
シウマイ弁当(読み:シュウマイ - べんとう)は、「崎陽軒」(神奈川県横浜市西区)が製造・販売する横浜駅の駅弁。崎陽軒名物の焼売をメインに、他のおかずを合わせた幕の内タイプの弁当である[1]。
2018年時点で1日平均23,000食の売上があり、日本で最も多く販売されている駅弁とされる[1]。カロリーは772kcal[2]。
シウマイ弁当は、崎陽軒が横浜駅東口にて運営していた食堂が全焼して間もない1954年(昭和29年)に発売された[3]。崎陽軒のシウマイは、既に1928年に初代社長・野並茂吉が横浜駅の名物をつくろうと南京町(現在の中華街)で出されていた「焼売」に目を付けたことを契機に開発され[4]、この頃にはメイン商品として定着していた[5]。販売当初は崎陽軒のシウマイと「横浜カマボコ」「酒悦の福神漬」の3品をメインのおかずにし、価格は100円だった[5]。
以後現在まで横浜駅の名物駅弁として知られるようになり、1991年(平成3年)には第3回ヨコハマ遊大賞[注 1]を受賞している[6]。
横浜市内および神奈川県内の学校や事業所・会社などでは、行事などの際に食事としてこのシウマイ弁当が利用される事も珍しくない[7]。またそのための崎陽軒独自の物流が整備されており[7]、同社の主力商品であるシウマイ弁当に限っては製造量を調整[7]したり他店に回したりして売り切る見込みが立つことから、運動会等の天候理由でのキャンセルを当日朝まで可能とする特殊なキャンセルポリシーを販売当初から設けてきた[8]。このような背景から地域において長年にわたり高い知名度を保つシウマイ弁当は、駅弁でありながら地域住民の日常の食事としてよく夕方に購入されているというデータがある[9]。
2017年6月23日より、崎陽軒横浜工場が弁当製造ラインを新設したことを記念し、1か月限定で特別シウマイ弁当2種が発売された[10]。シウマイを8個入りとするなど容量を増やして通常の約1.5倍の「メガシウマイ弁当」と小ぶりながらおかずの質を高めた「MINIプレミアムシウマイ弁当」である[10][注 2]。
2020年2月12日には、新型コロナウイルス感染症の防疫措置で大黒埠頭に停泊中のダイヤモンド・プリンセスに、崎陽軒からの支援としてシウマイ弁当4000食が提供されたが、伝達ミスにより乗客には届けられなかった[11]。
2020年8月7日に崎陽軒の初の海外店舗として開店した台湾の台北駅店では、現地素材による「昔ながらのシウマイ」等とともに「台湾版シウマイ弁当」を発売した。温かい食事を好む台湾の食文化に合わせてご飯とシウマイが温められている点が日本の商品と異なり、醤油入りの小瓶「ひょうちゃん」も台湾限定の絵柄が7種類存在する[12]。
2003年(平成15年)以降[13]の内容は、シウマイ5個、厚焼卵、鮪のつけ焼き、蒲鉾、鶏唐揚、筍煮、杏の甘煮、切り昆布、千切り生姜、俵形ご飯からなる[2]。
豚肉、タマネギ、干しホタテ貝柱、グリーンピース、皮に使用する小麦粉、調味料として塩、胡椒、砂糖、デンプン[14]の9種類の材料を使用している。豚肉に干しホタテ貝柱を練りこむことで、冷めても弁当として風味を損ねない[15]。サイズは列車内でも一口で食べられるよう、直径3cmと小ぶりにしている[16][17]。
発売当初はシウマイ4個入りだったが、オイルショックの余波で[要出典]1974年に値上げが行われた際、5個に増量し、現在に至っている[13]。
釜で炊いたものではなく、蒸気で蒸したものを使用しており、おこわのような粒の立った堅めの食感が特徴である[18]。釜炊きの場合おこげになった部分は商品に使用できずロスが生じるという問題意識から、蒸気炊飯を採用したものである[19]。
また、容器の素材が木であるため温かいご飯を詰めた場合でも蒸気が吸収され[20]、プラスチックのように蓋の裏に溜まって滴ることがなく風味を損ねにくい[21]。
おかずについては変遷があるが、それまであったおかずがなくなると悲しまれるため変更が難しい面がある[13]。かつて鶏の唐揚げをエビフライに変更した際には抗議の電話が多くあったという逸話がある[22]ほか、夏場に傷みやすいことからラインナップから外れていた玉子焼き[23]が2003年に復活した際には記者会見が開かれた[1]。
シウマイ以外のおかずにも人気があり[24]、筍煮はシウマイに次ぐ人気のおかずと言われている[23]。2017年には筍煮を通常の4倍増やした弁当や、鶏唐揚げとシウマイの数を入れ替えた弁当が2日間限定で販売され、人気を博した[10]。
2022年8月17日から23日の間は、新型コロナウイルスの世界的流行の影響などにより、輸入鮪の確保が難しいとして「鮪のつけ焼き」から「鮭の塩焼き」におかずの一品を期間限定で変更した[25]。
弁当の折箱には材木を紙のように薄く切った経木を使用している[26]。余分な蒸気を吸収する素材であるため、温かい状態で詰めたご飯の風味が落ちにくい[20]。蓋はアカマツ製、底板はエゾマツ製で、木材の切り出し方や厚さも変えている[20]。板の切り出しは四隅を角丸にし、糊付けなどの折箱の組立は手作業を交えて行われている[26]。
