ナマコ (海鼠 、別名:俵子、英 :sea cucumber )は棘皮動物門 のグループの一つで、ナマコ綱 Holothuroidea に分類される。体が細長く口が水平に向くなどの特徴を共有する一群である。世界に約1,500種、日本 にはそのうち200種ほどが分布する[ 1] 。食用になるのはマナマコ など約30種類。寿命は約5-10年。
ナマコ綱 は、棘皮動物 門に属する動物の一群である。この門の他の群(ウニ 、ヒトデ 、クモヒトデ 、ウミユリ )は体軸を基盤面に垂直にした体をもつのに対して、ナマコ類は体が前後に細長く、腹面と背面の区別がある。見かけ上は左右相称であるが、体の基本構造は棘皮動物に共通した五放射相称 となっている。体表が刺や硬い殻ではなく、比較的柔軟な体壁に覆われることもナマコの特徴である。骨格 の発達は悪く、細かな骨片として体壁に散らばっている。雌雄異体であるが、外観から区別することは困難である。
ナマコは無脊椎動物 としては大きく生育する方で、多くの種が体長が数十センチメートルに達する。最大級のナマコであるクレナイオオイカリナマコは体長4.5メートル、直径10センチメートルに達する[ 2] 。日本周辺の海域にはシカクナマコ科のマナマコ が特に多く、食用にされるナマコもほとんどの場合はこの種である。
キュビエ器官(白い糸状の組織)を放出するナマコ すべてが海産であり、淡水 ・汽水域 には生息しない。潮間帯 から深海 まで分布範囲は海洋全域に及ぶ。大部分が底生で、潜行性のものも含む。深海に住むナマコには、ユメナマコ など浮遊性の種類も知られる。サンゴ礁 の海底や深海底の一部では、極めて大きな集団を形成することがある。
基本的に不活発な動物で、海底をゆっくりと這っている。多くのナマコがデトリタス (海底に降り積もって堆積した有機物 )を主な餌とし、触手でそれらを集めて食べる。食べ方は種によって異なり、海底表面のデトリタスを舐めとるように食べるものと、砂と共に口にかき集めるものがいる。水中に触手を広げ、海中を漂う有機物を集めるナマコもいる。
肛門から有機物を摂取することも出来る。[ 3]
特殊な性質として、敵の攻撃を受けると腸管由来の内臓を放出するものがある。熱帯性のナマコの多くはキュビエ器官 という白い糸状の組織を持っており、刺激を受けると肛門 から吐出する[ 4] 。キュビエ器官は動物の体表にねばねばと張り付き、行動の邪魔をする。マナマコなどキュビエ器官を持たないナマコは、腸管を肛門や口から放出する。ナマコは他の棘皮動物同様に再生力 が強く、吐き出した内臓は1-3ヶ月ほどで再生される。同様にある程度絶食の環境にも耐えられる。
一部のナマコは、肛門から水を取り入れ、膨張した肛門を上にして浮遊状態となり移動する。塩分濃度が低すぎたり堆積物が多すぎると判断すると膨張して、逃亡するように膨らんで浮遊して移動する[ 5] 。ユメナマコ など一部の種は、浮遊時に移動を行うための遊泳器官を持つ。また、ペラゴスリア・ナタトリックス (英語版 ) は、一生泳ぎ続ける漂泳性のナマコである[ 6] 。
ナマコの外部形態(a - 触手、b – 肛門、c - 腹部の管足、d - 疣足) 水槽の壁を這うアデヤカキンコ 。腹側に走行する3列の歩帯が明瞭である ナマコ類の骨片 (英語版 ) 多くは細長い芋虫 型で、腹と背の区別がある。前端に口 、後端には肛門 がある。ナマコの体表は主にコラーゲン から成る厚い体壁 に覆われている。体壁は柔軟で、伸縮性に富む。表面はクチクラ に覆われ、内側には環状筋と5列の縦走筋があり、これらを使って呼吸 や運動を行う。体重の90%以上は水分である。深海の浮遊性ナマコは寒天質の体をしており、重量を減らすことで浮力を得ているとみられる。
ヒトデ と違ってわかりづらいが、ナマコの体も棘皮動物に共通する五放射相称の構造となっている。ナマコの腹には中央とその両側に歩帯 (管足 が並ぶ)があり、背側には左右両端に歩帯(管足が変形した疣足 が並ぶ)がある。すなわち、全身は放射状に並んだ5つの歩帯から構成されている。腹側の管足は移動に使われ、先端が吸盤 となっている。無足目と隠足目のナマコは管足を持たず、蠕動運動によって移動する。板足目のナマコは多くが深海性で、一部には太く大きな管足を持つ種類がいる。
