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カロリー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
カロリー
calorie
記号cal
非SI単位
熱量
SI(正確に)4.184J計量法による。)
由来1gの水の温度を標準大気圧下で1°C上げる熱量
語源ラテン語calor
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カロリー:calorie:calorie記号cal)は熱量非SI単位である。

1カロリーの値は「水 1g の温度を1°C上げるのに必要な熱量」とされ、概ね4.184Jに相当する。日本の計量法においては1カロリーは正確に 4.184J と定義される[1]。また、分野によってはこの1000倍の値を「1カロリー」としている場合があり、この混乱は「Calorie Confusion」と呼ばれる。

カロリーは国際単位系 (SI) には含まれておらず、多くの場合はSI単位であるジュールを使用するか、カロリーとジュールを併記するべきであるとされる。食品などの一部の分野では現在も使用される。

名称の由来

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「カロリー」という言葉は、ラテン語で「熱」を意味するcalor に由来する[2]

計量法による定義

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日本の計量法では、熱量の計量単位は、ジュールまたはワット秒ワット時と定められている[3]。そして、カロリーを特殊な計量である「人若しくは動物が摂取する物の熱量又は人若しくは動物が代謝により消費する熱量の計量」に限って使用できる単位として認めている[4]。その大きさは 1999年10月以降、1 cal = 4.184 J である。これは後述の熱化学カロリー[5](thermochemical calorie[6][7])を採用したものである。なお、計量単位令は、キロカロリー (kcal)、メガカロリー (Mcal)、ギガカロリー (Gcal) の使用を認めている。

歴史

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1824年にフランスのニコラ・クレマンが、「水 1kg の温度を0°Cから1°Cに上げるのに必要な熱量」をカロリーと名づけた[8]。このクレマンのカロリーは、現在のカロリーの定義では 1000 cal (= 1 kcal) に当たる。

1888年英国学術協会英語版が、「水 1g の温度を1°C上げるのに必要な熱量」をサーム(:therm、現在のサーム = 105BTU とは別)と名づけ、1896年、カロリーと改称した。

この歴史的事情により、分野によってカロリーが、大カロリー(kg-calorie = 1000 cal) を意味する場合と、小カロリー(g-calorie = 1 cal)を意味する場合がある。この混乱は「Calorie Confusion」と呼ばれる。

派生単位

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国際単位系 (SI) ではカロリーを単位として定めておらずl倍量・分量単位も定めていない。

日本の計量法体系では、カロリーの倍量単位として、キロカロリー (kcal = 103 cal)、メガカロリー (Mcal = 106 cal)、ギガカロリー (Gcal = 109 cal) の使用を認めているが、ミリカロリー (mcal = 0.001 cal) などの分量単位の使用は認めていない。

MTS単位系では106カロリー(15度カロリー)をテルミまたはサーミー:thermie、記号:th)という。1 th = 1000 000 cal15 ≒ 4.1855 MJ である。これは1t の水の温度を1°C度上昇させるのに必要な熱量である。

109カロリー(熱化学カロリー[9])を1TNTトンといい、核兵器などのエネルギーを表すのに使われる。1 tTNT = 109 calth = 4.184 GJ である。

大カロリー

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カロリーという単位名称は元来、MKS単位系のキログラムに基づく単位(現在の kcal = 1000 cal に等しい)の名称であった。これと、CGS単位系のグラムに基づく単位は次のように言い分けられる。(なお、MTS単位系のトンに基づく単位の名称はテルミである)

MKS単位系での名称
(英語)
CGS単位系での名称
(英語)
記号
小カロリー
small calorie
グラムカロリー
gram calorie
cal
大カロリー
large calorie
キログラムカロリー
kilogram calorie
Cal
kcal
C

大カロリー(記号 Cal、1文字目が大文字)は、伝統的に栄養学の分野で使われてきた。しかし極めて紛らわしいため、現在ではキロカロリー (kcal) が使われている。

