元々は、「お気楽」(carefree)や、「陽気」(cheerful)、「明るくて派手」("bright and showy")を意味する言葉で[1]、19世紀後半の頃は男性同性愛を表す言葉としてはほとんど使われていない。かつてはこの単語が「不品行」「不道徳」といった含意を担わされていた時代もあり、古くはジェフリー・チョーサーの物語集『カンタベリー物語』の中の「バースの女房の話」の一節に、この用法で使用されている事が確認されている[2]。
今日における他の用法には、コワードの詩と同様の多義性がいくらかある。「Bringing Up Baby」(1938年)は、ゲイという言葉を明らかにホモセクシュアリティを指すものとして使った初めての映画である。ある場面でケリー・グラントの服がクリーニング屋に送られてしまい、彼は女物のワンピースを着るはめになる。そのことについて問われると、彼は「ゲイになっちまったからだよ…いきなり!」と答えるのだ[13]。しかし、まだ当時はホモセクシュアリティを意味するものとしてこの言葉を使うことは、当たり前ではなかった。この台詞は、「何かちょっとしたおふざけでもやってみようかなと思って」という意味にとられる可能性もあったのである。グラントがこの台詞をアドリブで言ったのかたどうかについては議論がある(台本にはなかったのだ)。
このように1963年頃には、ゲイという言葉には新たな捉え方が生まれていた。それはアルバート・エリスがその著書「The Intelligent Woman's Guide to Man-Hunting」で用いたことで有名になったものである。しかし、もともとの意味でポップ・カルチャーに用いられた例として、1960年から66年まで放送されたアニメ番組「原始家族フリントストーン」のテーマ・ソングがある。それを聞いた視聴者は、彼らにもかつて「陽気な在りし日」があったのだと考えたことだろう。同様に、1966年のハーマンズ・ハーミッツの曲である「No Milk Today」が挙げられる[15]。この曲は、イギリスのヒットチャートで上位10位に入り、アメリカでも40位になった。歌詞にはこんな節がある。「No milk today, it was not always so / The company was gay, we had turn night into day」。1967年6月、ビートルズの新作である『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』への評をのせた「タイムズ」紙は、こういっている。「ビートルズはポップ・ミュージックの進歩という希望を復活させた。それは、この新しいゲイなLP盤でなしとげられたのだ」[16]。
上述のような、全世界的な流れとしてホモセクシュアルな意味が付されてきたのかということには議論の余地もいくらかある。「ゲイgay」がGood As youのことだという主張もされているが、このような語源説が証明されているわけではない[17]。
^“A queer use of an inoffensive little word; Philip Howard”. The Times: p. 12. (1976年6月7日){{cite news}}:|access-date=を指定する場合、|url=も指定してください。 (説明);|accessdate=、|date=の日付が不正です。 (説明);|newspaper=で外部リンクを指定しないでください。 (説明)⚠⚠⚠