触手が発達したキンコ属の一種、Cucumaria miniata 口周辺には管足が変形した触手 が輪状に配列し、餌の摂取や、種によっては移動にも使われる。触手は他の管足よりはるかに大きく、先端は種によってさまざまな形に枝分かれしている。触手は口に引っ込めることも可能で、本数は5の倍数であることがほとんどである。
ナマコは骨格を持たないが、体壁の内部に石灰質の骨片が無数に散らばっている。骨片は肉眼で確認できる大きさのものもあるが、大部分は顕微鏡 サイズで、微小骨片 (spicule ) と言われる。骨片の形は穴の空いた平板型、車輪状、カギ型、錨型などさまざまで、分類上の形質としても使われる。
ナマコの体壁は真皮と筋肉 から成り、水分の含有量が高い。体壁はその硬さを大きく変化させることができる。硬質ゴム のように硬くもなり、つかんだ指の間から流れそうなほど柔らかくなることもある。柔らかくなって岩の隙間にもぐりこみ、そこで硬くなって天敵 や波に引き出されないようにするなど、ナマコはこの性質を防御に利用していると考えられている。
星型の疣足が特徴のバイカナマコ (Thelenota ananas ) ナマコは消化器 として食道 ・胃 (種によっては不明瞭)・小腸 ・大腸 を持つ。口から肛門まで直線状あるいはS字型の単純な構造をとる種(マナマコなど)と、とぐろを巻いた複雑な構造をとる種(キンコ など)がある。食道の入り口の周囲には囲食道骨と呼ばれる10個の骨板が並ぶ。大腸は総排泄腔 と肛門へ続き、肛門には肛歯と呼ばれる5本の歯がついている。
ナマコは明確な呼吸器 を持つことで棘皮動物の中では突出している。総排泄腔から体腔内に左右一対の樹状に分岐した管が伸び、ここに海水を出し入れすることで呼吸が行われる。この器官を呼吸樹 (respiratory tree ) という。なお、ナマコは皮膚呼吸 も行っており、呼吸樹を失っても直ちに生命に危険が及ぶわけではない。板足目・無足目のナマコは呼吸樹を持たない。
楯手目のナマコの一部には、呼吸樹の基部に白い糸状の器官がつながっている。これはキュビエ器官 と呼ばれる特殊な防御器官で、ナマコは敵に襲われるとキュビエ器官を肛門から放出する(行動 を参照)。
ナマコには心臓 がなく、明瞭な血管系 は持たない。酸素 の輸送など体内の循環系を司るのは、水管系 ならびに血洞系 と呼ばれるシステムである。水管系は環状水管と放射水管からなる。環状水管は食道の周りを取り巻き、5本の放射水管とポーリ嚢 (袋状の組織で、機能は不明)につながっている。放射水管は体壁の中を走行し、管足 に分岐する。管足や触手の基部には瓶嚢 と呼ばれる袋があり、ここに水管内の液体を出し入れすることで管足の太さを調節している。水管の中を流れている液体の成分は、海水とほぼ同じである。
血洞系の構成は水管系とよく似ており、周口血洞環から伸びる5本の放射血洞からなる。放射血洞は多数の細い管を腸管に伸ばしていて、栄養吸収・輸送の役割を持つものとみられている。水管系・血洞系はそれぞれ体壁・腸管においてメインとなる循環システムであるが、全身への酸素・栄養供給は体腔内に満たされた体腔液が行っている。
神経系 は食道周囲に環状に配置する周口神経環と、後方へ伸びた5本の放射神経からなる。目 ・耳 ・鼻 などまとまった感覚器官 は持っていない。外敵との接触や光の変化などについては、体壁に分布する皮膚神経叢によって感知される。
生殖巣は体の前方にあり、精子 や卵 を放出するための生殖口は触手の後方付近に開く。繁殖期には、生殖巣は体腔のほとんどを占めるほど大きくなる。精巣と卵巣は色合いがわずかに異なるものの、肉眼で区別することは一般に難しい。
ナマコには雄と雌の区別があり、多くの種は体外受精 による繁殖を行う。日本周辺でのナマコの産卵期は3月中旬から8月下旬までの間で、この期間に1匹のマナマコが生む卵の数は2,000万個程度と見積もられている[ 7] 。ナマコの生殖口は後頭部にあり、放精・放卵の際には体の前部を大きく持ち上げ、L字型の姿勢をとる。
