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オヴィラプトル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
オヴィラプトル
生息年代:中生代白亜紀後期, 89.8–70.6 Ma
ホロタイプ標本 AMNH 6517 の骨要素を示すダイアグラム
地質時代
中生代白亜紀後期(約8,980万 ~ 7,060万年前)
分類
ドメイン:真核生物Eukaryota
:動物界Animalia
:脊索動物門Chordata
亜門:脊椎動物亜門Vertebrata
:爬虫綱Reptilia
亜綱:双弓亜綱Diapsida
下綱:主竜形下綱Archosauromorpha
上目:恐竜上目Dinosauria
:竜盤目Saurischia
亜目:獣脚亜目Theropoda
階級なし:テタヌラ類Tetanurae
階級なし:コエルロサウルス類Coelurosauria
階級なし:オヴィラプトロサウルス類Oviraptorosauria
上科:カエナグナトゥス上科Caenagnathoidea
:オヴィラプトル科Oviraptoridae
亜科:オヴィラプトル亜科Oviraptorinae
:オヴィラプトル属Oviraptor
学名
Oviraptor
Osborn1924
ヒトとの大きさ比較

オヴィラプトル学名:Oviraptor、「卵泥棒」の意)は、ロイ・チャップマン・アンドリュース率いる遠征でジョージ・オルセンが発見し、ヘンリー・オズボーンが1924年に最初に記載した、モンゴルの小型獣脚類恐竜の属。学名はラテン語で「卵泥棒」「卵を没収する者」を意味し、これはプロトケラトプスのものと考えられていた大量の卵の上に最初の化石標本が発見されたことを反映している。種小名philoceratops は「角竜愛者」の意であり、これも発見の結果として与えられた。1924年の彼の論文でオズボーンは、オヴィラプトルの頭骨が卵からわずか4センチメートルという巣に極めて近い位置から発見されたことを命名の理由とした。しかしオズボーンはオヴィラプトルという名前はその摂食行動についてミスリードを誘い、特性を誤って示しているかもしれないとも提案した[1]。1990年代に巣を作るシチパチのようなオヴィラプトル科が発見され、名前に関するオズボーンの注意が正しかったことが証明された。これらの発見から卵はおそらくオヴィラプトルそのものの卵であり、標本の個体は実際には卵を孵化させようとしていて巣で死亡したのだった。

オヴィラプトルは約7500万年前の後期白亜紀後期カンパニアンの時代に生息していた。定義できる標本は卵とともにモンゴルのジャドフタ層から発見されたものだけであるが、バヤン・マンダフと呼ばれる中国内モンゴル最北地域から第2の標本の可能性があるものが卵と共に発見されている[2]

記載

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アーティストによる復元図

Oviraptor philoceratops は1つの部分的な骨格AMNH 6517 と、本種のものとされる約15個の卵のある巣 AMNH 6508 から知られる。

生きていた頃、オヴィラプトルは最も鳥類に似た非鳥類型恐竜の1つだった。特に肋骨は鳥類に典型的な特徴を示しており例えば胸郭を強固にする各肋骨の突起などが挙げられる。ノミンギアと呼ばれるオヴィラプトルの親戚には、後に鳥類の尾羽を支えることになる癒合した一連の椎骨の尾端骨が確認されている。カウディプテリクスプロターケオプテリクスといったさらに基盤的なオヴィラプトロサウルス類の皮膚の印象化石からは体や翼、尾扇など幅広く羽毛に覆われていたことが明示されている。また尾扇はノミンギアにも存在が示されており、この特徴がオヴィラプトロサウルス類の間で広がったことが示唆されている。さらに卵を孵化させているシチパチの巣篭る位置から、羽毛のある翼で卵を覆っていたことが暗示されている[3]。これらの属はオヴィラプトルと近い解剖学的類似性を持ちオヴィラプトルにも同様に羽毛があった可能性は極めて高い。

オヴィラプトルはヒクイドリにも似た目立つ鶏冠のある姿で伝統的に描かれてきた。しかし複数のオヴィラプトル科に行われた再調査では高い鶏冠を持つ種は実際にはオヴィラプトルの親戚であるシチパチ属に属する可能性があるとされた[4]。オヴィラプトルにも鶏冠があった可能性は高いが唯一認められた標本が破損しているため鶏冠の正確な大きさと形状は不明である。

オヴィラプトルの後肢は長く発達し、それぞれに生えた3本の指には鉤爪があり獲物の捕獲や引き裂きに用いられていた。オヴィラプトルの巨大な目には強膜輪があり、嘴には歯がなく、頭蓋には鶏冠があった[5]

分類

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タイプ標本 AMNH 6517 の両手と左腕のスケッチ
タイプ標本 AMNH 6517 のスケッチ

歯のない嘴を持っていたため、オヴィラプトルは当初オズボーンによりオルニトミムス科に類属させられた。オズボーンは現在でもオヴィラプトルの近縁な親戚と考えられているキロステノテスとの類似性も見出した[1]。1976年にリンチェン・バルスボルドはオヴィラプトルとその近縁な種類を含む新しい科を設立し、オヴィラプトルをオヴィラプトル科のタイプ属に指定した[6]

