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ギリシア語(ギリシアご、希:ελληνικά[eliniˈka]、または 希:ελληνική γλώσσα[eliniˈki ˈɣlosa] (
音声ファイル)、英:Greek language)は、インド・ヨーロッパ語族ヘレニック語派(ギリシア語派)に属する言語。単独でヘレニック語派(ギリシア語派)を形成する。ギリシャ共和国やキプロス共和国、イスタンブールのギリシャ人居住区などで使用されており、話者は約1200万人[1][2]。、アルバニア南部、イタリア南部、および世界各地のディアスポラ(アメリカ合衆国、オーストラリア、ドイツなど)でも使用されている。また、ラテン語とともに学名や各分野の専門用語にも使用されている。漢字に転写し希臘語、さらにそれを省略し希語などと記される[注釈 1]。東地中海諸地域における共通言語の一つとして3000年以上もの間、日常言語、あるいは文学作品や公式記録、外交文書の言語として重要な役割を果たしている。
ギリシア語は、インド・ヨーロッパ語族の中で最も古くから記録されている言語であり、その歴史は3400年にわたる[3]。ギリシア文字で記されるようになったのは、ギリシアでは紀元前9世紀、キプロスでは紀元前4世紀以後のことである。それ以前では、紀元前2千年紀半ばには線文字Bが、紀元前1千年紀前半にはキプロス文字が、それぞれ使われていた。
その語彙は学術用語として英語をはじめとする欧米諸言語に多数借用されており、英語の語彙のうちの12%がギリシア語由来であると推定される[2]。ギリシア語はまた、『新約聖書』原典を記すのに用いられた言語でもある。ヘレニズム時代には東地中海世界の通商語として広まり、中世には東ローマ帝国領の大半にあたる広大な地域(中東・北アフリカ・東南ヨーロッパ・アナトリア半島)に波及した。
このほか、アメリカ合衆国、オーストラリア、ドイツ、カナダ、イギリスなど、世界各地のギリシャ人ディアスポラコミュニティにおいて使用されている。
ギリシア語の語彙はヨーロッパの諸言語に広く借用されている。特に英語においては、数学(mathematics)・天文学(astronomy)・民主主義(democracy)・哲学(philosophy)・修辞学(rhetoric)・俳優(thespian)・陸上競技(athletics)・劇場(theater)などのほか、ギリシア語の単語やその要素は新たな造語の元にもなっている。人類学(anthropology)・写真(photography)・異性体(isomer)・生体力学(biomechanics)・映画(cinema)・物理学(physics)などがそれに当たる。また、ラテン語とともに国際的な学術用語の拠り所ともなっている。たとえば -logy(~学、~論)で終わる語は、その多くがギリシア語の「ロゴス(λόγος)」に由来する。ギリシア単語の多くが英語の派生語を有する一方、ギリシア語に起源を持つと推測される英語の語彙はその内の12%である[2]。
ギリシア語は、おおよそ紀元前3千年紀後半にはバルカン半島で話されていた。最も古い痕跡は、クレタ島のクノッソス宮殿内の「2頭立て馬車の粘土板の部屋」にある線文字Bの粘土板(LM IIIA,紀元前1400年頃)に見出せる。ギリシア語が現在使用されている言語の中で世界最古に記録されたもののひとつとされる所以である。インド・ヨーロッパ語族の中で、記録を確認できる年代がギリシア語に匹敵する言語は、ヴェーダ語とヒッタイト語(死語)のみである。なお母音のいくつかは長短の区別があった。
後年のギリシア文字(線文字Bとの関連はない)はフェニキア文字に由来する。フェニキア文字はアブジャド(単子音文字)であったため多少手が加えられ、これが今日でも使用されている。ギリシア語は慣例的に以下のように区分される。
- ギリシア祖語
- 確認されているすべてのギリシア語の、想定上の原型。実際の記録には残されていない。ギリシア祖語の話者は、おそらく紀元前2千年紀前半にギリシアへ移住してきた。以来、ギリシアでは絶え間なくギリシア語が話されてきた。
- ミケーネ語
- ミケーネ文明の言語。線文字Bで粘土板に書かれており、紀元前15世紀ないし14世紀にまで遡れる。
- 古代ギリシア語(古代ギリシア語の方言(英語版))
- 古代ギリシア語に含まれる様々な方言は、古代ギリシア文明のアルカイック期と古典期の言語に分かれる。古代ギリシア語はローマ帝国中に広く知れ渡っていた。
- コイネー
- 様々な古代ギリシア語方言と、古典期のアッティカ方言(アテナイの方言)の融合体。初の共通ギリシア語方言であり、東地中海と近東全域の通商語となった。コイネーはまず、マケドニア軍とアレクサンドロス大王の征服地にその足跡を辿ることができる。ヘレニズム時代に各地に植民都市が建設されたのちは、エジプトからインド周辺にまで到る地域で話されるようになった。共和政ローマによるギリシア征服後は、ローマ市内ではラテン語とギリシア語のダイグロシア(二言語併存)が定着し、ローマの領域全体でも第一言語または第二言語の地位を獲得した。しかしながら、中世になると西ヨーロッパでは廃れていった。
キリスト教の起源を明かにできるのもコイネーである。使徒の伝道が、ギリシアやギリシア語圏で行われていたからであり、このときに用いられたコイネーは、『新約聖書』原典にも使用されたことから新約聖書ギリシア語と呼ばれるほか、アレクサンドリア方言や後古典ギリシア語としても知られる。 - 中世ギリシア語
- 東ローマ帝国で用いられた、コイネーの後継。とはいえ、すでに多くの点で現代ギリシア語に近づいていた日常の話し言葉から、古典期のアッティカ方言に倣った高度に学問的な文語までが含まれており、その意味するところは多岐にわたっている。「中世ギリシア語」とは、15世紀に帝国が終焉を迎えるまでのギリシア語全体を包括する用語と言える。帝国の公用語となった文語の多くは、文語コイネーの伝統に基づいて生まれた折衷的・中立的なものであった。コンスタンティノープルの陥落に伴ってギリシア人がイタリアに移住すると、ギリシア語は再び他のヨーロッパに紹介された。
- 現代ギリシア語(英語版)
- 中世ギリシア語から派生しているため、語法の起源は東ローマ帝国時代(早ければ11世紀)に求めることができる。現代ギリシア語は、その名のとおり現代のギリシア人によって話されている言語である。標準語とは別にいくつかの方言が存在し、東ローマ帝国の時代から伝わる民間人の口語(デモティキ)と、公文書や文学・神学書等で用いられてきた古典ギリシア語に近い文語(擬古典語)を元にした「カサレヴサ」の間を揺れ動きながら成立してきた。
まず口語では、ソフィアノスのギリシアの文法書が初出である。しかし18世紀のヴルガリスは、擬古典語を堅持した。ミシオダクスは新しい共通語を基礎にと主張。カタルジスは学者として初めて口語民衆語を支持した。一方、アダマンティス・コライスは、コイネーを規範とし、口語を純化(カサレヴサ化)した古典的ギリシア語に基づく新しい規範的ギリシア語を作ることを最初に訴えた。