初期の幼生 はウニなどのそれに似ているが、次第にやや縦長の体に複雑に折れ曲がりながら体を取り巻く繊毛帯を持つ幼生(アウリキュラリア幼生:ラテン語 で耳たぶ の意)となって、海中を漂う浮遊生活をする。次の段階では樽 型のドリオラリア幼生(ラテン語で樽の意)となるが、この時期の終盤には海底に沈むことが多くなり、底性生活へと移行していく。その後ペンタクチュラ幼生を経て変態 を行い、成体とほぼ同じ姿の稚ナマコとなる。マナマコの場合、卵から稚ナマコになるまではおよそ1ヶ月ほどである。
ある程度成長するまでは、親ナマコの体内で過ごすナマコもいる。首の周りに哺育嚢を持つPsolus koehieri や、体腔内で幼生をかくまうムラサキグミモドキなど30種余りが知られている[ 8] 。南極海 など寒冷な海に住むナマコにこのタイプが多く、幼生の生存率を高めるための適応 と考えられている。
ナマコには肛門を通じて、様々な魚類、多毛類、さらにはカニ類など多くの生物が寄生 し、呼吸による水流を利用して出入りしている。夜間には、これらの種の多くはナマコの肛門から出て餌を探す。[ 9]
ほとんどの種は宿主に害を与えないようだが、少なくともカクレウオ属 は、ナマコの生殖巣を食べることがわかっている。[ 3]
海底の堆積物を食べるその生態はミミズ 同様土壌改善、水質改善の役割を果たす。[ 3]
ナマコを煮て作った料理 横浜 の中国薬店で販売される干しナマコナマコ類は無脊椎動物の中では大きくなる方だが、攻撃手段を持たず、動きも遅いため捕獲が容易である。日本 や中国 では古来より、ナマコを食料として利用してきた長い歴史がある。日本で主に食用とされるマナマコは体色からアカ・アオ・クロの3種に分けられ、それぞれ地域によって価格差がある。スーパーの店頭に並ぶのは3種のうち最も商品価値の低いアオであることがほとんどである。
旬 は初冬とされ、日本では酢の物 として食べることが多く、味よりはコリコリとした独特の食感を楽しむ食べ方をされる。腸 などの内臓を塩辛 にしたものはこのわた と呼ばれ、ウニ ・からすみ (ボラ の卵の塩漬け )と並んで日本三大珍味 のひとつとされる。905年 編纂の『延喜式 』にも記述があり、ナマコの利用法としては1,000年以上の歴史を持つ[ 10] 。
生食が中心の日本に対し、中国では乾燥させた干しナマコとして利用するのが一般的である。内臓を除いて薄い塩水などで煮た後に乾燥させたナマコを煎海鼠 、海参 (いりこ)という。煎海鼠は、日本でも古くは体内の虫殺し、肝臓への薬効、痰の除去などに効果があると言われ、『養老律令 』賦役令 及び『延喜式 』にも諸国 からの貢納品として挙げられている。『本朝食鑑 』には、その形がネズミ に似ていることから「鼠」の字が用いられたと伝えられ、江戸時代 には米俵 に似ているということで豊作 に通じた縁起物として正月 の雑煮 の具(上置)に用いられた。また、長崎貿易 においては「俵物 」として清 などに輸出された[ 11] 。
卵巣 を干したものはこのこ または口子 (くちこ)と呼ばれる。
主に食用となるナマコ一覧[ 12] [ 13] ナマコは漢方薬 として古くから滋養強壮薬、皮膚病薬として用いられてきた。中国語でナマコを指す「海参(ハイシェン)」は、その強壮作用から「海の人参(御種人参 )」との意味でつけられた名前である。朝鮮人参の主要薬効成分であるサポニン 類は通常は植物の持つ成分であるが、ナマコやヒトデなど一部の棘皮動物にも含まれていることが明らかにされている。
ナマコが持つサポニン の一種ホロツリン (英語 :holothurin ) は強い防カビ 作用を持ち、白癬菌 を原因とする水虫 の治療薬「ホロクリンS」として実用化されている。ナマコのサポニンはキュビエ器官や卵巣に多く含まれ、この毒性を利用して魚を捕る小規模漁も行われている。
サポニン の界面活性作用を石鹸 に用いることがある[ 14] 。
マレー人のナマコ利用 (英語版 ) として、薬[ 15] や石鹸として利用が見られる[ 16] 。