栄養学における「カロリー」

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→詳細は「生理的熱量」を参照

栄養学においては、日本を含む多くの国で生理的熱量栄養学における熱量、エネルギー)を表す単位としてカロリーが用いられる。

かつての日本では大カロリー (Cal)を使い単にカロリーと呼んでいたが、今日では kcal(キロカロリー)を用いるのが一般的である。

各国ではSI単位であるジュールに移行するか、ジュールを併記している。日本においても計量法では、カロリー、キロカロリー (kcal)、メガカロリー (Mcal)、ギガカロリー (Gcal) の使用を、「人若しくは動物が接取する物の熱量又は人若しくは動物が代謝により消費する熱量の計量」(すなわち栄養学や生物学に関する事項)に限定して認められているものの、今後は政策的にSI単位であるジュール(1 cal = (正確に)4.184 J)に置き換えられていく予定としている。日本食品標準成分表においても、kcalによる数値と、1 kcal = 4.184 kJ の換算によるkJによる数値が併記されている[10][11]

日本語ではエネルギー量を表す用法から転じて、「カロリー」は食品の持つ栄養価としての生理的熱量そのものを指す言葉ともなっている。例「こんにゃくはカロリーが低い」「ファストフードはカロリーが高いから太りやすい」などと表現する。

過去の様々な定義

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1948年国際度量衡総会 (CGPM) で、カロリーはできるだけ使用せず、もし使用する場合にはジュール (J) の値を併記することとされた[12]

過去には、カロリーの定義には計量法の定義以外に様々なものがあった。値は次のとおりである。

国際標準化機構 (ISO) のISO 31-4 附属書 B とISO 80000-5 附属書 B および日本産業規格JIS Z8202-4:2000では、下表中の太字で示した15度カロリー、I.T.カロリー、熱化学カロリー、の3つが(非推奨の単位としてではあるが)挙げられている[13]

名称記号換算率(J/cal)備考
0度カロリーcal0~4.21900
4度カロリーcal4~4.204 50
平均カロリーcalmean~4.190 02NISTによる
旧国際蒸気表カロリー~4.186 84廃止
I.T.カロリー(注)calIT4.186 800定義値
旧計量法カロリー4.186 050定義値、廃止
15度カロリーcal15~4.185 80[9]
15度カロリーcal154.185 500CIMP1950による。この値には,0.000 5 J の不確かさがある。[14]
熱化学カロリーcalth4.18400定義値
IUNSカロリー4.18200定義値
20度カロリーcal20~4.181 90[9]

(注)I.T.カロリーは、「国際蒸気表カロリー」とも呼ばれる。第5回国際蒸気性質会議(ロンドン 1956年7月)で採択された定義である[14]

t 度カロリー

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カロリーの元々の定義は、「1グラム温度標準大気圧下で1°C上げるのに必要な熱量」である。ただし水の比熱はその温度によって異なり、0°Cで 4.218 J/g、34.5°Cで 4.178 J/g の最小値、100°Cで 4.216 J/g となる。そのため、何度の水で定義するかにより各種の「カロリー」が生まれた。

一般に、水 1 g の温度をt−0.5°Cからt+0.5°Cに上げるのに必要な熱量をt 度カロリーt° calorie、記号:calt)という。ただし例外的に、0度カロリーは、0°Cから1°Cまでで定義される。

例えば水 1 g の温度を15°C前後で1°C上げる(14.5°Cから15.5°Cに上げる)のに必要な熱量は15度カロリー15° calorie、記号:cal15)という。標準カロリー (standard calorie) ともいう。その値はアメリカ国立標準技術研究所 (NIST) によれば4.18580 J国際度量衡委員会 (CIPM) 1950 によれば、4.1855(5) J である(括弧内の数字は最終桁の標準不確かさ)。

そのほか、20度カロリー、17度カロリー、4度カロリー(事実上3.98度カロリーと同じ。水の密度が最大になる温度)などが使われる。0°Cから100°Cまで上げるに必要な熱量の1/100は平均カロリーmean calorie、記号 calmean)と呼ばれる。