1833年にギリシャ王国が成立すると、新国王オソン1世とともに故国に帰った官僚は、コイネーを規範とする古典的カサレヴサを標準とすべきと主張した。一方では、口語に基づいた民衆語をギリシア語にするべきだという文学者ディオニシオス・ソロモスの主張[注釈 2]も存在した。
その後、長くフランスのパリで活躍したプシハリスが、民衆口語が通時言語学的に公用語として適切であり、現代ギリシア語は口語によるべきであることを国際的な学者・作家として初めて言語学的根拠をもって主張した。当時行政言語に主流であったカサレヴサは、通時言語学に反した復古的・人工的なもので、公用語でも文学語においても失当である旨を『わが旅』等で文学作品の中で実践してもいる。
しかしその「口語」は、数ある方言のうち「アテネ方言」のみを指称するもので、当時の方言をまとめるには、かつてのコイネーを基盤とするカサレヴサの方が、ギリシア全体の共通語として(方言をまとめるために)より一般化しやすい言語であった[注釈 3]。方言学者はどちらの陣営にも属さず、地域方言をその地域の「口語」として、教育言語に使用することを折衷案として唱えた。エーゲ海のサモス島やスミルナで女子校の運営にあたったレオンディアス・サッフォーは、学校教育においても方言を推奨し、言語論争に「方言」の重要性を提起した。「カサレヴサ」の長所と、アテネ方言の「デモティキ」との折衷言語よりも「民衆語である方言」の重要性を強調した。[独自研究?]
20世紀後半に入ると、首相のエレフテリオス・ヴェニゼロスは新憲法にカサレヴサを公用語にすることを記載した。ただし初等教育については、トリアンダフィリデスの主宰する教育学会が文法書をデモティキで出版し、民衆口語(アテネ方言)化が公的に行われた。やがて、イオアニス・メタクサスの独裁政権の下ではカサレヴサではなくデモティキが正式な国語と制定され、またその後の政変で再度カサレヴサに戻された。1964年、ゲオルギオス・パパンドレウ政府がカサレヴサとデモティキとをともに公用語(併用)とするも、軍政下ではカサレヴサが公用語に再度戻された。1974年7月24日の民主政回復を経て、最終的にコンスタンディノス・カラマンリス政府の下、1976年にデモティキが正式な公用語と定められ今に至る。
しかし、司法用語(たとえば民法)は依然としてカサレヴサで記述されている。判例などもカサレヴサで起草・公示されることがあり、大学の学位論文、一部の公的公報等でも用いられ続けている。このほか、正教会の奉神礼用語は、カサレヴサではなく、基本的にコイネー・ギリシア語(新約聖書や教父の言語)が用いられるが、教会行政の公式文書などではカサレヴサの影響が強く残存している。このように、現代ギリシア社会ではデモティキが公用語として確立した後も、文語の影響が部分的に併存している。
「教養ある」現代語話者は古典を解することができる。その背景には古典と現代語の類似性だけでなく、教育が機能していることが挙げられる。『新約聖書』原典や七十人訳聖書に書かれたギリシア語であるコイネーは、現代の話者でも比較的理解しやすい。一方で、ホメロスやソポクレスなどの古典ギリシア語(アッティカ方言など)は、語彙や文法が大きく異なるため、専門的な学習なしに理解することは困難である。イギリスの歴史家ロバート・ブラウニングが言ったように「現代ギリシア語の話者にとって、紀元前7世紀に書かれたホメーロスの叙事詩は決して外国文学ではない。ギリシア語は、その最古の時代より現在に至るまで、連綿と受け継がれ、親しまれているのである」[4]。
大文字、小文字、現代の音価、慣用(古典期)の呼び名、現代の呼び名(慣用と同じ場合省略)、現代の綴りの順で記載。
| 文字 | 音価 | 名称 | 備考 |
|---|
| 大 | 小 | 古典名 | 現代名 | ギリシア語 |
|---|
| Α | α | [a] | アルファ | άλφα | |
| Β | β | [v] | ベータ | ヴィタ | βήτα | 紀元後数百年に[b] から変異。 |
| Γ | γ | [ɣ] | ガンマ | ガマ | γάμμα, γάμα | [x] の有声音。ただし前舌母音の直前では[ʝ] と発音される。 |
| Δ | δ | [ð] | デルタ | ゼルタかデルテ | δέλτα | [θ] の有声音。閉鎖音から摩擦音に紀元後数百年に変異。 |
| Ε | ε | [e] | エプシロン | έψιλον | 「単純なε」の意。 |
| Ζ | ζ | [z] | ゼータ | ズィタ | ζήτα | |
| Η | η | [i] | イータ | イタ | ήτα | 後1世紀より[ɛː] から変異。 |
| Θ | θ | [θ] | シータ | シタかティタ | θήτα | 英語の無声 th に同じ。 |
| Ι | ι | [i] | イオタ | ヨタ | ιώτα, γιώτα | 母音の直前では硬口蓋化し[j] と発音される。 |
| Κ | κ | [k] | カッパ | カパ | κάππα | [i],[e] の直前では[c] と発音される。 |
| Λ | λ | [l] | ラムダ | ラムザ | λάμδα, λάμβδα | |
| Μ | μ | [m] | ミュー | ミ | μυ | |
| Ν | ν | [n] | ニュー | ニ | νυ | |
| Ξ | ξ | [ks] | クシー | クシ | ξι | |
| Ο | ο | [o] | オミクロン | όμικρον | 「小さなο」の意。 |
| Π | π | [p] | ヒー | ピ | πι | [m] の直後では[b] と発音される。 |
| Ρ | ρ | [r] | ロー | ロ | ρω, ρο | |
| Σ | σ | [s] | シグマ | σίγμα | 有声子音の前で[z] と発音される。ς は語末のみ。 |
| ς |
| Τ | τ | [t] | タウ | タフ | ταυ | [n] の直後では[d] と発音される。 |
| Υ | υ | [i] | ユプシロン;ウプシロン;イプシロン | ύψιλον | 「単純なυ」の意。後5世紀〜10世紀に[y] から変異。 |
| Φ | φ | [f] | ファイ | フィ | φι | 紀元後数百年に[pʰ] から変異。 |
| Χ | χ | [x] | カイ | キー;ヒ | χι | 前舌母音の直前では[ç] と発音される。紀元後数百年に[kʰ] から変異。 |
| Ψ | ψ | [ps] | プサイ | プスィ | ψι, ψί | |
| Ω | ω | [o] | オメガ | ωμέγα | 「大きなο」の意。 |
- カタカナに現代ギリシア語を転写するとき、θ は主にサ行で表記・発音(θα を「サ」、θι を「シ」など)されている。
- 同様に、δ は主にザ行で表記されている。
