidae を含む。このほかにも、亜科の構成が異なったり、オオハシバト科Didunculidae やアルキバト科Claraviidae を分離するなど、さまざまな説があった。しかしこれらの説は系統を反映していない。単型 でないカワラバト亜科とアオバト亜科は単系統ではなく、Clade A と Clade B はカワラバト亜科に含まれ、Clade C は残りのカワラバト亜科・他の4亜科・ドードー科からなる。
系統樹は Pereiraet al. (2007)[ 16] より。他のソースによるものは出典付きで配した。サンプリングされていない属には「?」を付けた。Clade C のうちカワラバト亜科Columbinae とアオバト亜科Treroninae に属する枝には [Co] と [Tr] を記した。
現生属と種数は国際鳥類学会議 (IOC) による[ 21] 。42属321種が現生する。
カワラバト Columba livia ケアシスズメバト Columbina talpacoti カワラバト亜科Columbinae (部分)[ 編集 ] ヒムネバト Gallicolumba luzonica Ducula spilorrhoa ゴクラクバト Otidiphaps nobilis 上記のとおり、開発による生息地の破壊、羽毛目的の乱獲、人為的に移入された動物による捕食などにより、すでに絶滅してしまった種や、生息数が減少し絶滅が危惧されている種も散見される。
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