しかしこれらは全て、実験的に求まる値であり常に誤差を伴う。この問題を避けるため、カロリーを定義の確かなジュールで定義するようになった。

国際蒸気表カロリー

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国際的には国際蒸気表カロリー(:international steam table calorie、記号:calIT)(単に「I.T.カロリー」と呼ぶ場合が多い)がよく使われる。これは1956年の国際蒸気性質会議(IAPS,現国際水・蒸気性質会議 (IAPWS))で正確に 1 calIT = 4.1868 J と定義された。

1926年から1956年までは、1 calIT = 1/860 int.Wh = 180/43 int.J ≒ 4.186 047 int. J という定義が使われていた[15]。「Int.(international、国際)」とはかつて使われていた国際電気単位国際単位系とは無関係)を示す記号で、国際ジュールは int. J = (int.V)2 / (int.Ω) と定義され、J = N·m と定義される絶対ジュール(実用ジュール)とはわずかに異なっていた。その値は国などによって微妙に異なったが、1949年の第9回国際度量衡総会 (CGPM) で決定された平均国際電気単位では int. J = (1.000 34 V)2 / (1.000 49 Ω) ≒ 1.000 19 J なので calIT ≒ 4.186 842 J となる。

熱化学カロリー

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現在の日本1999年10月1日からの新計量法以降)では、熱化学カロリー:thermochemical calorie)記号:calth)を使う。定義カロリー:defined calorie)ともいう。1 calth = 4.184 J と定義されており、ほぼ 17度カロリー cal17 に等しい。

1929年、F.R.ビチョウスキー(:Bochowsky)とF.D.ロッシーニ(:Rossini)が18度カロリー cal18 と同じになるように定義した calth = 4.1833 int. J が元になっている。当時は 4.1850 J に等しいとされたが、1949年の平均国際電気単位では 約4.184095 J となる。

(旧)計量法カロリー

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日本の旧計量法1951年1992年)では、カロリーの定義として、温度t を指定したt 度カロリーか、温度を指定しないならば 1 cal = 4.186 05 J という値が定義されていた。この後者を旧計量法カロリーという(計量法改正前は単に計量法カロリーといった)。なお、組立単位ではt 度カロリーは不可で、旧計量法カロリーのみが使えた。

旧計量法カロリーは国際蒸気カロリーに近いが少し小さい。これは、旧国際蒸気カロリーの国際電気単位による定義を、換算なしでそのまま絶対単位による定義 1 cal = 1/860 W·h = 180/43 J ≒4.186047 J としたためである。またさらにその数値を丸め小数表現にしてある。

1992年には新計量法が施行され旧計量法は廃止されたが、新法の規定により猶予期間として1999年までは、t 度カロリー、旧計量法カロリー、熱化学カロリーの3つのカロリーが使えた(組立単位は旧計量法カロリーのみ)。1999年10月1日からは熱化学カロリーに一本化され、またカロリーが使用できる計量は「人若しくは動物が摂取する物の熱量又は人若しくは動物が代謝により消費する熱量の計量」に制限された(計量単位令附則第1号)。

IUNSカロリー

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国際栄養科学連合英語版が定めたカロリーで、正確に 1 cal = 4.182 J である。[15]

符号位置

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記号UnicodeJIS X 0213文字参照名称
U+3388-㎈
㎈
カロリー
U+3389-㎉
㎉
キロカロリー
U+330D1-13-42㌍
㌍
全角カロリー

Unicodeには、カロリーとその分量・倍量単位を表す上記の文字が収録されている。これらはCJK互換用文字であり、既存の文字コードに対する後方互換性のために収録されているものであるので、使用は推奨されない[16][17]