- 現代ギリシア語では、同じ子音字が2度重ねて綴られても1文字のように発音される(長子音とならない、ただしキプロスとポントスの方言では長子音は残存している)ので、そこに日本語の「ッ」や「ン」を使う必要はない。たとえば、τέσσερα は「テセラ」であり、「テッセラ」とは読まれない。κόμμαは「コマ」であり、「コンマ」とは読まれない[5]。
- 多くの場合、現代ギリシア語のアクセントは長音記号「ー」で表されているが、ギリシア語のアクセントは強勢を示すものであり、長母音を示さない。たとえば、Μαρία は「マリーア」のように伸ばすより「マリア」のように強く読むほうがいい。「マリーア」では、Μαρίια に近くなってしまう。
- ただし、テッサロニキ(現代語発音:[θesaloˈniki] セサロニキ)のように、日本語の慣用表記が、ラテン語や英語などを経由した結果、現代ギリシア語の実際の発音と異なる場合も多い。
デモティキ(民衆口語)では、いわゆる「トノス(τόνος)」の記号類は΄ のみにモノトニコス(単強勢)化されている。気息記号の῾(音韻上で無標である有気音[h] を表す)や᾿ などは廃され、` や῀ などは、΄ に統合され、有強勢(文法的に有標)の際にのみ記される。またこの強勢記号は語末から3番目の音節のうちに置かれる。カサレヴサでは古典語のテキスト表記に倣った古典式の記号・符号を維持している。
疑問符にはいわゆるセミコロン; を用いる。Unicode ではこの記号に、U+003B の SEMICOLON とは別に U+037E に GREEK QUESTION MARK が割り当てられてはいるがU+003Bの方が好ましいとされる[6]。Windows のギリシア語 IME でもU+003B が出てくる。
- 単母音
- 便宜上、音価別に並べる。
- [a] -α
- [e] ([e],[ɛ]) -ε,αι
- [i] -η,ι,υ,ει,οι,υι
- [u] -ου 日本語のウより口をとがらして発音
- [o] -ο, ω
- 現代ギリシア語では母音の長短の区別がない。
- 母音+子音
- 以下の3つはυ の発音が無声子音の前で無声音[f] に、有声子音・母音の前で有声音[v] になる。
- αυ -[af],[av]
- ευ -[ef],[ev]
- ηυ, ιυ -[if],[iv] (現代語ではほとんど使われていない)
- 二重子音字
- γγ -[ŋ],[i],[e],[ɛ] の前なら口蓋化する(ンギ、ンギェとなる)。
- γκ - 語頭で[g]、それ以外で[ŋg]。[i],[e],[ɛ] の前なら口蓋化する(ンギ、ンギェとなる)。また、外来語では[g],[ŋk] の音も表される。
- μπ - 語頭で[b]、それ以外で[mb](外来語では[b],[mp] の音も表される)。たとえばΟλυμπία の場合、国際的には「オリンピア」の発音で知られているが、外来語ではなくギリシアの固有語であるため、「オリンビア」と発音される。
- ντ - 語頭で[d]、それ以外で[nd](外来語では[d],[nt] の音も表される)。
- 比較的古い外来語では b はβ、d はδ、g はγ と転写された。外国の地名のギリシア語表記も原音の[b],[d],[g] をそれぞれβ,δ,γ と表記する例がかなり多い。
同じ単語でも、古代ギリシア語と現代ギリシア語の発音は異なる。以下にその例を挙げる。なお、ここでいう「古典式発音」とは古代ギリシア語の諸方言中の古典期アッティカ方言(再建音)を指す。ギリシア語綴りに用いる記号は現代語のものである。ただし、カタカナ表記は当然、日本語に存在する音のみを示すから、目安にすぎない。
名詞は男性・女性・中性の3つの性と、単数・複数の2つの数と、主格・呼格・属格・対格の4つの格によって語尾が変化する。
動詞は単数・複数の2つの数、一人称・二人称・三人称の3つの人称、完結相・非完結相・完了相の3つの相、過去・現在・未来の3つの時制、能動態・受動態の2つの態、および直説法・接続法・命令法の3つの法から成る。また、他のバルカン言語連合と同様に不定詞が廃れている。辞書の見出し語は古代ギリシア語同様に直説法能動態一人称単数現在である。
古代ギリシア語からの変化として与格が消滅(その機能はσε + 対格などで代替される)し、完結相と非完結相の分化が進み、迂言形(助動詞έχω を用いる完了形や、小辞θα を用いる未来形など)が発達した。また語順に規制的な拘束性が増した。
| 単数 | 複数 |
|---|
| 男性 | 女性 | 中性 | 男性 | 女性 | 中性 |
|---|
| 主格 | ο | o | η | i | το | to | οι | oi | οι | oi | τα | ta |
|---|
| 属格 | του | tou | της | tis | του | tou | των | ton | των | ton | των | ton |
|---|
| 対格 | τον | ton | την | tin | το | to | τους | tous | τις | tis | τα | ta |
|---|
| 男性 | 女性 | 中性 |
|---|
| 主格 | ένας | enas | μία | mia | ένα | ena |
|---|
| 属格 | ενός | enos | μίας | mias | ενός | enos |
|---|
| 対格 | έναν | enan | μία(ν) | mia(n) | ένα | ena |
|---|
※冠詞類について古代ギリシャ語と対比するにはギリシャ語の冠詞を参照。
| -ος/-οι | -ης/-ες | -ας/-ες | -εας/-εις | -ας/-αδες | -ων/-οντες | -ωρ/-όρες |
|---|
| 単数 | 複数 | 単数 | 複数 | 単数 | 複数 | 単数 | 複数 | 単数 | 複数 | 単数 | 複数 | 単数 | 複数 |
|---|
| 主格 | -ος | -os | -οι | -oi | -ης | -is | -ες | -es | -ας | -as | -ες | -es | -έας | -eas | -είς | -is | -άς | -as | -άδες | -ades | -ων | -on | -οντες | -ontes | -ωρ | -or | -ορες | -ores |
|---|
| 属格 | -ου | -ou | -ων | -on | -η | -i | -ών | -on | -α | -a | -ων | -on | -έα | -ea | -έων | -eon | -ά | -a | -άδων | -adon | -όντων | -onton | -όντων | -ontes | -ορος | -oros | -όρων | -oron |
|---|
| 対格 | -ο | -o | -ους | -ous | -η | -i | -ες | -es | -α | -a | -ες | -es | -έα | -ea | -είς | -is | -ά | -a | -άδες | -ades | -οντα | -onta | -οντες | -ontes | -ορα | -ora | -ορες | -ores |