オヴィラプトルのオリジナルの標本は頭骨が変形しているなど保存が良くなかったため1970年代と1980年代には新しいさらなる完全なオヴィラプトル科の標本が本属に割り当てられた。1976年バルスボルドは IGM 100/20 と 100/21 を含む6つの追加標本をオヴィラプトル属のものとした[6]が、これらは後に新属コンコラプトルに再分類された[7]。もう一つの標本 IGN 100/42 は完全な頭骨と巨大な体躯を持ち、それゆえおそらく最も有名な標本である。この標本はバルスボルドにより1981年にオヴィラプトル属へ分類され[8]、大半の大衆描写やオヴィラプトル科の科学的研究でオヴィラプトル属を代表するようになる[9]。しかしヒクイドリに似た高い鶏冠を持つこの標本は、巣篭りするオヴィラプトル科を記載した研究者による再調査を受けオヴィラプトルの最初の標本よりもそれらに近いことが判明した。このため IGN 100/42 はオヴィラプトル属から除外され、一時的にシチパチの種として再分類された[4]

以下のクラドグラムはファンティらの2012年の系統解析に従う[10]

オヴィラプトル科英語版

Oviraptor

未命名

リンチェニア

シチパチ

未命名

カーン

未命名

コンコラプトル

未命名

マカイラサウルス英語版

未命名

インゲニア (=アジャンキンゲニア)

未命名

ネメグトマイア

ヘユアニア英語版

古生物学

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化石化した巣 AMNH FR 6508

名前が示すようにプロトケラトプスのものと考えられた巣化石 AMNH FR 6508 との関連に基づき、オヴィラプトルは当初卵を食べていたと推定された[1]。ヘンリー・オズボーンは頭骨の歯のない嘴に平たい部分から下へ張り出した突起があることに着目し、これを卵殻を割ることに用いていたと提唱した。1977年にバルスボルドはオヴィラプトルと同じ地層から発見されている二枚貝などの軟体動物の殻を砕くのに十分な強度が嘴にはあったと異議を唱えた。オズボーンとバルスボルドの提唱によると上顎骨に由来する骨は中央部で収束して尖った先端の対を形成していた。口蓋骨の残りは他の全ての恐竜と異なり顎のラインの真下へ広がって歯のない下顎の間のスペースに押し込まれていた。嘴は上下の顎の縁とおそらく口蓋骨を覆っていた。

オリジナルのオヴィラプトルの標本と同型の卵と共に巣ごもりをしているシチパチの標本が発見されたことで卵が実際にはプロトケラトプスではなくオヴィラプトルのものであること、タイプ標本が卵を食べていたのではなく孵化させていた可能性が高いことが示された。しかしオヴィラプトルが卵を食べていた可能性を排除できるものではなく、その摂食戦略は不明のままである。たった一つのOviraptor philoceratops 骨格には腹腔の領域にトカゲの遺骸が保存されており[11]、本種が少なくとも部分的には肉食性だったことが暗示されている[12]

大衆文化

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映画『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』のエクステンデッド版にのみ登場。プロローグにて他の恐竜の卵を食べており、マルタ島の闇市においてはリストロサウルスと戦った末に首を噛み千切られている。

出典

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  1. ^abcOsborn, H.F. (1924). "Three new Theropoda,Protoceratops zone, central Mongolia."American Museum Novitates,144: 12 pages, 8 figs.; (American Museum of Natural History) New York. (11.7.1924).
  2. ^Dong and Currie, P. (1996). "On the discovery of an oviraptorid skeleton on a nest of eggs at Bayan Mandahu, Inner Mongolia, People's Republic of China."Canadian Journal of Earth Sciences,33: 631-636.
  3. ^Paul, G.S. (2002).Dinosaurs of the Air: The Evolution and Loss of Flight in Dinosaurs and Birds. Baltimore: Johns Hopkins University Press.
  4. ^abClark, J.M., Norell, M.A. & Barsbold, R. (2001). "Two new oviraptorids (Theropoda: Oviraptorosauria), Upper Cretaceous Djadokhta Formation, Ukhaa Tolgod, Mongolia."Journal of Vertebrate Paleontology21(2): 209-213. June 2001.
  5. ^“Oviraptor | dinosaur genus” (英語). Encyclopedia Britannica. https://www.britannica.com/animal/Oviraptor 2017年12月13日閲覧。 
  6. ^abBarsbold, Rinchen (1976). “(title in Russian) [A new Late Cretaceous family of small theropods (Oviraptoridae n. fam.) in Mongolia]”. Doklady Akademii Nauk SSSR 226 (3): 685–688. 
  7. ^Barsbold, R. (1986). "Raubdinosaurier Oviraptoren" (ロシア語). In: O.I. Vorob’eva (ed.),Gerpetologičeskie issledovaniâ v Mongol’skoj Narod−not Respublike, pp. 210–223. Institut èvolûcionnoj morphologic I èkologii životnyh him. A.N. Severcova, Akademiâ Nauk SSSR, Moscow.
  8. ^Barsbold, R. (1981). "Toothless dinosaurs of Mongolia."Joint Soviet-Mongolian Paleontological Expedition Transactions,15: 28-39. [in Russian].
  9. ^Barsbold, R., Maryanska, T., and Osmolska, H. (1990). "Oviraptorosauria," in Weishampel, D.B., Dodson, P., and Osmolska, H. (eds.).The Dinosauria. Berkeley: University of California Press, pp. 249-258.
  10. ^Fanti F, Currie PJ, Badamgarav D (2012). "New Specimens ofNemegtomaia from the Baruungoyot and Nemegt Formations (Late Cretaceous) of Mongolia."PLoS ONE,7(2): e31330. doi:10.1371/journal.pone.0031330
  11. ^(1995) "Discovering Dinosaurs" U. of California Press
  12. ^Norell, Clark, Chiappe, and Dashzeveg, (1995). "A nesting dinosaur."Nature,378: 774-776.
Oviraptor
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