日本人とナマコの関わりは古く、712年 に編纂された日本最古の歴史書 『古事記 』にその記述が見える。天孫降臨 の際、アメノウズメ (猿女君 の始祖)が魚たちを集め「神の御子(天孫たるニニギ )に仕えるか」と問うたとき、ナマコだけが答えなかった。怒ったアメノウズメは小刀でナマコの口を裂いた、という内容が記されている[ 17] 。
『古事記』にはすでに「海鼠」という語が登場しているが、当時はこれで「コ 」と読んでいた[ 18] 。「ナマコ」とは本来は調理をしていない(生の)「コ」を指す言葉であった。この名残が、前述の「このわた 」(「コ」の腸)、「いりこ」(煎り「コ」)、「このこ 」(「コ」の子)という語に残っている。平安時代 中期の辞書 である『和名類聚抄 』には「老海鼠」「虎海鼠」などが掲載されている。『本朝食鑑 』や『日本山海名産図会』など江戸時代 の食材図鑑にもナマコは紹介されており、ナマコ食の歴史は長い[ 19] 。夏目漱石 の小説 『吾輩は猫である 』の中には、初めてナマコを食べた人物の胆力には敬服すべきだ、という一節もあり、食べ物としては意外な印象を与える場合も少なからずあったようである。
ナマコは和歌 や俳句 の題材にも選ばれ、俳句では冬の季語 とされている。「生きながらひとつに凍る海鼠かな」(松尾芭蕉 )、「安々と海鼠のごとき子を産めり」(夏目漱石)など、多くの文人・歌人たちにより様々な作品が残されている。
「塗り箸でナマコをはさむ(難しいことの例え)」「ナマコに藁(弱点のこと)」「ナマコの化けたよう(醜いものの例え)」など、ナマコに関することわざ もいくつかある。
水揚げされたナマコ 中国で食用とされるバイカナマコ (英語版 ) 日本のナマコ漁獲量は1980年代以降減少傾向にあったが、2006年度には10,000トンと、1970年代後半の規模にまで回復した[ 20] 。2006年度の生産額は130億円余り[ 21] 。主な漁法は小型底引き網 で、このほかに潜水器や海人 による小規模漁も行われている。乾燥ナマコは香港 、中国 などに輸出され、特に香港に輸出される農林水産物としては金額で1位である(約110億円、2006年)[ 22] 。都道府県別漁獲量では北海道 ・青森 ・山口 が特に多い[ 23] 。
日本のナマコ漁は古代から行われており、733年 に献上された『出雲国風土記 』にはナマコの産地として現在の島根県松江市 美保関町 などが紹介され、後年の『延喜式 』にはイリコやこのわたが租税 として納付されたと記されている[ 24] 。
江戸時代には、ナマコは中国(清 )への主要な輸出品となった。干しナマコ・ふかひれ ・干しアワビ は特に多く輸出され、「俵物 三品(たわらものさんぴん)」と呼ばれた[ 25] 。ナマコを外貨獲得の手段として重要視していた幕府 は、一般市場でのナマコ流通を禁止し、漁師に対しては増産を厳しく迫った[ 25] 。幕府に対し取り立ての猶予を求める、各地の漁業者からの上申書も残されている[ 26] 。
ナマコ養殖 の試みは明治に始まり、稚ナマコの放流 や人工漁礁 の造成が各地で行われた。禁漁期間の設定や漁礁の改良を行うなどの努力により一定の成果が得られた地域は多く、大浦湾では昭和初期に増産の成功を記念して「海鼠増殖記念碑」が建てられた[ 26] 。
少なくとも18世紀ごろには、オーストラリア先住民がナマコを採取し、干して輸出していた記録が残っている(マカッサル族とオーストラリア先住民の交流 (英語版 ) )。
アメリカ合衆国 フロリダ州 、コスタリカ 、エクアドル 、インド などでもナマコの漁獲が行われ、ほぼ全量が中国へ輸出されている。21世紀に入り、中国の富裕層が増加すると高級食材としてのナマコの需要が高まり、フロリダにおける漁獲量が約4倍増加。2014年6月からは、資源量の減少を危惧したフロリダ州魚類野生生物保護局により、1隻1日200匹までの漁獲制限がなされる[ 27] 。
近年では中華料理 の食材として特に黒ナマコが海のダイヤ等と呼ばれ非常に高値で取引されることが多く、そのために保護水域や漁業水域での密漁 も横行している。