横浜工場・本社工場で作られたシウマイ弁当は掛紙で包んだ紐で職人や社員が手作業で縛っているのに対し[27][28]、東京工場製はボール紙の蓋を被せ[27]ビニールの襷で蓋を留めているため、ご飯やおかずの水気に差が出ることがある[要出典]。横浜製の弁当は、2018年時点で、神奈川県全域、町田市などの東京都の一部、静岡まで流通している[27]。
掛紙には横浜の名所が描かれており、現在のデザインは1995年から使用されている4代目である[27]。また、「横浜開港祭」等のイベントが開催される際の神奈川地区発売分のみの期間限定デザインや[10]、横浜スタジアム限定パッケージ等もある[27]。
発売当初の100円から、1968年(昭和43年)には200円、1973年(昭和48年)には300円、1974年(昭和49年)に400円、1977(昭和52年)に500円、1981年(昭和56年)に600円と少しずつ価格が上昇し、1989年(平成元年)に700円に到達、その後は数十円単位の小幅な値上を行い、2014年(平成26年)に800円となった[13]。
2018年(平成30年)9月より830円→860円(税込)[29]。2022年10月より 900円(税込)[30]、さらに2023年9月より950円(税込)に改定されたが[31]、米やホタテ、国産豚肉などの原材料価格と人手不足による人件費の上昇を背景に2025年2月1日より1,070円(税込)に改定され1,000円超えとなった[32]。
文字表記は「シュウマイ弁当」「シューマイ弁当」ではなく、正しくは「シウマイ弁当」である。「シウマイ」表記の理由には初代崎陽軒社長の栃木訛りからとの説、中国の発音説、「うまい」の含意説など諸説ある[28]。崎陽軒の公式見解では初代社長の「シーマイ」という発音を中国人従業員が現地発音に近いと評価したことがきっかけであり、「うまい」含意説は後付けであるとしている[33]。
ただし、横浜の伊勢佐木町にあった博雅亭が1899(明治32)年に「焼売」の販売を開始し、1922年(大正11年)には豚肉に北海道産の乾燥貝柱と車海老を加えた商品を「シウマイ」表記で発売しており、戦前の日本語の仮名遣いでは「シウマイ」となるのが普通だったのではないか、という説もある[34]。
焼売を含む點心の本場、中国広東省から香港を中心に使用される広東語では焼売を「シウマーイ」と発音する。
以下は駅構内(改札内外)に直売店のある駅
その他に羽田空港、東海道新幹線・在来線の東京駅・品川駅・静岡駅[35]や山手線の駅・都内デパートなどでも販売されている。一時期北海道から九州にかけて、全国のスーパーなどにも出店していたことがあるが、「真のローカルブランドを目指す」という社長の判断により撤退した。
高速道路では、東名高速道路の海老名サービスエリア(EXPASA海老名上り線)と足柄サービスエリア(EXPASA足柄上下線)、京葉道路の幕張パーキングエリア(Pasar幕張下り線)、関越自動車道の三芳パーキングエリア(Pasar三芳上り線)で販売されている。
鉄道駅から離れた郊外のロードサイドにも出店するケースがある。古くから横浜市内では保土ケ谷区の国道16号沿いや、戸塚区の国道1号沿いなど、鉄道駅とは関係のない地域にも出店していたが、最近では旭区の環状2号沿い(2020年11月出店)など、ロードサイドへの出店攻勢を強めつつある。
また、横浜スタジアムでもDeNA球団公認の弁当として販売され(価格は通常より100円高いが、球場オリジナルの包装紙がついている)、東京ドームでも巨人軍公認の弁当としてアレンジしたものが販売されているほか、神宮球場でも入荷は少ないものの販売されている。
なお、競合会社である日本レストランエンタプライズに委託した形で東京駅で販売する駅弁に「シウマイ炒飯弁当」がある。シウマイ弁当のご飯をそっくり炒飯に入れ替えたほか、鮪のつけ焼き、昆布に代わるおかずとして豚カツ、青椒肉絲、ザーサイが入っている[36]。
2021年11月、姫路駅において関西シウマイ弁当として兵庫県姫路市にある「まねき食品」が販売を開始した[37][38]。まねき食品では新型コロナウイルスの感染拡大により売り上げが最大7割減少しており、関東限定で人気のある駅弁を作ろうと考え崎陽軒とのコラボレーションに至った。崎陽軒からは「折箱は経木を用いる、蓋の裏側に米粒が付く固さに炊き上げる、値段は1000円を超えない」といった条件が提示された。シウマイは崎陽軒が関西風の味付けで製作し、おかずはまねき食品がシウマイ弁当と同様のラインナップを関西風に味付けされている[39][40]。またパッケージのデザインも本家の龍に対して虎を採用し、水晶に姫路城や明石海峡大橋、通天閣、太陽の塔、梅田スカイビル、東寺、大文字山など関西の観光名所をあしらっている[41]。