|---|
| 呼格 | -ε | -e | | | -η | -i | | | -α | -a | | | -έα | -ea | | | -ά | -a | | | -ων | -on | | | -ωρ | -or | |
|---|
| -α/-ες | -η/-ες | -ος/-οι | -η/-εις |
|---|
| 単数 | 複数 | 単数 | 複数 | 単数 | 複数 | 単数 | 複数 |
|---|
| 主格 | -α | -a | -ες | -es | -η | -i | -ες | -es | -ος | -os | -οι | -οi | -η | -i | -εις | -is |
|---|
| 属格 | -ας | -as | -ών | -on | -ης | -is | -ών | -on | -ου | -ou | -ων | -on | -ης | -is | -εων | -eon |
|---|
| 対格 | -α | -a | -ες | -es | -η | -i | -ες | -es | -ο | -o | -ους | -ous | -η | -i | -εις | -is |
|---|
| 呼格 | -α | -a | | | -η | -i | | | -ε | -e | | | -η | -i | | |
|---|
| -ο/-α | -ί/-ιά | -α/-ατα | -ος/-η | -ο/-ατα |
|---|
| 単数 | 複数 | 単数 | 複数 | 単数 | 複数 | 単数 | 複数 | 単数 | 複数 |
|---|
| 主格 | -ο | -o | -α | -a | -ί | -i | -ιά | -ia | -α | -a | -ατα | -ata | -ος | -os | -η | -i | -ο | -o | -ατα | -ata |
|---|
| 属格 | -ου | -ou | -ων | -on | -ιού | -iou | -ίων | -ion | -ατος | -atos | -άτων | -aton | -ους | -ous | -ών | -on | -ατος | -atos | -άτων | -aton |
|---|
| 対格 | -ο | -o | -α | -a | -ί | -i | -ιά | -ia | -α | -a | -ατα | -ata | -ος | -os | -η | -i | -ο | -o | -ατα | -ata |
|---|
| 男性 | 女性 | 中性 |
|---|
| 単数 | 複数 | 単数 | 複数 | 単数 | 複数 |
|---|
| 主格 | -ος | -os | -οι | -oi | -η -α | -i -a | -ες | -es | -ο | -o | -α | -a |
|---|
| 属格 | -ου | -ou | -ων | -on | -ης -ας | -is -as | -ων | -on | -ου | -ou | -ων | -on |
|---|
| 対格 | -ο | -o | -ους | -ous | -η -α | -i -a | -ες | -es | -ο | -o | -α | -a |
|---|
| 呼格 | -ε | -e | | | -η -α | -i -a | | | -ο | -o | | |
|---|
| -υς/-εια/-υ | -υς/-ια/-υ | -ης/-ες |
|---|
| 男性 | 女性 | 中性 | 男性 | 女性 | 中性 | 男女 | 中性 |
|---|
| 単数 | 複数 | 単数 | 複数 | 単数 | 複数 | 単数 | 複数 | 単数 | 複数 | 単数 | 複数 | 単数 | 複数 | 単数 | 複数 |
|---|
| 主格 | -υς | -us | -ιοι | -ioi | -εια | -ia | -ιες | -ies | -υ | -u | -ια | -ia | -υς | -us | -εις | -is | -εια | -ia | -ειες | -ies | -υ | -u | -εα | -ea | -ης | -is | -εις | -is | -ες | -es | -η | -i |
|---|
| 属格 | -ιου | -iou | -ιων | -ion | -ιας | -ias | -ιων | -ion | -ιου | -iou | -ιων | ion | -εος | -eos | -εων | -eon | -ειας | -ias | -ειων | -ion | -εος | -eos | -εων | -eon | -ους | -ous | -ων | -on | -ους | -ous | -ων | -on | |
|---|
| 対格 | -υ | -u | -ιους | -ious | -ια | -ia | -ιες | -ies | -υ | -u | -ια | -ia | -υ | -u | -εις | -eis | -εια | -ia | -ειες | -ies | -υ | -u | -εα | -ea | -ης | -is | -εις | -is | -ες | -es | -η | -i |
|---|
| 呼格 | -υ | -u | | | -εια | -ia | | | -υ | -u | | | -υ | -u | | | -εια | -ia | | | -υ | -u | | | -ης | -is | | | -ες | -es | | |
|---|
アオリスト語幹による、非完結相のアオリスト未来、アオリスト命令形が発達し、アオリストと同様頻繁に使用されコイネーの語幹がそのままの形で現在も存続している。
また、希求法は接続法に合流した。
未来時制はθα(tha)を動詞に前置させて表現し、掛かる動詞の幹によって完結相と非完結相を区別する。未来時制の語尾はどちらの相も本時制語尾が使用される。過去時制には現在語幹に副時制語尾を接尾した未完了過去と、アオリスト語幹に副時制語尾を接尾したアオリストが存在する。この用法の体系はロマンス諸語の「半過去と点過去の対立」と類似する。
完了相である未来完了、現在完了、過去完了は、έχω(echo)+アオリスト語幹に-ει(-i)を接尾させた迂言形で表現される。接続法は、να(na)を前置した迂言形で表現され、語幹は現在語幹+本時制語尾の非完結相とアオリスト語幹+本時制語尾の完結相が存在する。
条件法はθα(tha)を附した迂言形で語幹は現在語幹+第2次人称語尾形(継時相):アオリスト語幹+第2次人称語尾形(瞬時相)である。
| 単数 | 複数 | |
|---|
| 一人称 | 二人称 | 三人称 | 一人称 | 二人称 | 三人称 | 和訳 |