注釈

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出典

[編集]
[脚注の使い方]
  1. ^計量単位令 別表第6、項番13
  2. ^平凡社大百科事典 第3巻(カウ-キス)、p.827、「カロリー」、執筆者は高田誠二
  3. ^計量法 別表第1、「熱量」の欄
  4. ^計量単位令第5条、別表第6 項番13
  5. ^平凡社大百科事典 第3巻(カウ-キス)、p.827、「カロリー」、熱化学カロリー(calth )は、4.184 J と評価される。(執筆者は高田誠二)
  6. ^calorie IUPAC, Gold Book
  7. ^THE ADOPTION OF JOULES AS UNITS OF ENERGY prepared by FAO、第5段落 The "Thermochemical calorie" was defined by Rossini simply as 4.1833 international joules in order to avoid the difficulties associated with uncertainties about the heat capacity of water (it has been redefined as 4.1840 J exactly).
  8. ^"Does the history of food energy units suggest a solution to "Calorie confusion"?" Hargrove, James L (2007). Nutrition Journal. 6 (44): 44. doi:10.1186/1475-2891-6-44. PMC 2238749.PMID 18086303. Abstract "The Calorie (kcal) of present U.S. food labels is similar to the original French definition of 1825. The original published source (now available on the internet) defined the Calorie as the quantity of heat needed to raise the temperature of 1 kg of water from 0 to 1°C." 
  9. ^abcNIST Guide for SI: Factors for Units Listed Alphabetically
  10. ^日本食品標準成分表2015年版(七訂)
  11. ^日本食品標準成分表2015年版(七訂) 第1章 説明(PDF) 2 日本食品標準成分表2015年版(七訂)、2) 収載成分項目等、(3) エネルギー、p.7、「エネルギーの単位については、キロカロリー(kcal)単位に加えてキロジュール(kJ)を併記した。また、kcalからkJへの換算はFAO/WHO合同特別専門委員会報告6) に従い次の式を用いた。 1 kcal=4.184 kJ」
  12. ^第 9 回 CGPM, 1948 年 決議 3 SI文書第 9 版 (2019) 国際単位系(SI)日本語版、p.128-129、3. 熱量の単位はジュールである。備考:熱測定の実験結果は、できるだけジュールで表すことが要請される。実験が水の温度上昇との比較で行われれば(そして、何らかの理由でカロリーという単位の使用が避けられないならば)、ジュールへの換算に必要な情報が提供されなければならない。国際度量衡委員会は(測温及び測熱)諮問委員会の助言を受けて、水の比熱についてなされた実験から得られる最も正確な値を、ジュール毎度の単位で表す表を作成すべきである。
  13. ^日本工業規格JIS Z8202-4:2000(ISO 31-4:1992) 量及び単位−第4部:熱 附属書 B(参考)参考に示すその他の単位,特に換算率に関する単位、p.11
  14. ^ab日本工業規格JIS Z8202-4:2000(ISO 31-4:1992) 量及び単位−第4部:熱 附属書 B(参考)参考に示すその他の単位,特に換算率に関する単位、p.11
  15. ^ab世界食料機関 (FAO)「The Adoption of Joules as Units of Energy
  16. ^CJK Compatibility” (2015年). 2016年2月21日閲覧。
  17. ^The Unicode Standard, Version 8.0.0”. Mountain View, CA: The Unicode Consortium (2015年). 2016年2月21日閲覧。

外部リンク

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関連項目

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エネルギーの単位
ジュール
(J = kg·m2/s2)
キロワット時
(kW·h)
電子ボルト
(eV)
重量キログラムメートル
(kgf·m)
国際蒸気表カロリー
(calIT)
1 J= 12.778×10−76.242×10181.020×10−12.388×10−1
1 kW·h=3.6×106= 12.247×10253.671×1058.598×105
1 eV=1.602176634×10−194.450×10−26= 11.634×10−203.827×10−20
1 kgf·m=9.806652.724×10−66.121×1019= 1≈ 2.342
1 calIT= 4.18681.163×10−62.613×10194.269×10−1= 1
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