密漁の背景には、中華料理の食材としてはもちろん、中国での需要増による価格の高騰が背景にあり、そのために生活に困った漁師などに密輸業者が目をつけ、密漁を推進したりすることが各地で続いており、ナマコ類と、それを漁業として生計を立てている漁師や水産関係者に、自然保護観点からみても頭の痛い問題となっている。暴力団 の資金源になっているとの指摘もある[ 28] 。
現在は漁師や漁業関係者に、海上保安庁 などが生息水域のパトロールなどを行っているが、今のところ、密漁の取り締まりには効果的な方法や糸口は見えていない。
2018年現在、北海道における漁獲量の50%相当が密漁品であると推測する者もいる[ 29] 。2018年に道内でナマコに関係する密漁で逮捕された暴力団員は過去最多の50人にのぼった[ 30] 。水産庁 では、2020年 度までに漁獲証明制度を整備し、税関 などで都道府県の漁業協同組合連合会 が発行する原産地証明書 の提示を求めることで、密漁によるナマコの流通を防ぐ措置を講じることとしている[ 31] 。
斑点状の疣足を持つナマコ(Isostichopus badionotus ) イカリナマコ科の1種(Synaptidae sp.)。無足目と隠足目のナマコは管足・疣足を持たない 深海の浮遊性ナマコ(ユメナマコ 、Enypniastes sp.) ナマコは管足・疣足および呼吸樹の有無、触手の形状や骨片の種類などに基づいて3亜綱6目23科に分類される[ 32] 。日本産ナマコの分類は、明治の動物学者 である箕作佳吉 (みつくりかきち)と、彼の仕事を引き継いだ大島廣により完成された[ 33] 。
種数はWoRMSによる[ 34] 。
無足亜綱Apodacea 無足目Apodida 大島廣が日本産の分類を完成させた目。ミツクリキクモンナマコ(Myriotrochus mitsukurii )は箕作佳吉への献名 である。イカリナマコ科Synaptidae Burmeister, 1837 - 16属174種。オオイカリナマコ ・クレナイオオイカリナマコ クルマナマコ科Chiridotidae Östergren, 1898 - 12属74種。ムラサキクルマナマコ ・イボカギナマコ キクモンナマコ科Myriotrochidae Théel, 1877 - 8属50種。ミツクリキクモンナマコ 隠足目Molpadida カウディナ科Caudinidae Heding, 1931 - 5属37種。シロナマコ Eupyrgidae Semper, 1867 - 1属2種。Gephyrothuriidae Koehler & Vaney, 1905 - 2属3種。イモナマコ科Molpadiidae Müller, 1850 - 3属64種。 楯手亜綱Aspidochirotacea 楯手目Aspidochirotida 食用種として重要なマナマコをはじめ、温帯・熱帯域の海岸付近に住むナマコの多くがこの目に含まれる。クロナマコ科Holothuriidae Burmeister, 1837 - 5属192種。クリイロナマコ・クロエリナマコ・フタスジナマコ・チズナマコ・ジャノメナマコ・クロナマコ・アカミシキリ・チビナマコ・イソナマコ・クロホシアカナマコ・フジナマコ・トラフナマコ ・ニセクロナマコ ・テツイロナマコ・イシナマコ・ハネジナマコ・エクレアナマコ シカクナマコ科Stichopodidae Haeckel, 1896 - 9属33種。バイカナマコ・マナマコ ・アカオニナマコ・シカクナマコ ・タマナマコ ミツマタナマコ科Synallactidae Ludwig, 1894 - 17属120種。ゴマフソコナマコ Mesothuriidae Smirnov, 2012 - 2属32種。クマサカナマコ 板足目Elasipodida 深海産ナマコを多く含む目。ユメナマコは箕作による命名。カンテンナマコ科Laetomogonidae Ekman, 1926 - 6属19種。ヒメカンテンナマコ・ハゲナマコ クマナマコ科Elpidiidae Théel, 1882 - 13属101種。センジュナマコ ・ウシナマコ・ホタテナマコ (オランダ語版 ) クラゲナマコ科Pelagothuriidae Ludwig, 1893 - 2属2種。