|---|
| 語尾 | -ω -o | -εις -is | -ει -i | -ουμε -oume | -ετε -ete | -ουν -oun |
|---|
| 第一変化 | βλέπω blepo | βλέπεις blepis | βλέπει blepi | βλέπουμε blepoume | βλέπετε blpete | βλέπουν blepo | 見る |
|---|
| 第二変化α | αγαπώ agapo | αγαπάς agapas | αγαπάει agapai | αγαπάμε agapame | αγαπάτε agapate | αγαπάνε agapane | 愛する |
|---|
| 第二変化ε | οδηγώ odigo | οδηγείς odigis | οδηγεί odigi | οδηγούμε odigoume | οδηγείτε odigite | οδηγούνε odigoune | 運転する |
|---|
| 単数 | 複数 | |
|---|
| 一人称 | 二人称 | 三人称 | 一人称 | 二人称 | 三人称 | 和訳 |
|---|
| 語尾 | -α -a | -ες -es | -ε -e | -αμε -ame | -ατε -ate | -αν -an |
|---|
| 第一変化 | έγραφα egrapha | έγραφες egraphes | έγραφε egraphe | γράαφαμε graphame | γράφατε graphate | έγραφαν egraphan | 書く |
|---|
| 第二変化α | αγαπούσα agapousa | αγαπούσες agapouses | αγαπούσε agapouse | αγαπούσαμε agapousame | αγαπούσατε agapousate | αγαπούσανε agapousane | 愛する |
|---|
| 第二変化ε | οδηγούσα odigousa | οδηγούσες odigouses | οδηγούσε odigouse | οδηγούσαμε odigousame | οδηγούσατε odigousate | οδηγούναν odigousan | 運転する |
|---|
| 相 | 語幹 | | 過去 | 現在 | 命令法 |
|---|
| 非完結相 | γραφ-(書く) | 一単 二単 三単 一複 二複 三複 | 未完了過去 έγραφα έγραφες έγραφε γράφαμε γράφατε έγραφαν 英:I was writing 仏:j'écrivais 和:書いていた | 現在形 γράφω γράφεις γράφει γράφουμε γράφετε γράφουν 英:I write 英:I am writing 仏:j'écris 和:書く | 現在命令形 γράφε γράφετε 英:write! (継時的命令) 書いていろ |
|---|
| 完結相 | γραψ- | 一単 二単 三単 一複 二複 三複 | アオリスト形 έγραψα έγραψες έγραψε γράψαμε γράψατε έγραψαν 英:I wrote 仏:j'écrivis 和:書いた | 接続法アオリスト(従属文中主観表明) να γράψω να γράψεις να γράψει να γράψουμε να γράψετε να γράψουν 英:that I write 仏:que j'écrive 和:書くと | アオリスト命令(一回限りの行動の命令) γράψε γράψτε 英:write! 仏:écris! 書け! |
|---|
| 完了相 | | 一単 二単 三単 一複 二複 三複 | 過去完了 είχα γράψει είχες γράψει είχε γράψει είχαμε γράψει είχατε γράψει είχαν γράψει 英:I had written 仏:j'avais écrit 和:書いたところだった | 現在完了 έχω γράψει έχεις γράψει έχει γράψει έχουμε γράψει έχετε γράψει έχουν γράψει 英:I have written 仏:j'ai écrit 和:書いたところだ |
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| | | | | 現在分詞(副詞的/形容詞的なもので同文中の他の人称を有する動詞の「状況」を表現) γράφοντας 英:writing 仏:écrivant | |
| | 条件法(過去に置かれた未来) | 直説法(現在に置かれた未来) |
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| 非完結相未来. | θα έγραφα 英:I would write 仏:j'écrirais | θα γράφω 英:I will write (continually) 仏:j'écrirai |
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| 完結相未来. | θα έγραψα 英:I have probably written 仏:j'écrirais | θα γράψω 英:I will write (once) 仏:j'écrirai |
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| 完了相未来. | θα είχα γράψει 英:I would have written 仏:j'aurais écrit | θα έχω γράψει 英:I will have written 仏:j'aurai écrit |
|---|
| 二人称単数 | 二人称複数 |
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| 本時制語尾 | -ε -e | -ετε -ete |
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| 例 | γράφε graphe | γράφετε graphete |
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| 副時制語尾 | -ε -e | -τε -te |
|---|
| 例 | γράψε grapse | γράψτε grapste |
|---|
| | γράφομαι(書かれる・書き合う[中・受動態]) |
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| | 過去 | 現在 | 命令法 | |
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| 現在のアスペクト(非完結相)(未完了過去)(現在形). | γραφόμουν(書かれていた) γραφόσουν γραφόταν γραφόμαστε γραφόσαστε γράφονταν(ε) | γράφομαι(書かれる・書き合う) γράφεσαι γράφεται γραφόμαστε γράφεστε γράφονται | — — |
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| アオリストのアスペクト(完結相)(アオリスト形)(アオリスト接続法). | γράφτηκα(書かれてしまった[過去の事行の瞬時形]) γράφτηκες γράφτηκε γραφτήκαμε γραφτήκατε γράφτηκαν | να γραφτώ(従属文中で「書かれたこと[瞬時形]...」[従属文中の主観的表明]) να γραφτείς να γραφτεί να γραφτούμε να γραφτείτε να γραφτούν | γράψου(書かれよ!) γραφτείτε |
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| | | έχω γραφτεί(私は書かれている[結果が現在も存続している]) | |
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| | 単数 | 複数 |
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| 本時制 | | 一人称 | 二人称 | 三人称 | 一人称 | 二人称 | 三人称 |
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| 語尾 | -ομαι -ome | -εσαι -ese | -εται -ete | -ομαστε -omaste | -εστε -este | -ονται -onde |
|---|
| 第一変化 | γράφομαι graphome | γράφεσαι graphese | γράφεται graphete | γραφόμαστε graphomaste | γράφεστε grapheste | γράφονται graphonde |
|---|
| 第二変化α | αγαπιέμαι agapieme | αγαπιέσαι agapiese | αγαπιέται agapiete | αγαπιόμαστε agapiomaste | αγαπιέστε agapieste | αγαπιούνται agapiounde |
|---|
| 第二変化ε | οδηγούμαι odigoume | οδηγείσαι odigise | οδηγείται odigite | οδηγούμαστε odigoumaste | οδηγείστε odigiste | οδηγούνται odigounde |
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| 副時制 | 語尾 | -ομουν -omoun | -οσουν -osoun | -οταν -otan | -ομαστε -omaste | -οσαστε -este | -ονταν -onde |
|---|
| 第一変化 | γραφόμουν graphomoun | γραφόσουν graphosoun | γραφόταν graphotan | γραφόμαστε graphomaste | γραφόσαστε graphosaste | γράφονταν graphondan |
|---|
| 第二変化α | αγαπιόμουν agapiomoun | αγαπιόσουν agapiosoun | αγαπιόταν agapiotan | αγαπιόμασταν agapiomastan | αγαπιόσασταν agapiosastan | αγαπιούνταν agapioundan |
|---|
| 第二変化ε | οδηγούμουν odigoumoun | οδηγούσουν odigousoun | οδηγούνταν odigoundan | οδηγούμασταν odigoumastan | οδηγούσασταν odigousastan | οδηγούνταν odigoundan |
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| 一人称 | 二人称 | 三人称 |
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| 男性 | 女性 | 中性 |
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| 単数 | 複数 | 単数 | 複数 | 単数 | 複数 | 単数 | 複数 | 単数 | 複数 |
|---|
| 強形 | 主格 | εγώ ego | εμείς emis | εσύ esu | εσείς esis | αυτός aftos | αυτοί aftoi | αυτή afti | αυτές aftes | αυτό afto | αυτά afta |
|---|
| 属格 | εμένα emena | εμάς emas | εσένα esena | εσάς esas | αυτού aftou | αυτών afton | αυτής aftis | αυτών afton | αυτού aftou | αυτών afton |
|---|
| 対格 | εμένα emena | εμάς emas | εσένα esena | εσάς esas | αυτόν afton | αυτούς aftous | αυτήν aftin | αυτές aftes | αυτό afto | αυτά afta |
|---|
| 弱形 | 主格 | | τος tos | τοι toi | τη ti | τες tes | το to | τα ta |
|---|
| 属格 | μου mou | μας mas | σου sou | σας sas | του tou | τους tous | της tis | τους tous | του tou | τους tous |
|---|
| 対格 | με me | μας mas | σε se | σας sas | τον ton | τους tous | την tin | τες tes | το to | τα ta |
|---|