ユメナマコ ・クラゲナマコ エボシナマコ科Psychropotidae Théel, 1882 - 3属26種。エボシナマコ・トキンナマコ オニナマコ科Deimatidae Théel, 1882 - 3属13種。ムカデナマコ・オニナマコ・ゲジナマコ 樹手亜綱Dendrochirotacea 指手目Dactylochirotida フラスコナマコ科 Rhopalodinidae Théel, 1886 - 3属18種。Vaneyellidae Pawson & Fell, 1965 - 3属7種。イガグリキンコ科Ypsilothuriidae Heding, 1942 - 3属11種。イガグリキンコ 樹手目Dendrochirotida 北方系の種が多い。キンコ科Cucumariidae Ludwig, 1894 - 66属。キンコ ・グミ Heterothyonidae Pawson, 1970 - 1属3種。ジイガセキンコ科Psolidae Burmeister, 1837 - 7属123種。ジイガセキンコ グミモドキ科Phyllophoridae Östergren, 1907 - 20属184種。ハマキナマコ・グミモドキ スクレロダクティラ科Sclerodactylidae Panning, 1949 - 21属93種。イシコ・ムラサキグミモドキ Paracucumidae Pawson & Fell, 1965 - 2属3種。ウロコナマコ科Placothuriidae Pawson & Fell, 1965 - 1属4種。 ^ 『ナマコガイドブック』 p.8 ^ 『ナマコガイドブック』 p.129 ^a b c “【動画】スッキリ!なナマコのうんちが偉いわけ ”. natgeo.nikkeibp.co.jp . 2025年10月8日閲覧。 ^ “なまこの生態 ”. 能登なまこ . 能登なまこ加工協同組合. 2025年7月19日時点のオリジナル よりアーカイブ。2025年7月18日閲覧。 ^ “ナマコは700%膨張して海を大移動、最新研究 ”. natgeo.nikkeibp.co.jp . 2025年9月3日閲覧。 ^ 2017/05/02. “深海を優雅に泳ぐこの生き物は何? ”. www.epochtimes.jp . 2025年9月3日閲覧。 ^ 『なまこ読本』 pp.14–16 ^ 『ナマコガイドブック』 pp.26–27 ^ Aquarium Invertebrates by Rob Toonen, Ph.D. ^ 『なまこ読本』 p.80 ^ 高山直子「煎海鼠」『国史大辞典』第1巻(吉川弘文館、1979年ISBN 978-4-642-00501-2 ) p.822 ^ Purcell, Steven W.; Lovatelli, Alessandro; González-Wangüemert, Mercedes; Solís-Marín, Francisco A.; Samyn, Yves; Conand, Chantal (2023). “Commercially important sea cucumbers of the world” . FAO Species Catalogue for Fishery Purposes (Rome:Food and Agriculture Organization of the United Nations (FAO) ) (6). doi :10.4060/cc5230en . ISBN 978-92-5-137793-2 . ISSN 1020-8682 . https://openknowledge.fao.org/items/83beabbc-bdeb-4ecb-bef6-38716e4bfb88 2024年5月18日閲覧。 . ^ Ramofafia, C.; Byrne, M.; Battaglene, S. C. (2003). “Development of three commercial sea cucumbers,Holothuria scabra ,H. fuscogilva andActinopyga mauritiana : larval structure and growth”. Marine and Freshwater Research 54 (5): 657–667. Bibcode : 2003MFRes..54..657R . doi :10.1071/MF02145 . ISSN 1323-1650 . ^ “大村湾産黒ナマコを用いた新規スキンケア・ヘアケア商品の開発および販売【大村湾水産加工品販売】 ”. 2014年11月8日閲覧。 ^ Pangestuti, Ratih; Arifin, Zainal (2018-07). “Medicinal and health benefit effects of functional sea cucumbers” (英語). Journal of Traditional and Complementary Medicine 8 (3): 341–351. doi :10.1016/j.jtcme.2017.06.007 . PMC 6035309 . PMID 29992105 . https://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S222541101730069X . ^ “マレーシアの伝統と文化を感じる、おすすめ土産6選 [マレーシア All About]”. All About(オールアバウト) . 2025年9月3日閲覧。 ^ “底度久御魂 ”. 神名データベース . 國學院大學「古典文化学」事業. 2025年4月26日時点のオリジナル よりアーカイブ。2025年7月21日閲覧。 ^ 『なまこ読本』 pp.1–3 ^ 『なまこ読本』 pp.104-105。「生海鼠 」『日本山海名産図会』国立国会図書館デジタルコレクション ^ “平成18年漁業・養殖業生産統計 海面漁業の部 > 年次別統計(平成8年~18年) - 魚種別漁獲量 ”. 2014年11月8日閲覧。 ^ “平成18年漁業生産額 魚種別生産額 > 海面漁業 ”. 2014年11月8日閲覧。 ^ “農林水産物輸出入概況 2006年確定値 ”. 2014年11月8日閲覧。 ^ 『ナマコガイドブック』 p.91 ^ 『ナマコ』 pp.247–267 ^a b 『ナマコ』 pp.231–246 ^a b 『なまこ読本』 pp.43–47 ^ “米フロリダ州がナマコの漁獲量を制限へ、乱獲に警鐘” . ロイター (ロイター通信社). (2014年4月18日). https://jp.reuters.com/article/oddlyEnoughNews/idJPTYEA3G08N20140417/ 2014年4月20日閲覧。 ^ https://web.archive.org/web/20151101025821/http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151029-00000008-khks-soci ^ “暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」のリアル ”. 東洋経済オンライン (2018年10月6日). 2018年11月23日閲覧。 ^ “密漁ナマコ 暴力団増長 昨年逮捕 最多50人 所場代徴収、深い水域お構いなし ”. 北海道新聞 (2019年5月19日). 2019年5月19日閲覧。 ^ “国産ナマコに漁獲証明制度=暴力団の資金源根絶へ-水産庁 ”. 時事通信社 (2018年6月14日). 2018年6月15日閲覧。 ^ “Holothuroidea ”. ITIS . 2014年11月8日閲覧。 ^ 下湯直樹「師授伝統からなる博物館学意識: 動物学者の思想を中心に」『博物館学雑誌』第34巻第2号、2009年、79-96頁、CRID 1520572359653705344 。 ^ “Holothuroidea” .World Register of Marine Species . 2014年11月8日閲覧 .