口語(デモティキ)では、格変化しないπου(pou) が最も一般的に用いられる。 文語(カサレヴサ)的な表現や、より明確さが必要な場合、格変化するο οποίος(o opoios),η οποία(i opoia),το οποίο(to opio) も用いられる。
古代ギリシア語には豊富な前置詞が存在したが、現代標準ギリシア語(デモティキ)で日常的に用いられるものは少数である。古代の与格は消滅し、その機能の多くは「σε + 対格」(σε + 定冠詞でστον, στην, στο などに縮約される)によって示される。 口語の主要な前置詞は、すべて対格を支配する。
| 前置詞 | 発音 | 支配格 | 意味 |
|---|
| ανά | ana | 対格 | の上で、によって(カサレヴサ) |
| από | apo | 対格 | から(受動態の行為者も示す) |
| άνευ | anef | 属格 | 無しに、以外に(カサレヴサ) |
| αντί | andi | 属格 | 代わりに(カサレヴサ) |
| δια | dia | 属格 | を通じて、経由して(カサレヴサ) |
| δια | dia | 対格 | の為に |
| εις | is | 対格 | の中に(カサレヴサ) |
| έξω | exo | 対格 | 外に |
| έξω σε/από | exo se/apo | 対格 | 外に |
| κατά | kata | 属格 | に対して |
| κατά | kata | 対格 | によって、を通って(カサレヴサ) |
| κοντά | konda | 対格 | 近くに |
| κοντά | konda | 対格 | 近くに |
| μπροστά | brosta | 対格 | 対面に、向かいに |
| μπροστά σε/από | brosta se/apo | 対格 | 対面に、向かいに |
| μέσα | mesa | 対格 | 内に |
| μέσαω σε/από | mesa se/apo | 対格 | 内に |
| μετά | meta | 属格 | と共に |
| μετά | meta | 対格 | の後に |
| πάνω | pano | 対格 | |
| πάνωω σε/από | pano se/apo | 対格 | 上に、上部に |
| πίσω | piso | 対格 | 後ろに、後に |
| πίσωω σε/από | piso se/apo | 対格 | 後ろに、後に |
| περί | peri | 属格 | に関して |
| περί | peri | 対格 | のまわりで |
| προ | pro | 属格 | の前に(カサレヴサ) |
| υπέρ | uper | 属格 | の為に |
| υπέρ | uper | 対格 | の上に |
| υπό | upo | 属格 | によって |
| υπό | upo | 対格 | の下に |
| προς | pros | 属格 | によって |
| προς | pros | 対格 | に対して、向かって |
- 「何が」は口語ではτι(ti)、が用いられ、また、方言ではίντα(inda) が広く用いられる。
- 「誰が」はποιος(poios)、ποια(poia)、ποιο(poio)が用いられる。
- 「いつ」は(πότε(pote)
- 「どこ」はπού(pou)
固定された語順
- 小辞(前置詞)+(被制辞となる)名詞句。
- 限定詞(冠詞)+名詞。
- (直接目的語の)人称代名詞(人称名詞)+動詞(但し、命令法と分詞の場合は転置)。
- 数詞+名詞群。
- 否定詞+動詞。
- (関係詞・接続詞)+(名詞句または動詞句)。(注:3は方言では転置される)
SVOが基本語順であるも、VSO、OVS(受動的な表現で)、VOS、OSV、SOV(格言の言いまわしにみられる)の全てが可能であり、許容される。
ほとんどが、コイネーからの承継である。ギリシアの各地における方言に、その残渣がみられる。トルコ語の語彙素もかなりの頻度で用いられることが現代ギリシア語の特徴である。
カサレヴサの文法形態素は、古典ギリシア語と同一または類似(擬古形)である。口語については、上記・下掲を参照されたい。
現代ギリシア語は、標準語(デモティキに基づく)のほかに、地理的・歴史的要因により分化したいくつかの方言が存在する。主要な方言群は以下の通りである。
ポントス方言(Ποντιακή διάλεκτος)黒海南岸(ポントス地方)で話されていた方言。コイネーや中世ギリシア語の古い要素(特に音声面)を多く保持している。1923年のローザンヌ条約に基づく住民交換により、話者の多くがギリシャ(特に北部)へ移住した。
カッパドキア・ギリシア語(英語版)(Καππαδοκική διάλεκτος)アナトリア半島中央部(カッパドキア)で話されていた方言。トルコ語の強い影響を受けているのが特徴。ポントス方言と同様、住民交換により話者の多くがギリシャへ移住し、現在ではほぼ消滅状態にある。
グリコ語)(英語版)(Κατωιταλική διάλεκτος,Griko)イタリア南部のサレント半島(プッリャ州)およびカラブリア州南部で話される。イタリア語の影響を強く受けており、話者数は減少している。
キプロス・ギリシア語(英語版)(Κυπριακή διάλεκτος)キプロスで話される方言。標準ギリシア語とは語彙、音声(長子音の保持など)、文法の面で差異がある。
カナ表記では太字を強く発音する。
| 表現 | 表記 | 発音 |
|---|
| こんにちは | καλημέρα σας | カリメラ サス |
| こんばんは(午後の挨拶) | καλησπέρα σας | カリスペラ サス |
| お元気ですか | Πώς είστε; | ポスイステ? またはΤι κάνετε; ティカネテ?(; は疑問符) |
| はい | ναι | ネ またはかしこまった表現でμάλισταマリスタ |
| いいえ | Όχι | オヒ |
| いつ(何時) | πότε; | ポテ |
| どこ(何処) | πού είναι; | プイネ? |
| だれ(何人) | 男性形:ποιός; | ピョス? |
| 女性形:ποιά; | ピャ? |
| はい、元気です。で、あなたはいかがですか | Καλά, ευχαριστώ. Και εσείς; | カラ、エフハリスト。ケ エシス? |
| ようこそお越しくださいました | καλώς ήρθατε | カロスイルサテ |
| お目にかかれて恐悦至極です | καλώς σας βρήκα | カロス サス ヴリカ またはχαίρομαι που σας βλέπωヘロメ プ サス ヴレポ |
| どうぞおはいりください | περάστε παρακαλώ | ペラステ パラカロ |
| どうもありがとうございます | ευχαριστώ πολύ | エフハリスト ポリ |
| どういたしまして | παρακαλώ | パラカロ |
| ほんとうにすみません | λυπάμαι πολύ | リパメ ポリ |
| どうなさられたのですか | τι συμβαίνει; | ティ シンヴェニ? |
| なんでもございません | τίποτε | ティポテ またはτίποταティポタ |
| ほんとうですか | αλήθεια; | アリシア? |
| ちょっと手をかしてくれませんか | μπορείτε να με βοηθήσετε λίγο ; | ボリテ ナ メ ヴォイティシセテリゴ |
| なにをお望みですか | τι θα θέλατε; | ティ サセラテ? |
| ちょっと待っていてください | περιμένετε λιγάκι παρακαλώ | ペリメネテ リガキ パラカロ またはπεριμένετε ένα λέπτο παρακαλώ ペリメネテエナ レプト |
| お会いできて嬉しい | χαίρω πολύ | ヒェロ ポリ |
| 知り合えて嬉しい | χαίρομαι που σας γνωρίζω | ヒェロメ ポリ プ サス グノリゾ |
| 楽しいときをすごさせていただきました | περάσαμε ωραία | ペラサメ ポリ オレア |
| ごちそうさま | καλή χώνεψη! | カリホネプシ (特に決まったギリシア語の言い方はないがこれが相当する) |
| いつでも来てください | ελάτε όποτε θέλετε | エラテオポテセレテ |
| おいとまします(ごめんください) | Να με συγχωρείτε | ナ メ シンホリテ またはαντίο σας! アディオ サス |
| またお会いしましょう | καλή αντάμωση | カリ アンダモシ |
| よい旅をお祈りします | καλό ταξίδι | カロ タクシディ |
| すみませんここを通してください | παρακαλώ, αφήστε με να περάσω | パラカロ アフィステ メ ナ ペラソ |
| 早く医者を呼んでください | καλέστε γρήγορα ένα γιατρό | カレステ グリゴラエナ イァトロ |
| どうしたのですか | τι έχετε; | ティエヘテ? |
| 早く良くなってください | ελπίζω να γίνετε καλά σύντομα | エルピゾ ナギネテ カラシンドマ またはπεραστικά! ペラスティカ |
| ここに来てください! | ελάτε εδώ! | エラテ エド! |
| これはおいくらですか | ποσο κάνει αυτό; | ポソカニ アフト? またはπόσο κοστίζει αυτό;ポソ コスティズィ アフト? |
| (我々は)とてもたのしかった | Περάσαμε ωραία! | ペラサメ オレア! |
| (私は)とてもたのしかった | χάρηκα πολύ! | ハリカ ポリ! |
| 同慶の至りです | συγχαρητήρια! | シンハリティリア! |
| (年に1度のお祝い用の決まり文句)「御誕生日おめでとう:メリークリスマス:新年おめでとう」 | Χρόνια Πολλά! | フロニャ ポラ |
| 新年おめでとう! | Ευτυχισμένος ο καινούργιος χρόνος! | エフティヒズメノス オ ケヌリョス フロノス! |
| 感謝をこめて! | Στα δυο χέρια σας! | スタ ディョヘリャ サス! (ありがとうを感謝を込めて述べるとき) |
| 乾杯! | Στην υγειά μας! | スティン イヤ マス! または形式的表現ではΣτην υγειά σου! スティン イヤ ス! |
| 御成功を祈ります | Καλη επιτυχία! | カリ エピティヒア |
| 貴方のおかげです | σας είμαι υπόχρεος | サスイメ イポフレオス |
| 1時にあの場所でお会いしましょう | Θα συναντηθούμε εκεί στη μία! | サ シナンディスメ エキ スティミア |
- ^なお、ヘブライ語(希伯来語)も希語と省略しうるが、現状、希語は、もっぱらギリシア語の意味で使われる。
- ^民衆の口語がギリシアの言葉と考え、主としてイオニア諸島の方言から収集し口語民衆語を提唱した。『開放された自由人』を参照。
- ^西海沖の地域を除く東域の諸島・北ギリシア本土・小アジアの当時の人々には、現地語とカサレヴサしか解する言語はなく、アテネ方言はまったく通じなかった。
- Albert Thumb,Handbuch der neugriechischen Volkssprache: Grammatik, Texte, Glossar, W. de Gruyter, 1974,ISBN 9783110033403 - 口語民衆語文法・方言を記載した記述文法。
- Arvaniti, Amalia (1999). “Illustrations of the IPA: Modern Greek”. Journal of the International Phonetic Association 29: 167–172. doi:10.1017/s0025100300006538. オリジナルの2016-03-03時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20160303222353/http://www.kent.ac.uk/secl/ell/staff/amalia-arvaniti/docs/Illustrations%20%20of%20the%20IPA%20-%20Modern%20Greek.pdf.
- Robert Browning,Medieval and Modern Greek, Cambridge University Press, 2nd edition, 1983,ISBN 0521299780 - 古代から現代語への発展の歴史を簡潔に記した文献。
- 関本至『現代ギリシア語文法』泉屋書店、1968年 - 現代ギリシア語デモティキの規範文法書。
- 関本至『現代ギリシアの言語と文学』渓水社、1987年
- 水谷智洋『古典ギリシア語初歩』岩波書店、1990年、ISBN 9784000008297
- 八木橋正雄「現代ギリシャ語キプロス方言のアウトライン」日本ギリシア語ギリシア文学会『プロピレア』4号、1992年、49–55頁、および11号、1999年、40–46頁 - キプロス方言の文法を記した論文。
- 八木橋正雄『現代ギリシャ語の基礎』大学書林、1984年、ISBN 9784475017626 - カサレヴサとデモティキの比較についても記述し、方言にも配慮した唯一の現代ギリシア語記述文法の日本語文献。
- 八木橋正雄『現代ギリシャ民衆口語ハンドブック』私家版、1992年 - Albert (1974) の日本語訳
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